王と妃 106話 世子(海陽大君)の病
あらすじ
世祖はシン・スクチュを呼び乽山君(チャサングン)を世孫(セソン)にすることは可能か尋ねました。シン・スクチュは可能だが世子には長男がいるので嫡子でないとは言えないと言いました。世祖はハン昭訓(ソフン)が嬪(ビン)の位ではないので問題ないと決めつけ世子に譲位し自分が上王(サンワン)になると言いました。孝寧大君(ヒョリョンテグン)は昭訓を嬪宮(ピングン)に昇格させるのが道理で乽山君(チャサングン)を世孫にすることは許されないと言いました。
「壮絶な骨肉の争いが絶えないのは太祖が王位継承の原則を建てなかったからです。殿下も経験なさいましたね。王位をめぐる騒動が多くの犠牲を生むことを殿下もよくご存じではありませんか。」
「だから決めておくのです。世子の次に乽山君が王になれば・・・。」
「それはなりません殿下。ハン昭訓を世子妃にせずとも王になったら王妃を迎えることになります。もし王妃が王子を産んだらどうするのですか殿下。殿下。理に従ってください。」
「わかりました。わかりましたとももう結構です伯父。」
「大君大監(テグンテガム)。今日大君は殺戮が行われるのを防がれました。私は何も言えず恥ずかしい限りです。」
シン・スクチュは孝寧大君に言いました。
「殿下にああ言われては高霊君(コリョングン、シン・スクチュ)は逆らえないでしょう。あっはっはっは。」
孝寧大君はシン・スクチュに言いました。
世祖は粋嬪ハン氏に者山君(チャサングン)を世孫にすると約束したことを気にしていました。
「どうしたものか。粋嬪(スビン)に固く約束したのに。」
王妃ユン氏は世祖が孝寧大君の意見を受け入れた知らせを受けました。
「子供を思う粋嬪の心情は私にも理解できます。イム尚宮を出してあげなさい。罪とはいえぬわ。釈放してあげて。」
イム尚宮は解放されました。
「粋嬪様。粋嬪様。」
イム尚宮は気を失いました。
桂陽君夫人は「生死がかかってるのよ。粋嬪様が命をおかけになったのに。」と怒りました。
王妃ユン氏は世祖に粋嬪ハン氏を見舞いに行きたいと言いました。
「お前の母親は生まれつき意地が悪いのだ。孫がかわいくないのか。何が見舞いだ。」
世祖は王妃ユン氏を憎みました。
者山君を世孫にする粋嬪の策略は水の泡となりました。中殿のユン氏は桂陽君夫人の家に帰省している粋嬪のもとへ向かいました。
ヒャンイは「媽媽。横になってください。」と粋嬪ハン氏(のちのインス大妃)に言いました。桂陽君夫人は王妃ユン氏を屋敷に迎えました。
「母上や病が重く出迎えられませんでした。お許しください。」
乽山君は王妃に言いました。月山君は下を向いて暗い表情を浮かべました。
粋嬪ハン氏は王妃の前で床から起き上がったふりをしました。
「娘や。」
「お義母さま。」
「気持はわかっているわ。」
「申訳ありません。おかあさま。」
「月山君と乽山君は私にとっては孫でありそなたに劣らず私も二人のことは心から案じているわ。」
「私は欲をかきすぎました。おかあさまに会わせる顔がありません。」
「いいのよ。二人のことを思うと心配が尽きぬのでしょうね。私が約束するわ。私がいる限り誰にも月山君と乽山君に手出しさせないわ。」
「おかあさま・・・。悪い夢を見るのです。月山君と乽山君が非業の死を遂げる夢を。悪夢を見ぬ日は一日たりともありません・・・。」
粋嬪ハン氏は口を手を覆って泣きました。
「南無観世音菩薩・・・。」
「今の世子殿下は私の子をいつくしんでくださいます。ですが権力とは非情なものです。私は安眠などできません。私は夫を失いました。夫と死別し添い遂げられなかったことは女として大きな罪でありやりきれないのです。でも子供に死なれることはさらなる苦しみでは?それだけは耐えられません。」
「娘や。」
「私の胸には・・・風が吹いております。真冬の木枯らしよりも冷たく吹きすさぶ風です。幸い病を得て死ねるかと思いましたがわたしの業が深いためこうして生きながらえましたおかあさま。うっ・・・ううっ・・・・・。」
粋嬪ハン氏の泣き声は部屋の外にいる桂陽君夫人(ケヤングンプイン)や二人の息子たちにも聞こえました。王妃ユン氏は涙を流し粋嬪ハン氏を慰めました。
ヒャンイは皆が粋嬪ハン氏の演技に心を動かされたはずだとハン・ミョンフェに報告しました。
「粋嬪様は仮病を使ったというの?なんで粋嬪様はそんな手を使われたの?」
ハン・ミョンフェの妻は驚きました。
「粋嬪様は無駄骨を折ったな。」
ハン・ミョンフェはヒャンイに言いました。ヒャンイはしばらく静観したほうがよいとハン・ミョンフェに言いました。
夜。世祖は寝所の外で王妃を待っていました。世祖は世子の歩く様子がおかしいことに気づきました。
「世子よ。歩き方が変だぞ。歩いてみろ。普通に歩けぬではないか。」
「世子殿下は足の裏に発疹ができているのでございます。」
内官は世祖に説明しました。
世子は父に足の裏を見せましたら世祖は顔をそむけました。
「世子の足の裏が膿んでいるぞ。けしからんにもほどがある。こんな状態になるまで隠していたのか!世子の足に発疹ができたとなぜもっと早く言わぬ!実にけしからんやつだ!」
王妃は寝所の外で世祖の声を聞きました。
亀城君は大殿内官と女官に口止めをしました。
「そなたの配慮が足りんぞ!何か言ったらどうだ!世子の足を見てみろ!世子の足が膿んで腐っておる!こうなるまで放っておいたのか!あーまったく!」
世祖は王妃に怒鳴りました。
「父上。母上はご存知ありませんでした。」
「息子の足がこんなだというのにか!」
康寧殿の王妃の部屋。亀城君は王妃に謝りました。王妃は亀城君を叱りました。
亀城君はホン内官を呼び口外しないよう命じました。
「恐ろしい天罰ではないか。父親が体中発疹だらけになった上に息子の足にも発疹が出て膿が流れておる。私は悪鬼だ。千年の眠りからよみがえった悪鬼だ。そうでなければこのような奇怪な天罰が下るわけない。」
「叔父上。」
世祖が泣いているとどこからか声がしました。
「叔父上。」
端宗が世祖の前にいました。
「はーっ!私は今幻を見ているのか!」
世祖は目をこすりました。
「殿下・・・・・・殿下・・・・・・。」
チョン内官が世祖に声をかけました。
「いいや。目がかすんで幻を見ただけだ。」
「ご就寝の準備をいたしましょうか。」
「こんな気持ちで眠れるものか!近頃は寝床に入っても眠れぬ。眠ろうと頑張ってみても眠ろうと一晩中努力しても空が白々と明るむまでどうしても眠れぬのだ。」
「叔父上・・・。」
また端宗の声がしました。
「まだ成仏していなかったのか!」
「この世に墓がないのであの世に旅立てません。」
「墓がないだと。」
「殿下・・・。」
チョン内官は世祖を心配しました。
「黙っていろ。それはどういうことだ。」
「叔父上。私は死にましたが遺体は静泠浦(チョンニョンポ)の川を漂っています。遺体が眠りにつけぬので魂も彷徨っています。お願いです叔父上。私を墓に埋めてください。日の当たる丘に遺体を埋めてくださったら成仏できることでしょう。叔父上。私を埋葬してください。叔父上。」
「行くな。遺体のある場所を教えてくれ!そうすれば・・・・!」
「殿下・・・。」
「うわああああ。そうだったのか。いまだにそなたの魂はこの世を彷徨っていたというのか・・・・・・。うあああああっはっは。うっはっはっは。」
世祖は泣きました。
「息が・・・息ができぬ。首を・・・息が。首を絞めないでくれ・・・。」
「ち・・・殿下(チョーナー)。殿下!」
翌日。
都承旨は世祖に上疏を持っていこうとしましたがホン内官は寝所に入らないように頼みました。
「今日から世子様が国政をなさいます。議政府にそうお伝えください。」
都承旨は伝言を政丞らに伝えました。
「領相(ヨンサン、領議政)大監が殿下にお確かめください。」
ホン・ユンソンは世子の執政が気に入りませんでした。
「王命のようです。仕方ありません。」
領議政はユンソンに言いました。
ホン・ユンソンは便殿に行くとキム・ジルが世子をおだてていました。
「世子殿下。溢れる泉のごとく知性に富んでおられます。」
亀城君は誇らしげに海陽大君を見ていました。
ホン・ユンソンはその様子を見て便殿を黙って出ていきました。
ホン・ユンソンは世祖が幻覚を見るという噂を聞きました。
「どうもおかしい。」
「今回はただ事ではなさそうです。」
ハン・チヒョンは粋嬪ハン氏に噂を報告しました。
粋嬪ハン氏は世祖の精神異常は本当だろうと言いました。
「たくましかった殿下が気力を失い死がよぎるのを私は確かに見ました。亀城君が領議政になると一筋の希望も残りません。」
ホン・ユンソンはハン・ミョンフェの家を訪ね何とかしてくれと頼みました。
「亀城君(キソングン)の機嫌を損ねるな。」
ハン・ミョンフェは言いました。
「青二才に頭を下げるなんてまっぴらだ!」
新たな人事が発表されました。ホン・ユンソンは亀城君の仲間ばかりだと憤慨しました。領議政のチェ・ハン以外の人事は亀城君の配下で占められていました。
「私が死んだという噂が流れたらしい。そんな噂が流れるのは当然だ。政丞の三人にしてもらいたいことがある。私は世子に譲位するつもりでいる。譲位を円滑に手伝ってもらいたい。」
感想
いよいよ世祖が崩御しそうです。顔のポチポチもひどくなりました。そして海陽大君の病気・・・これは何の病なのでしょうか。糖尿病かな!?孝寧大君の一言が影響したかどうかはきっとわからないことでしょうけど、チャサングンを世孫にする計画はとん挫したらしいですね。世祖はもともと精神の病でそれが原因で被害妄想で激しく粛清して病気で理性がなくなり抑えられず病気が表に出たのかもしれませんね。あるいはウイルスが脳に感染したか(ドラマの演出では)。そして孝寧大君は世祖にいつも正しい物事の道理で諫める役割を担っていますよね。孝寧大君は悪人だらけの「王と妃」の良心の表現を担当しているようです。もしほんとうにそのような孝寧大君が実在したとしたら徳のある王にふさわしいといえましょうが、当時の価値観では考えられないほどまともな演出ですから、実際にはありえないでしょう。製作者は悪行をした王はとても苦しむようにこのドラマを作っているようですね。そういえば世祖はハンセン病だったとwikipediaに書かれていましたね。治療法もなかった時代ですからさぞかしつらかったでしょうね。息ができないなんてつらすぎる。ハンセン病は人の体液から感染するらしく、戦争と侵略で世界各地に広まった恐ろしい伝染病のようですね。現代ではインドなど赤道付近の国々で感染者数が多いようです。栄養状態の悪い人がかかる傾向にあると政府のHPに書かれていますが世祖のように栄養豊富で当時の国民の中で誰よりも清潔な王様でも罹るものなんですね。再発もあるとのことなので抵抗力のない遺伝子型の人が感染すると完全には滅菌しない人もいるようですね。