「薯童謠(ソドンヨ)」(全66話)第63話 王の会談 のあらすじとネタバレ感想
第63話 王の会談 あらすじ
「密使が来た事はしばらく伏せておけ。」
「宿でお待ちしています。」
モンナス博士は新羅の役人に行って宮殿を去りました。
「あれはモンナス博士だわ。」
チョギは王宮の門でモンナス博士を見つけソンファ(善花)公主の部屋に駆け込みました。
ソンファ公主の部屋。
「公主様。間違いありません。間違いありません。」
「本当に落ち着きのない子ね。」
ボミョンはチョギをたしなめました。
「聞いてくださいよぉ。モンナス博士が新羅宮にいたんです。」
「なんですって?」
ソンファ公主はチョギに言いました。
「この目で見たんです。」
「まさか。」
ボミョンはチョギが見間違えたのではないかと思いました。
「薯童公が迎えに来ると言っていたけど・・・・・・。」
三人は王宮の門まで行きました。
「どこなの?」
「あの辺りですよぉ。」
「誰を見たって?」
「え?モンナス博士です。」
「博士はみまかられたのよ?」
ボミョンはチョギに言いました。
「絶対にモンナス博士だったのに・・・・・・。」
「ひどい子・・・。」
ソンファ公主はボミョンに言うと部屋に戻りました。
「あっ。本当にモンナス博士だったんですよぉ。」
チョギはボミョンを見ました。
「チッチッチッチッ。公主様の気持ちを逆なでするなんて。まったくあきれるわ。」
ボミョンは舌打ちしました。
「おかしいなぁ。」
新羅王の部屋。
「高句麗との国境の情勢はどうだ?」
真平王は貴族に尋ねました。
「阿利水(アリス、現在の漢江ハンガン)地域が不安定です。」
「あの辺りを取り戻す気だろうか。」
「はい。高句麗は阿利水地域に執着しており一時たりとも油断できません。」
「そうかわかった。私兵を増やし阿利水の警戒を強めろ。」
「はい。陛下。」
貴族は部屋を出ていきました。入れ替わり王の側近の将軍が王の部屋に入ってきました。
「陛下。高句麗との戦況を考え百済と同盟を結ぶのでしょうか。」
「それも理由のひとつだ。だが将来的には三国連合の礎を築くためだ。」
「明日の朝、モンナスに余の親書を渡せ。貴族とチョンミョンは反発するだろう。しばらくは秘密にしろ。わかったな。」
新羅の宿屋。
モンナス博士が椅子に腰かけて荷物を枕にして机に伏していると真平王の側近の将軍が部屋に入ってきました。
「陛下からの親書です。」
「わかりました。」
モンナス博士は将軍から密書を受け取りました。将軍と入れ替わり、ポムノがモンナス博士の部屋に入ってきました。
「どこへ行っていたのだ。」
モンナス博士はポムノに訊きました。
「チョギが見つからないんです。貴族だから徐羅伐にいるはずです。」
「・・・・・・もう百済に帰らなくては。」
「博士ぇ。チョギとチン大人に会っていきましょうよ。」
「ほほう。陛下がお待ちだぞ。」
「陛下もチン大人の近況を知りたいはずです。」
「ならば急げ。今日中に天の峠学舎へ行く。」
「え?天の峠学舎へ?」
「せっかくだからそこで一泊していこう。」
「本当に?どんな様子か私も見たいです。」
ポムノは嬉しそうに笑いました。
モンナス博士とポムノはすぐに天の峠学舎へ出発し宿屋を後にしました。
夕刻。新羅の天の峠学舎。
サテッキルは剣を鋳造していました。
「静かに?静かに暮らす?何をしながら暮らすと言うんだ。」
サテッキルは鉄を打ちながら思いました。
「どんな希望を抱いて暮らせばいい?何を目標にすればいいんだ?」
「もう何日もあの調子です。」
サテッキル(キム・ドハム)の側近クサンはキム・サフムに言いました。
「仕方ない。耐えなくては。虚しさ。敗北感。自責の念。今はすべて耐えるしかないのだ。」
サテッキルの父はクサンに言いました。
「私は不安です。」
「いいや。耐え抜くはずだ。」
夜になりました。まだサテッキルは鉄を叩いていました。
すると竹の仕掛けが鳴りサテッキルは顔を上げました。
「博士。まだ竹の鐘が残っています。」
学舎の裏山でポムノは仕掛けをゆすって喜んでいました。
「そうだな。新羅兵が来たはずだが外さなかったようだ。」
「久しぶりに来たので嬉しいです。」
「そうだな。私もだ。」
ポムノは天の峠学舎を見回りました。
「昔のままです。」
「そうだな。」
「向こうに炊事の跡があります。」
「農民が来たのだろう。」
「食べ物を探してきます。」
「私は寝床を用意しよう。」
二人は別々に行動しました。
「なぜですか。モンナス博士が生きています。」
博士とポムノを隠れて見張っていたクサンはキム・サフムに言いました。
「我々を捕らえに来たのではなさそうだ。」
サテッキルたちは洞窟に隠れました。
「明日には発つと言っていた。今日はここで寝よう。念のためにクサンは奴らを見張れ。」
キム・サフムはクサンに命じました。
「ドハム。もう我々とは関係のない者たちだ。モンナス博士が生きていようと関係ない。だからもう何も考えるな。何も考えず早く寝るんだ。寝よう。さあさあ。」
キム・サフムは横になりました。
しばらくすると、キム・サフムが目を覚ますとサテッキルはいませんでした。
サテッキルはモンナス博士とポムノの話を盗み聞きしていました。
「ええ?陛下とチン大人の結婚に新羅の王様の許可がいるのですか?」
ポムノはモンナス博士に言いました。
「(何だと。チャンとソンファ公主が?)」
サテッキルの心の中に燻っていた嫉妬と憎しみに火が点きました。
百済のヘモヨン王后の部屋。
「手を打たねばなりません。民に発表された後では取返しがつきません。」
チルリョはヘモヨンと策略を巡らせていました。
「ウヨン公主とサドゥガン様でございます。」
侍女は客の来訪を告げました。
ウヨン公主はヘモヨンの隣に座り、サドゥガンはヘドジュの隣に立ちました。
「待っていたぞ。政事巌会議での結論はどうなった?」
ヘドジュはサドゥガンに尋ねました。
「結論が出ないまま散会しました。」
ウヨン公主がヘドジュに言いました。
「相手の名分を打ち砕きましょう。」
サドゥガンはヘドジュに言いました。
「名分だと?」
「陛下は戦時中ではないとおっしゃるのなら・・・・・・。」
「まさか戦争でも起こすのか?」
「それは無理ですが、緊迫感だけを作り出せばいいのです。」
「どうやるのだ?」
「自作自演をするか、新羅と手を組むかです。」
「可能なのか?」
「やってみるしかありません。ご同意していただいたものとみなしやってみます。」
黙していたウヨン公主とヘモヨンにサドゥガンは言いました。
サドゥガンはアビジ商団のところに行きました。
「アビジ商団は撤収したようです。衛士佐平と親しかったので姿を隠したのでしょう。」
部下はサドゥガンに報告しました。
「そうか。彼は新羅に人脈があったのに。」
「上佐平様。これを預かりました。」
下僕はサドゥガンに手紙を渡しました。
サドゥガンは手紙を読むと驚きました。
どこかの宿屋。
「衛士佐平。」
サドゥガンはサテッキルを見て驚きました。
「中佐平様。」
サテッキルはサドゥガンに頭を下げました。
「座りなさい。」
「いや。今は上佐平様でしたね。お元気でしたか。」
「ばれたら大変だぞ。私も信用できないはず。」
「その手紙を読めば危害を加えないはずです。」
「ああ。我々の力になれると書いてあったな。君の力が必要になると。何をしてくれるのだ?」
「今、新羅との戦闘が必要ではありませんか?」
「なぜわかるのだ。」
「新羅にも百済との戦争を望む者がおります。私がお望みを叶えましょう。」
「本当にできるのか?」
「新羅に人脈のあるアビジも協力してくれます。物資の支援があればご希望の日に決行します。」
「支援はするが、協力してくれても君を復権させるのは難しいぞ。望みはなんだ。」
「望みなどありません。陛下のもとで影のように暮らしたいだけです。」
百済の武王の部屋。
「お帰りなさい。」
チャンは部屋に入ってきたモンナス博士に言いました。モンナス博士は腰を曲げてチャンに挨拶をしました。
「はい陛下。」
「どうなりましたか。」
モンナス博士は真平王の手紙をチャンに渡しました。
「半月後、全義城(チョニソン)の近くです。」
手紙を読んだチャンはモンナス博士に言いました。
「半月後ですか。」
「国境の視察と狩りを装って行きます。同盟が成立すれば、貴族は戦争の可能性を理由に私兵を増やすことはできません。」
「はい陛下。陛下の長年の恋も実ります。」
数日後、新羅のソンファ公主の部屋。
「ええ陛下?五日後に百済の王に会われるのですか?」
床からソンファ公主は起き上がり真平王に聞き返しました。
「そうだ。だからもうちゃんと食事をとりなさい。」
「陛下。ならば、五日後に行く狩りというのが・・・・・・。」
「ああ。だが今は秘密にしておくのだぞ。」
「はい陛下。はい陛下。はい陛下。」
ソンファ公主は気力を取り戻し喜びました。
新羅の宿。
「なんだと同盟?本当に百済の密使が来ていたのか?」
チョンミョン公主はサテッキルに言いました。
「はい。百済と新羅が婚姻同盟の話を進めています。チョンミョン公主様の王座が脅かされることになると思います。違いますか?百済の貴族は公主様と利害が一致します。」
「善花への復讐か?それとも陛下への復讐か?」
「今更理由など何でもいい。人生を漂流しながら利害の会う者同士を結ぶ。それが私の使命です。」
狩りの日。チャンと真平王は出会いました。
チャンは真平王に頭を下げました。
真平王もチャンに頭を下げました。
「百済の王です。」
「新羅の王だ。おかけください。」
二人は椅子に腰かけました。
「同盟は別として、一度会いたかった。善花に身分を捨てさせた人ですから。」
「私の印象はどうですか、義父上。」
「・・・うっふっ・・・・・ふっはははははははは。百済の貴族には賛成し難い結婚だろうに。」
「それは新羅も同じですs。重要なのは両国王の意思です。私の理由は明白です。」
「私の理由も明白だ。」
「ですが新羅は過去に百済との同盟を破ったことがあります。そのことは我々百済の民に謝罪してほしい。」
「・・・・・・。」
真平王は茶を飲みました。すると両陣営に兵士からの報告がそれぞれ将軍の耳に入りました。ワング将軍と新羅の将軍は驚いてチャンと真平王のところに行きました。
「陛下。お話が・・・・・・。」
チャンと真平王は席を立ちました。
チャンの陣営。
「陛下。新羅との国境で戦が起きました。」
チャンと真平王は顔を見合わせました。
「新羅軍が国境を越えたのか?詳しく説明しろ。」
チャンは兵士に言いました。
「明け方、突如国境の哨舎が新羅軍の攻撃を受け、今はにらみ合いが続いています。」
「陛下。表では友好的な振りをして、実は裏で陰謀があるのでは?」
ワング将軍は真平王を疑いました。
「それならば確かにここで挑発するはずだ。」
「そうです。確かに腑に落ちません。」
モンナス博士はチャンに言いました。モンナス博士は群青色の絹に銀の刺繍の入った豪華な服を着ていました。
「いずれにせよ、話は進められません。会談を中止して戻りましょう。」
ワング将軍はチャンに言いました。
「博士はいくつか確認をお願いします。」
真平王の陣営。
「百済軍が先に挑発したのだな?」
「はい陛下。明け方、百済軍が国境を越えて来たそうです。」
「状況はどうだ?」
将軍が兵士に訊きました。
「今はにらみ合いが続いています。」
「陰謀でしょうか?」
将軍は真平王に尋ねました。
「同盟を結ぼうという時に戦争を起こすとは思えん。挑発もなかった。まずは宮殿に戻る。お前はいくつか確認しろ。」
両国の会談の幕舎。
モンナス博士は新羅の将軍に言いました。
「確認したいことがあります。」
「我々もです。」
「新羅が先に我々を挑発したとか。」
「我々には百済軍との報告がありました。」
「では、新羅王の指示ではないのですね?」
「はい。百済はどうですか?」
「こちらも同じです。」
「我々は新羅と戦争するつもりはありません。」
「我々も同じです。」
「ならば両国王の意思とは無関係ですね。お互い詳しく調べましょう。」
新羅王宮。
「戦闘?」
チョンミョン公主は貴族に言いました。
「百済が先に攻撃したということです。」
貴族は王女に答えました。
「お前は百済の王子はお前の恋人でしょう?どういうことだ?これがお前と百済の王子の恋の結末なのか?なのに陛下は同盟を結ぼうだなんて。危ないとこだったわ。」
チョンミョン公主はソンファ公主に言いました。
百済の王后の部屋。
「サドゥガンがうまくやりましたね。」
ヘモヨンはヘドジュに言いました。
「ええ。この雰囲気を維持すれば関山城(クァンサンソン)以前の体制には戻せないでしょう。」
「二度とそんな発想ができないようにしなくては。貴族の財産を民に分け与えてやるだなんてとんでもないわ。お前が結婚したら陛下の考えを正してあげなさい。」
ヘモヨンはウヨン公主に言いました。
ウヨン公主はチャンの言葉を思い出していました。
「聞いているの?返事をしなさい。」
「ええ。そういたします。必ず。」
「ですが我々の仕業だと陛下に知れたら大変です。新羅に口止めを。」
ヘドジュはヘモヨンに言いました。
「ええ。信頼できる者が仲介します。」
百済の便殿。
「関山城の戦い以前の体制に戻せないだと?」
チャンは上疏の木簡を読みました。
「はい陛下。陛下は貴族の私兵を減らせと我々に命令なさいました。ですが今回のことでわかるように百済と新羅は休戦しているだけでございます。常に緊張状態にある高句麗も危険です。あんな警戒のゆるい時代に戻すことはできません。」
サドゥガンはチャンに言いました。
「そうです陛下。陛下の命令に逆らうわけではなく、民の命と財産を守るためでございます。どうかご理解ください。」
ペクチャンヒョンもチャンに言いました。
「その通りです陛下。私兵はすべて陛下に捧げますので強固な戦時体制を整え奪われた阿利水地域を取り戻してください。」
「そうです陛下。しっかりとした戦時体制を築くのです。」
「陛下。」
王宮の廊下。ウヨン公主はチャンを待ち構えていました。
「陛下。新羅の挑発でご心労が大きいかと存じます。貴族と共に倒すのです。」
チャンはウヨン公主を無視して行きました。
「(陛下、最後には必ず私のもとへ来ます。)」
「詳しい状況はどうだ?」
チャンはヨン・ギョンフ衛士佐平に尋ねました。
「今トゥイルに調べさせています。」
チャンは部屋に帰りました。
「陛下。モンナス博士がお見えです。」
ワング将軍は部屋の外からチャンに声を掛けました。モンナス博士はチャンの部屋に入りました。
「新羅は高句麗を警戒しており我々を攻撃する余力はない。兵もほとんどが高句麗国境にいる。それらを考慮し関山城以前の体制に戻そうと言ったのです。同盟を結ぶのも万一の戦争を避けるためです。結婚のためだけではない。」
「わかります陛下。」
「なのになぜこんなことに?」
「私が思うに貴族たちが・・・・・・。」
「まさか、そんなことにまで・・・・・。」
「陛下。衛士佐平とトウィルが参りました。」
「入れ。」
ヨン・ギョンフ衛士佐平とトウィルが部屋に入りました。
「わかったか?」
「百済の貴族の仕業です。私兵たちの言い分どおり、先制攻撃したのは新羅でした。」
「それで?」
「ですが、念のために周辺の民に聞き込みをしたら、夜中に百済兵が新羅の幕舎の攻撃をしたという話です。」
「それは本当か?」
「目撃者がいるんです。戦争なのかと思ったら、すぐに退却したので変だと思ったそうです。」
トウィルはチャンに報告しました。
「貴族の策略では?すぐに私が調べて・・・・・・。」
ヨン・ギョンフ衛士佐平は言いました。
「幕舎を襲った私兵は姿を消したはずだ。新羅に攻撃されたことになるはずだ。」
ワング将軍は言いました。
「陛下。」
「博士、もう一度新羅へ行ってください。」
新羅宮。
チャンはモンナス博士に手紙を渡しました。
「このままでは貴族の思うつぼです。急いで進めましょう。今回は密使ではなく正式な使臣です。貴族には後で説明します。」
「はい。急いで出発します。」
「そうしてください。それと個人的な相談が。」
新羅宮。
「だめだと言っているのにどうして意地を張るの?」
ソンファ公主の母は娘に言いました。
「私を、私を追放してください。」
「陛下は婚姻同盟を結ぼうと苦労しておられるのよ。」
「婚姻同盟が問題なのです。私は公主の地位も何も望みません。」
「すべてを捨てて他国の王と結婚するというの?それを本音だと信じる者はいないわ。」
「私は本当になにもいりません。どうして誰も信じてくれないのです?」
「お前の姉たちも貴族も信じるはずがないわ。陛下も許可しません。」
「お母さん。」
「体を壊しますよ。何か食べなさい。何をしているの。早く公主を連れて行きなさい。」
「公主様。お立ちください。」
ボミョンとチョギはソンファ公主を支えて部屋に帰りました。
ソンファ公主の部屋。
「公主様!公主様!」
チョギは慌ててソンファ公主に部屋に入りました。
「公主様の行き先をしらない?」
ボミョンはチョギに訊きました。
「公主様がいないんですか?百済の使臣が来ると聞いて公主様に知らせようと来たのに。」
「ええ?百済の使臣?」
「そうなんです。徐羅伐まで来ています。」
チョギは喜びを表しました。
「本当に?」
「ええ。だけど公主様はあのお体でどこに行かれたんですか?」
「はっ!チョンミョン公主の屋敷ではないかしら。」
「あっ。では行ってきます!」
チョンミョン公主の部屋。
「信じてください。薯童公を選んだ時点で公主の座は捨てました。私はただ薯童公と結ばれたいだけなのです。純粋な気持ちなのです。」
ソンファ公主はチョンミョン公主に跪いて許しを請いました。
「王室に純粋などない。お前はともかくお父様は考えが違う。お前がすべてを捨ててもお父様は放ってはおかない。王妃にもなればお前にも野心が芽生える。」
「いいえ、決して。」
「お父様もお前も百済も信用できない。それがお前の運命なの。帰りなさい。私は宮殿へ行く。」
チョンミョン公主は冷たく言いました。
ソンファ公主は力なく徐羅伐の町を歩いていました。ソンファ公主はチャンとの出会いを思い出していました。
新羅王の部屋。
「陛下、百済の使臣が到着します。ところで陛下、道のいたるところで・・・・・・。」
「どうしたのだ。」
ソンファ公主はソドンが張ろうとした薯童謠を読んでチャンと遊んだことを思い出し涙を流しました。
「公主様。」
「チョギや。幻聴まで・・・。」
「え?」
「夜にソドンと情をかわすそうな♪」
子供たちが薯童謠をうたっていました。
「公主様を迎えに来たようです。百済から使臣団が来たようです。」
ソンファ公主は慌てて王宮に帰りました。
新羅宮。
「陛下。私は百済王が送った使臣、モンナスでございます。」
「公主様。百済の使臣はモンナス博士です。」
ボミョンは走ってきたソンファ公主に言いました。
「生きていたのね?やっぱり生きていたのね?」
ソンファ公主は宮殿に走りました。
「ほら。やっぱり!」
チョギは喜びました。
「百済王は国境で起きた衝突に遺憾の意を表しておられます。これは一部の私兵による偶発的な衝突であるので補償はかならずなさいます。これを機に百済と新羅の間に連絡機関を常設し、衝突を戦争関係に発展せぬよう協力関係を持とうということです。」
モンナス博士はソンファ公主を見て微笑みました。
「また、百済王は新羅のソンファ公主との結婚を希望しておられ正式な求婚書を持ってまいりました。陛下からの求婚書です。代読します。昔、新羅に薯童謠という歌が広まりました。その歌の主人公である百済の王チャンです。私たちは国も身分も違っていたため何度も別れを強いられ試練にさらされました。しかしそれらすべての試練は私に公主様がいかに大切な人であるかを気づかせてくれました。両国の間に国境は引けても互いを想う気持ちに線は引けません。だから百済の王となった今でも二人の恋を実らせたいという想いは変わりません。王である前に一人の男として公主に求婚します。百済人である前に夫として公主を守ります。夫である前に生涯の同志として公主を尊敬します。謹んで求婚いたします。新羅王室の善花公主を私の生涯唯一の伴侶かつ百済の王妃にお迎えしたい。善花公主は私にとって最初で最後の方です。どうかご承諾ください陛下。私たちが和合の象徴になることを願います。百済王、扶余彰。」
モンナスが手紙を読みを得るとソンファ公主は涙を流して喜びました。
「なんて素敵。まるでおとぎ話みたいな結末ですね。結婚式は百済と新羅のどっちでやるの?ついでに私とポムノ公も結婚させてもらえないかな?」
「チョギ、静かにして。」
ソンファ公主の部屋。
「亡くなったと思っていました。」
ソンファ公主はモンナス博士に言いました。
「私も公主様と会えるとは思いませんでした。」
「黙っていてすみません。」
「陛下からの手紙です。」
モンナス博士はソンファ公主に手紙を渡しました。
「迎えに行く代わりに何を贈ろうか悩んでいました。昔を思い出しました。相手が公主と知り悔しがっていた男の子。身分が釣り合わないと知り悲しんでいた男の子。その悔しさと悲しさを抱き歌を作った男の子。困らせたくて、また公主様と一緒にいたくて作った歌でした。あのときの歌でした。ときめきの歌でした。私の代わりです。新羅の民に聞かせ私たちが天にも民にも認めてもらえるように祈りを込めて贈ります。会いたいです。」
ソンファ公主は涙を流し喜びました。
「聞け。すでに広がった薯童謠に民も喜んでおる。百済王は国境での衝突に関し賠償を約束し、戦争を起こさないための協力まで求めてきた。これでも同盟に反対するのか?私は返答の意を込めソンファ公主を百済への使臣として送ることにする。」
「薯童謠が広がっています。百済王とソンファ公主の結婚を民も祝福しています。」
クサンはキム・サフムとサテッキルに報告しました。
サテッキルは興奮して椅子から立ち上がりました。
「ドハム。もうやめよう。」
キム・サフムはサテッキルにしがみつきました。
「ドハム!」
サテッキルは部屋を出て悔しがりました。
百済の便殿。
「新羅との同盟を進める。」
チャンは貴族に言いました。
「どういういことですか。同盟など言語道断です。かつて新羅の真興王が同盟を破ったことを覚えておいでですか。昔だけでなく最近も新羅は国境に侵入しました。聖明王の件にいまだ謝罪がないばかりか国境侵入の謝罪もありません。なのに同盟だなんて考えられません。お考え直しください。」
「ならば、新羅の謝罪があればよいということか?」
「・・・・・・。そうです。同盟自体は問題ありません。」
サドゥガンは渋々言いました。
「そうです。陛下。軍事が安定すれば国力を民の暮らしに使えます。実際に同盟の最中はそうでした。しかしそう簡単には実現できません。」
ヨン・ギョンフ衛士佐平は言いました。
「ええ、そのとおりです。新羅に裏切られた過去があります。」
ペクチャンヒョンもチャンに言いました。
「はい陛下。人質の交換または王室同時の結婚が条件です。新羅は応じないでしょう。」
サドゥガンは言いました。
「私は、余計なことをしたようだな。」
チャンは貴族たちに言いました。
「え?」
「すでにモンナス博士を新羅に送った。だが皆の話を聞くと我々の望む返事は期待できない。」
「そのとおりです陛下。」
貴族たちは口を揃えました。
夜。ウヨン公主は楼閣にたたずむチャンの背中を見つめていました。
「陛下。あきらめてください。同盟など無理に決まっています。王座は貴族の協力なしに維持できません。だから貴族を抑圧なさらないでください。」
「抑圧?抑圧こそが私がすべきことです。私の目指す百済のために。貴族を抑圧することで民を開放し国王を自由にする。」
「意思を曲げないおつもりですか?」
「婚姻同盟を結びます。」
「ええ?チン・ガギョンでも私でもなく新羅の公主とですか。陛下も変わりましたね。王になったら恋などどうでもよくなったのですか。胸がすく思いです。もう私の恋を権力欲だと軽蔑する資格はありません。」
ウヨンはチャンのもとを去りました。
ウヨン公主の部屋。
「婚姻同盟?新羅の公主と?そんな、そんな・・・・・・。」
ウヨン公主はサドゥガンを呼びました。
「お呼びでしょうか。」
「例の協力者に新羅の状況をきいてください。」
「同盟のことで?」
「万一の事態に備えておかないと。」
「実はすでに人を送っておきました。」
感想
やっとチャンとソンファ姫の恋が実りそうですね。長かったですね。チャンとソンファ公主を一緒にするためにサテッキルもチョンミョン王女もウヨン王女も悪役にしてしまいましたね。サテッキル!サテ・ッキル・・・サテク・キル・・・サテク・・・何か思い出しませんか?ケベクを観ていた人は心当たりがあることでしょう。ではまた明日!