王と妃 103話 ハン・ミョンフェとシン・スクチュの放免
あらすじ
夜の世祖の寝所。
世祖は暴れていました。
「殺戮とはあんまりです叔父上。そんな暴言を吐く方だとは思いませんでした。私が玉座に就いた経緯に理解を示しておきながらなぜ殺戮と呼ぶのですか。」
世祖は叔父の孝寧大君に言いました。
「殺戮だからです。権力の座を得るための殿下の行為すべてが正当であり必要なことだったとしても血が流れたのですから殺戮と呼ばざるを得ません。」
孝寧大君は静かに王に言いました。
「・・・・・・。」
「ですから。二度と繰り返してはならぬのです。」
「私は・・・今の言葉は聞かなかったことにします。」
「私はもう十分長生きしました。十分すぎるほど行きました。これ以上望むこともなければ恐れるものもありません。」
「お帰りください。」
「殿下。」
「毎晩悪夢にうなされるのです!目の前に安平や血だらけの錦城が立っているのです!幼い端宗は礼儀正しく座り亡骸を日当たりのよい場所に埋めてくれと言うのだ!ファンボ・インが泣き叫びキム・ジョンソは私を睨む。きっとあの世でもうなされるでしょう!それでハン・ミョンフェを殺すなと?ハン・ミョンフェにこの国を任せろと言うのですか?できません。道連れにします。ハン・ミョンフェは私と消え失せなければなりません!何としてでもハン・ミョンフェを暗い墓場に連れていきます。」
「南無観世音菩薩。」
「私は悪鬼なのです。千年の眠りから蘇った悪鬼なのです。生まれてくるべきではなかった。本当はあと千年土の中で眠り清い魂となって黄泉の国を彷徨ったのちよみがえるべき悪鬼だったのです。」
世祖は叔父の前で声を荒げてから泣きました。
「私は悪鬼なのですう・・・・・。」
世祖の寝所から出てきた孝寧大君は月を見上げてため息をつきました。
世祖はいつまでも悪鬼なのですと言って泣きました。
世祖はふらつきました。
「殿下。早く御医を呼ぶのだ。」
同じ部屋で立って侍っていたチョン内官は世祖に駆け寄りました。
「騒ぐでない。少しめまいがしただけだ。」
粋嬪ハン氏は懿敬世子の位牌を見つめていました。
世祖は横になりました。チョン内官は世祖を介抱していました。
「私がもう長くはないことは私もそなたもわかっておる。この世のみなが知っていることかもしれぬ。」
「殿下。宮殿の門を閉めますか。」
「そんなことをしたら大騒ぎになる。私は死ぬ前にやらなければならないことがある。それはなんだかわかるか。」
「愚かな私ですが察しはついております。」
「王室の威厳を保持する。財政をしっかり整える。軍権を掌握する。功臣や朝廷の官僚たちに忠誠を誓わせる。そうしたのちに私は世子に王位を継ぎたいのだ。わかるなチョン・ギュンよ。」
「はい殿下。」
「私が倒れたことは誰にも知られてはならぬ。余計な噂を立てた者は処刑してくれる。ああ・・・・あ・・・心配するでない。すべてやり遂げるまでは私は何としても生き抜いて見せる。」
チョン内官は部屋の外で待機していたホン内官に命じました。
「私の許可なく宮殿を出入りする者は理由を問わず打ち首とする。」
「はい。尚膳様。」
町には兵があふれていました。
「殿下が親征をなさるということは自ら兵を動かすのですね。君主の威厳を示したいのでしょう。」
粋嬪ハン氏は従兄のハン・チヒョンに言いました。
「媽媽。殿下は昨夜もお倒れになったそうです。大殿内官や女官に口止めなさったそうです。殿下はもう長くないと。」
ハン・チヒョンは粋嬪ハン氏に報告しました。
「そうなのですか。天は味方してくれそうにないわ。」
ホン・ユンソンとホン・ダルソンは宮殿の庭で会いました。
ホン・ダルソンは世祖に思政殿に来るように呼ばれてなぜ呼ばれたのか心当たりがなく怯えていました。
ホン・ダルソンは世祖の部屋に行きました。
部屋には金の杯と短刀が机の上に置かれていました。
「よくきたな。もっと近くへ。」
「殿下。」
「政丞をしていない唯一の功臣だな。」
「え。」
「ホン・ユンソンですら右議政になったというのに。」
「私は・・・。」
「寂しく思わんでくれ。」
「そなたは病気がちであったので機会を見ていただけだ。」
「ありがたき幸せでございます殿下。」
ホン・ダルソンは地面にひれ伏して世祖に拝礼しました。
「そなたは世子と私のために死ぬ覚悟ができているか。」
「!?」
「何があろうと私と世子に忠誠を尽くすか。」
「殿下。私は・・・。」
「もうよい。でば誓いを立てよ。」
ホン・ダルソンは机の上の儀式の刀と杯を見ました。
「肝に銘じろ。ここで立てた誓いを破ったらそなたの首をはねてやる。わかったか。」
「はい殿下。」
ホン・ダルソンは刀で指を切り杯に血を注ぎました。
「うっ・・・。」
チョン内官は血の入った杯を海陽大君の前に運びました。
「世子殿下。」
「しかと見よ。ホン・ダルソンの血だ。血で忠誠を誓ったのだからそなたに命を捧げるはずだ。」
世子は杯の血を嫌々飲みました。
「誓いを守るのだ。世子の体にはそなたの血が流れていることを忘れるな。」
ホン・ダルソンは思政殿を出ました。
「そなたも呼ばれたか。」
ホン・ダルソンはハン・チヒョンに言いました。
「何事ですか。」
「行ってみればわかる。」
「殿下が血で忠誠を誓わせてる?」
粋嬪ハン氏は尚宮から報告を受けました。
「どうやら粋嬪様の夢は叶いそうにありません。」
桂陽君夫人は粋嬪に言いました。
「殿下は私に借りがあるのに譲位ですって?反してくださらないと?」
粋嬪ハン氏は世祖に腹を立てました。
ホン・ユンソンは「なんと屈辱的な」と領議政たちに言いました。
「できないだと?」
世祖はホン・ユンソンに言いました。
「そうでございます殿下。すでに何度も忠誠を誓いました。これ以上何を誓えとおっしゃるのですか。」
「できぬのなら仕方ない。」
「殿下、上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)と高霊君(コリョングン、シン・スクチュ)をお助けください。そうしていただけるなら百回でも忠誠を誓います。」
「貴様の忠誠心など不要だ!出ていけ!」
「殿下。イ・シエの仕掛けた罠です。」
「次は王族を呼べ。王族にも忠誠を誓わせる。」
「わかりました誓いましょう。お望みなら指ではなく首を切ってでも私の血を捧げます。」
世祖は功臣や重臣だけでなく王族まで呼び出し内密に忠誠を誓わせました。そしてイ・シエを討つ戦いに出るべく出征式を行いました。
「千歳、千歳、千千歳。」
世祖は軍を集め陣頭指揮を執りました。兵を集め指揮する者は全員功臣とは無関係な新しい者でした。ハン・ミョンフェの配下はひとりもいませんでした。
亀城君は世祖が挙兵する時を待っていました。亀城君イ・ジュンは長期戦に持ち込んでいました。イ・シエの乱を利用して軍の掌握を確実なものにしておきたいという世祖の緻密な計算による作戦でした。
イ・シエの軍は鴨緑江(アムノッカン)の近くまで後退していました。
領議政のシム・フェは世祖におめでとうございますと言いました。世祖はハン・ミョンフェとシン・スクチュを放免し世子に親政を任せると言いました。都承旨のユン・ピルサンは議政府の決定を経ていないので世子に政治を任せることを反対しました。世祖は領議政のシム・フェにも意見を聴きましたがシム・フェは「私は・・・まことにご英断でございます」といいました。
領議政と都承旨は思政殿を出ました。
「都承旨殿。ハン・ミョンフェとシン・スクチュに恨みでもあるのか?」
シム・フェはユン・ピルサンに言いました。
「お二人に恨みなどございません。仮に二人が無実だったとしてもよく調べもせずに放免するのは納得いかないからです。」
「融通の利かぬやつだ。」
ハン・ミョンフェとシン・スクチュは解放されました。
「何をしている。ここを出ようではないか。来るのだ。殿下の気が変わる前に出たほうがよい。」
ハン・ミョンフェはシン・スクチュを手招きしました。
チョン内官はハン・ミョンフェを迎えに行き「おつらかったでしょう」と苦労を労いました。
「殿下のご命令でお二人をお迎えに上がったのでございます。これからお二人は朝服をお召しになり康寧殿においでください。」
「殿下。心から感謝いたします殿下。」
シン・スクチュは世祖のいる方角を向いて地面にひれ伏し拝礼して泣きました。
世祖は康寧殿の外に出て二人を迎えました。
「スクチュよ。」
世祖は階段を降りてシン・スクチュを迎えました。
「殿下。」
「スクチュよ。私を許してくれ。私は悪言を真に受けてしまった。詫びの言葉もない。」
「私が至らぬばかりに殿下の面目をつぶしてしまいました。」
「そう言ってもらえて私もうれしい。」
「上党君も元気そうだ。」
「以前と比べて腰もずいぶん曲がりました。」
「嫌味な言い方も相変わらずのようだな。はっはっはっは。はっはっはっは。」
「二人に酒をお注ぎせよ。」
世祖は海陽大君にハン・ミョンフェとシン・スクチュの酒を注がせました。
王妃は理解できないことだとキム・スオンに言いました。キム・スオンは昭訓を嬪宮に昇格させるべきだと助言をしました。
世祖はハン・ミョンフェとシン・スクチュに謝り酒とごちそうをふるまいました。
「ハン昭訓が世子妃になることを断固阻止するのです。私の居場所がなくなってしまうわ。」
粋嬪ハン氏はハン・チヒョンに命じました。
ハン・チヒョンは「ご安心ください。世祖は何度も拒んでおられます」と言いました。
「私はなんと恐ろしい女なの。一瞬ですが人を殺めようと思いました。」
「媽媽。お祓いをしてみては?」
「それは死んでも嫌です。」
世祖はイ・シエの乱を鎮圧したら世子に譲位すると言うとハン・ミョンフェは顔色を変えました。
「父上の決断は正しかった。よく考えてみると王が変わるたびに血なまぐさい争いが起きる。私は甥から王座を譲り受けた不幸な人間だ。このような例外は私の代で終えなければ。王座をめぐる争いが二度と起きてはならぬのだ。」
ハン・ミョンフェとシン・スクチュは返されました。
「ハン・ミョンフェの顔を見たか?」
世祖はユ・ジャグァンに言いました。
「はい殿下。隣の部屋から見ておりました。」
「彼の顔には何と書いてあった。私をあざ笑っていたか。」
「そのように思います殿下。」
「そうであろう。捕らえ十日も経たずに放免したのだからな。」
「しかし殿下がご存命中に世子殿下に譲位なさればハンも下手な真似はできぬかと。」
「そなたは分かっておらん。私はハン・ミョンフェがどんな男か知り尽くしている。」
ハン・ミョンフェが自宅に帰るとヒャンイと正妻が出迎えました。
ハン・ミョンフェは石の上に女性の靴が置かれているのを見つけました。
「粋嬪様がいらっしゃるのか。」
「はい大監。」
「せっかちなお方だ。」
「上党君大監。私は大妃になる夢をまだあきらめていません。私を大妃にできる方は上党君だけです。」
感想
世祖(首陽大君)がぎゃーぎゃーわめく演技は何とかならないのでしょうか(苦笑)もう子供みたいな親父で気持ち悪い。演技が酷い。チョン内官もまるでお笑いのようにコンビを組んでるみたいに反応がバカみたいですwでもこうした駄々をこねる子供がそのまま大きくなったかのような演技ができないと韓国では時代劇の主人公にはなれないのですね。男性はぎゃーぎゃーわめいて女性は涙を流して悪だくみをするへんなドラマですw