「大王世宗(テワンセジョン)」(全86話) 第55話 刀ではない力 あらすじとネタバレ感想
刀ではない力 あらすじ
ファン・ヒは手腕を発揮し世宗にマルセンらの要求を拒否するように助言ました。
ファン・ヒは若い官吏たちを自宅に招きました。ファン・ヒは「復帰したのて手柄のひとつくらい立てたいものだ。どうだ顔を立ててくれぬか?」「今は時期が悪い」とそっぽを向く官吏は考績(コジョク・朝廷の人事記録)と引き換えに下級官吏を復帰させると約束しました。
朝廷に下級役人が戻り仕事がまわるようになりました。
シン・ジャンは賀正使(ハジョンサ・定期的に中国へ送る使臣)で朝鮮の代表になりました。かつての上司ホ・ジョに報告したら「ファン・ヒを呼べー」と怒りました。ストライキしていたホ・ジョはたまりかねて朝廷に出仕しました。ファン・ヒは復帰するかでたらめな人事を承認するか選べといいました。ホ・ジョはストライキをやめて復帰しました。
ファン・ヒはマルセンのいる妓楼を訪れました。マルセンは酒と料理でファン・ヒをもてなしました。ファン・ヒは収穫量を増やすために朝鮮の暦法が必要だといいました。マルセンは世宗を国を統率する資格がないと侮辱しました。
「大監、そなたこそ国を補佐する資格はない。」
話を聞いていた譲寧大君がマルセンのいる部屋に入ってきました。マルセンは表情を変えないまま驚きました。
譲寧大君「注いでくれ。あの世に逝く者同士酌み交わそう。」
マルセン「あの世ですと?」
譲寧大君「私と一緒に死ぬのだ。参賛大監、この者が私を王にしようとしたのですね?」
ファン・ヒ「さようでございます。」
譲寧大君「よかろう。聞き入れてやる。おい、聞いているか?」
扉が開き、隣の部屋にはチョン・インジとチェ・マルリが座っていました。
譲寧大君「この謀反には証人まで揃っている。残るは参賛殿の告変(コビョン・謀反の告発)だけだ。」
ファン・ヒ「告変は学士(ハクサ)どもの役目です。私がすべきことではございません。譲寧殿下(チョハ)のお供をさせてください。」
マルセン「忠誠心は涙が出るほど感動的だが王様をお分かりでない。政敵を粛清しないのが王様の信念です。」
譲寧大君「今回は例外だろう。そなたが事実を認めないならそこにいる集賢殿の学士に命じてある。司諫院と司憲府の他、全国にこの謀反を知らしめろと。兵判大監。王の粛清より恐ろしいものがある。それは民心だ。」
マルセン「考える時間をください。」
譲寧大君「長くは待てない。ご存じのとおり私には忍耐力が欠けているからな。」
夜、譲寧大君は酔っぱらって大殿の寝室を訪れました。今日は飲まずにいられませんと譲寧大君は言いました。
譲寧大君「アボジ、苦しいですか。どれほど苦しいのです。どこがどれだけ痛むのですか。」
太宗「余計な心配はするな。」
譲寧大君「やめてくださいアボジ。強がらなくていいのです。よく聞いてくださいアボジ。我々は王室の血を引いています。所詮ただの人間なのです。お世話させてください。大した力はなくても煎じ薬の火の番くらいできます。父上のそばにいたいのです。償うための時間を下さい。私は父上に迷惑をかけてばかりでした。強がらなくていいのです。償う時間をください。一人で苦しまないでください。許しは乞いません。ただ、そばにおいてください。そして私を叱ってください。どうしても父上のおそばにいたいのです。」
太宗「愚か者め」
譲寧大君「アボジ、申し訳ありません。申し訳ありません。申し訳ありませんアボジ・・・申し訳ありません・・・アボジ・・・うっ・・・あぼじ・・・・」
譲寧大君は泣きました。太宗も涙を流していました。
孝嬪は昭憲王后に頼みました。昭憲王后ははじめて太宗がもう長くはないことを知りました。「一度でいいのです、"父王を理解する"温かい心を見せてください、無理なことだとは思います。でも上王様はご自身を責めています・・・せめて王后さまが・・・」
昭憲王后は世宗の小さくなった背中を見て世宗もまた大きな苦労を背負っている、父王を受け入ればならないのかと悩み尚宮の胸で泣きました。
チョ・マルセンは世宗のもとに参上しました。ファン・ヒは何の策も講じていないとユン・フェに言いました。「そなたも言う通り政治とは剣ではなく説得力だ」
世宗「なぜ明は我が国の天まで支配しなければならないのか?」
マルセン「明は大国です。大国を怒らせたら朝鮮は孤立し自滅の道を歩みます。」
世宗「そなたは明の怒りを恐れているだけなのか?」
マルセン「明の怒りはすなわち武器となります。皇帝は朝鮮を脅かし、朝鮮は明を説得できないでしょう。」
世宗「余の望みは皇帝の説得ではなく明に技術者を送り天文儀の技術を入手できるか隠密に可能性を探りたい。何もしないまま卓上の空論を繰り返すのは時間の浪費だ。」
マルセン「政治では過程も重要です。王様がおっしゃる時間の浪費も政治の一部分です。しかしお立場は理解できます。時には隠密に進める政策もあるでしょう。」
世宗「復帰の意思表示と受け取ってもよいか?」
マルセン「まずはお約束ください。私をはじめ重臣たちと共に政治を行うと。」
世宗「そなたの望みは?」
マルセン「議政府参賛ファン・ヒの署経(官吏の任命時に司憲府と司諫院の署名を得る制度)です。」
世宗「署経(ソギョン)?」
マルセン「彼に何か問題があれば臣下に拒否権を与えてください。署経によって官吏の資質を検証できるよう・・・」
世宗「そなたたちは、朝廷に戻る名目がほしいのだな?兵判大監。そなたに名目をやろう。」
マルセン「殿下は実利を得られました。」
世宗はファン・ヒを末永く信じるといいました。光栄でございますとファン・ヒは言いました。
ヒャン(文宗)は黙って太宗の足を揉んでいました。「申し訳なく、もう呼んでいただけないかと・・・」文宗は遠慮していたのでした。ヒャンが呼ぶと弟たち(安平大君、首陽大君の子供時代)と王女たちと昭憲王后が入ってきました。昭憲王后は煎じ薬を持参し「アバママ・・・」と義父を呼びました。
世宗は父の看病をしてくれてありがとうと礼をいいました。昭憲王后は義務だからそうしたのですといいました。世宗はその義務こそが難しいことなのだといいました。
太宗は「天文台を立てるにはここがいい」と世宗に言いました。世宗は毎晩父の寝所の前にいたことを知っていました。「いつ倒されるのか怖かったのだ。だから剣を振り回していた。国を作ることしか頭になかった。余裕がなかったのだ。だがお前は違う人生を歩め。裪や、お前は正しい。正しくあってほしい。私を踏み台にするのだ。お前は私よりもずっと壮大な夢を持ってくれ。朝鮮の天は当然朝鮮のものだ。だから国民のためにここから始めるがよい。この国を、よろしく頼む。この国は私のものでもお前のものでもない。民のものなのだ。そのことを決して忘れるな。」太宗と世宗は手を取りました。「つらい道のりだろう。しかしお前は必ずやり遂げる。私は父として、お前を、誇りに思う。」
世宗はヨンシルに鍬を与え最初に天文台の地を掘るように命じました。ヨンシルは明に天文儀の技術を求めて旅立ちました。
ヒャンは太宗の見守るもとで弓の練習をしていました。「おじいさま、私は悩んでいます。父上とおじいさまのように意見が対立したらどうしたらいいですか?」「自分の意見を貫け。それでもお前に対する父の愛情は変わらない。」「本当ですか?」太宗は優しくヒャンに頷きました。ヒャンを見つめる太宗は目を閉じました。「眠いのですか?眠ってしまわれたのですか?」
ヒャンはおじいさまが目をお覚ましにならないのですと父にいいました。父は「きっと、とてもお疲れなのだ。これからはゆっくり休みたいのだろう。」
さぞや、お疲れのことでしょう。父上、ゆっくり、ゆっくりお休みください・・・
世宗が泣くとチューナー・・・チューナー・・・おいおいとまわりの侍従たちが泣きました。(´;ω;`)
感想
とうとうイ・バンウォン(太宗)が亡くなりました(´;ω;`)ウッ…。情報もない時代に政治はこれが正解だということもない中でひたすら粛清を行ってきた太宗。やっつけてもやっつけても目障りで歯向かう人間が沸いてきます。そんな政治をやめようと世宗はそれとは対照的に論理的に説得する方法を苦しみながら道を作ってきました(ところが世祖は世宗の苦労を無にして粛清してしまうのですね)。久しぶりに譲寧大君が登場しました。すっかりいい人になっている譲寧大君は「王と妃」の意地悪で悪党の譲寧大君とは大違いです。ファン・ヒの復帰は心強いですね。賢い人は違いますなぁ。でもそんなファン・ヒもマルセンに抑えつけようとする取引をしてきました。この先また一波乱がありそうです。