刑事フォイル(シーズン1)第18話 丘の家(後編)
THE FRENCH DROP プロローグ
1941年12月。イギリスはドイツとの戦争で優位に立つために敵地で破壊工作や情報活動を行う組織を秘密裏に設けていた。だが設立して間もない特殊作戦執行部はいまだ成果を上げられずにいた。そんな中、組織の一員であるウィリアム・メッシンジャーがヘイスティングズで爆弾自殺する。ウィリアムは、レベナムにある丘の家と呼ばれる場所で任務に就いていたことがわかった。フォイルは不穏な憶測が飛び交う丘の家に捜査に向かう。
あらすじ
丘の家にフォイル警視正は行きました。
「フォイルさん。」
ヒルダ・ピアースはフォイルの待つ部屋に入ってきました。
「ピアースさん。驚きました。」
フォイル警視正はヒルダ・ピアースと握手をしました。
「私はきっとまたお会いすると思ってた。」
「ほんとに。今も同じ組織にいらっしゃるのですか。特殊作戦・・・。」
「執行部。」
「執行部。」
「そうです。」
「ここが本部?」
「たくさんある拠点のひとつです。」
「ここでは何を?」
「本当は教えたくないけれど。機密事項だってことはお分かりよね。私たちの正体や活動内容は誰も知りません。切り札として誕生した組織なの。今の状況では私たちしかイギリスを敗北から救えないかもしれない。私たちは汚い手でもためらわず使う。従来の戦争ルールにもとらわれない。目的はただひとつ。勝つこと。こちらへ。」
ヒルダは別の部屋にフォイルを案内しました。
「特殊作戦執行部は昨年七月に発足。敵国での破壊工作が専門。この施設では非紳士的な戦術を教えています。」
「ウィリアム・メッシンジャーもここの・・・工作員?」
「訓練生でした。ここみたいな専門学校は全国にある。」
「専門学校?」
「まあ訓練所ね。モールス信号や爆破の仕方。拷問の耐え方や人の殺し方。殺人も任務のうちなので。」
丘の家の講義室。
マコビーは訓練生に講義をしていました。ヒルダはフォイルを講義室に案内しました。
「何に訴えれば思い通りに人を動かせるのか。たとえば愛国心。宗教的および政治的な動機。個人的な同情心。欲。」
マクビーはフォイルを見て演説をやめました。
「ああ。続けてくださいマコビーさん。」
ヒルダはマコビーに言いました。
「それに賄賂。密かな賄賂と公然の場合がある。しかし忘れるな。金でいとも簡単に寝返るような奴は信用に値しない。
ヒルダはフォイルを庭に案内しました。
「教官はどこに連れてくるんです?」
フォイルはヒルダに質問しました。
「いろいろな所から。」
「なぜそうしなければならないのかわかるか。理由は極めて単純だ。確実に殺すため。一発でも人は死ぬ。しかし二発のほうが確実だ。あ~ピアースさん。」
スタッフォード少佐は庭で人の殺し方を教えていました。
「スタッフォード少佐。続けて。」
ヒルダは少佐に言いました。
「弾を一発撃ちこんでも即死することは滅多にない。人間の神経系は数秒間生きている。だから二発連続で撃つこと。バン。バン。」
フォイルとヒルダ・ピアースは再び建物に入りました。
「スタッフォード少佐は優秀な教官でね。元はあなたと同じ刑事。」
「刑事?」
「上海共同租界警察に十年勤務。」
「ウィリアム・メッシンジャーの件で伺ったんです。」
「私の上官をご紹介しましょう。」
「教官はどこに連れてくるんです?」
フォイルは「教官はどこに連れてくるんです?」
フォイルはウィントリンガム中佐の部屋に案内されました。
「ウィリアムが死んだと聞いて驚きました。しかも自殺とは。かわいそうに。明るくて知的でやる気に満ちていました。誰よりも組織の成功を願っていた。」
ウィントリンガム中佐はフォイルに言いました。
「だとしたら自殺するのはおかしいと思いませんか。」
「ウィリアムには別の面もあった。未熟で感情を抑えられず無鉄砲なところもあった。恋人とうまくいかず・・・惜しい部下を亡くしました。ウィリアムが意気消沈した理由がほかにもある。実は海外派遣の予定でした。」
「海外のどこへ?」
「どこでもいいでしょう。ウィリアムはやる気満々でした。でもまだ力不足として別の人間を使うことにしたんです。それも原因かも。とはいえあんな風に死ぬなんて。今でも信じられません。」
「ヤン・コモロフスキと仲がよかったそうですけど、彼はここにいます?」
「どこでその名前をお聞きになりました?」
「どこでもいいでしょう。」
「ふっ・・・ワルシャワ出身でポーランド・レジスタンスの勇士。いいやつだ。ここにはポーランド人、フランス人、カナダ人。少ないがドイツ人もいる。お会いになりますか?」
「ええ。是非。」
「それではピアースに手配させますので。」
オーブリーおじさんの家。
「サマンサ何してるんだ?」
オーブリーはサムに尋ねました。サムはエプロンをして割れたガラスを繋げていました。
「テッドのお墓で割られてた花瓶。くっつけてるの。」
「なんで?」
「だって・・・妙な出来事が多いんでしょ?この花瓶が解決の糸口になるかもしれない。」
「そういえばお前は刑事になりたがってたな。小さなころからエドガー・ウォーレスのミステリー小説をよく読んでいたっけ。」
「今は刑事も同じよ。もう一年も警察にいるんだもの。」
「うん。なんで花瓶を?」
「考えたんだけど。いたずら電話の目的はおじさんをこの家からおびき出すためだったんじゃないかな。留守中に何かを探すため。高価なものを。たとえばこの花瓶を盗もうとして落として割れたのかも。直せばどれくらい価値のあるものかわかるかもしれない。骨董品かもしれない。」
「確かにな。とはいえその花瓶は安物だ。」
「安物?なんでわかるの?」
「テッドの母親がそう言ってた。」
「・・・なんだそうか。」
「残念だな。」
「ねえ叔父さん。村をうろついている男がいるって言ってたじゃない。ドイツのスパイかもしれないって。」
「ああ。正確には教会の側で見かけただけなんだ。丘の家の者には思えない。いつも教会の横から見張ってる。」
「見た目はどんな人?」
「頭はつるつるだな。四十代半ばでやせ気味だ。」
「村から来てるの?」
「ああ。何度か見かけたことがある。」
「どこに泊まってるんだろ。」
「わからん。」
丘の家の庭。フォイルとヒルダとウィントリンガム中佐はゆっくり歩いていました。
「ひとつだけはっきりさせておきましょう。この施設は私の監督下にあります。あなたも滞在中は同様です。」
ウィントリンガム中佐はフォイルに言いました。
「それはどういう意味です?」
フォイルは聞き返しました。
「部下あれこれ質問するのは遠慮していただきたい。」
ライフルの銃口が丘の家の窓からフォイルたちを狙いました。
「ウィリアムのこと以外は詮索しないこと。調査の結果を私に報告すること。いいですか?」
「いいでしょう。」
フォイルは返事をしました。
「では夕食をご一緒に。ベッドもご用意します。手配はピアースがしますので。」
マクビーは屋敷の窓からライフルでフォイルの頭を狙いましたが撃つのをやめました。
夜のヘイスティンッグズ警察署。
ミルナーは警察署に帰ってきました。
「ミルナーさん。」
リバースはミルナーを呼び止めました。
「どうした。」
「残念ながら悪い知らせです。ソーンダイク夫人が・・・。」
「撒かれたか。」
「指示通りにサイクスとホッジズの二人に尾行させました。二人とも真面目にちゃんと見張っていたんですが。」
「何があった。」
「駅に向かった夫人はトイレに入ったそうなんです。男は入れないので。外で見張ってたんですが出てこない。駅長を呼んで中に入ってみると誰もいなかった。」
「ふん・・・消えた女か。」
「ヒッチコック映画みたいですね。」
「セント・アントニーズにはアーネストの記録はなし。」
「誰です?亭主?」
「死んだらしい。あ。夫人が消えた時刻に駅を出た列車は?」
「二本ありました。一本はロンドン行で、もう一本は西へ向かいブライトンとレベナムに停まる。」
「レベナム?」
「実はいい知らせもあります。フェナーの居所がわかりました。」
ミルナーは病院で入院しているフェナーに会いました。
「犯罪っていうのはな。俺の身に起きたことを言うのだよ。」
フェナーは頭と首と腕に包帯を巻かれてベッドに横になっていました。
「何があったんです?フェナーさん。」
「誰かに殴られた。」
「客にですか?」
「後ろからだったんで・・・殴った奴の顔は見ていない。倒れた木が首を直撃したみたいだった。気づいたらここだ。」
「何も見ていないんですか?」
「それがな。本屋の前に停まった車から三人降りてきて何かを車から降ろしていた。」
「何を?」
「芋の袋か何かだ。重そうで三人でやっと運んでた。」
「本屋の中に運んだんですか?」
「そんなこと知るかよ。そこで誰かに首を殴られたんだから。医者から首が折れなくてよかったと言われた。」
「ご協力どうも。」
「おいあんた。ちょっとは何とかしてくれよ。とにかく痛くてほとんど動けないんだ。」
丘の屋敷のラウンジ。レコードがかけられました。
「みんな。客人を紹介しよう。こちらフォイル警視正だ。ヤン・コモロフスキ。スタッフォード少佐。ジャック・デュモン。レオ・マコビー。マーク・ニコルソン。あとは各自、自己紹介してくれ。フォイルさんはウィリアムが死んだ件で捜査にいらした。みんなも協力してもらいたい。どうぞ。」
ウィントリンガム中佐はフォイルを紹介しました。
「ありがと。」
フォイルはお礼を言いました。
「それじゃ。後は頼む。」
ウィントリンガム中佐は部屋を出ました。
「ワインをいかがですか?ここに客は珍しい。それとも勤務中は飲めないのかな。」
若いマーク・ニコルソンはフォイルに言いました。
「無粋だなニコルソン。」
スタッフォード少佐は言いました。
「たばこは?」
マーク・ニコルソンはフォイルに言いました。
「いえ結構です。」
フォイルは断りました。
「本当にウィリアムの件で?」
スタッフォード少佐はフォイルに言いました。
「ほかに理由があります?」
「ふっ・・・上の言うことは当てにならなんしウィリアムは期待外れだった。」
スタッフォード少佐は言いました。
「そんな言い方はないでしょう。」
ヤン・コモロフスキは言いました。
「時間をかけて仕込んだのに。自殺で全部無駄になった。」
スタッフォード少佐は言いました。
「自殺って聞いてます?」
フォイルは質問しました。
「・・・ふっ。」
スタッフォード少佐は鼻で笑いました。
「コモロフスキさんはウィリアムと仲がよかったってお聞きしています。」
フォイルは言いました。
「みんな仲はいいですよ。」
マーク・ニコルソンは言いました。
「程度の差はありますがね。」
レオ・マコビーは言いました。
マーク・ニコルソンはフォイルにワインを渡しました。
「ありがとう。マーク・ニコルソンって作家がいますけど。ご本人さんですか?」
「感激だなぁ。昔、犯罪小説を書いていた。お読みに?」
マーク・ニコルソンは言いました。
「ええ。一、二冊。」
フォイルはニコルソンに答えました。
「時間の無駄ですよね。結末が見え見えで。」
マーク・ニコルソンは言いました。
「誰が結末まで読む?」
スタッフォード少佐は言いました。
「うるさいぞ。スタッフォード。ま、僕は作りごとに飽きて本物の世界に来たんです。」
「ホントハケイサツジャナインデショ?」
デュモンはフランス語なまりでフォイルに言いました。
「警察じゃないなら、何なんだ?」
ヤン・コモロフスキはフォイルに言いました。
「これもテストネ。」
デュモンは言いました。
「ほう。確かに。しょっちゅうあるからね。知り合った女が色目を使ってくる。寂しいから話をしたくなる。職業や出身地を訊かれてつい答えてしまう。」
ヤン・コモロフスキは言いました。
「女はスパイ。で、失格になる。よくあることだ。この部屋のカウンター。酒がたくさん並べてあるでしょう?」
マーク・ニコルソンは優雅に立ち上がりました。
「ソレモテストナンデス。」
「どれぐらい飲んだか。ここでは何をするのも見張られる。」
マーク・ニコルソンはワインを汲みました。
「この人は本物の刑事だ。フォイルさんとは古い知り合いでね。できればあんたとは二度と会いたくなかった。」
レオ・マコビーはフォイルに言いました。
「それは私もだ。」
フォイルはマコビーに言いました。
「なんだかわけがありそうだな。何があったか聞かせてくれよ。」
マーク・ニコルソンはマコビーに言いました。
「うるさい。お前は引っ込んでろよ。ニコルソン。」
「じゃあ。フォイルさん。夕食を一緒にいかが?」
ヤン・コモロフスキはフォイルに言いました。
「ボクハオススメシナイ。ココノショクジサイアク。」
デュモンはフォイルに言いました。
「パリの食事が恋しいってか?」
スタッフォード少佐はマキシム・デュモンに言いました。
「モチロン。」
「だったらマキシムをフランスの真上に落としてやるよ。落下傘なしで。」
スタッフォード少佐は言いました。
「ご心配なさらずに。仲が悪そうに見えてもチームワークは完璧ですよ。」
マーク・ニコルソンは言いました。
「それはどうかな。」
スタッフォード少佐は言いました。
「君の人間性は完璧に壊れてる。」
マーク・ニコルソンはスタッフォード少佐に言いました。
ウィントリンガム中佐の部屋。
「今朝手紙が来ていた。フランシス提督から。約束していた船をようやく廻してくれた。ブリューターニュ作戦開始だ。」
ウィントリンガム中佐はヒルダ・ピアースに言いました。
「待ったほうがいいと思う。」
「ふぅ。」
「ファクトゥールのこと忘れたの?」
「ちゃんと覚えてる。」
「あなたが死なせたのよ。正確な情報が入るのを待っていればあんなことには。」
「輸送機の都合上仕方なかった。」
「待つべきだった。」
「でもあの日しかなかったんだ。こんな調子でいつまで君と仕事を続けられるか疑問だ。」
「同感だわ。本部に判断してもらいましょう。」
ヒルダはスコッチを飲みました。
丘の家の屋敷の廊下。
「相変わらずあきらめが悪い人だ。ヘイスティングズであった自殺でここまで来るとはね。」
マコビーはフォイルに言いました。
「メイソンなぜここに。」
フォイルはレオ・マコビーに言いました。
「雇われた。それに今はマコビー。」
「名前を変えても売春宿の主人だった過去は変わらん。」
「誰にも迷惑かけてないし真面目に商売していた俺を七年も塀の中にぶち込もうとしやがって。」
「私の記憶通りならまだ服役中だろう。」
「釈放されたんだ。俺は人間の弱点の突き方をよく知ってるからな。ドイツ人だって同じ人間。秘密を聞き出すならベッドの中に限る。戦争で立場逆転だな。俺は世間の役に立ちあんたは役立たず。おい。まあせいぜい気を付けるこったな。怪我しないように。殺されないように。ここの奴らは人の殺し方をよく知ってる。」
「それでウィリアムも殺したのか?」
「へへへ。あいつは自殺だろう。俺は関係ない。ここのみんなもだ。よくあることだ。」
サムは村のホテルまで自転車を走らせていました。
「サマンサ!久しぶり。元気か?」
「クーパーさんこそお元気?」
「なんとかな。ヘイスティングズの警察で働いてるんだって?」
「実は今聞き込み捜査中なの。今は宿に泊まってる人はいる?」
「いや。泊まりの客はいない。あと二つだ。なんて奴を探してるんだ?」
「名前はわからないの。わかってるのは風体だけ。つるつる頭で四十代。やせ気味の男。丘の家の関係者かも。」
「うちにはいない。パーキンのところへ行ってみろ。」
「パーキンじいさん?」
「丘の家と奴らと同じ時期に来た下宿人がいる。何度か見かけたけど髪が薄かった。一体何の事件だ?」
「秘密だから言えない。」
「会いに行ったらパーキン爺さんは喜ぶ。お前がお気に入りだったからな。」
「そうでしょうね。どうもありがと。」
丘の家のラウンジ。
マーク・ニコルソンはトランプをシャッフルしてフォイルに言いました。
「お好きなカードは?なんでもいいです。」
「スペードのクイーン。」
「ん?」
マーク・ニコルソンは伏せたカードから一枚を取り出すとそれはスペードのクイーンでした。
「トランプ以外に何をなさっているのですか?」
「御覧に入れましょう。三ペンス。ん?消えた。」
マーク・ニコルソンはマジックを披露しました。
「ドイツに戦争に負けても芸では勝てそうだ。」
フォイルはニコルソンを褒めました。
「今のトリックはフレンチドロップっていうんです。コインを手のひらに落とす。右手を動かして観客の目を動かす。古典的な手法だ。あなたがいらした手法と似ています。ウィリアムの件で。」
「というと?」
「ウィリアムの件で騒ぐとしたらウィリアムの父親だ。彼があなたをここへ?サー・ジャイルズ・メッシンジャー。僕はここに来る前サー・ジャイルズのセッションDにいたんです。つまりこの組織は彼から縄張りを奪った。だからなんでもする。我々の組織を潰すためならね。傷つけられたプライドを癒すためにも。」
「ウィリアムから何か聞いてます?」
「ウィリアムは父親とはうまくいってなかったようです。なぜかはおわかりでしょう?自殺の原因は失恋なのにサー・ジャイルズは僕たちのせいで死んだってことにしたいんです。だからいらしたんでしょ?」
「理由は話した通りです。」
「そう。だったら失礼しました。でも一つ言っておきましょう。あなたには単なる座興に見えるかもしれません。ただの目くらましにね。でも応用すればドイツ軍に何もないところにスピットファイアが百機あるように思わせたり軍隊が進んでいる通りをからっぽに見せかけたりできる。」
マーク・ニコルソンは眼鏡を取りました。
丘の家の庭。
「バッテリー。爆薬。タイマー。コードの色を覚えろ。青は十分だ。さあ。そろそろ十分が来る。列車が来る。もしドイツ兵にでくわしたらこのペンをくれてやれ。ちゃんと下がってろ。」
フォイルはスタッフォード少佐の訓練の様子を眺めていました。
「フォイルさん。お話しが。」
ヤン・コモロフスキはフォイルを呼び出しました。
「もしかしてウィリアムは自殺じゃないってお思いですか?」
ヤン・コモロフスキはフォイルに言いました。
「どう思います?」
「わかりません。悩みがあれば僕に言ってくれたはず。」
フォイルとヤン・コモロフスキは池の前のベンチに座りました。
「恋人に会ったことは?」
「いえ。女の話は一度も。」
「でも母親のの話ではウィリアムは最後に会ったとき興奮気味だったとか。」
「それはきっと、フランスのルアンに行く予定だったから。でも中止になった。中佐がまだ早いって直前になって取り消したんです。自殺だったとしたら失恋じゃなくそれが原因なんだと思います。どっちにしろ死ぬ運命だったけど。」
「というと?」
「よその工作員が送られたんです。ウィリアムのかわりに。確か名前はファクトゥール。でも噂では任務に失敗して死んだそうなんです。つまり自殺しなくても任務に派遣されていたらウィリアムは死んでいた。寿命だったのかも。」
スキンヘッドの男は村の通りを歩いていました。サムは男を見かけました。男は赤色の電話ボックスに入り電話をしました。
丘の家。
「おはよう。」
フォイルはフランス人のマキシム・デュモンに声をかけました。デュモンはクロスワードパズルを解いていました。
「オハヨウゴザイマス。」
「故郷が恋しい?出身はどこ?」
「パリです。」
「パリのどの辺パリです。モウスグコウギナノデシツレイシマス。?」
「モンパルナス。」
「ムッシュデュモン。忘れ物です。」
「スミマセン。」
「あなたはウィリアムと親しかったほう?」
「会ったことはあります。でもよく知っていたとは言えない。」
「フランス派遣のことは?」
「行く予定だって聞きましたけど直前になって中止になったんでしょ?」
「ウィリアムは怒ってた?」
「怒るというよりは動揺してました。行けると思ってたので中止になったから。でもすみません。私はウィリアムをよく知りません。」
「あなたはなぜここに馳せ参じようと思ったのですか?」
「馳せ参じって・・・どういう意味?」
「なぜ参加したんですか。」
「ああ。それは簡単ね。フランス人に聞けばみんなこう言いますよ。ヒトラーとナチスがパリの真ん中を行進するのを見ると吐き気がする。私たちの文化が踏みにじられている。ルーブルや、ノートルダム。それにオリンピックスタジアムまで。あのスタジアムで確かお宅らにサッカーで勝ったはず。確か十年くらい前。」
「五対二で負け。苦い思い出だ。」
「でも。謝りませんよ。」
「お時間をどうも。」
「とんでもない。」
「パリモンパルナスの試合を早く見たいでしょう。」
「ええ。一日も早く。」
ソーンダイク夫人に似たマダム(クレスウェル)が一目を気にしながら丘の家に入っていきました。
丘の家の廊下。
「サー・ジャイルズはあなたたちを目の仇にしているとか。」
フォイルはウィントリンガム中佐に尋ねました。
「おしゃべりがいると見える。」
「そのサー・ジャイルズの息子を雇うのは妙な気がしますがねぇ。」
「父への反発か。ウィリアムのほうから志願してきたんです。それが何か?」
「ちょっと知りたくて。」
「今思いついたんですけどここで働いてみませんか?警察より軍務をご希望なんでしょ?」
「よくご存じで。」
「海軍のサー・パーシー・ノープルのもとでの書類仕事よりいいですよ。フランス語はできます?」
「できたとしてもここの教官とはうまくやっていけそうにない。」
「うん。レオ・マコビーですね。」
「本名はレオ・メイソンだ。十五歳の少女たちを雇って売春させていた男が惜しい?」
「でも役には立つ。クレスウェル。予定より随分早いな。」
「早く着いたんです。」
階段を上がってきたクレスウェルは答えました。
「クレスウェル。こちらはフォイル警視正。イブリン・クレスウェルです。」
「よろしく。」
クレスウェルはフォイルに言いました。
「私の秘書です。」
「以前どこかで?」
「いいえ。お会いしていません。」
「タイムしてもらいたい手紙が何通か貯まっている。」
「わかりました。」
「じゃあ。運転手をお呼びしましょう。」
「ありがと。」
ヘイスティングズ警察署。
「ミルナーさん。動きました。」
リバースはミルナーに知らせました。
「マリオンがか。」
「タクシーで駅へ向かい、ブライトン行きの列車を待っています。」
「ソーンダイク夫人と同じだ。出発は何時?」
「二十分後です。車をまわしてあります。」
ミルナーはコートを羽織り帽子を被りました。
オーブリーおじさんの家。
「手がかりを掴んだの。つるつる頭の。」
サムは白い陶器に青の絵付けをしたティーセットでアフタヌーンティーを飲みながらオーブリーに言いました。
「奴を見つけたのか?」
「パーキン爺さん家に下宿してる。今朝尾行したの。」
「くれぐれも無茶はするなよ。」
「危ない人じゃなさそう。ビーチーズレーンの電話ボックスから電話をかけただけ。その後は下宿に戻って。見張ってたけど出てこなかった。」
「よく突き止めた。」
「これからよ。」
サムはスコーンのようなものをほおばりました。
「ビーチーズレーン?おかしいな。あそこの電話は通じない。」
「でも電話してた。」
「もう何週間も前からだ。兵隊が演習で電話線を切って以来そのままだよ。」
丘の家。
マコビーは何かの筒を開けると粉が舞いました。
「マコビー。そこで何してる。」
「別に。」
「そこは立ち入り禁止だ。」
「うるせぇスタッフォード指図すんな。」
「フォイルのことが気になるんだろう。」
「いや。」
「過去は消えない。」
「関係ねぇよ。あんな奴。」
マコビーは立ち去りました。
サムが男を見張っているとその日も電話ボックスから電話していました。サムは電話ボックスの中を確かめると、電話の下から「機密」と書かれた封筒が出てきました。
丘の家。
「フォイルさん。今日お帰りだそうで。ゆっくりお話しできず残念です。」
スタッフォード中佐はフォイルに言いました。
「ええ。そうなんです。あなたは昔、警察官だったとか。」
「上海の租界で。中国人は手ごわい。命がけでした。ふっ。」
「じゃあ殺しはお手の物?」
「仕事なんでね。」
「楽しい?」
「私も着任した頃はここの人間は異常だと思いました。でもここで開発中の技術は後の世に驚きを与えますよ。小型無線機。ネズミ爆弾。文書は身分証の偽造方法。かゆい粉。敵の下着につけてかゆがらせる。異常かもしれませんが必死なんですよ。」
「ウィリアムも指導したんですか?」
「車のハンドルが効かなくなる粉。そんなのもあります。」
「それが何?」
「ウィリアムの話はできません。警察官同士といっても住む世界が違います。あなたはここでは部外者だ。」
「同感です。」
「でも我々を全員いっしょくたにしないでください。」
「なんであいつらを呼んだ。」
レオ・マコビーはウィントリンガム中佐に言いました。
「それはフォイルさんのことか?君とは過去の因縁があるらしいな。」
「七年ぶち込まれた。」
「四年だろ。感謝しろ。」
「フォイルはみんなにウィリアムのことを聞きまわってる。いずれあんたの秘密にも感づく。」
「隠すことはない。」
「そうかな。あんた言ったよな。ウィリアムは自殺したって女に振られて。ほんとなのか?あいつに限ってそんなのありえない。女を好きじゃないから。そういうことだ。フォイルにも教えたほうがいいかね?」
「おいマコビー。」
「いや。それよりいなくなってもらおう。しゃしゃり出て来られないように。考えておけ。」
「警視正!よかった。」
サムはフォイルを迎えに来ました。
「会えてうれしいよ。」
「もう帰してもらえないんじゃないかと思いました。」
「あたしもだ。」
「何をしているところでした?」
「言っても信じてもらえないよ。」
「言ってみて。」
「だめだ。」
「じゃあ聞きません。」
サムとフォイルは車に乗りました。
「ミルナーに電話したか?」
「してません。ちょっと忙しくて。おじのために村を調べてまして。実は発見したものがあります。公衆電話に隠してあった手紙と地図です。誰かの手に渡る前に頂いておきました。」
「今どこにある?」
「私が持ってます。」
車がすれ違いました。
「今の女性!」
「マリオン・グリーンウッドだ。間違いない。」
「引き返して追いかけますか?」
「いや。まっすぐ行け。」
「あれ。おかしいな。警視正。ハンドルが効きません。」
「何?」
「ああ。ああ。何で?」
サムの車は小屋に突っ込みました。
「・・・・・・。あ・・・。」
サムは額に怪我をしました。
「大丈夫か?」
「平気です。どうしていきなり・・・。」
「降りよう。動けるか。」
サムとフォイルはオーブリーおじさんの家に行きました。
「さあお飲み。気分はどうだい?」
オーブリーはサムに言いました。
「ずいぶんよくなった。巡査部長はいつここに?」
サムが言うとミルナーが部屋にいました。
「お前が帰ってくる三十分くらい前だ。」
オーブリーはサムに言いました。
「汽車で来たんだ。実はマリオン・グリーンウッドを尾行してきたんです。」
「マリオンはどこへ?」
フォイルはミルナーに尋ねました。
「駅からタクシーに乗ってどこへ行ったと思います?」
「丘の家。」
「そうです。」
「これ役に立ちます?」
サムは秘密文書をフォイルに見せました。
「ああ。」
「ルアンの地図。」
「ルアンの地図はある工作員が使ったものらしいぞ。この手紙によれば。」
「十。十。四十。って地図の作成日?」
サムはフォイルに言いました。
「置いていった男は誰だ?」
「つるつる頭じゃなかったです。顔は見てないけど。」
「何もかもが丘の家に結びついてるようだ。」
オーブリーは言いました。
「あなたの教会もです。」
フォイルはオーブリーに言いました。
「・・・というと?」
「亡くなった若い大工の・・・。」
「テッド・ハーバー?」
「こんなことはしたくないが・・・仕方がない。墓を掘り返させていただく必要があります。」
聖マリア教会の墓。
フォイルは男たちにテッドの墓を掘り返させました。
「かわいそうに。洗礼も私がした。子供の頃よくここでかくれんぼをしてた。墓石の後ろに隠れてね。二週間前に会いに来た。結婚するからって。相手はメアリー・トンプソン。覚えてる?」
オーブリーは言いました。
「村の店で働いてる子でしょ?」
「結婚してこれからって時にばかげた事故で屋根から落ちて首の骨を折るなんて。主は何をお考えなのか時々疑うよ。」
「警視正。」
ミルナーはフォイルを呼びました。
「何が出てくるとお考えですか?」
オーブリーはフォイルに言いました。
「何も出て来ないはずだと思ってます。」
フォイルはオーブリーに言いました。
棺の蓋が開けられるとそこには何もありませんでした。
フォイルは丘の家に行きました。
「フォイル。この野郎。地獄に堕ちろ。」
レオ・マコビーは警官に連行されていました。
「また会えてよかったよ。メイソン。じゃあな。」
フォイルはマコビーに言いました。
「これは。今日中にタイプしてよろしいですか?」
秘書はスタッフォードに言いました。
「スタッフォード少佐。」
「フォイルさん。」
「車のハンドルを効かなくするようにする粉。」
「炭化ケイ素粉末。それが正式名称です。」
「知ってたんですね。」
「マコビーだかメイソンだか知らないがあんな奴はここにはふさわしくない。限度というものがありますからね。汚い手を使うにしても。」
「ありがと。でも注意を促すならもっと明確にお願いしたい。」
丘の家の作戦会議室。
「君はカーンの周辺には詳しいのか?」
ウィントリンガム中佐はマキシムに言いました。
「ボクはクワシクないです。でもトモダチがいますから。」
マキシム・デュモンは言いました。
「よし。」
「おはよ。」
フォイルが部屋に入ってきました。
「フォイルさん。今は都合が悪いんです。」
ウィントリンガム中佐はフォイルに言いました。
「あなたはね。私はいいんです。」
「何の御用でしょう?」
「まずは私の時間を無駄にしたことを謝っていただいて。その次にどうやったらいつもそこまで無能になれるものか説明していただきましょう。」
「説明していただきたいのはこっちだ。無能とは。どこが?」
「第一にフランスのルアンでの作戦の失敗はあなたに直接の責任があります。」
「第一にだと?なぜ?」
「あなたが送り込んだ工作員が死んだのは古い情報に基づいて行動したからです。」
「それは何だ?」
「これはルアンの地図です。ですが地図の日付は昨年の十月十日。現在の占領情勢が反映されてなかったため工作員がドイツが設置した地雷原に降ろされた。」
「第二には?」
「第二にはあなたもご存じだったはずだ。身内にスパイが潜んでいることを。知っていながらこういう情報の持ち出しを許すとは理解できない。」
「スパイだと?」
「機密情報部MI6(エムアイシックス)でしょう。地図と一緒にあった手紙には機密情報が記されておりあて名はエムアイシックス。しかし今は使えない電話ボックスを受け渡し場所に選ぶとはどちらもお粗末。」
「もし、そのスパイが誰かわかっているのなら教えていただきたいものだ。」
「それは今回の件とは関係ない。時間を無駄にされたあなたに教える義理もない。でもせっかくだ。私ならこんな人物を疑うでしょうね。いかにもフランス人って雰囲気で新聞のクロスワードパズルが解けるのに馳せ参じるという言葉がわからない振りをしてパリ・モンパルナスがサッカーのチームと思っている人です。実際は駅の名前だ。あなたが置いたんでしょ。」
フォイルはマキシム・デュモンに言いました。
「ついにばれる時が来たらしい。こんなに長くばれずにいたとは驚きだ。」
マキシム・デュモンは言いました。
「何者なの?」
ヒルダ・ピアースは立ち上がりました。
「ピアースさん。それは私の上官にお尋ね願いたい。」
「サー・ジャイルズ・メッシンジャーか。」
ウィントリンガム中佐は言いました。
「そうです。あなたに恨みはないが任務です。」
「ニコルソン。保安塔に連れていけ。こいつを建物の外には出すな。」
「最後まで推理を聞きたかったですがこれで失礼。」
「ご苦労さま。」
フォイルはマキシムに言いました。
部屋にはフォイルとウィントリンガム中佐とヒルダ・ピアースだけになりました。
「デュモンは知らないようですね。」
フォイルはウィントリンガム中佐に言いました。
「知らないって何を?」
ウィントリンガム中佐はフォイルに言いました。
「あなたが恐れているほどには。」
「あなたはデュモンよりずっと多くをご存じらしい。」
「デュモンはさっき私が話したことは知っていた。ここの皆さんもおそらくは知っていたでしょう。地図のせいで死んだ工作員がウィリアム・メッシンジャーのかわりだったことはね。」
フォイルは椅子に腰かけました。
「ところが。ウィリアムの代わりなどいなかった。ファクトゥールはフランス語でメッシンジャーという意味です。つまり彼はウィリアム・メッシンジャー本人でヘイスティンッグズで失恋自殺なんてしていない。フランスで地雷を踏んで死んだんだ。」
「認めて。」
ヒルダはウィントリンガム中佐に言いました。
「断る。」
「じゃああたしから話す。あなたの言う通り輸送機は手配できた。でもルアン周辺の最新情報は入手できなかった。なのにウィントリンガム中佐は作戦を決行した。降下地点はサンティエンヌという村近くの森。直後に爆死。フランス側と接触する間もなかった。サー・ジャイルズ・メッシンジャーはあたしたちの失敗を待っていた。なのに息子を地雷原に降ろしてしまったなんて言えるわけないでしょう。」
「よりにもよってどうしてウィリアムを?」
「志願してきたんです。ウィリアムはこう言った。息子の自分が英雄になれば父も態度を変えるだろう。危険だったがうまくいくかもしれない。」
ウィントリンガム中佐は言いました。
「生きて戻ればね。」
ヒルダは言いました。
「わたしには権力争いなんてどうでもいい。人としてどうかという点は横においても警官としての私が守るべきは法律だ。」
フォイルは二人に言いました。
「違法行為なことも正当化できないこともしていません。」
ウィントリンガム中佐は言いました。
「墓荒らしは違法行為であり正当化できまい。墓の上の花瓶さえ割らなければ君たちが来た事に誰も気づかなかっただろうが。盗んだテッド・ハーパーの遺体をウィリアムに見せかけて手りゅう弾で吹っ飛ばすのも正当化できない。さらに懐中時計を使っての偽装工作もだ。部屋を借り、ヘイスティングズに住んだこともない女性(イブリン・クレスウェル)を大家に仕立て・・・。プロの女優だか多才な秘書だか知らないが、あれは捜査妨害に当たる。それに遺書の偽造。恋人役のマリオン・グリーンウッドもあなたの差し金でしょう。あれも捜査妨害。加えて私を殺そうともした。違法なうえ道義的に許しがたい行為だ。あれをどう正当化するんです。」
フォイルは言いました。
「そもそも戦争に道義などない。仕方ないでしょう。私だってそんなことはしたくない。でも生き延びるためにはやらないと。そのための組織です。」
ウィントリンガム中佐は言いました。
丘の家の庭。
「フォイルさんお願いがあるの。」
ヒルダ・ピアースはフォイルに言いました。
「ウェントリンガムは・・・なんていえばいいか。強引すぎて失敗する。そう遠くないうちに今の地位から追いやられる。そのうち私も。でもそれはいいの。大事なのはこの組織。ここのみんなは祖国のために身を投げ出そうとしていることは疑わないでほしい。あんな隠ぺい工作すべきじゃなかった。でも誰にも迷惑はかけていない。」
「ウィリアムの両親には知る権利がある。」
「言い訳できないミスのせいで息子が死んだと知って喜ぶかしら?」
「自殺より戦死のほうが耐えやすいかもしれない。」
「でも待って。戦争が終わるまでは見逃して。これまで従来の戦い方をしてきた結果、我々は劣勢に立たされている。でもそのうち必ず逆転させてみせる。」
「でも私は嘘はつけない。」
「嘘をつけなんて言ってない。真実を話せる時まで待ってくれって言ってるだけ。」
タクシーが来てメッシンジャー夫妻が降りてきました。
「来るのを知っていたのか?」
フォイルはヒルダに言いました。
「来ていただいたの。ウィリアムの遺品を渡すために。」
ヒルダは言いました。
「サー・ジャイルズ。」
「あー。ピアースくん。フォイル君。ここで何を?」
「帰るところです。」
「この前言っていたな。息子の死には腑に落ちない点があるようだと。」
「本当ですか?何かわかりましたか?」
妻はフォイルに言いました。
「どうやら私の誤解だったようです。」
フォイルはジャイルズに言いました。
「適当なことを口に出しおって。君は自分の権限をわきまえていないようだ。海軍のパーシー・ノープルから君のことを聞かれた。でも軍で働こうなんぞ金輪際考えるな。」
丘の家の駐車場。
「ずっといてくれなきゃ。」
サムはミルナーに言いました。
「何のこと?」
「ヘイスティングズに。巡査部長がいなければ困る。」
「どうかねぇ。」
「だって仲間でしょ?ひとりはみんなのために。みんなはひとりのために。」
「忘れてた。渡すものがある。」
ミルナーは大きな玉ねぎをサムに見せました。
「それどうしたの!」
「ふふふ。くじで当たった。」
「くじ引きの?」
「二人で半分こだ。」
「うーんちゅっ。ほんと最高。あなたも最高。ありがとう。」
サムはミルナーの頬にキスをしました。
聖マリア教会。
「結局、警察に残ることになりそうだって?」
オーブリーはフォイルに言いました。
「そうなんです。」
「お会いできてよかった。幸運を。」
「ありがと。行こう。長旅だ。」
フォイルはサムたちに言いました。
「じゃあね。おじさん。」
「お前も元気でな。」
「復活祭でまた。」
感想
なんかスッキリしない結末でした(*´ω`)遺体がテッドのものだということやウィリアムの下宿がおかしいことは容易に察しがつきましたね。ウィリアムがゲイで女性の恋人がいなかったことは後編になるまではわかりませんでした。フォイルはサー・ジャイルズ・メッシンジャーの誤解で強制的に軍に転職できなくなってしまい・・・・・・ミルナーは転職を思いとどまったかどうかについてはまだ明らかにされていませんね。サムは何不自由のないお嬢様でフォイルやミルナーよりもずっとお金持ちそうですね。