「薯童謠(ソドンヨ)」(全66話)第60話 形勢逆転 のあらすじとネタバレ感想
第60話 形勢逆転 あらすじ
「どうぞ着てください。」
ウスは武康太子の兵に鎧を配給していました。
「いつの間に作ったんだ?」
チャン(武康太子)はメクトスに尋ねました。
「太子様のためですから夜を徹して作りました。」
メクトスはチャンに微笑みました。
「そんな口だけの出まかせを言って。」
コモ技術士は大げさに語るメクトスに言いました。
「いつも思うのですが、その表現はおかしいです。口先だけを動かしたって声は出てきません。」
メクトスの言い訳にチャンは返す言葉もありませんでした。
「防護服が行き渡ったらここを発ちます。」
ヨン・ギョンフ大将はチャンに言いました。
「そうしよう。」
チャンは答えると部下が報告に現れました。
「チュソン島の帰りか?」
「はい殿下。」
「皆、達者か。」
「はい。」
部下は懐から取り出した手紙をチャンに渡しました。チャンが手紙を紐解き読みました。
「殿下。モジン技術士です。そちらの様子は聞きました。モンナス博士から聞いた太子様の考えをもとに土地と租税の制度を中心に国策案を練っています。こちらは心配いりません。太子様が入城する日に我々もそちらへ向かいます。」
チャンはワング将軍とソンファ公主のいる部屋に入りました。二人は椅子から立ち上がりチャンを迎えました。
「太子様、決死隊は出ましたか?」
「ええ。」
「我々はどうしますか?」
「予告では二日後ですが今晩進軍します。」
ワング将軍とソンファ公主は顔を見合わせました。
「そして八中(パルチュン、現在の羅州、ナジュ)と面中を奪う。あとは決死隊の覚悟次第でどこまで我々が無血で進めるか決まります。」
「天候も重要ですね。」
ソンファ公主が初めて口を挟みました。
「民も天も我々の味方で法王まで協力してくれるそうだ。」
ワング将軍は言いました。
「あとはサビ城まで進むだけ。」
ソンファ公主はチャンに言いました。
「サビ城は無理でも、完山(ワンサン、現在の全州チョンジュ)や辟中(ピョクチュン、現在の金堤キムジェ)までは進めそうです。前線はキルの領土、阿錯(アチャク)になるでしょう。」
夜になりました。
チャンの軍は出発しました。
同じころ、サビ城の便殿(ピョンジョン)。
「どうして私の命令に逆らうのだ。予告によると今晩だ。なのに終結したのは上佐平の兵だけか。」
プヨソン(法王)は憤慨し、貴族たちに怒鳴りました。
「陛下、我々は忠誠心から申し上げているのです。」
「そうです陛下。地域を守れば国も安泰です。」
「そのとおりです陛下。戦時中でも兵士は地方に残すものです。」
貴族たちは口々に王に言いました。
「どうしても命令に逆らうというのだな!」
プヨソンはさらに怒りました。
便殿に恩率(ウンソル)が来ました。
「どうした。」
衛士佐平(ウィサチャピョン)サテッキルは恩率に言いました。
「役場と貴族の屋敷にチャンからの手紙が届きました。」
「手紙だと?」
プヨソンは怒りました。
「すぐに入城するから逆らわずに投降しろと。」
「何だと!」
プヨソンはいっそう声を荒げました。
「どこの役場だ。」
サテッキルは恩率に尋ねました。
「辟中と完山ですが、南には全部届いているかと思います。」
「これが現実です陛下。反乱軍は民心を利用し貴族をかく乱する気です。しかも私の領土は面中(ミョンジュン)です。あと一日足らずで奴らの手に落ちます。私兵をお返しください陛下。領土を守ります。」
クク・ヨンテクはプヨソンに訴えました。
「そうです陛下。我々の私兵を返してください。」
「なぜだ。投降する気か?私がチャンに捕まり生死の境にいたころ貴様らはチン・ガギョン商団で何をしていた。チャンと密約を交わしたな!答えろー!」
フクチピョンはプヨソンと貴族のやりとりを聞いて目を閉じました。
面中。ヨン・ギョンフ大将は軍を率いて繁みに隠れていました。
「暗くなったら攻撃しましょう。」
部下は大将に言いました。
「敵の警備は50人だな?」
「山の下に50人いますが襲撃には間に合いません。」
「わかった。」
サビ城の便殿。
プヨソンは貴族の机の前に筆と紙を用意させました。
「衛士佐平に私兵を渡せとの命令書をここで書け。それから今から誰もこの宮殿を出てはならん。わかったな。早く書け。」
貴族たちはプヨソンに脅されて誓約書をしたためました。王妃の父であるヘドジュだけが自ら進んで誓約書を書きました。
「衛士佐平は今すぐ行け。各地域の反乱軍を倒すのだ。」
「はい。」
サテッキルは便殿を出ました。
サテッキルは便殿を出ました。
衛士部の部屋。
「討伐が始まる。私は発つと父上に知らせてくれ。」
サテッキルは元花郎のクソンに命じました。
「はい。」
「佐平様!」
恩率が慌てて部屋に入ってきました。
「大変なことになりました。」
「どうした。」
「のろしが上がりました。」
「のろしだと?どの地域が奪われた。」
「サビ城で上がっているのです。」
「サビ?何も起きていないというのに。のろしはいくつだ?」
「四挙です。」
「四挙・・・・というと!」
「サビ城の陥落を意味します。」
「サビ城に四挙だ!のろしを上げろ!」
サビ城の山から四つの煙が立ち上っていました。烽火を見た次の烽火台の兵はのろしを上げていきました。
「のろしを止めるよう今すぐ手を打て。」
サテッキルは恩率に命じました。
「止めようがありません。晴天ですし、すぐに国中に伝わるでしょう。」
「これだったのか。すべてはこのための作戦だったのか。」
新たに兵士がサテッキルの部屋に入ってきました。
「どうした。」
「反乱軍が二日前から八中(現在の康津)を経て北進しています。」
「なんだと。二日前だと。なぜ烽火が上がらない。」
「先に烽火台が攻撃されました。どこまで北進したのかわかりません。」
「四挙を見た各地の役場長や貴族はサビ城が陥落したと誤解しています。」
辟中。ペクチャンヒョンの屋敷。
「大変です。」
辟中の役人が慌ててペクチャンヒョンの息子の部屋に入ってきました。
「どうした。」
「外に四挙が挙がっています!」
「面中に進撃中だと報告を受けたばかりだぞ。サビ城も陥落が近いのか。」
「え?どうすれば。例の手紙で士気が下がっているのにサビ城まで陥落すれば・・・・・・。」
黄土峴(ファントヒョン、現在の井邑チョンウプ)の貴族の屋敷。
貴族は役人から連絡を受けてどうするか話し合っていました。
面中の山。
チャンとワング将軍、ヨン・ギョンフ大将がいました。武康太子の軍は歓声を上げていました。
「客主のおかげです。」
ワング将軍は大将を褒めました。大将は頭を下げてかしこまりました。
「サビ城の陥落を知らせる烽火が上がった!武康太子様はお前たちと戦う意思はない。武器を捨てて投降しろ。お前たちの領土の民も我々の加わった。武康太子様の名誉ある進軍に参加せよー!」
ワング将軍は敵に聞こえるように叫びました。
兵士は武器を下しました。
「私は武康太子だ。私の進軍が間違っていると思うなら弓を放ってもいい。できないなら武器を捨てて投降しろー!」
「弓を置け。」
クク・ヨンテクの息子は兵士に指示しました。
クク・ヨンテクの息子と役人はチャンの前に行き片膝をつきました。
「内臣佐平ククヨンテクの息子ククピョンハクと申します。面中はもう太子様のものです。太子様の進軍に合流します。」
ピョンハクと役場長が頭を下げると兵士たちは歓声を上げました。
チャンはさらに進軍し町に凱旋しました。民たちは両手を上げて喜びました。
「殿下、秋子兮(チュジャヘ、現在の潭陽タミャン)のコンナ氏も殿下に合流します。」
「殿下、仇次礼(クチャレ、現在の求礼)のチョ氏も太子様の軍に加わります。」
二人の部族長はチャンの前に跪き頭を下げました。
「タン氏やコ氏も殿下に合流すると知らせを受けました。」
コンナ氏はチャンに言いました。
「殿下。あとは進軍を続けるだけです。」
馬上でワング将軍はチャンに言いました。チャンはうなずきました。
プヨソンの部屋にサテッキルは呼ばれました。
「烽火台の警備はどうしていたんだ!」
プヨソンは激怒していました。
「申訳ありません。」
「誤りだと知らせたので北上は阻止できます。」
フクチピョンは王をなだめました。
「すでに多くの地を奪われた!」
「もう迷ってはいられません。上佐平様だけでなく衛士佐平の私兵を使い北上を阻止すべきです。」
フクチピョンは言いました。
「衛士佐平は今すぐ反乱軍を阻止しろ。わかったな。」
「はい。」
サテッキルは部屋を出ていきました。
「のろしが本当かどうか確かめもしないとは。投降する気だったのだ。」
「陛下・・・それは。」
「違う違う。最初から投降する気で私兵を返せと言ったのだな。討伐させないための時間稼ぎか。許せん。悪賢いやつらめ。絶対に許さん!」
フクチピョンは大きな口を開けて戸惑いました。
衛士部の部屋。サテッキルは剣を磨いていました。フクチピョンが部屋に入ってきました。
「必ず反乱軍を倒せ。」
「親衛隊長も陛下を守ってください。」
「私は既に信頼を失ったのだ。」
「陛下は親衛隊長だけでなく誰も信用していません。残ったのは親衛隊長と私だけです。親衛隊長は陛下の忠誠心のために私はチャンへの復讐心のために。」
「お前たちは一体どういう関係なのだ。」
「私にもわかりません。もはや勝つことしか考えていません。チャンが王になるのかと思うとその思いが一層強くなる。」
「そうとも。勝つんだ。私たちはこの戦いに命がかかっている。なんとしても勝とうじゃないか。天が味方していなくても勝って天を味方にするんだ。」
街角。チャンたちの前に私兵と法師が現れました。ソンファ公主は法師を見てとても驚きました。
法師は一礼しました。ソンファ公主の次女たちは慌てました。
サビ城ではチャンに投降した貴族の息子の父たちが又裂きの拷問をかけられていました。
「チャンと内通していたな?」
「陛下、誤解です。そんなことはしていません。」
ククヨンテクは言いました。
「なんだと?ではお前の息子はなぜ投降した。」
「それについては弁明の余地もございません。ですが私は投降を命令していません。反乱軍の勢いに押されたのでしょう。」
「勢い。勢い。だから私兵を要求したのだ。衛士佐平に討伐させるために。内通したに違いない!首を斬れ!」
「え。」
フクチピョンは言いました。
「何をしている!反逆者の首を斬れ。」
「首を斬れ。」
フクチピョンは部下に命じました。
「いえーっ。」
貴族たちは目を背けました。
「見たか。これが反逆者の末路だ。」
プヨソンは遺体を指さして言いました。
「すべての貴族に知らせろ。」
宮殿の貴族の控室。
「困りました。じき私の領土まで進軍してきます。陛下は正気を失っている。」
貴族はサドゥガンに言いました。
「チャンが四男と知ったときに失ったのだ。それは私とて同じだ。」
「どういう意味ですか。」
「ただの見知らぬ若者ではなく達率チャンが四男なのだぞ。わからんのか?チャンとモンナス博士は民の希望となった。だから烽火作戦も成功した。ひそかに王位を奪うより達率の場合、民に知らせたほうが勢いが増すのだ。」
「それがなぜ陛下の正気を失わせるのですか?」
「陛下は自分が名ばかりの王だと悟ったのだ。正気を失うのも当然だろう。」
「達率チャンは?」
「手ごわい。陛下よりも百倍手ごわい。正統性もあるし民の支持も得ている。貴族の時代は終わるだろう。」
「それでお迷いなのですか?」
「陛下は正気を失ったし、太子はあまりの大物だ。」
「サドゥガン様の領土はまだですが、私の領土はもうすぐです。」
「陛下の説得をしてください。」
ヘドジュは娘に頼みました。
王妃はできないといいました。
「言っても聞かないでしょう。」
「このままでは貴族たちも寝返ってしまいます。今日の一件で判断を変えるでしょう。」
「陛下はチャンが民の希望だと知ったうえで彼を部下にした自分を恥じているのです。」
「ですが冷静になっていただかねば衛士佐平が反乱軍を抑えても自滅しかねません。衛士佐平が阻止できなければ終わりです。達率チャンはすでに完山まで来ています。」
完山の役場。
新羅のポリャン法師(報良法師)はチャンとソンファ公主と話し合っていました。
「ソンファ公主が身分を回復なされました。なのに陛下の意に逆らい帰らないとおっしゃる。陛下はソンファ公主様がどうしても戻らないのなら新羅としては護衛をつけるしかないとおっしゃいました。そしてソンファ公主が協力している件についてはお望みならもっと新羅軍を送ってくださいます。」
法師は言いました。
「・・・・・・。」
「深刻な雰囲気ですね。」
ソンファ公主の侍女チョギはソチュンとボミョンに言いました。
「静かになさい。チョギはポリャン法師様のことは知らぬふりをなさい。」
「はい。」
「ソチュンもです。」
「はい。」
ワング将軍とヨン・ギョンフ大将とトウィルが侍女たちのところに来ました。
「あの僧侶を知っているのか?」
「いいえ。初めて会う方です。」
「それは妙だな。本当に知らないのか?」
ヨン・ギョンフ大将は怪しみました。
「はい。」
「チョギもか。」
「はい。ポミョン様も知らないのに私が知ってるはずがありません。」
ポムノは隠れてチョギを手招きしました。
「来たぞ。」
チョギはポムノとウンジンとメクトスの前に連れて来られました。
「なにするのよー。」
「正直に言って。(新羅の)真覚寺(チンガクサ)にいた人でしょ。」
「さあ。知らないわ。」
「私は覚えているわ。真覚寺には何度か行ったもの。真覚寺のお坊さんでしょ?」
「知らないってば。」
「ところで、新羅のお坊さんがなぜ百済にいるんだ?」
メクトスはチョギに聞きました。
「それが不思議なんですよ。」
トウィルが彼らを見に来ました。
メクトスはにやりと笑いました。
「見ろ。引っかかったぞ。真覚寺の坊さんだ。」
「おっ、おじさんったらー!」
チョギとメクトスは手のひらを合わせました。(ハイタッチ)
「新羅の坊さんなのか?答えろ!」
「きゃあっ。」
話を盗み聞いていたトウィルはみんなを脅しました。
「大変です。」
トウィルはワング将軍と大将のところに駆け込みました。
「何かわかったか。」
「新羅の僧侶だそうです。」
「何だと。」
「新羅?」
チャンとソンファ公主は二人きりで話していました。
「身分回復の話はご存知ですか?」
「はい。」
ソンファ公主は力なく答えました。
「太子様、入ります。」
「出直すように。」
ワング将軍と大将が部屋に入ってきました。
「チン大人は席をはずしていただけますか。」
ソンファ公主は部屋を出ました。
「殿下、あの方は新羅の僧侶ですか。」
「あれは新羅の兵ですか。」
ワング将軍と大将は交互に言いました。
「殿下、絶対あってはならないことです。民に知られたら今までの苦労が水の泡です。」
「出てくれ。」
「いくらチン大人が大事でも民に説明ができません。」
「出てくれ。」
「殿下。私もこれは認められません。いくらプヨソンを倒したくても新羅の力など借りられません。」
ヨン・ギョンフ大将の言葉にチャンは苛立ちました。
「出て行ってくれ!」
「太子様。一刻を争う時です。ご決断ください。」
ワング将軍はチャンに言いました。
「殿下。問題を抱えることになります。噂になったら・・・」
チャンは大将の言葉を遮りました。
「予定通り今晩進軍します。」
「殿下・・・。」
二人の将軍は声を揃えました。
「準備をするように。」
「殿下。」
チャンは部屋を出ました。
「陛下はソドン公が武康太子だと知ったのですか?」
ソンファ公主はポリャン法師に訊きました。
「はい。」
「王位を争っていることも?」
「はい。」
「私が法師に新羅へ帰るよう頼んでも頼んでも従わないつもりですか。」
「戻っても私を陛下は送り返すでしょう。」
「陛下のお考えは・・・。」
「陛下の新羅軍を拒否するなら公主様がお帰りになるか、あるいは・・・。」
「私はソドン公に協力したのを理由に即位後百済に見返りを要求する気ではないのですか?」
「・・・・・・。」
「どうしてもこの件に関わるというのですか?」
「新羅の公主だからです。」
ソンファ公主は力なく軒先に腰かけました。
「すみません。陛下にお話しするしかありませんでした。」
ボミョンとチョギとソチュンが姫のもとに来ました。
「お前が言わなくても、いつかは陛下に知られることだったのよ。」
夜になりました。
チャンは洞窟で一人で泣いていました。
「公主様・・・・・・。」
「博士・・・・・どうしてもダメですか。博士。」
「チャン、それは絶対にダメだ。大事な恋だとしてもそれは絶対に許されない。」
チャンはモンナス博士の言葉を思い出していました。
チャンがひとりでたたずんでいるとソンファ公主が来ました。
「これは・・・・・・私があ解決すべきです。」
「ええ。お嬢様が解決すべき問題です。新羅の問題です。」
「私が新羅へ行って陛下を説得し・・・・・。」
「新羅へ迎えに行きます。」
「戻ってきます。」
「迎えに来ます。」
「戻ってきます。」
「迎えに行きます。」
「待っています。」
「私も待ちます。」
チャンとソンファ公主は固く抱き合いました。
サテッキルの屋敷。
「ヘドジュ様と我々の兵の点検は済んだか?」
サテッキルは部屋に入ってきた恩率に言いました。
「はい。」
「ほかの兵に連絡は?」
「はい。命令書を送りましたが返事はありません。」
クソンが部屋に入ってきました。
「敵の動きはどうだ。」
「辟中へ進軍中です。」
「そうか。」
「はい。まもなく辟中は敵の手に落ちます。」
「阿錯と辟中の間にあるノティ峠の峡谷で戦う。そこが決戦の地だ。我々も進軍するぞ。」
夜。チャンの陣営。兵士たちは鬨の声をあげていました。
「殿下。衛士佐平が五千の兵を率いて阿錯に来ました。」
ヨン・ギョンフ大将がチャンに報告しました。
「ついに決戦の時が来ました。」
ワング将軍はチャンに言いました。
「ならば、ノティ峠の峡谷です。決死隊百人を用意してください。」
チャンは大将に言いました。
同じころ、阿錯のサテッキルの部屋。
サテッキルは腰を上げました。
「峡谷を突破する決死隊百人を用意しろ。」
サテッキルは恩率に命じました。
翌日。チャンの陣営。
「必ずや敵を倒すのだ。サビ城を目指し何としても突破しろ。」
チャンが言うと兵士たちは鬨の声を上げました。
サテッキルの陣営。
「この戦いに勝つにはあの峡谷を越えねばならない。いざ、敵を滅ぼさん。」
兵士たちは鬨の声を上げました。
ノティ峡谷(映像はどう見ても平原)。
チャンとサテッキルの軍は衝突しました。
日が暮れて夜になっても戦いは続きました。
「突撃だー。行けー。」
サテッキルは兵士に命じました。
激しい戦いが続きました。
どちらの兵士も殺されて数を減らしてゆきました。
宮殿のプヨソンの部屋。
「どうなった。」
「結局ノティ峠で決戦になりました。」
フクチピョンがプヨソンに報告しました。
「ノティ峠?」
「・・・・・・。」
「突破されたらサビ城まですぐだ。」
「勝ちます。衛士佐平はチャンへの復讐の塊です。頭もキレます。ご安心ください。必ず勝利します。」
「ああ。そうだな。」
「万が一の事態に備え私兵たちの様子を探り貴族ごとに分けます。混成して再配置します。」
「ああ。」
フクチピョンは部屋を出ました。
「万一の事態?」
貴族の控室。フクチピョンは貴族に報告しました。
「衛士佐平はノティ峠で戦闘に突入しました。」
「そうか。それで状況は?」
ヘドジュが訊きました。
「上佐平様と衛士佐平の私兵は優秀です。結果は見えています。」
「そうだろうな。」
サドゥガンがつぶやきました。
「もうすぐいい知らせが届くでしょう。」
「ああ。待とう。」
「ですが命令書がもう一枚必要です。」
「なぜだ。」
「サビ城で戦いやすくするためです。黙って書いてください。」
「わかった。書いてやろう。」
サドゥガンが言いました。
サビ城の町角。
「うまく行ったか?」
私服に着替えたサドゥガンは部下に訊きました。
「看守長に財物を与えて買収しました。」
「私が命令したらウヨン公主とヘモヨン様を逃がせ。」
「はい。」
「戦いはすぐ終わる。お前は私のすぐそばに。結局は達率チャンなのか。結局は。」
ヘドジュはフクチピョンと王妃の部屋にいました。
「万一の事態になった場合、陛下は上佐平様の屋敷に避難します。」
フクチピョンはヘドジュに言いました。
「当然だ。」
「ヘドジュ様の私兵三百人を宮殿の裏山に配置してください。」
「わかった。その後のお世話も引き受ける。心配しなくていい。」
「ではヘドジュ様おねがいします。」
「わかった。」
フクチピョンは部屋を出ました。
「最悪の事態まで考えるべき状況なのですか?」
王妃は父に言いました。
「衛士佐平が敗れたら残るはサビ城だけです。私とサドゥグァン、ペクチャンヒョン。我々が協力すればサビ城は守れます。ですが貴族は誰一人として心が読めない。」
「我々が敗れて武康太子が王位に就いたらヘ氏はどうなりますか?」
「破滅でしょう。」
朝になってもチャンとサテッキルの軍の戦争は続いていました。
「今だ。」
チャンは大将に言いました。
「敵側にいる人間のことですね。」
「ええ。この状況で誰かが裏切れば戦意が落ちる。命令するなら今です。」
「わかりました。青い旗を合図にしています。」
「今だ。」
「旗を上げろー。青い旗を高く上げろー。」
ヨン・ギョンフ大将は号令しました。
「突撃しろー!ひるむなー。」
サテッキルは兵士に命じていました。
「大変です。兵士が戦線を離脱しています。」
恩率はサテッキルに報告しました。
兵士は逃げ、チャンとサテッキルは馬上で一騎打ちになりました。
峠。サテッキルは兵士に突撃を命じましたが兵士たちは逃げていきました。
そしてサテッキルはチャンと再び戦いました。
お互いの刃と刃がぶつかりました。
「許さない。博士を殺した敵だ。俺が消してやる。野望のためならだれでも殺す外道め。天下は取らせない。過ぎたことだと皆が許しても俺が決して許さない。」
サテッキルは走りましたがチャンが追いかけてきました。
サテッキルは態勢を崩しました。
「許さないだと?俺の人生を返せ。」
「奪った覚えはない。」
チャンはサテッキルの腹を蹴りました。
サテッキルは立ち上がろうとしましたがチャンがサテッキルの腹を剣で刺しました。
「自分の運命を他人に委ねるのが悪い。自業自得だ。」
チャンはサテッキルにとどめを刺しました。
感想
戦争だー。殺し合いだー。なんということでしょう。同じ国民同士が何のためらいもなく殺しあっています。チャンも例外ではありません。人間なんて仲間なんじゃなくて所詮はこの程度なのでしょう。なんと嫌な生き物なのでしょうね。正義という看板があれば何のうしろめたさもつらさも感じていない、チャンだってそうなんです。ここではチャンに同情できません。新羅の真平王はあわよくば新羅に兵を送って機会があればチャンだって殺すことにためらいはないでしょう。それが人間の男という生き物ですから。人間の汚いところまで美化されているようで今回は話に同情できませんでした。でもドラマとしては隙のない作りになっており密度が高いドラマのように思います。