朱蒙(チュモン)55話
あらすじ
朱蒙(チュモン)たちはプドゥクプルの策略と金蛙(クムワ)王の命令で扶余の宮殿の牢獄に捕らわれました。
ヨンポ王子はチュモンに会おうとしましたがプドゥクプルはチュモンを扶余の敵だから会ってはならないと言いました。
「最初から大将を殺す陰謀だったのだ。王様もフクチ大将軍も誰も信じられない。」
オイはチュモンに言いました。
「まずはここから逃げ出す方法を考えましょう。」
チェサは言いました。
ムッコは懐から毒針を取り出しました。
チュモンはしばらく様子を見よう、脱獄はその後だと皆に言いました。
ヨンタバルとソソノたちは桂婁のヨンチェヨンの前に連行されました。ヨンチェヨンはソソノの頬を叩きました。
「何をするのだ!」
ヨンタバルは妹に言いました。ヨンチェヨンはヘンイン国に行かなかったので見逃すことはできないとヤンタク行首にヨンタバルを監禁するように命じました。
「下がれ無礼者!はっはっはっは。権力に目がくらみ道理を踏みにじったお前を許してきた。だがこの瞬間からお前ときょうだいであることは忘れる。肝に銘じろ。権力とは砂のようなものだ。握りしめれば握りしめるほど砂が落ちる。私にはお前の手から砂がさらさらと落ちていくことが目に見える。お前の中から砂がなくなったときお前がどうするか見届けてやる。はっはっはっは。ふっはっはっはっは。」
ヨンタバルは連行されました。
金蛙(クムワ)王は部屋で酒を飲んで朱蒙(チュモン)の言葉を思い出していました。
「タムル軍はかつてともに戦った同士のはず。見捨てないでください。私は漢を倒そうとしているのです。それがなぜ反逆なのですか。解慕漱(ヘモス)将軍が聞いたらさぞ嘆き悲しむでしょう。」
柳花(ユファ)姫とイエソヤがクムワ王への目通りを願いましたがクムワ王は誰にも会いたくないと言いました。王妃は勝ち誇ったように「どうだ。あんなに信じられた王様に裏切られた気持ちは。お前はまだ分かっていないようだな。王様がチュモンを守ってくれると信じているのか。そんなことはありえない。王様はテソがヘモス将軍を殺し漢に売り渡してもテソを罰することはできなかった。王様は肉親への愛着が強い。王様はチュモンではなくテソを必ず選ぶはず。見ているたいい。」と言いました。
扶余の城下町でムソンはモパルモにチュモンが打ち首になると言いました。モパルモは俺も死んだも同然だと嘆きました。
漢チンジュンムン大人はヨンポにチュモンを漢に連れて行かねば自分の立場が苦しくなるとヨンポ王子に言いました。チン・ジュンムンはチュモンの身柄を得られなければヨンポ王子を助けることはできないと言いました。ヨンポの側近はこれは王子様が立ち上がるときで好機だと言いました。
ムソンは飯を持ってチュモンのいる牢獄に入りました。
「大将。しっしっし静かに。」
「ムソン。どうやって入ったんだ。」
「お伝えしたいことがあります。ヨミウル様が行方知れずで。実は何者かが砦に忍び込みさらっていってしまったんです。」
ムソンは言いました。
「間違いなく、扶余の仕業だと思います。」
チェサは言いました。
チュモンはムソンにモパルモを連れて本渓山の砦に行き警戒を強めて流民を守ってほしい、必ず本渓山に戻ると言いました。
金蛙(クムワ)王はヨンポ王子を呼び出しチュモンを漢に引き渡すことを家臣と話し合っているのかと訊きました。
「この愚か者めが!チン大人。なぜ扶余にとどまっているのか。早く帰れ。」
金蛙(クムワ)王はヨンポ王子に怒鳴りました。
「扶余は漢の属国ではないぞ。なぜ貢物などしなければならないのだ。チュモンのことも扶余の問題だ。生かすも殺すも私が決める。今すぐ扶余を出ていけ。でなければその首を跳ねる。」
クムワ王はチン大人に剣を突き付けました。
「父上。チン大人は長安随一の勢力者にこのような無礼を働いては・・・。」
「黙れ!お前は長安で悪いことばかりを覚えてきたようだな。お前の祖国は漢か扶余か?」
「父上・・・私が悪うございました。お許しください。」
ヨンポ王子はクムワ王に怒られました。
「お前は馬糞を片付けながら頭にこびりついた漢の残りカスを一層してこい。」
「お前のせいで私は馬糞を片付けるはめになった。糞ー!」
ヨンポは側近を殴りました。
チュモンは六人を連れてきたせいでヨミウルが連れ去られたことを後悔していました。摩離(マリ)はチュモンに謝りました。チュモンは今夜牢獄から脱出すると皆に言いました。
夜。ヨミウルは神殿のマウリョンのところに連れてこられ軟禁されました。
「どうなっているのです。扶余にはなぜいらしたのですか。」
「私の意思ではなく連れてこられたのです。チュモン大将はどうなった。」
「今投獄されておいでです。」
ヨミウルとマウリョンは言葉を交わしました。
プドゥクプルはクムワ王にヨミウル巫女を捕らえたと言いました。
「チュモン王子が王様のご命令に逆らうのはヨミウル巫女がいるからです。タムル軍とともに新たな国を建てようとするのもヨミウル巫女が焚き付けたからです。」
クムワ王とプドゥクプルは神殿に行きヨミウルに会いました。
「お久しぶりです。なんという腐れ縁でしょう。」
ヨミウルはクムワ王に言いました。クムワ王は従えばチュモンにすべてを譲り皇太子に指名するとヨミウルに言いました。
「王様。これ以上ご自分を欺くのはおやめください。王様は目を閉じるまで権力への執着を捨てるお方ではありません。今は本心から譲るといってもご自分の権力を脅かす存在になれば平気で突き放すお方です。親友ヘモス将軍の死に際してもご自分の権力の安泰を優先なさった。その王様がヘモス将軍の子に権力を譲るなどどうして信じられましょう。チュモン大将はタムル軍とともに新しい国を建てるでしょう。それが将軍の意思であり天がチュモン大将に与えた運命なのです。」
「誰かいるか。チュモン王子をここへお連れしろ。」
プドゥクプルは兵士に命じました。
「もう一度言う。タムル軍の解散をチュモンに説得するのだ。さもなくばチュモンもヨミウルお前の命もないぞ。」
クムワ王はヨミウルを脅迫しました。
夜。チュモンは神殿に連れてこられました。
「なぜこのような卑劣な真似をした。」
チュモンはプドゥクプルに言いました。プドゥクプルはチュモンを唆したのはヨミウルのせいだと言いました。
「大将。決して意思を曲げてはなりません。大将もご覧になったでしょう。扶余の太陽が消えたのを。天は大将とタムル軍を見捨てはしません。脅迫にも懐柔にも屈してはなりません。きゃあっ!」
ヨミウルはプドゥクプルに切られました。プドゥクプルはチュモンに剣を向けました。
「大使者!(テサジャ)」
クムワ王は叫びました。
「王様。扶余の太陽を否定する者を生かしておくことはできません!」
「剣を捨てるのだ!」
「王様。」
「命令だ。ただちに剣を捨てよ。」
プドゥクプルは宮殿を出ていきました。
「ヨミウル様!」
チュモンはヨミウルを抱き起しました。
「これで・・・ヘモス将軍にお会いしお詫びすることができます。よかった。私の魂はいつもお傍に・・・三足烏をお守りいたします。王様・・・。」
「ヨミウル・・・。」
クムワ王はつぶやきました。
「扶余を去っても・・・結局私はずっと・・・王様への愛と・・・憎しみを・・・捨てられなかった・・・ふっ・・・・はぁっ。」
ヨミウルは息絶えました。
「ヨミウル様!ヨミウル様!・・・ヨミウル様・・・・・・。」
チュモンは泣きました。
クムワ王は部屋に戻りヨミウルの最後の言葉を思い出していました。プドゥクプルら重臣が部屋に入ってきてチュモンへの未練を捨ててくださいと言いました。
牢獄に戻ったチュモンは目に涙をためて「マリよ。今から・・・脱出するぞ。」と言いました。
プドゥクプルはフクチ大将軍を呼びチュモンを王様に気づかれないように消すよう命じました。
ヒョッポは「うわーーっ」と大声を出して苦しむ演技をして兵士の気を引くとムッコが毒矢を吹きました。チュモンたちは牢獄から脱出するとフクチ大将軍と兵士に囲まれました。
「王子様。私は扶余の家臣であります。お許しください。」
フクチ大将軍はチュモンに頭を下げました。
「かかれっ!」
フクチ大将軍は剣を抜いてチュモンに襲い掛かりました。
「そこまでだ!」
金蛙(クムワ)王が現れました。
「大将軍。下がっておれ。」
「王様!」
「チュモンを殺すというなら私を先に殺せ。」
「下がれ。」
フクチ大将軍は兵士を下がらせました。
「行くがいい。これで私とお前の縁は終わりだ。」
「王様。」
「柳花(ユファ)とソヤのことは私に任せてくれ。時がくればお前に送り届けよう。さあ。早く行け。」
金蛙(クムワ)王はチュモンに背を向けました。
チュモンはクムワ王に拝礼しました。
「行くぞ。」
チュモンとマリとヒョッポとオイとチェサ、ムゴル、ムッコは宮殿を出ました。
クムワ王は涙を流していました。
プドゥクプルはチュモンの脱獄を知りクムワ王の部屋に行きました。
「王様でございますね。王様でしょう。チュモンを牢獄から逃がしてやったのは。」
「ああそうだ。」
「私とのお約束をお忘れになったのですか。」
「私はチュモンを捨てるとは言ったが殺すとは言ってなかったぞ。お前との約束は果たした。これ以上チュモンの話はするな。わかったな。」
「後悔なさいますぞ。今日チュモンを殺しておけばよかったという日が必ず来るでしょう。」
プドゥクプルはクムワ王を脅迫しました。
「ふっふっふ。」
クムワ王は苦笑しました。
チュモンたちはタムル軍の砦本渓山に戻りました。
「ヨミウル様のために祭儀を行う。タムル軍と流民を集めよ。」
巫女たちが現れました。
「ヨミウル様はどこにおいでです?ヨミウル様・・・。」
ピョリハとチョルランたちは泣きました。
「魂になり、タムル軍とともにあるとおっしゃりました。」
チュモンは巫女たちに言いました。
クムワ王はテソとヤンソルランを呼び扶余を発ちトンムンに行く準備をするように命じました。
「お前にトンムン国境守備隊を命じる。国境に行き権力と富への執着を捨ててこい。そうすれば私はお前にすべてを与えてやろう。」
チュモンはピョリハを横に侍らせマリとヒョッポとオイとチェサ、ムゴル、ムッコを呼び部族を統合して新しい国を建ててヨミウル様の遺志に報いようと言いました。
チュモンとタムル軍は戦い支配地を大きくしていきました。そしてまた月日が流れました。
「タムル軍!ばんざーい!」
チュモンとタムル軍は叫びました。
感想
あああ・・・・。ヨミウルさんが死んでしまいました。プドゥクプルめー。わるいやつだー。(単純w)プドゥクプルは扶余のことを考えて当然の判断をしただけなんですよね。だって扶余の横に国があったら当たり前のように戦争になる時代ですから、当時の価値観では当たり前でしょうね。ヨンタバルは実の妹に捕まってしまいましたね。これも当時の価値観では兄弟や親戚は敵だということなんですね。