「王と妃」 第98話 領議政の辞任
あらすじ
ハン・ミョンフェは世祖に殺されないために領議政を辞職するつもりでした。それを韓明澮の妾のヒャンイから聞いた粋嬪ハン氏はどうしてやめるのだと激怒しました。
亀城君は友達のユ・ジャグァンが世祖のかゆみを消す方法を知っていると言いました。世祖はユ・ジャグァンを呼びかゆみが収まらなかったらただではおかぬと脅迫しました。ユ・ジャグァンは死んでも悔いはありませんというと世祖は許さん生意気な、卑しい庶子めふざけたことをいいやがってと激怒しました。
「それがそなたの望みだっただと?気に食わぬ言い方ではないか。庶子が王に謁見できたから満足だと?私を愚弄しているとしか思えん。ネイノン。お前のような人間の考えなど知れておる。卑しい者は世間をゆがんだ眼で見るものだ。お前の心の中は恨みで満ちておる。違うか?」
「その通りでございます殿下。」
「天地がひっくり返るのがそなたの望みであろう。」
「そのとおりです殿下。」
「偉そうにする連中を見るとこんな奴らは失墜しろと思うのであろう。」
「その通りです。隠すつもりはございません。いつも世間の道理など覆ればいいと思っています。」
「王の私ですら同じことを願うことがある。」
「兄上ー!兄上ー!」
ホン・ユンソンは韓明澮の家を訪ねましたが門は固く閉ざされていました。ホン・ユンソンは門を叩きました。
「兄上ー!門を壊されたくなければ開けるのだ。」
ハン・ミョンフェは自分の命を守るために居留守を使いました。
粋嬪ハン氏はハン・ミョンフェは怖気づいたのだと悪口を言いました。
王妃ユン氏は粋嬪ハン氏を部屋に呼びました。
王妃は粋嬪ハン氏に粋嬪が息子を王にしようとしている噂は本当かと問いました。粋嬪ハン氏は二人の息子が平穏に育つことだけを望んでいると釈明をしました。
ハン・ミョンフェが自宅に閉じこもっているのは世祖と王妃の警戒を緩めることが目的でした。
ク・ジャグァンは世祖にハン・ミョンフェの職を辞させるべきだ、それが王室の外戚のしきたりだと言いました。
「誰が世子を守るのだ。」
「太宗の前例がございましょう。」
「私が譲位し息子を守れということか。しかしハン・ミョンフェの配下は議政府だけでなく六曹や地方の要職もすべて独占している。私の手に負えぬ勢力ではないか。」
「殿下。殿下は六曹直啓制を導入されました。」
「だから不安なのだ。六曹の判書は皆ミョンフェの配下だ。」
「承政院がございます。かつて承旨たちが六曹を掌握し王の補佐をしていました。その制度を再び利用するのです。」
「承旨に六曹を支配させろと?」
「その通りです殿下。都承旨には兵曹を、左承旨と右承旨にはそれぞれ戸曹と礼曹を、左副承旨と右副承旨には吏曹と工曹を、同副承旨には兵曹を管理させます。そうすれば殿下が六曹を動かせるでしょう。そうしたのちに地方の観察使を殿下の信頼できる者と交代させるのです。そして亀城君を都統使にし兵権を握らせればハン・ミョンフェなど敵ではなくなります。」
「どこの観察使を交代させるのだ?」
「都承旨シン・ミョンをハムギルドの観察使に任命なさいませ。ハムギルドの兵は強く数も多いのでそこさえ掌握できれば地方のことは心配いらないでしょう。」
「面を上げよ。この者の顔を覚えておけ。この者が宮殿に来たらいつでも私のもとへ連れてこい。」
世祖はチョン内官にク・ジャグァンの顔を覚えさせ満足したように微笑しました。
「ご苦労だった。」
亀城君はク・ジャグァンに声をかけました。
ハン・ミョンフェは粋嬪を守るためには領議政を辞職するしかないとハン・チヒョン(粋嬪の従兄)に言いました。
ハン・ミョンフェは朝服に着替えると、妻に言いました。
「もしかすると、二度と帰れぬかもしれない。そのつもりでいてくれ。」
ハン・ミョンフェは輿に乗り宮殿に行きました。
ハン・チヒョンは粋嬪にハン・ミョンフェの考えを伝えました。
「あの方(お義母様)を甘く見ていました。」
粋嬪ハン氏は王妃を警戒しました。
世祖は町の悪い噂(王室は短命である)を法師から聞いて怒りました。王妃はハン昭訓(ソフン。世子に仕える宮女の中で四番目の地位。従五品)を世子妃にしてくださいと世祖に頼みました。
「男子を生んだのです。たったひとりの男子です。」
世祖は怒りました。
「私ほど仏教に理解を示した王がいるか。王妃の望みを叶えてやったのに。」
部屋に帰った王妃は息子に言いました。
「男子を生んだから世子妃にしないから悪い噂が流れるのです。その気になれば世子妃にすることはたやすいことです。」
「親不孝な息子め。黄泉にの使いが私に間違いを犯したのだ。私を連れていけばよいものを、懿敬世子を連れていくとは・・・・・・。」
世祖は懿敬世子の顧命を思い出しました。
「どうか月山君と乽山君をお守りください・・・・・・。」
「なぜそなたはこんなに早く逝ってしまったのだ。悪い息子め。なんという親不孝者だ。」
世祖は涙を拭きました。
ハン・ミョンフェは世祖に謁見を願いました。世祖は思政殿で会うとチョン内官に言いました。
粋嬪ハン氏はことを急ぎすぎて早まったと姉に言いまいた。
ハン・ミョンフェは領議政の辞職を申し出ました。
「世子と乽山君の義父である以上、領議政の座も得られたとなると強欲すぎると世間に笑われるぞ。どうした。間違っているのか?」
「おっしゃる通りでございます殿下。」
「わかればよいのだ。」
ハン・ミョンフェは「国には王がいてその下には官僚がいてその下には民がおります。王と民がいて官僚がいなければ殿下おひとりでは国を統治できないでしょう。公平になさるのは結構ですが公平にするのと均衡を保つのは別です。殿下、私は今日で領議政を辞任します。私が辞するのは殿下に自分の思い描く政治を行っていただくためでございます。その実現のために功臣たちが障害となってはならない。その思いで職を辞任いたします。最後に、あの日、殿下が粛清の旗印を高く掲げられたときに功臣たちが富貴栄華のために殿下に従ったとお思いですか。私は今日再び粛清が起きても命がけで殿下に従う覚悟ができております」と言い世祖に拝礼しました。
思政殿から出てきたハン・ミョンフェはうんうんと自分にうなずきました。
世祖は深い溜息をつきました。
ホン・ユンソンはハン・ミョンフェが自分だけ助かるために領議政をやめたのではないかとホン・ダルソンに言いました。「あのずるがしこいハンと決着をつけてやる!」
世祖はホン・ユンソンを呼びました。
「私を殺してください。弓矢で賭け事を持ちかけました。私が功臣田の返還を求めたのは・・・・・・。」
「そなたがつらい仕事を率先してきたことを私は忘れていない。その功績を想うとミョンフェより先にお前が領議政になるべきだ。今回も面倒な仕事を頼みたいのだが、そなたを五衛都聰管(オウィトチョングァン、都の警備をする長官)に任命する。信じて任せられる者がいないのだ。」
「殿下、私への信頼がここまで厚いとは夢にも思いませんでした。私の心の狭さをお許しください。」
ファン・スシンは領議政になりました。ファン・スシンは欲が深く財物に固執する人間で世宗の忠臣ファン・ヒの息子でした。ク・チグァンの機転で領議政をはじめ議政府や六曹の官僚は形ばかりの職に転落しました。
ハン・チヒョンは世祖に粋嬪が謹慎していると告げました。ハン・チヒョンは世祖と王妃の仲がよくないことを粋嬪ハン氏に教え、粋嬪様は必ず大妃になれますと言いました。それを聞いた粋嬪ハン氏は世祖にあいさつに行くと、世祖はとても喜びました。
「粋嬪よ。これを受け取れ。さあ。」
世祖は優しく粋嬪ハン氏に言いました。
「土地の権利書でございます。」
感想
今日は感想というほどの感想はありませんが、世祖は何を考えているのかわかりませんね。そんなに粋嬪ハン氏が愛しいなら世子をはじめから月山君か乽山君に任命すればよかったのに。いったん海陽大君を世子にしたのであれば、もっともっと仁粋大妃を遠ざけなければいけないはずが、世祖は欲が深いので身分の低い女官と海陽大君の男子を月山君と乽山君よりもよく思っていなかった、まるで奴婢のように思っていたという設定がドラマの演出から読み取れますね。