「王と妃」 第63話 首陽への疑心とあらすじネタバレ感想
63話 首陽への疑心 あらすじ
端宗「寧陽尉が不正蓄財をして錦城大君とともに謀反を企てたという上書です首陽叔父上。これはあんまりです。功臣らの言う通り錦城大君を軟禁し恵嬪ママを浄業院に送りました。それなのに今度は義兄上まで謀反人に仕立てるのですか!なぜ黙っているのです!」
首陽大君は顔を横にそむけました。
首陽大君「殿下。寧陽尉が謀反を企てたとは初耳です。」
端宗「掌令ホン・ユンソンがいくら傲慢無礼でも叔父上に無断で上書を出すでしょうか!」
首陽大君「それは聞き捨てなりませんな。殿下はこの私がホンに上書を出させておきながらとぼけているとお思いですか。政丞の私をお疑いになられるのは一国の君主としてふさわしからぬ態度です。真偽をお調べいたします。寧陽尉が潔白なら何の問題もないはずです。」
端宗「首陽叔父上。寧陽尉をお助けください。お願いです首陽叔父上。」
首陽大君「ご心配には及びません。寧陽尉が謀反を企てるはずがありません。錦城大君亭に足げく通っていたので疑われたのでしょう。君主が人情にとらわれすぎると国が混乱するものです。殿下、泣いて馬謖を斬ることも覚えていてください。君主とは、時には兄弟や己の子まで罰さねばなりません。それゆえ玉座は苦痛の座なのです。」
首陽大君は端宗に頭を下げました。
首陽大君「そなたがチョン内官の後任か。よろしく頼むぞ。」
内官は何度も首陽大君に頭を下げました。
端宗「それは結局寧陽尉を殺すという意味ではありませんか首陽叔父上ー!」
端宗は目に涙をためました。
首陽大君「都承旨を呼んでおけ。私は内侍府に行く。」
ハン・ミョンフェ「はい大君。」
チョン・ギュン内官は立ち上がれず横になっていました。
首陽大君「そのままでよい。横になりなさい。病人に無理をされては私が心苦しい。痛むのか。義禁府の者たちも手加減を知らぬな。チョン内官。すまなかった。いたし方なかったのだ。殿下は法度にそむき浄業院に行かれたが殿下を罰することはできぬからな。すまなかった。体を労わりなさい。起きるでない。重臣が重病のときは君主ですら礼儀を求めぬだろう。はっはっはっはっは」
チョン・ギュンは苦痛にうめき声をあげながらも首陽に非礼のないように努めました。
(首陽大君がもっと痛めつけろーと言っていたのに・・・|д゚)
(首陽大君がもっと痛めつけろーと言っていたのに・・・|д゚)
端宗「寧陽尉が謀反を企てるなどありえぬ。首陽大君の魂胆が分からぬ。兄上まで逆賊に仕立てるとは。」
ソン王妃「王位が目的なのです。」
端宗「ならば王位をくれと言えばいい。どうして無実の者たちを陥れるのだ。」
王妃「殿下、首陽大君に譲位を迫られたらどうなさいますか。譲るつもりですか。」
端宗「それはできぬ王位を譲ったら次は私の命を奪おうとするはず。」
王妃「殿下もお気づきですか。」
端宗「私は慈悲を求め続けた。しかし叔父上に慈悲の心はなさそうだ。中殿。」
王妃「お許しください。」
端宗「怖くないか?来るべき日が近づいている。」
王妃「それでも君主の威厳を失ってはなりません。君主の威厳を守り通せば、悔いは残らぬはずです殿下。」
端宗「そうだな。威厳を保っていれば首陽大君の功臣たちも私を侮らぬはず。」
首陽大君「ソン・サンムンのことをどう思う?となたとサンムンはは竹馬の友だ。誰より彼についてよく知っておろう。」
シン・スクチュ「彼はチョン・インジ大監の後継として集賢殿を率いていける器です。私などがくらべものになるでしょうか。」
首陽大君「剛直なところは負けず劣らずだろうな。パク・ペニョンを刑曹に移動させソン・サンムンを同副都承旨にしようと思う。不服か?」
シン・スクチュ「いえ。とんでもないです。」
首陽大君「では決定するとしよう。」
(首陽大君の巧妙な罠か!)
兵曹判書のイ・ゲジョンはシン・スクチュにお手柄だとほめられましたが首陽大君の臣下になるなどごめんだと言いました。
(やばくない!?)
首陽大君「礼を言うぞ。」
兵判イ・ゲジョン「とんでもない。」
首陽大君「そなたのおかげで私も面目を保つことができた。殿下が浄業院に泊まられたらどうなっていたことか。私が恵嬪を浄業院に送ったのに殿下が見舞いに行かれては私の面目は丸つぶれだ。」
兵判イ・ゲジョン「大君のお顔を立てるために少々強引でしたが殿下を連れ戻したのです。」
首陽大君「そなたの配慮に感謝する。しばらく疎遠だったな。私は全国の軍兼を握る都統使ではあるが議政府の仕事だけで精一杯でな。今後、兵曹のことは大監にお願いしたい。」
イ・ゲジョン「大君のお力になれるなら。」
首陽大君「任せたぞ。」
イ・ゲジョン「ではこれで失礼いたします。」
首陽大君「少し骨を折ってくれないか。私の頼みをぜひとも聞いてほしい。」
イ・ゲジョン「何なりとお申し付けください大君大監。」
クォン・ラムはソン・サンムンが同副承旨に昇格したことを喜びました。シン・スクチュは気がかりなことがあるので喜べませんでした。
イ・ゲジョンは首陽大君に浄業院と錦城大君の屋敷を監視するように命じられ困っていることを吏曹判書のチョン・チャンソンに漏らしました。チョン・チャンソンは「ついに来ましたな」と言いました。イ・ゲジョンも「えらいことになった」と言いました。
チョン・チャンソン「兵判大監は運がいいですな。正念場で重要な役割を任せられたのですから。」
首陽大君「候補は一人ずつでよい。」
吏曹判書チョン・チャンソン「大君様。集賢殿の学者を登用しすぎなのでは?集賢殿の学者が官職に就くのを世宗大王は禁止したはず。」
首陽大君「人材が足りぬのだ。優秀な人材は抜擢せねば。もう決めたことです。」
チョン・チャンソン「ソン・サンムンやパク・ペニョンはわかりますがイ・ゲやユ・ソンウォン、キム・ジルは・・・」
首陽大君「キム・ジルはそなたの娘婿であろう。」
チョン・サンソン「集賢殿の学者らを登用されれば大君様は後悔なさいますよ。秦の始皇帝は即位後すぐに学者の声を抑えました。」
首陽大君「私を始皇帝と比べておるのか?」
チョン・チャンソン「そうではなく・・・」
首陽大君「はっは。私は始皇帝の足元にもおよばんぞ。はっはっはっはっは。」
キム・ジル「余計な心配でございます将軍。集賢殿の学者を登用されることをなぜいぶかるのですか。」
チョン・チャンソン「私が首陽大君を買いかぶりすぎたのだろうか。いや、真意はほかにあるに違いない。そうか、そうに違いない。ははっははははっは。」
(死六臣を罠にはめて殺そうなどと卑怯すぎる、首陽大君)
ソン・サンムンは友人シン・スクチュの家を訪問していました。
ソン・サンムン「どうしてハン・ミョンフェと姻戚になった。なぜ答えぬのだ。」
シンスク・チュは「実に面目ない。」と言いました。サンムンは「自覚しているようだな。これ以上追及するのはやめよう」と笑いました。
權擥(クォン・ラム)はシン・スクチュが人事に不満があると首陽大君に報告しました。
首陽大君「はっはっはっは。サンムンの才能に嫉妬しているようだな。さあ、飲もう。ほっほ。それほど気になるならミョンフェに尋ねればよい。」
ソン・サンムンはハン・ミョンフェと顔を合わせるのは嫌だが殿下の辞退する理由はないと言いました。シン・スクチュは慎重に決めたほうがよい、辞退するなら大君に辞意を伝えようと友人の身を案じました。サンムンは殿下に毎日謁見できることを喜びました。
クォン・ラムはハン・ミョンフェの家に行きました。ハン・ミョンフェは「まったくまだわからぬのか。尚瑞司(サンソサ)は王印を管理する部署ではないか。酒を注いでくれ。実にうまいな。はっはっはっは。」
(ミョンフェの屏風はハスの花でした。)
シン・スクチュはソン・サンムンを何とか辞退させようとしていました。ソン・サンムンはハン・ミョンフェなど人間ではないわと言いました。
ハン・ミョンフェはソン・サンムンが罠にかかったことを知るとはっはっはっはっはと笑いました。
端宗はソン・サンムンの就任の挨拶を受けました。ソン・サンムンは世宗のコミョンを受けた学士でした。
錦城大君の屋敷が兵に包囲されました。錦城大君は激怒しました。恵嬪のいる浄業院も兵が取り囲みました。永豊君は「ついに首陽大君が行動を起こした」と起こりました。首陽大君の命令で王族や大臣らの屋敷を兵が取り囲みました。城内外は兵であふれました。
桃源君の妻、ハン夫人は長男を「見ればみるほど高貴さが感じられるわ。これぞ君主の相ね」とあやして喜んでいました。首陽大君夫人は輿に乗り宮殿に行こうとしたら首陽大君がちょうど帰ってきました。首陽大君は「宮殿だと?母上を連れて家に帰りなさい」と桃源君を脅迫しました。
首陽大君「余計なことをするでない。官僚の皆がいきり立っておる。錦城と恵嬪が殿下のご慈悲を裏切り再度謀反を企てたのだ。口を出すなといったはずだ。今度ばかりは私も官僚を制止できぬ。」
(首陽大君が操っているのに官僚のせいにする言いようはあくどいですね)
官僚たちは錦城大君と恵嬪を謀反の疑いで菊問すべきです。極刑にするべきです。と大殿の前に連座しました。ハン・ミョンフェはククチョンをお開きくださいと端宗にしつこく言いました。
ソン・サンムン「殿下、賓庁でお会いくださいまし。賓庁で大臣らを迎えるのが君主の道理かと存じます。」
「左相(チャサン、左議政)大監、宮殿に行かれるのが道理では?」
チョン・インジ「道理だと?誰に対する道理だ?」
ハン・ファク「殿下に対する道理だ。左相(チャサン、左議政)大監殿は態度を明確にするべきですぞ。」
彼らは賓庁に呼ばれました。
左議政、右議政、領議政、大司憲らは思政殿(サジョンジョン)に入りました。ソン・サンムンは端宗に賓庁に行くようにお願いしました。端宗はサンムンに決して離れぬよう命じました。サンムンは粉骨砕身してお仕えしますと言いました。
端宗「ここは思政殿だ。先王様の殯宮を設けていた場所だ。太祖が朝鮮を建国し太宗が国の礎を築く過程で骨肉の争いが繰り広げられた。その後世宗大王が泰平の世を築かれたのでその骨肉の争いは無駄ではなかった。だが先王様の死後またもや王室に血が流れた。今は乱世ではないのだぞ。今も文宗先王様がご覧になっている。先王様が安置されていた場所で先王様の弟である錦城大君の死を論じるのか。」
重臣「・・・・・・。」
端宗「聞こえなかったのか。どうして黙っているのだ。」
孝寧大君は「兄上、(王位簒奪を)阻止せねばなりません」と譲寧大君を説得しに行きました。
端宗「すでに私は安平叔父上を殺し不孝をしたのに錦城大君まで殺し再び不孝を働けと?首陽大君を呼んでまいれ。これ以上私を侮辱するな。世宗大王が王位を譲ったのは私の父上だ。世宗大王の御恩を賜ってもらおらぬ者はいるのか。皆御恩を受けているはずだ。」
重臣「・・・・・・。」
王妃は端宗の凛々しい様子を尚宮から伝えきいて父とご立派ですと王らしく振舞う端宗を涙ながらに讃えました。
ホン・ユンソンは私服の手下どもを集めて食事と酒をふるまってから出陣しました。
首陽大君は白い着物を着たまま自宅でじっとしていました。
ユンソンの手下たちは木の棒を持ち寧陽尉の家を襲いました。寧陽尉はならず者たちに連れ出されて行きました。敬恵公主は「ここをどこだと心得ている!」と激しく怒りました。
感想
このドラマは首陽大君を独裁者、悪人として描いていますね。朝鮮の実録にも首陽大君が計画的であったことが示されているので、そのように考えることが妥当なのでしょう。外堀から殺していって最後は親しい血縁の味方を殺して、王位の簒奪、いわば端宗だけでなく世宗や文宗に対する謀反といってもよいでしょう。後の朝鮮の王様は世祖の子孫になるわけですから、当然世祖を否定することはできません。端宗も流血の末に咲いた花ですから立場的には謀反で君臨した太祖の子孫ということになるでしょう。首陽大君の政治は政敵を根こそぎ殺していますから、政治形態としては低レベルなものといえましょう。その後の数代にわたる混乱ぶりからは癸酉靖難の功臣たちが王権を凌駕していたことは明らかですね。燕山君が暴君となったのは、成宗がインス大妃に甘やかされて過保護に育ち、怠惰と表向きの真面目な顔がひとつの心に同居しており風俗が乱れてしまったせいでもありましょう。また成宗は高麗の忠臣鄭夢周の子孫をはじめとする士大夫を登用しており、イ・ソンゲの時代ならあり得ない人事も行っています。このことは高麗から変わらない貴族の子孫たちが朝鮮王朝を牛耳っていることを示しているとともに、民衆への抑圧と差別も高麗と同様の思想を受け継いでいることになりましょう。太宗が設置したシムンゴにより庶民の生活が変わったなどということは語られていませんので、おそらくシムンゴを叩く人は死ぬ覚悟が必要だったのではないかと思います。
ドラマの中の首陽大君は「はっはっは」とよく笑います。しかしこの楽しそうに笑っているときは、殺意を隠している場面でもありますw