「王と妃」 第89話 魯山君処刑 とあらすじネタバレ感想
89話 魯山君処刑 あらすじネタバレ感想
「木は幹や枝を切ろうとも枝が残っていればまだ枝や幹を伸ばすものだ!魯山君がいるせいでソン・サンムンの後にソン・ヒョンスが続き錦城大君が何度となく謀反を企んでおるのだ。それゆえ私はそなたたちに元凶は誰かと尋ねた。左相(チャサン、左議政)は魯山君(ノサングン)でもあり錦城大君(クムソンテグン)でもあると答えた。」
世祖(首陽大君)は大きな声で重臣たちを怒鳴りつけていました。
「チ、チ、チ、殿下、私が申しましたのは・・・・・。」
左議政は何かを言おうとしました。
「錦城大君を自決させよ。ソン・ヒョンスは絞首刑に。癸酉靖難から今日まで魯山君が国難を招いてきた。ゆえにこの際私が禍根を残らず取り除くのだ。魯山君を絞首刑に処せ!」
「殿下、恐れながら魯山君を処刑するのは道理に反します。」
領議政の鄭麟趾は上奏しました。
「道理に反するだと?領相(ヨンサン、領議政)は魯山君を殺せと進言していたはず。」
「さようでございます殿下。」
「ならばなぜだ!」
「大逆罪人を罰する場合、三つの処刑法があります。一つは薬殺刑です。二つ目は首を絞めて殺す絞首刑です。最後は四肢を引き裂いて殺す八つ裂きの刑でございます。」
「それで?」
「魯山君は大逆罪を犯しましたがそれでも元来は王族ではありませんか。しかも一時は王の座にいた者です。ゆえに魯山君は薬殺し遺体を埋葬するのがふさわしい処刑法ではないかと。殿下。魯山君を賜死にし遺体を埋葬してください。」
「それはもっともな話だ。そうせよ。」
「ありがたき幸せにございます殿下。」
一同が頭を下げると世祖は部屋から出ていきました。
「ほっほ。ふっはっはっは。領相(ヨンサン、領議政)大監の発言は失言ではないかと背中に冷や汗が流れましたぞ。処刑の方法などなんでも構いません。魯山君さえ殺せばそれだけで十分でしょう。はっはっはっは。」
左議政のチョン・チャンソンは笑いました。
世祖の部屋。
「薬殺はよいが絞殺はダメだと?はっは。領相(ヨンサン、領議政)もたわけたことを言いよって。王命を書き取れ。今日中に人を送り錦城とソン・ヒョンスを処刑せよと。」
世祖は承旨のキム・ジルに命じました。
「殿下、魯山君はどうなさいますか?」
「下がっておれ。下がっていろと言ったのだ!」
チョン・チャンソンは娘婿のキム・ジルに魯山君の処刑はまだかと聞きました。
「議政府の長が魯山君の処刑に異も唱えられぬとは。魯山君に同情する臣下がいなかったことは恥ずべきことです。」
右議政のカン・メギョンはチョン・インジを責めました。
「右相(ウサン、右議政)こそ発言せずに黙っておられたではないか。」
「それが悔しいのです。」
シン・スクチュは笑いました。
「なぜ笑っているのだ?」
「とんでもない。チョン大監のお気持ちもわかります。思政殿にいた大臣は皆私と同じ心境だったはず。間違っていると思っていながら魯山君を助けてくれとは言えませんでした。せめて手厚く葬りましょう。お墓ぐらいなければ気の毒です。」
「私は長生きしすぎた。もっと早く辞任すればよかった。」
錦城大君とソン・ヒョンスの処刑が命じられるや否や禁府都事(クンブトサ)が出動した。端宗の処刑については夜になっても命が下されなかった。
夜。世祖の部屋に王妃が来ていました。
「賢明なご判断です。息子を亡くしたばかりで甥を殺せば殿下の汚点になります。錦城大君とソン・ヒョンスの処刑だけで十分でしょう。もう誰も謀反を企みません。」
「私が生きている間はそうだろう。だが私に万一のことがあれば魯山君が押し立てられる。」
「殿下は健勝なので長生きなさるでしょう。殿下、私は息子を一人亡くしました。そのうえ我が子同然の魯山君を亡くしたくありません。見逃してください。」
「世子が誰のせいで死んだと思う!ソン・ヒョンスが巫女に頼み世子に呪いをかけたらしい。魯山君も毎晩世子の似顔絵に針を刺し呪いの言葉を吐いていたそうだ。世子も私も死ねば魯山君の天下になると思ったからだ!]
「殿下、出世したい輩が嘘をついているのです。」
「これ以上何も言うな。私とてつらいのだ。だが国を安定させねばならぬ!下がりなさい。いいから下がりなさい!」
「ホン・ユンソンはまだ来ぬのか!」
ホン・ユンソンは吏曹判書のハン・ミョンフェ(韓明澮)を探して殯宮に行きました。ハン・ミョンフェは世子の位牌の前で嬪宮と一緒にいました。
「嬪宮媽媽。私はこれで失礼します。」
「・・・・・・。」
ミョンフェは部屋を出ました。
「お話しなさいましたか。」
ハン氏(のちの仁粋大妃)の従妹が訊きました。
「ほかの者には言えぬことまで語り合いました。」
ホン・ユンソンはハン・ミョンフェにぶら下がりました。
「出世できるのに何が心配なのだ。殿下はそなただけを信頼しておるではないか。」
「兄貴、殿下のお心が読めないのです。なぜか今までと違ってうまく対処できそうにないのです。」
「ちょっと来なさい。」
ハン・ミョンフェはユンソンに世祖の本心を伝えました。礼曹判書のホン・ユンソンは「なるほど」と生き返ったように元気になり世祖のところに行きました。
「殿下、私を呼びでしょうか。」
世祖はホン・ユンソンに勅書を投げました。
「私は関知しない。」
「殿下、どういうことでしょうか。」
世祖は横を向きました。
ホン・ユンソンは書の中身を見ると、ハン・ミョンフェの家に行きました。
「兄貴、なぜ帰ってしまわれたのですか。今は酒どころではありません。兄貴に言われた通りでした。殿下は私にこれを放られました。」
「読まなくてもわかる。魯山君を毒殺せよとの王命だろ?」
「これはどういう意味ですか。王命は承旨や承伝色を通して下すのがふつうなのになぜ私に直接?」
「それはそなたにしか知らせたくないからだろう。まだわからぬか。」
「誰にも知られず魯山君を殺すことなどできません。王命とは無関係に魯山君を殺せというのですか?」
「自分で考えることだな。王命通りに魯山君を殺せばそなたは褒美をもらえぬだろう。それどころか殿下に罵倒される。」
「ではどうすれば?」
「さあ、そなたも一杯飲め。」
「喉も通りませんよ。兄貴は他人事だと思って!」
「ひひひひ。喪中に隠れて飲む酒は格別だ。ははははは。」
ホン・ユンソンはミョンフェの家を去りました。
「ただ殺せと?ただ・・・。」
ホン・ユンソンは考えました。
「探せ、探すのだ。」
兵士がソン・ヒョンスの家を探すとソン・ヒョンスはすでに首を吊って死んでいました。
「死体を降ろして首を絞めろ。」
「もう死んでおりますが。」
「ソン・ヒョンスを絞首刑にせよとの王命だ。」
錦城大君は庭に連れ出されました。
「大逆罪人に自決を命じる。」
錦城大君の前に毒がおかれました。
「言い残すことはあるか?」
「言えば伝えてくれるのか。」
「伝えます。」
錦城大君は少し考えました。
「どうぞ言ってください。」
「言うのはやめよう。権力に目がくらんだ首陽兄上だ。聞く耳持たぬだろう。」
錦城大君は毒を飲みました。
「うっ・・・・・・。うううう・・・・・・。」
錦城大君は血を吐いて亡くなりました。
「毒薬は持参するにせよ状況に応じて対処しろ。魯山君はまだ子供だ。だから死体を川に放り自決したと言え。」
ホン・ユンソンは部下に命じました。
端宗はソン夫人が作った手縫いの衣を見つめて泣いていました。
「中殿が自ら織った服なのか。実によくできている。」
「はい。中殿媽媽が旦那様が冬を温かく過ごせるように綿をお入れになったそうです。」
「早く冬が来るとよいのだが。中殿が作ってくれたこの服を着て・・・漢陽の方を見ながら・・・・・・。」
「それをお召になられましたら冷たい冬の風が吹いてもきっと寒くないでしょう。」
パク尚宮は端宗に言いました。
端宗は涙を流し妻を想いました。
ソン氏は端宗を想い手縫いの綿入れを縫っていたのでした。
「私が死んだら死に装束としてこれを着せてくれ。土の中は冷たくても中殿が贈ってくれた服を着ていれば寒くはないだろう。」
端宗は綿入れに顔をうずめて泣きました。
「媽媽。」
尚宮も泣きました。
端宗の鳴き声は王命を下しに来た役人の耳にも聞こえました。
「はぁ・・・・。」
「呼びましょうか?」
「誰かおらぬか。」
「なんでしょうか。」
パク尚宮が返事をしました。
「都城から来た禁府都事だ。魯山君にお会いしたい。お取次ぎを。」
「きっとよい知らせでしょう媽媽。」
「私にはこの中殿の死に装束がある。ありがとう中殿・・・。」
「魯山君は身なりを整え王命を受けよ。魯山君は王命を受けよ。」
「王衣を持ってこい。私が王としての誇りをもって迎える。」
「媽媽・・・・・。」
パク尚宮は床に伏して泣きました。
「魯山君は何をしている。早く出てきて王命を受けよ。」
端宗は黒の王衣を来て出てきました。禁府都事はかつての王の姿を見て視線をそらしました。
「王命が下ったのか。遠路はるばるご苦労だった。言ってくれ。首陽叔父上はどのような王命を・・・。」
「殿下・・・・殿下・・・・・・。」
禁府都事は言葉も出ませんでした。
「首陽叔父上は僻地で苦労する甥が哀れになり都城に戻れと命じられたのか。」
「殿下・・・・・。」
禁府都事は泣き崩れました。
「死にゆく私が笑っているのになぜそなたが泣く。」
「殿下、私は・・・・・。」
「わかっている。夜中に来た禁府都事が吉報を知らせるわけがない。言ってくれ。首陽叔父上は私をどう殺せと。毒薬を下賜なさったか。首を絞めろとおっしゃったか。」
端宗の目から一筋の涙がこぼれました。
「殿下・・・・・・。」
「そうか。筵が敷いてあるな。毒薬を下賜なさったのか。」
端宗は筵の上に膝をつきました。
「首陽叔父上。感謝いたします。薬殺されるということは遺体を葬ってくださるつもりですね。ありがたい。ありがたい。礼を言います首陽叔父上。」
端宗は喜びの表情を見せ涙を流した後うつむきました。
パク尚宮と侍女はすすり泣きました。
「頼みがある。死ぬ前に、父王にご挨拶したいのだ。待ってくれるか。」
「はい殿下。殿下、ご挨拶なさってください殿下。」
禁府都事も泣きました。
「ありがとう。」
端宗は立ち上がり父の墓に向かって二度拝礼しました。
処刑人が赤い紐を取り出し端宗の首を絞めました。
「媽媽!媽媽!」
女官たちが叫びました。端宗は首を絞められて殺されました。
「燃藜室記述」によると、端宗に仕えていた官吏が弓の弦に縄をつなげた物を使って窓から端宗の首を絞めたという。その後、官吏は動くことができなくなり体の九つの穴から血を流しその場で即死したと書かれている。そのとき端宗は17歳だった。「朝鮮王朝実録」の記録は異なる。ソン・ヒョンスは絞首刑に処され和義君らの処罰も求められ世祖はこれを承諾した。それを聞いた魯山君が自ら首を吊って命を絶ち葬儀が行われたと記されている。まさに歴史は勝者の記録である。燃藜室記述によると、端宗は殺された後、王命により川に投げ込まれた。遺体は川面を漂った挙句、岸に戻ってきたが端宗の細くてきれいな両手の指が水面に出ていたという。端宗の魂がこの世を去れずに漂っている様を哀念の情を込めて描写したのだろう。(ナレーション)
「媽媽。媽媽。」
パク尚宮はソン夫人からもらった衣を抱いて川で端宗の姿を探しました。
「媽媽。媽媽・・・・・。」
「私と一緒に死ぬ覚悟はできているか。どうして答えんのか。」
寧越の戸長オム・ファンドは息子たちに言いました。
「魯山君のご遺体を埋葬したら巻き添えを食らいます。」
「善行をして罰せられるなら甘んじて受けるつもりだ。お前たちはどうする。」
「父上に従います。」
オム・ファンドと息子は棺を川に運び端宗の遺体を運び山に埋めました。
「燃藜室記述」によると寧越の戸長オム・ファンドが端宗の遺体を埋めたと書かれてある。「窩和雑記」にはこう記されている。棺や布がなかったため遺体にはただ筵がかけられていた。そこへ若い僧侶が来て悲しげに泣いていたがある日の夕方遺体を背負って逃げた。あるいは遺体は山で燃やされたという者もいる。川に投げ込まれたと言う者もいる。つまり今ある墓は空のようだが二つの説のどちらが正しいかわからない。どの記録が正しいにせよ、端宗の遺体が一時放置されていたことは事実だろう。元王には前例のないことだった。(ナレーション)
世祖が霊廟にいると火が消え風が吹きました。
「誰か火を持ってこい。」
世祖の世話をしているチョン内官が言いました。
「よい。世子も、幼い甥も、闇の中で横たわっているのだから。雷鳴がとどろいても何の心配がない。暗闇が私を隠してくれる。安心ではないか。本当に、暗闇が私を隠してくれるならどれほどよいか。漆黒の暗闇でさえ私を隠すことはできぬ。」
僧侶が宮殿に呼ばれ懿敬世子の葬儀が行われました。世子の棺は宮殿の外に運ばれました。
二十歳で亡くなった世子の葬儀は京畿道高陽県(コヤンヒョン)で執り行われました。
ハン氏は宮殿を出され、首陽大君のいた屋敷に戻りました。
「家に帰ってきただけよ。私は息子と一緒に少し休みに来たの。皆が涙を流す必要はないわ。私は今に宮殿に戻ってみせる。」
侍従たちは地面ひれ伏して泣きました。ハン氏は泣きませんでした。
感想
いやー可哀想でしたね。「王女の男」の端宗は毒を飲んでいたような気がするのですが、こちらは他殺です。恐ろしいですね。なんてことをするのでしょうね。兄弟や甥まで殺してそして多くの臣下を殺してよく夜もすやすやと安眠できますね。善い心があればそもそもこんなことはできませんが、少しでも道徳心があったら頭がおかしくなってしまうでしょうね。まともじゃないですね。そして仁粋大妃はしばらく宮殿を追い出されました。でもハン・ミョンフェという心強い味方がいます。これからどうやって政権を奪取するのか続きが楽しみです。