「薯童謠(ソドンヨ)」(全66話)第56話 不穏な動き のあらすじとネタバレ感想
第56話 不穏な動き あらすじ
「一体なぜですか?」
兵士はチャンに問いました。
「(ヘドジュの私兵を)連れてこい。」
チャンは罰を受けている兵士に命じました。
「ヘドジュ上佐平(サンジャピョン)様の私兵なんですよ。」
「そんなのは知らん。衛士部は負けてはならないのだ。だから負かして来い。」
「あー!達率様の首が飛んでも知りませんよ!」
「そんなことより奴らを私のもとへ連れて来い。やれ。」
チャンはさらに尻叩きを命じました。
兵士は痛がり叫びました。
「ユリムとは何者だ?」
サテッキルは宮殿の庭に官僚の一人を呼び出して尋ねました。
「点口部の季徳(ケドク)でした。」
「それは本当か?」
「今度は何があったのですか?」
「私以外にも尋ねる者が?」
サテッキルは驚きました。
「太学舎(テハクサ)の技術工の男女に聞かれました。」
「太学舎の男女の技術工・・・・・・。誰だ?」
「・・・・・・ポムノと言ったかな・・・?すみません。」
「何を聞かれた?」
「親しい者はだれかと。」
「親しい者は誰だ?」
「私もよく知らないので文書庫の人事記録を見ろと言いました。お持ちしましょうか?」
衛士佐平の部屋。
「担当部署についてとユリムが作成した報告書です。」
官僚はサテッキルに文書を渡しました。
「ありがとう。」
「親しい者がだれかも調べましょうか?」
「ああ、頼む。」
「はい。」
サテッキルは帳面をめくりました。
「見覚えのある字だ・・・・・・。」
「佐平様、達率が・・・・・・!」
衛士部の恩率がサテッキルに急を知らせました。
刑場。
「何事だ。」
サテッキルは尻叩きで兵を罰しているチャンに訊きました。
「規律を正していました。」
「来るんだ。」
チャンはサテッキルについていきました。
「こうなると思ったんだよ。覚悟しろ。」
尻を叩かれていた兵士が尻を叩いた兵士に言いました。
「私はただ命令に・・・・・。」
「早くほどけ!」
宮殿の建物の一角。
「ヘドジュ様の私兵なんだぞ。」
サテッキルはチャンに注意しました。
「兵士を鍛える者としては相手がヘドジュ様の私兵であろうと負けたことに責任を感じます。」
チャンはサテッキルに言い返しました。
「そんなことで衛士部を掌握できると思うのか。」
「私は衛士部の原則通りに仕事をしているだけです。」
「何を企んでいる。」
「なぜそう誤解するのです。」
「そうか。やってみればいいさ。」
「はい。」
町の人気のない場所。
「あいつは?」
「昨日の奴だ。」
ヘドジュの私兵三人は衛士部の兵士の一人を見て言いました。
「また会ったな。」
衛士部の兵士が言いました。
「なんだ?どけ。」
私兵の親分が舐めたように言いました。
「ううん。」
衛士部の兵士は首を横に振りました。
「やれ。」
ヘドジュの私兵の親分は二人の部下に命じると、衛士部の兵士たちが私兵に挑んできました。ヘドジュの私兵の三人は衛士部の兵士にぼこぼこにされました。
「衛士佐平様。」
衛士部の部屋で待っていた青い服の官僚が部屋に入ってきたサテッキルに挨拶をしました。
「そなたがユリムと親しかった者か。」
「彼らにとって私は裏切り者なのです。」
「どういうことだ。」
「ユリムと親しかった者は皆元山島(ウォルサンド)に送られました。」
「島にいるのがユリムに親しい奴らか?」
「はい。皆同じ時期に官職を退いています。」
「そうか。あの字は・・・・・・。」
サテッキルは机から張り紙を取り出し、帳面の文字と照らし合せました。
「これだったのか。張り紙とユリムの報告書。同じ筆跡だ。」
サテッキルは部屋を飛び出しました。
「恋のためにウヨン公主を殺そうとした?恋のために?」
サテッキルはどこかへ向かっていました。
「私は知っている。だから決めよ。チン大人と一緒になるのはあきらめチン大人を新羅に帰すのだ。チャンが女のために野望を捨てる男なら私は願い下げだ。私が捨てる。」
サテッキルはウヨン公主から盗み聞きした話を思い出していました。
「夢、目標、計画。新羅という言葉に気を取られすぎた。」
「役人の中に自分の忠臣がいると、全員捜し出して元山島へ送ります。」
サテッキルはチャンの言葉を思い出しました。
「ウヨン公主を襲ったのは元山島の連中の一人だな。」
サテッキルは気が付きました。
衛士部の達率の部屋。
「おとなしくすべきでは?」
トウィルは落ち着かないチャンに言いました。その様子をサテッキルは見ていました。
「チャンの夢、チャンの計画、チャンの目標。もしや反乱?いいや、違う。」
「ウチ様。」
「四男だ。生きているんだな。」
サテッキルは気が付きました。
達率の部屋。チャンにポムノとウンジンが会いに来ました。」
「どうした。」
チャンは二人に聞きました。
「大変だ。」
ポムノは言いました。
「なぜ?」
「キルがユリムの調査をしているの。私たちチン大人の頼みでユリムを調べていたの。」
ウンジンはチャンに言いました。
「以前太学舎にいた悪人にもキルが聞きまわっているらしい。」
ポムノ。
「キルが陛下に報告したら大変よ。」
アビジ商団の部屋。サテッキルは父キム・サフムに会っていました。
「元山島で何か企んでいるだと?何も見つからなかったのではないのか?」
「張り紙を書いたユリムはチン・ガギョン商団と関係がある。」
「確証はあるのか?」
「元山島へ送られた連中はユリムの仲間です。」
「証拠にはならん。チャンがユリムを利用しただけかもしれん。シラを切られたらそれ以上追及できない。お前はもう百済の貴族だ。チャンを敵視する姿勢をやたらと見せるから親衛隊長が奴の味方をするのだ。お前もチャンを始末する計画ばかり立てずチャンを利用する計画を立てろ。」
「ですが父上、状況から見て・・・・。」
「証拠もないのに疑っても陛下と貴族の信頼を失うだけだ。悪縁に気を奪われて進む道を誤っている。もどかしくてたまらない。ドハム。」
「これで最後にします。確証を探してみて間違っていたら完全に手を引きます。」
法王の部屋。
「陛下、衛士佐平が参りました。」
サテッキルがプヨソンに謁見を願いました。
「蓮灯祭の準備は順調か?」
「はい。」
「これを機に民心を掴まねばならん。抜かりがないよう点検しろ。」
「はい陛下。ところで、張り紙の犯人が判明しました。」
「なんだと?誰だ。」
「点口部(チョムグブ)の元季徳ユリムです。元山島の連中の仲間です。」
「そうか。チャンに知らせて捕まえさせろ。」
「陛下。その者はチャンと関わりがあります。」
「チャンと?どう関わりがあるのだ。」
「チン大人とチャンがユリムと会っていました。」
「なんだとチン大人まで?会って何をしていたのだ。」
「陛下。私はチャンを陥れようとしていません。それは誤解です。チャンの陛下への忠誠心は信じられません。」
「私も完全には信じておらぬがモンナスを救うためなら従うはず。奴らにはほかに選択肢がない。」
「確かめたいのです。本当にモンナス博士を救うためにチャンは陛下に寝返ったのか、本当に彼らには道がないのか、チャンとモンナス博士が陛下を騙して元山島で謀反を企んでいるのは確かです。しかし私は陛下から以前ほど信用されていません。まず証拠を。明日の朝、元山島へ出発します。このことは私と陛下だけの秘密に。」
「わかった。蓮灯祭のために寺に行ったことにしてやる。証拠を掴んで来い。」
「はい。陛下。」
「ただモンナスとチャンの問題はもう簡単に始末はつけられん。だからお前と私のためにも必ず確証を掴め。」
「はい。陛下。」
衛士佐平の部屋にサテッキルは戻りました。
「身軽な者と5~6人で出かける。寺に行くと言って連れてこい。」
「わかりました。」
元花郎は部屋を出ました。
「よし。勘違いかどうか、これではっきりさせよう。」
「親衛隊長。」
チャンはプヨソンの部屋の前でフクチピョンに呼びかけました。
「陛下に申し上げることがあります。」
「陛下に?」
「はい。衛士佐平様に言っても通じそうにないので。」
「どうしたのだ?」
チャンはフクチピョンに耳打ちしました。
法王の部屋。
「陛下、王妃様です。」
「通せ。」
王妃が部屋に来ました。
「陛下。お顔がすぐれませんね。」
「陛下、達率チャンから伝言があります。」
フクチピョンがプヨソンに報告しました。
「達率?」
「はい。元季徳のユリムを利用し国賊を元山島へ送ったと。」
「ユリムか。それで?」
「すぐにユリムを捕まえるか調査を続けるかどうか、ご命令を。」
「それでなぜ衛士佐平でなくお前に伝言させたのだ?」
「実は・・・衛士佐平はチャンを孤立させようとしているのでございます。」
「チャンを孤立させる?」
「衛士部の情報がチャンに報告されず達率はのけ者にされています。達率が衛士部の兵士を訓練いしょうとしても兵士が衛士佐平の機嫌を取るためにチャンに集まってもこないとか。衛士佐平は達率にチャンを推薦しておきながら部下になったチャンをいじめています。すでにチャンは民の恨みの的になっています。討伐隊長としてチャンは盗賊や国賊を立派に捕まえています。いいえ。チャンの件はともかく衛士佐平が衛士部の綱紀を乱すなど論外です。陛下が措置を取られるべきでございます。」
「そうか。もっと国賊がいるかどうか達率チャンに調べさせろ。」
「はい陛下。」
フクチピョンは部屋を出ました。王妃は二人の会話をずっと聴いていました。
「説明しろ!」
貴族が役人に怒鳴りました。
「(チャンに)捕まえて来いと言われたので。」
衛士部の兵士はヘドジュの私兵を皆捕まえてきました。
「何の真似だ。上佐平様の私兵だぞ。しかも私は貴族だ。」
貴族は怒りました。
「衛士部に法を犯した者たちです。」
チャンは貴族に説明をしました。
「我々が何をしたというのだ。」
貴族はチャンに言いました。
「公安条例をご存じで?武器は城内に持ち込めません?」
「おお?」
「武器を持っている者を全員捕まえてこい。平民と貴族を区別するな。わかったな。」
「はい。」
「貴族や私兵を見逃した者は二年の刑にする。何をしている。行け!」
「はい。」
兵士たちは城内に出かけました。
法王の部屋。
「そんな理由で私の私兵を捕まえたのですか。」
ヘドジュはプヨソンに抗議しました。
「規則にうるさい奴でして・・・・・・。」
フクチピョンがチャンを擁護しました。
「陛下、達率を罰してください。」
「公安条例か。」
「陛下。」
「わかりました。」
都の民たちは公安条例の張り紙を見て集まりました。
「それは何だ?それは本物の剣だな。」
トウィルは町で私兵に言いました。
「俺はペクチャンヒョン様の私兵隊長だぞ。」
「それがどうした。棒叩き50回の刑だぞ。おい。捕まえろ。」
トウィルは部下に命じました。
「なんだと?」
私兵は剣を抜きかけました。
「待て、お、おい!それを抜いたら棒叩き80回の刑だぞ。やる気か?剣を振り回したら一年の刑だぞ。」
「・・・・・・。」
「何をしている。」
「はい。」
兵士は私兵を捕まえました。
私兵がチャンのところに縛れて連れて来られました。
「おい達率。陛下が手加減しろと。」
フクチピョンがチャンに言いました。
「中止ではなく?」
「私も理解できん。」
「・・・は。」
「わかるか?」
貴族たちは私兵が連行されたことについて話し合っていました。
「うちは七人も。」
「うちは私兵隊長まで。これは陛下の発案ですか?」
「達率が独断で行っているのです。」
「達率の独断だと?」
「手加減させたはずなのに。」
部屋に入ってきたヘドジュは言いました。
「中止でなく?これでは公安条例が復活します。そうなれば私兵の動きが制限されます。」
サドゥガンがヘドジュに言いました。
「ええ、今すぐやめるべきです。抗議に行きましょう。」
皆は立ち上がりました。
「始めろ。」
チャンは棒叩きの刑の執行を命じました。そこに貴族たちが来て抗議しました。
「やめろ。」
「ほどけ。」
「それはできません。」
「できない?」
「公安条例を破った者たちです。」
「くだらん法で貴族を侮辱するな。」
「陛下と民の安全を守る法令です。」
「陛下が衛士佐平だった時に廃止同然にした法だ。」
サドゥガンが言いました。
「はい。事情は知りません。廃止するなら決議をもって陛下の承諾を。」
「おい、イノミっ!」
「始めろ。」
「はい。」
「やめろ。」
「はい。」
「なんというやつだ。今すぐやめろ。」
「始めろ。」
「はい。」
「イノミっ!」
フクチピョンはその様子をプヨソンに報告しました。
「陛下、貴族が中止させようとしてもチャンは言うことを聞きません。このままでは貴族に恨まれます。チャンに中止の命令を。」
「皆を便殿に。」
プヨソンはフクチピョンに言いました。
「イノミ!死にたいのか。」
ヘドジュはチャンに怒りました。
「陛下と民の安全を守る衛士部の兵だ。身分は低くても衛士部は陛下の命令を実行する兵士だ。衛士部の兵士を見下す者がいたら法で裁く。これが衛士部の兵士の権限だ。これが衛士部の兵士の誇りだ。皆誇りを持て。わかったな。」
「はい。」
「この意思を示すために刑をこのまま続ける。始めろ。」
「はい。」
衛士部の兵は棒叩きをはじめました。
「なんということを。」
「待て。陛下がお呼びです。」
フクチピョンが貴族とチャンを呼びました。
「ちょうどお会いしようと思っていた。」
ヘドジュが言いました。
「行こう。」
便殿。
「陛下、貴族を侮辱した達率チャンを厳罰に処すべきです。」
ヘドジュがプヨソンに言いました。
「私ではなく貴族の皆さまが陛下を部族したのです。」
「なんだと?」
ヘドジュはチャンを見ました。
「衛士部の兵士と私兵が喧嘩したのが始まりでした。私は私兵に負けて帰ってきた部下を叱りはしましたが、私兵が陛下の兵に盾突くことは何事ですか。部下は衛士佐平様の命令を遂行中だったのです。捕まえた私兵は皆武器を持っていました。明らかな公安条例違反です。公安条例とは武器の所持を禁止し城内の陛下の安全を守る法です。私のどこが間違っていたのかわかりません。」
「しかし陛下、武器の所持を許可なさったのは陛下です。先代王を守るために陛下が私兵に権限を与えたのです。」
「そうだ。」
「陛下、今も状況は同じです。我が私兵も我が国と陛下のため戦う準備はできています。」
「陛下。達率チャンを厳罰に処してください。これを機に公安条例も廃止してください。」
「いいえいけません。公安条例が有名無実だから盗賊が現れたのです。」
「いいえ陛下、廃止してください。」
「よいか。聞け。公安条例を有名無実にしたのは私だ。しかし今は状況が違う。今の私は王だ。達率チャンは聞け。公安条例を掲示し民に守らせるのだ。徹底的に取り締まれ。」
プヨソンは言いました。
「はい陛下。」
「陛下が衛士部の味方についてくださった。」
チャンは衛士部の兵士に言いました。
「わー。」
衛士部の兵士は喜びました。
「貴族や私兵の脅しにも屈せず私に従ってくれた皆のおかげだ。先頭に立ったマクトルとトゥンセを昇格させる。今日はぞんぶんに食べて飲め。」
「いえーーー。」
兵士は再び喜びました。
夜。チン・ガギョン商団。ソンファ公主、ヨン・ギョンフ大将、ワング将軍、ユリムは部屋に集まっていました。
「衛士部までチャンは束ねたそうです。」
大将はワング将軍に言いました。
「公安条例が強化されれば決行日に都城(トソン)を掌握しやすくなる。」
ワング将軍は言いました。
「はい。一安心です。」
ユリムが言いました。
「明日は太学舎から武器が来ます。客主(ケクチュ)が受け取ってください。」
ソンファ公主は大将に言いました。
「なぜですか?」
「私は用事があります。」
「衛士佐平がユリムを調べているらしい。」
ワング将軍が言いました。
「陛下の命令で衛士佐平は今は善徳(ソンドク)寺にいるはずです。」
ユリムはワング将軍に言いました。
「ソンドクサ(善徳寺)?」
「蓮灯祭の準備をするのだとか。」
ヨン・ギョンフは言いました。
「そうか。すべて順調だな。」
ワング将軍は知りませんでした。
サテッキルは元山島に着きました。
「誰も近寄らせるな。」
「ご安心をここには誰も来ません。」
「行くぞ。」
「抜き打ちを?」
「いや。今回はゆっくり様子を見る。奴らを油断させろ。放っておくんだ。隠れて様子を見張れ。」
「はい。」
「あさっては一日ですが交代は?」
「今月は交代なしだ。それを理由に手を抜け。」
「わかりました。」
「取り掛かれ。」
「はい。」
夜の元山島。
モンナス博士は湯を飲みました。兵士は居眠りしていました。その様子をサテッキルと側近は見張っていました。別の囚人は小便をしていました。
翌朝。
「イボゲ(お前さん)。薬草が切れたから山に採りに言ってくる。」
モンナス博士は見張りの兵士に言いました。
「どうぞ。」
サテッキルは見張っていました。
元山島の山。
「久しぶりですね。」
囚人たちがモンナス博士に言いました。
「道具を借りられますか?」
囚人はモンナス博士に小さな斧を借りました。
「上へ行ってみよう。」
囚人たちは上に行きました。
「ここを掘ってみよう。」
モンナス博士は残った囚人二人に言いました。
「寒くなってきたから多めに採っておきましょう。」
囚人の一人がいいました。
「この土質ではまり掘れん。」
「探してみましょう。」
囚人は周りの様子を伺いながらモンナス博士に言いました。
サテッキルは彼らを見張っていました。
「警戒していないようです。どうぞお話を。」
囚人は地面を掘りながらモンナス博士に言いました。
「万一に備え今までの方法で。」
「はい。」
「考えてみたか?」
「はい。結局問題の解決策は"土地"制度です。」
囚人は大事なところは言葉に出さず、地面に文字を彫りました。
「同感だ。」
「博士もですか?」
モンナス博士は地面に文字を彫りました。
「"均田"確かめる必要がある。」
「はい。それで、資料が足りません。」
「送るように伝えた。」
「モジン技術者にですか?」
「今日使いの者が行く。」
サテッキルは彼らを見張っていました。
「行こう。」
モンナス博士は言いました。
「もう?もっと採っては?」
「これだけあれば数日はもつ。」
囚人たちは村に戻りました。
サテッキルはモンナス博士のいた地面を掘りましたが何もありませんでした。
「ああ、あ痛い。」
囚人の一人が木に引っかかりました。
「大丈夫か?」
モンナス博士は言いました。
「はい大丈夫です。」
彼らが去った後に文字を書いた服が木に挟まっていました。
サテッキルは気にも留めず行ってしまいました。
「今回は大きな船で来たのね。」
モジンは海岸に交代の船が来ないのを見ていました。
そこにユリムの仲間が来てモジンに訊きました。
「誰か上陸を?」
「いいえ、兵士の交代はなかったわ。」
「変です。私は別の船で来ました。あれは別の誰かが隠した船です。」
「何ですって!」
「もう何か起きたのでは?」
「ここに来るまでは何もなかったわ。大変だわ。戻らないと。ほどくのを手伝って。服を持って隠れなさい。無事に済むと思うけど合図がなかったら出発して。」
「はい。」
モジンは村に走りました。その途中でサテッキルを見ました。モジンは声を上げかけて手で口を押えました。
「何の音だ?」
モジンは隠れました。サテッキルは衣を拾いました。
「着ていた服だ。こんな手を使うとは。やはりモンナス博士だ。今すぐ兵を集めろ。」
モジンは走って村に戻りました。
「大変です。キルが島にいます。船を見つけました。」
「なんだと。事実か。我々を監視していたのか。」
「今すぐ全員逃げなければ。字の書いてある布地をキルに見つけられました。」
「何だと。」
「全員か。」
「はい!・・・ほぼ。」
サテッキルの前に兵士が集まりました。そのとき奇妙な音色の笛の音が聞こえました。
「笛の音です。のんきなものですね。」
兵士の一人が言いました。
「笛の音・・・天の峠学舎だ。ただの笛ではない。行くぞ。」
サテッキルは村に向かいました。
「衛士佐平に布を見られました。」
モジンは仲間の破けた衣の部分を手にしました。
「島を出ましょう。ヨンガクの海岸に早く。」
モンナス博士はモジンの手を取り仲間と逃げました。
「いません。」
兵士はサテッキルに報告しました。
「船だ。」
モンナス達は船のところに来ました。
「ああ、あの船か。」
「モジンとヨンガクはキルの船で戻りチャン達率に知らせろ。我々はチュソン島へ行く。」
モンナスは指示をしました。
「船を奪って時間を稼ぐんだ。」
「ええ?」
「わかりました。」
「早くしろ。」
モジンと仲間の一部は船に乗りました。モンナス博士はモジンを見つめました。
モンナスたちは別の小舟に乗りました。兵士が弓をもって追ってきました。
「博士、乗って!」
「逃がすな!」
兵士の放った弓はモンナスの左胸に刺さりました。
「急所は外れている。はやく行くんだ。最後まで任務を遂行しろ。大丈夫だ。早く任務を遂行しなければ・・・・・。」
モンナスの右肺にも矢が刺さり、モンナスは船から落ちました。
「佐平様、我々の船が!」
モンナス博士は海に沈み、サテッキルは島に取り残されました。
太学舎の仕事部屋。ウンジンたちは地図を描いていました。
「また却下?」
モジンは不満げに言いました。
「十分詳しく書いたのに。」
ポムノはぼやきました。
「徹底的にいじめる気ね。」
「でも描きなおすしかないわ。」
ウスがだるそうに言いました。
「どこまで詳しく?石まで?」
「誰かに運ばれるかも。」
「木は?」
「抜かれるかも。」
「あのね。家が何軒あるか路地はどうなっているかを描くの。」
ウスは二人に言いました。
「あ~。」
メクトスが部屋に来ました。
「順調にやってるか?」
「父さん。その格好は?」
「ついに私に春が来たのだ。」
旅の装束をまとったメクトスは嬉しそうに笑いました。
「春って?」
「阿錯に行くことになった。酒に溺れようが女遊びをしようがもうばれない。」
「まったく。姫(ウヨン)様に告げ口しますよ。」
メクトスを迎えに来た商団の従業員が彼に言いました。
「堅物と一緒だ。羽は伸ばせん。」
「ははははは。」
「がんばってね父さん。」
「ここへ行けば阿錯官営の人がいるわ。」
「荷物はしっかり積みました。戻ったらまた・・・」
荷車に荷物を積みを得たメクトスはウヨン公主に言いました。
「行くぞ。出発だー。」
メクトスたちは太学舎から武器を運び出しました。
チン・ガギョン商団。
ワング将軍、ヨン・ギョンフ大将、ユリムのいる部屋にチャンが来ました。
「おいでですか。」
ワング将軍はチャンに言いました。チャンが先に椅子に座ると皆も座りました。
「ユリム公は特に注意を。」
「はい。今は大体砦にいます。」
ユリムはチャンに言いました。
「公安条例で衛士部を掌握したのは正解です。」
ワング将軍が言いました。
「私たちに有利になります。」
チャンはワング将軍に言いました。
「はい。今からでも衛士部を正しておけば、将来太子様のお役に立ちます。」
「もう一つ朗報があります。」
「何ですか?」
「衛士部の兵士が二十人ほど親衛隊に。」
「親衛隊に?」
「ワング将軍のおかげです。格闘に長けた者が陛下の目にとまったのです。」
「何よりです。無理だと思っていました。」
大将は胸をなでおろしました。
「東明祭までに完璧に準備できそうです。」
ユリムの表情に喜びが浮かびました。
「はい。一層気を引き締めてください。」
「はい。」
「ところで、お嬢様は?」
「個人的な用で数日留守にされています。」
新羅国境。チュンス城の部屋。
「ソンファや。」
「陛下。」
「ソンファや。」
「陛下。」
ソンファ公主は床に膝をつきました。
「顔を見せてくれ。ひどい娘だ。親を苦しめておきながら、どうしてこれほど美しくなれるのだ。」
真平王は娘に言いました。
「陛下。」
「うれしい。やつれているよりはるかによい。お前に非はあったが私はお前を守ってやれなかった。尼になるよりいい。商人として百済の地でよく頑張ったな。誇らしいぞ。」
「陛下。」
「もう戻れる。私が連絡してきたら戻ってきなさい。お前が買える日を王妃も待ちわびています。」
「陛下・・・。戻れません。」
「なんだと。」
「私が国に犯した罪、陛下に犯した罪、お母さまに犯した罪はとてもつぐないきれません。宮殿を去ってから毎日のように陛下やお母さまを想わない日はありませんでした。つらい時もうれしいことがあってもいつもお二人を想いました。」
「それなのに、なぜ戻ってこられないんだ。今も百済の太学舎のあやつを慕っているのか?今も?」
「本当に申し訳ございません。私はこのまま女として生きてまいります。尼になったと、いえ、死んだとお思いに。」
「死んだ・・・死んだだと?そんな言葉を口にするとは。生死もわからず二年も待っていたのだぞ。万に一つも親の気持ちがわかるなら、そんな言葉はとうてい口にはできぬはずだ。」
「陛下・・・・・・。」
ソンファ公主は泣いていました。
「許さぬ。」
感想
いやぁ、今日話はとても長かったです。一時間なのにいつもよりセリフの量が・・・ものすごくてまとめるのが大変でした。ここでわかったのがチャンが百済に来てたったの二年だということです。なぜか皆は白髪になっていたのでもっと何年もたったのかと思っていましたがたったの二年・・・それで商団を大きくして鉱山をたくさん開発して・・・・チャンが達率や恩率になって・・・とてもありえない話です(笑)そこは真平王、言っちゃダメでしょう、ドン引きしちゃいますよwそして薯童謠なんですが、全55話のはずが今56話です。いったいどういうことなのでしょうか。モンナス博士は死んでしまったのでしょうか?サテッキルが助けないと博士の復活は無理ですよね。ウヨン姫の運命はどうなるの!?せめてチャンの側室に・・・と思ってしまうのは親心でしょうか。