「薯童謠(ソドンヨ)」(全66話)第61話 宿敵との対決 のあらすじとネタバレ感想
第61話 宿敵との対決 あらすじ
チャン(彰、武康太子、ムガンテジャ)は剣でサテッキルの腹の刺して引き抜きました。
サテッキルはチャンを睨んだまま倒れうめき声を上げました。
「殿下ー。殿下・・・・・・。」
ワング将軍たちがチャンのもとに駆け寄りました。
「護送しろ。民の前に立たせる。」
チャンはトゥイルに命じました。
「倒したぞー!衛士佐平を倒したぞー。」
トウィルは軍に知らせに走って行きました。
「武康太子が勝ったー!」
兵士たちはチャンのもとに駆け寄りサテッキルを見ました。
「残るはサビ城だ。サビ城に進撃する。」
チャンが皆に言うと兵士たちは歓声を上げました。
上佐平ヘドジュの陣営。ヘドジュの部下は倉庫に密偵を捕らえていました。
「怪しい者を捕らえました。ペクチャンヒョン様たちが反乱軍に投降するとの内容が書かれた手紙を持っていました。」
ヘドジュは手紙を拡げて読みました。
「何ということだ。」
ヘドジュが貴族の裏切りに動揺しているとまた別の部下が倉庫に入ってきました。
「どうしたのだ。」
「衛士佐平が敗れ反乱軍が既に陵山峠へ来ました。」
「なんと!」
ヘドジュは驚きました。
雪の降る王宮の一角。法王の目を盗みサドゥガンは部下の官僚から報告を受けていました。
「反乱軍はすぐそこです。」
「ならば今日中に入城する可能性もあるのだな。」
「はい。急がなくてはいけません。」
「まずはウヨン公主を逃がせ。」
「はい。」
官僚が牢屋に行くと、兵士たちは皆倒れておりウヨン公主とヘモヨンはいませんでした。
「私たちを殺す気なのかしら。」
どこかの部屋に連れて来られた先王の妻ヘモヨンは娘のウヨン公主に言いました。
「それにしては様子が変でした。」
白い服が茶色に薄汚れて、髪は乱れ唇に血の跡がにじむウヨン公主は母に言いました。
ヘドジュと皇后が二人のいる部屋に入ってきました。
「なぜ皇后様が・・・・・・。」
ヘモヨンは力を振り絞り皇后を見ました。
「私たちを・・・助けてくれたのですか?」
ウヨン公主は目を上げる力もなくか細い声で言いました。
「そうです。」
王妃は威厳のある口調で答えました。
「武康太子がサビ城に入城したのですか?」
ヘドジュは答えませんでした。
「ご説明ください。」
「私たちはヘ氏一族の女です。私と陛下はともかく父上とヘ氏は生き延びなくてはなりません。だからお二人を助けて差し上げるのです。ヘ氏の家門を残してこそお二人も身を守ることができるのです。チャンとの恋を実らせることにもヘ氏の力が必要になるでしょう。信じています。」
皇后とヘドジュは部屋を出ていきました。
「陛下との結婚以来、お父様は私にいつもおっしゃっていました。家門を大事に。」
皇后は父のヘドジュに言いました。
「その通りです。」
「これで家門は守れます。もう心配なさらないで。」
「ええ。」
ヘドジュは娘に頷きました。
フクチピョンがヘドジュのもとに駆け寄ってきました。
「播遷(ばんせん)の件でお話しがあります。」
「分かった。」
ヘドジュと皇后は見つめあい頷き合いました。
作戦室。フクチピョンはヘドジュに法王を守り逃亡する計画を教えました。
「陛下の播遷は民や貴族には内密に行います。」
「分かった。」
「親衛隊が陛下を裏山にお連れします。」
「では兵を待機させておこう。」
「馬でソマク峠に行き禿山城(トクサンソン、現在の天安チョンアン)までは馬車で行きます。」
「馬車で待機させろ。」
ヘドジュは部下に命じました。部下はすぐに部屋を出ていきました。
「信頼できる者をください。不審な者は決して・・・・・・。」
「私の娘も一緒なのだ。心配するな。」
フクチピョンは納得したように頷きました。
サドゥガンは宮殿の庭で配下の貴族からの報告を受けました。
雪はさらに視界が白くなるほど降っていました。
「何だと。牢獄の見張りが倒れていただと?」
「はい。」
「ウヨン公主とヘモヨン様も消えた?」
「はい。」
「今はヘドジュ上佐平の私兵しか宮殿にいないはずだが。上佐平だ。ヘドジュだ。」
宮殿に軟禁されている貴族の部屋。
「密書を持った者がヘドジュ上佐平に捕まっただと?」
貴族は驚いて立ち上がりました。
「はい。」
「なんてことだ。陛下に知られたら処刑される。」
「こうしている場合では。」
「早く逃げるんだ。」
貴族たちは部屋から逃げました。
武康太子の軍はサビ城の城門に到着しました。サビ城の門の上では太鼓の音が鳴り兵士が白旗を振っていました。
「白旗だ。」
ヨン・ギョンフ大将はチャンに言いました。反乱軍の兵士たちは歓声を上げました。
「計略なのでは?」
ワング将軍は疑うと、城門が開きサドゥガンたち貴族がチャンの前に歩いてきて跪きました。
「ご入城お喜び申し上げます武康太子様ー。」
サドゥガンが言うと、貴族は地面に両手を突いてひれ伏してチャンの入城の祝辞を述べました。
「ご入城お喜び申し上げます。武康太子様。」
「人質になっておりお力になれませんでした。お許しください殿下。」
「お許しください殿下。」
「ですが貴族の私兵はすべて殿下のものでございます。殿下を護衛いたします。」
サドゥガンは言いました。
「武装を解け。」
チャンは貴族に言いました。
「え?」
サドゥガンが聞き返すと貴族たちも戸惑いの声を上げました。
「え?」
「え?」
「私兵の武装を解除し城の外に出て来させろ。」
「はい。武装を解除させろ。」
ヨン・ギョンフ大将は部下に命じました。
「はい殿下。」
サドゥガンが従うと貴族たちも声を揃えました。
「はい殿下。」
「兵は武器を捨て城の外へ。」
サドゥガンが命令すると貴族はさらに下の者に命令を伝達しました。
「城の外へ出せ。」
「さあ、入城するぞ。」
チャンは仲間たちに声をかけました。兵士たちは喜びの声を上げました。サテッキルは檻に入れられたままチャンたちが入城する様子を見ていました。
プヨソン(法王)は皇后の手を繋ぎヘドジュとフクチピョンと一緒に兵を連れて城の裏山を登っていました。するとヘドジュは兵士にプヨソンを取り囲ませました。
「何の真似だ。」
プヨソンはヘドジュに言いました。
「陛下。」
皇后は申し訳なさそうにプヨソンに声をかけました。
「義父上、何の真似です。」
息子が義父に問うとヘドジュは視線を落としました。
「皇后、何の真似だ。」
「陛下。私は陛下と一緒に死にます。ですが父とわが一族はお救いください。」
皇后はプヨソンに懇願しました。
「皇后。義父上!」
「申し訳ありません。私兵もあと千人しかいません。勝算のない戦いです。」
「義父上、皇后!義父上ー!」
「陛下をお守りしろー。」
フクチピョンは部下に命じました。
「捕まえろー。陛下を捕まえろー。逃がすなー。陛下を捕まえろー。」
ヘドジュは兵士に命令しました。
「一体どこへ逃げたんだ。武康太子の軍が来る前に探すのだ。早くしろ。」
プヨソンとフクチピョンが逃げヘドジュは慌てました。
「プヨソンを生け捕りにしろー。」
ワング将軍は号令しました。
「最後まで残った上佐平の私兵を倒せー。」
ヨン・ギョンフ大将はも掛け声をかけました。
武康太子の兵士たちはヘドジュと皇后を見つけました。
「抵抗せず投降しろ。」
ヘドジュは自らの私兵に命じました。
武康太子の兵士は机の下に隠れている貴族を連行しました。
チャンは宮殿内に入城すると、兵士たちは皆頭を下げました。
ヘドジュと皇后がチャンの前に連れて来られました。二人はチャンの前で膝をつきました。
「武康太子殿下。陛下を暗殺しようとしましたが逃がしてしまいました。まだ城の中にいるはずです。阿佐太子殿下と威徳王を殺し民と貴族を騙してまで王位を奪ったプヨソンにどうか罰をお与えください。」
ヘドジュは手のひらを返したようにプヨソンの死を望みました。
「はい。そのつもりです。ですが上佐平様の罪も問わなくては。上佐平と皇后を軟禁しろ。」
チャンはトウィルに命じました。
「チチチ、殿下(チョーナー)、誤解です、私は決して・・・・・・。殿下。そうではありません。殿下、誤解です。」
連れていかれるヘドジュを見てサドゥガンとヨン・ギョンフ大将は痛々しく視線をそらしました。
「ヘドジュの私兵はどうなった?」
チャンは大将に尋ねました。
「特に抵抗もなく投降しました。」
「プヨソンを見つけるのです。」
プヨソンとフクチピョンは一緒に宮殿の中に隠れていました。
「王の座を得るためなら人を殺すことなど私には取るに足らないことだった。だが王になって悟った。結局そんなやり方で得た座を維持していくには同じ手を繰り返さねばならぬとな。あるいは貴族にへつらう道もあるだろう。だがそんな王には何の力もない。しかしそれでも私は王座にいたい。なぜか。王の座だからだ。」
「はい陛下。また戻れます。チャンの首を市場に掲げれば形成は逆転します。」
「ああ。」
チャンは衛士佐平の部屋に入り、本を取り椅子に腰かけました。
「プヨソン、どこに逃げたんだ・・・・・・。」
フクチピョンは短剣を抜きチャンの首に剣を突き付けました。
「お前を殺すために待っていたのだ!」
フクチピョンはチャンに言いました。
「剣を下ろせ。」
「状況がわからんのか!」
「剣を下ろせ。もっと深く刺すぞ。」
チャンは剣を少し深く刺しました。
「あっ・・・・・あっ・・・・・・。」
プヨソンはうめき声を上げました。
「どちらが早いか試すか?」
「私のことは構うな。チャンを殺せ。」
フクチピョンは動揺するとチャンはフクチピョンに剣を突き付けました。
「この下です。」
ワング将軍たちが部屋に入ってきました。
「出てこい。」
ワング将軍は机の下に剣を突き付けるとプヨソンが現れました。
「陛下ー!陛下ー!」
フクチピョンはプヨソンを呼びました。プヨソンは左胸に傷を負っていました。
「プヨソンを連行しろ。衛士佐平と共に尋問する。」
プヨソンとフクチピョンは縛られました。
「連れていけ。」
「陛下。陛下。」
「無礼者め!」
ワング将軍はフクチピョンに怒鳴りました。
サテッキルは馬にひかれ護送されていました。
「衛士佐平じゃないか。」
「見ろよ。」
「武康太子様を殺そうとしたやつだろ。」
「何で生かしておくんだ。」
「悪党め!」
民たちはサテッキルを取り囲み牢をゆすりました。
元花郎のクソンはサテッキルと目を合わし頷きあいました。
「殺されます。とめないのですか。」
兵士が上官に言いました。
「いいんだ。少し恨みを晴らさせてやれ。」
兵士たちが油断しているとクソンと私兵はサテッキルを引いている馬を盗んで逃げました。
「逃がす気だ!追え!」
兵士たちは戦闘になりました。
王宮の部屋。
「サテッキルが逃げました。」
ヨン・ギョンフ大将はチャンに報告しました。
「ええっ?」
「仲間に連れ去られました。今追っています。」
「捕らえなさい。悪事を遂行した張本人です。逃がしてはいけない。」
「はい。」
ヨン・ギョンフ大将と入れ替わりワング将軍が部屋に入ってきました。
「ヘモヨン様です。」
「そうですか。」
身なりを整えたヘモヨン(解慕燕)が部屋に入ってきました。
「ご無事で何よりです。」
「ウヨン公主は酷い拷問にあい今は治療を受けています。ぜひ見舞いに来てください。」
「はい。」
「私の望みはひとつです。私たちの払った犠牲を決して忘れないでください。特にウヨンは太子様が危機に瀕するたびに命がけで殿下をお守りしました。そしてウチは・・・・・・。わが一族を頼みます。」
「・・・・・・。」
チャンはウヨン公主を見舞いに行きました。
「容体は?」
「激しい拷問を受け回復には時間がかかるかと・・・・・・。」
コモ技術士はチャンにウヨン公主の容体を報告しました。
「武康太子様です。」
内官は部屋に向かってチャンの来訪を伝えました。
チャンが部屋に入るとウヨン公主は寝間着のままチャンを迎え立ち上がりました。
「武康太子様。」
「横になっていて。」
「いいえ。寝たまま太子様をお迎えするなんて。」
「では座ってください。」
ウヨン公主は椅子に腰かけました。
「私のせいでひどい目に合わせてしまった。どうかお許しください。」
「謝るのは私のほうです。何とか五色夜明珠をお渡したかったのですが、兄上に悟られてしまいました。善徳寺の計画も私が台無しにしてしまいました。」
「ご自分を責めないで。」
チャンは胸の五色夜明珠をウヨン公主に見せました。
「善徳寺でこれを受け取った瞬間、私は勝利を確信しました。危険を顧みずウヨン公主は取り戻してくれたのですね。感謝します。お休みください。」
ウヨン公主は愛情を込めてチャンを見つめました。
新羅宮。
「なんて親不孝な娘なの。」
「お母さま。お母さま。」
「ええ。苦労したでしょう。」
皇后はソンファ公主の腕をさすって泣きました。
百済の王宮。
「なんだと。新羅の国境を越えた?」
チャンは聞き返しました。
「衛士佐平は新羅に逃げていったそうです。」
大将はチャンに報告をしました。
「なんてことた。」
ワング将軍は呻きました。
「どういたしましょう。」
「勅書はありますか?」
チャンはワング将軍に尋ねました。
「はい。」
「例の物も?」
「はい。便殿へ。」
「はい。」
百済の便殿。
チャンは玉座に座り、死んだククヨンテク以外のヘドジュを含む貴族たちもいつも通り椅子に腰かけました。
「威徳王の勅書です。」
ワング将軍は先々王の勅書を出しました。
「威徳王は惠王が即位する直前に、四番目の王子さまを武康太子に任命されました。王室の重要文書庫や太学舎など宮中の三か所に保管していたのです。どうぞご覧ください。」
貴族の机の前に三つの文書がおかれました。ヘドジュとサドゥガンとペク士は目の前に置かれた文書を開き読みました。
「私、百済第二十七代王は四男彰を阿佐太子に続く太子に任命する。その名を武康とする。」
「このヘドジュ。威徳王の命令に従います。武康太子様。」
「ノサジ(領土の名前)のサドグァン、ご命令に従います。」
「辟中ペクチャンヒョン、ご命令に従います。」
「従います、武康太子様(一同)」
「政事巌(チョンサアム)の貴族も認めてくれた。これで名実ともに百済の太子で威徳王の後継者だ。その最初の務めとしてプヨソンの尋問を行う。皆も見よ。」
「はい。太子殿下。」
牢屋。プヨソンとフクチピョンは白い服に着替えさせられ同じ牢獄の中に捕らわれていました。プヨソンは自分の即位式や、それより以前のことを思い出していました。
「・・・・・・。殺すべきだった。」
「チャンをですか?」
「ああ。殺すには惜しくても、敵側にいるのなら気に入った者ほど早く消さねば。最も気に入った者は先に殺すべきだった。阿佐は常に王になったらどうするかを考えていた。私はどうすれば王になれるかだけを考えていた。生まれながら王座を持つ者と奪わねばならぬ者との差だ。私の目に映る阿佐は鷹揚すぎた。いかなる瞬間にものし上がるのに必死だった私からすれば、阿佐は怠惰で無能な男にしか見えなかった。しかしそれでも私はチャンを殺せなかった。チャンは阿佐が選んだ者。それが理由だ。私には即位した後の準備ができていなかったからな。いや、それでさえ阿佐が準備したものを奪えばよいと思った。それで、王座は奪えても、人を奪うのは、許されないようだ。」
チャン(武康太子)は黄金の冠をかぶり、金の刺繍を身にまとい、プヨソンとフクチピョンを茣蓙の上に座らせ文書を手にしました。正装したウヨン公主とヘモヨンも同席していました。
「罪名を申せ。」
チャンはプヨソンに言いました。
「私と同じく他人の王座を奪った男に、罪人と呼ばれたくない。私の罪は戦いに負けたことだ。阿佐太子と威徳王を殺したことも、後悔していない。」
ワング将軍はプヨソンを睨み付けました。
「後悔していない?無実の民を殺したこともか。」
「仕方なかった。」
「仕方なかった?王になるためなら民を殺しても問題ないと?それが敗因だ。お前と同じように民も民の座を望む。搾取されながらも平穏なたったひとつの民の座をだ。なのにお前は、身勝手な欲のために民の唯一の権利を奪った。権利を奪われ国に保護されないと感じると、民は黙っていない。決起した民を相手にお前が勝てるものか。お前や欲のため民は生きるために戦うのだから。王であったお前が最後にできることは、民の前で許しを乞うことだ。プヨソンとフクチピョンを民の前に立たせろ。」
「はい。連れていけ。」
ヨン・ギョンフ大将は部下に命じました。
プヨソンとフクチピョンは民の前に連れて行かれました。民たちは槍を持ってプヨソンに突きさすそぶりを見せました。プヨソンに迫る群衆の中から死んだ阿佐太子と威徳王が現れました。
「ついに復讐の時が来た。」
阿佐太子はプヨソンに言いました。
「息子を殺された父親の復讐だ。いや、王による断罪だ。」
阿佐太子と威徳王は剣を抜きました。
「陛下、どうなさったのです?」
フクチピョンはプヨソンに言いました。
「阿佐太子と、威徳王が、そこに・・・・・・。」
プヨソンの恐怖心は頂点に達していました。
「私を殺す気だ。お願いです。私を助けてください。私が間違っていました。フクチピョン、お前も謝れ。阿佐太子と威徳王に謝れ。このとおりです。助けてください。どうかお助けください。」
プヨソンは地面にひれ伏しました。阿佐太子と威徳王は剣を振り上げました。
「陛下!陛下!」
フクチピョンはプヨソンを呼びました。
「どうか、お助けください。お助けください。ああーーーっ。ああーーっ。どうか助けてください。」
プヨソンは何度も謝りました。フクチピョンは縄を解くとプヨソンの腹を刺しました。
民たちは静まりヨン・ギョンフ大将は絶句しました。
「ありがとう。助けてくれて。」
「陛下ーーーー。」
「だが、どうすればいい。死んだ先には阿佐と威徳王が、いるだろうに。」
「陛下、陛下ーーーー。」
プヨソンが息絶えるとフクチピョンは叫びました。
「陛下、心配いりません。そこへ私もついていきます。最後まで陛下をお守りします。やーー!」
フクチピョンは自害しました。
「ペーハー。」
プヨソンとフクチピョンは死にました。
新羅の港。サテッキルは力なく川を見つめていました。
「体調もよくないのになぜ外にいる。」
キム・サフムは息子に言いました。
「私は、再びここへ戻るとは夢にも思いませんでした。」
「しばらくは何も考えるな。体の回復に専念しろ。」
「陛下が亡くなりました。」
部下がサフムに報告しました。
「なんだと。」
「結局・・・チャンが・・・チャンが・・・・・・。
百済の王宮。
チャンは王の部屋に入りました。
「チャン、来たか。」
阿佐太子と威徳王がチャンに微笑みました。チャンは嬉しそうに二人を見つめました。
「今まで、ずいぶん苦労したのだな。顔がやつれている。」
「そうですね。これから忙しくなるだろう。」
「こんなことしかしてやれないが、少しでも休みなさい。」
兄と父はチャンに言いました。兄と父の姿は消えてしまいました。
「一緒にいてください。私のそばにいてください。」
「太子様。」
チャンが振り返るとソンファ公主の幻が微笑んでいました。
「公主様。帰ってきてくれたのですか。寂しかった。一人で寂しかったです。」
「殿下。」
ウヨン公主はチャンに呼びかけました。チャンは落胆してため息をつき部屋を出ました。
「公主様?」
新羅宮のソンファ公主の部屋。
「プヨソンは死んだそうです。武康太子様が勝利なさったのです。」
女官のボミョンはソンファ公主に言いました。
「ようやく王になられるのに即位式にも行けないなんて。陛下は許してくれないでしょうし、このままお別れなのですか?」
チョギは言いました。
「ですが公主様。陛下は公主様を百済へ送るかもしれません。」
「どういうこと?」
「侍従たちの話によると・・・・・・。」
新羅の真平王の間。
「百済は新しい王を迎えるそうだ。真興王(チンフンワン)の時と同様に百済と同盟を結び、高句麗を責める。」
真平王の私室。
「可能でしょうか?百済は真興王が聖明王(ソンミョンワン)を裏切ったと新羅を敵視しています。」
チョンミョン公主は父に言いました。
「はい陛下。急ぐ必要のない問題です。しばらくは百済の様子を見ましょう。」
貴族も王に言いました。
「だめだ。国王の即位式が終わり次第ソンファ公主を使臣として送る。」
「陛下。ソンファは政治に関与させない約束です。お忘れに?」
妹を憎むチョンミョン(天明)公主は反対しました。
「そうではないが、事情が変わった。」
「といいますと?」
「ソンファ(善花)公主が愛した相手は百済の武康太子だ。もうすぐ王となる武康太子なのだ。即位式がすんだらソンファを和親の使臣として送る。」
「陛下ー。」
「そのつもりで。」
ソンファ公主の部屋。
「陛下がほんとうにそう言ったの?」
「はい。」
「王になったソドン公に会えるわけですか?」
チョギはソンファ公主に言いました。
百済の王宮。
チャンの即位式が行われました。ウンジンとポムノは喜びました。
「陛下に、威徳王の直系の息子に玉璽を渡します。」
ワング将軍は宣言しました。
ヘモヨンは玉璽と勅書をチャンに渡しました。
「万々歳。万々歳。万々歳。」
臣下たちは声を揃えました。
「ウヨン公主です。陛下にご挨拶を。」
「万世つつがなくお過ごしください陛下。」
ウヨン公主はチャンに恭しく挨拶をしました。
「万世つつがなくあられますよう。」
サドゥガンがチャンに挨拶をしました。
「万世つつがなくあられますよう。」
コモ技術士はチャンを祝いました。
「恥辱の王は悲しみを生み、悲しみは過ちを生み、だが過ちから生まれた者自ら香を焚き、香を焚いた者は王になる。王になった者は再び百済を興し栄光を掴む。」
百済の便殿。
「王になって私がやりたい事は一つだ。尋問上でも言った通り、民に安らかな暮らしを与えることだ。」
武王、第三十代百済王チャンは貴族たちに言いました。
「それは簡単に実現できる。我々が民の暮らしをおびやかさなければよいのだ。プヨソンの暴政による二重の租税から民を開放し、民から奪った土地を返してあげる。そして私益を目的とした勝手な取り決めをなくすのだ。これこそが百済が富強につながる道となる。私に従い国の再建のために力を尽くせ。」
「はい陛下。」
ワング将軍は誇らしげにチャンを見つめました。ヨン・ギョンフ大将も復権して百済の貴族の一員となりました。
「武康太子が勝ったー!」
兵士たちはチャンのもとに駆け寄りサテッキルを見ました。
「残るはサビ城だ。サビ城に進撃する。」
チャンが皆に言うと兵士たちは歓声を上げました。
上佐平ヘドジュの陣営。ヘドジュの部下は倉庫に密偵を捕らえていました。
「怪しい者を捕らえました。ペクチャンヒョン様たちが反乱軍に投降するとの内容が書かれた手紙を持っていました。」
ヘドジュは手紙を拡げて読みました。
「何ということだ。」
ヘドジュが貴族の裏切りに動揺しているとまた別の部下が倉庫に入ってきました。
「どうしたのだ。」
「衛士佐平が敗れ反乱軍が既に陵山峠へ来ました。」
「なんと!」
ヘドジュは驚きました。
雪の降る王宮の一角。法王の目を盗みサドゥガンは部下の官僚から報告を受けていました。
「反乱軍はすぐそこです。」
「ならば今日中に入城する可能性もあるのだな。」
「はい。急がなくてはいけません。」
「まずはウヨン公主を逃がせ。」
「はい。」
官僚が牢屋に行くと、兵士たちは皆倒れておりウヨン公主とヘモヨンはいませんでした。
「私たちを殺す気なのかしら。」
どこかの部屋に連れて来られた先王の妻ヘモヨンは娘のウヨン公主に言いました。
「それにしては様子が変でした。」
白い服が茶色に薄汚れて、髪は乱れ唇に血の跡がにじむウヨン公主は母に言いました。
ヘドジュと皇后が二人のいる部屋に入ってきました。
「なぜ皇后様が・・・・・・。」
ヘモヨンは力を振り絞り皇后を見ました。
「私たちを・・・助けてくれたのですか?」
ウヨン公主は目を上げる力もなくか細い声で言いました。
「そうです。」
王妃は威厳のある口調で答えました。
「武康太子がサビ城に入城したのですか?」
ヘドジュは答えませんでした。
「ご説明ください。」
「私たちはヘ氏一族の女です。私と陛下はともかく父上とヘ氏は生き延びなくてはなりません。だからお二人を助けて差し上げるのです。ヘ氏の家門を残してこそお二人も身を守ることができるのです。チャンとの恋を実らせることにもヘ氏の力が必要になるでしょう。信じています。」
皇后とヘドジュは部屋を出ていきました。
「陛下との結婚以来、お父様は私にいつもおっしゃっていました。家門を大事に。」
皇后は父のヘドジュに言いました。
「その通りです。」
「これで家門は守れます。もう心配なさらないで。」
「ええ。」
ヘドジュは娘に頷きました。
フクチピョンがヘドジュのもとに駆け寄ってきました。
「播遷(ばんせん)の件でお話しがあります。」
「分かった。」
ヘドジュと皇后は見つめあい頷き合いました。
作戦室。フクチピョンはヘドジュに法王を守り逃亡する計画を教えました。
「陛下の播遷は民や貴族には内密に行います。」
「分かった。」
「親衛隊が陛下を裏山にお連れします。」
「では兵を待機させておこう。」
「馬でソマク峠に行き禿山城(トクサンソン、現在の天安チョンアン)までは馬車で行きます。」
「馬車で待機させろ。」
ヘドジュは部下に命じました。部下はすぐに部屋を出ていきました。
「信頼できる者をください。不審な者は決して・・・・・・。」
「私の娘も一緒なのだ。心配するな。」
フクチピョンは納得したように頷きました。
サドゥガンは宮殿の庭で配下の貴族からの報告を受けました。
雪はさらに視界が白くなるほど降っていました。
「何だと。牢獄の見張りが倒れていただと?」
「はい。」
「ウヨン公主とヘモヨン様も消えた?」
「はい。」
「今はヘドジュ上佐平の私兵しか宮殿にいないはずだが。上佐平だ。ヘドジュだ。」
宮殿に軟禁されている貴族の部屋。
「密書を持った者がヘドジュ上佐平に捕まっただと?」
貴族は驚いて立ち上がりました。
「はい。」
「なんてことだ。陛下に知られたら処刑される。」
「こうしている場合では。」
「早く逃げるんだ。」
貴族たちは部屋から逃げました。
武康太子の軍はサビ城の城門に到着しました。サビ城の門の上では太鼓の音が鳴り兵士が白旗を振っていました。
「白旗だ。」
ヨン・ギョンフ大将はチャンに言いました。反乱軍の兵士たちは歓声を上げました。
「計略なのでは?」
ワング将軍は疑うと、城門が開きサドゥガンたち貴族がチャンの前に歩いてきて跪きました。
「ご入城お喜び申し上げます武康太子様ー。」
サドゥガンが言うと、貴族は地面に両手を突いてひれ伏してチャンの入城の祝辞を述べました。
「ご入城お喜び申し上げます。武康太子様。」
「人質になっておりお力になれませんでした。お許しください殿下。」
「お許しください殿下。」
「ですが貴族の私兵はすべて殿下のものでございます。殿下を護衛いたします。」
サドゥガンは言いました。
「武装を解け。」
チャンは貴族に言いました。
「え?」
サドゥガンが聞き返すと貴族たちも戸惑いの声を上げました。
「え?」
「え?」
「私兵の武装を解除し城の外に出て来させろ。」
「はい。武装を解除させろ。」
ヨン・ギョンフ大将は部下に命じました。
「はい殿下。」
サドゥガンが従うと貴族たちも声を揃えました。
「はい殿下。」
「兵は武器を捨て城の外へ。」
サドゥガンが命令すると貴族はさらに下の者に命令を伝達しました。
「城の外へ出せ。」
「さあ、入城するぞ。」
チャンは仲間たちに声をかけました。兵士たちは喜びの声を上げました。サテッキルは檻に入れられたままチャンたちが入城する様子を見ていました。
プヨソン(法王)は皇后の手を繋ぎヘドジュとフクチピョンと一緒に兵を連れて城の裏山を登っていました。するとヘドジュは兵士にプヨソンを取り囲ませました。
「何の真似だ。」
プヨソンはヘドジュに言いました。
「陛下。」
皇后は申し訳なさそうにプヨソンに声をかけました。
「義父上、何の真似です。」
息子が義父に問うとヘドジュは視線を落としました。
「皇后、何の真似だ。」
「陛下。私は陛下と一緒に死にます。ですが父とわが一族はお救いください。」
皇后はプヨソンに懇願しました。
「皇后。義父上!」
「申し訳ありません。私兵もあと千人しかいません。勝算のない戦いです。」
「義父上、皇后!義父上ー!」
「陛下をお守りしろー。」
フクチピョンは部下に命じました。
「捕まえろー。陛下を捕まえろー。逃がすなー。陛下を捕まえろー。」
ヘドジュは兵士に命令しました。
「一体どこへ逃げたんだ。武康太子の軍が来る前に探すのだ。早くしろ。」
プヨソンとフクチピョンが逃げヘドジュは慌てました。
「プヨソンを生け捕りにしろー。」
ワング将軍は号令しました。
「最後まで残った上佐平の私兵を倒せー。」
ヨン・ギョンフ大将はも掛け声をかけました。
武康太子の兵士たちはヘドジュと皇后を見つけました。
「抵抗せず投降しろ。」
ヘドジュは自らの私兵に命じました。
武康太子の兵士は机の下に隠れている貴族を連行しました。
チャンは宮殿内に入城すると、兵士たちは皆頭を下げました。
ヘドジュと皇后がチャンの前に連れて来られました。二人はチャンの前で膝をつきました。
「武康太子殿下。陛下を暗殺しようとしましたが逃がしてしまいました。まだ城の中にいるはずです。阿佐太子殿下と威徳王を殺し民と貴族を騙してまで王位を奪ったプヨソンにどうか罰をお与えください。」
ヘドジュは手のひらを返したようにプヨソンの死を望みました。
「はい。そのつもりです。ですが上佐平様の罪も問わなくては。上佐平と皇后を軟禁しろ。」
チャンはトウィルに命じました。
「チチチ、殿下(チョーナー)、誤解です、私は決して・・・・・・。殿下。そうではありません。殿下、誤解です。」
連れていかれるヘドジュを見てサドゥガンとヨン・ギョンフ大将は痛々しく視線をそらしました。
「ヘドジュの私兵はどうなった?」
チャンは大将に尋ねました。
「特に抵抗もなく投降しました。」
「プヨソンを見つけるのです。」
プヨソンとフクチピョンは一緒に宮殿の中に隠れていました。
「王の座を得るためなら人を殺すことなど私には取るに足らないことだった。だが王になって悟った。結局そんなやり方で得た座を維持していくには同じ手を繰り返さねばならぬとな。あるいは貴族にへつらう道もあるだろう。だがそんな王には何の力もない。しかしそれでも私は王座にいたい。なぜか。王の座だからだ。」
「はい陛下。また戻れます。チャンの首を市場に掲げれば形成は逆転します。」
「ああ。」
チャンは衛士佐平の部屋に入り、本を取り椅子に腰かけました。
「プヨソン、どこに逃げたんだ・・・・・・。」
フクチピョンは短剣を抜きチャンの首に剣を突き付けました。
「お前を殺すために待っていたのだ!」
フクチピョンはチャンに言いました。
「剣を下ろせ。」
「状況がわからんのか!」
「剣を下ろせ。もっと深く刺すぞ。」
チャンは剣を少し深く刺しました。
「あっ・・・・・あっ・・・・・・。」
プヨソンはうめき声を上げました。
「どちらが早いか試すか?」
「私のことは構うな。チャンを殺せ。」
フクチピョンは動揺するとチャンはフクチピョンに剣を突き付けました。
「この下です。」
ワング将軍たちが部屋に入ってきました。
「出てこい。」
ワング将軍は机の下に剣を突き付けるとプヨソンが現れました。
「陛下ー!陛下ー!」
フクチピョンはプヨソンを呼びました。プヨソンは左胸に傷を負っていました。
「プヨソンを連行しろ。衛士佐平と共に尋問する。」
プヨソンとフクチピョンは縛られました。
「連れていけ。」
「陛下。陛下。」
「無礼者め!」
ワング将軍はフクチピョンに怒鳴りました。
サテッキルは馬にひかれ護送されていました。
「衛士佐平じゃないか。」
「見ろよ。」
「武康太子様を殺そうとしたやつだろ。」
「何で生かしておくんだ。」
「悪党め!」
民たちはサテッキルを取り囲み牢をゆすりました。
元花郎のクソンはサテッキルと目を合わし頷きあいました。
「殺されます。とめないのですか。」
兵士が上官に言いました。
「いいんだ。少し恨みを晴らさせてやれ。」
兵士たちが油断しているとクソンと私兵はサテッキルを引いている馬を盗んで逃げました。
「逃がす気だ!追え!」
兵士たちは戦闘になりました。
王宮の部屋。
「サテッキルが逃げました。」
ヨン・ギョンフ大将はチャンに報告しました。
「ええっ?」
「仲間に連れ去られました。今追っています。」
「捕らえなさい。悪事を遂行した張本人です。逃がしてはいけない。」
「はい。」
ヨン・ギョンフ大将と入れ替わりワング将軍が部屋に入ってきました。
「ヘモヨン様です。」
「そうですか。」
身なりを整えたヘモヨン(解慕燕)が部屋に入ってきました。
「ご無事で何よりです。」
「ウヨン公主は酷い拷問にあい今は治療を受けています。ぜひ見舞いに来てください。」
「はい。」
「私の望みはひとつです。私たちの払った犠牲を決して忘れないでください。特にウヨンは太子様が危機に瀕するたびに命がけで殿下をお守りしました。そしてウチは・・・・・・。わが一族を頼みます。」
「・・・・・・。」
チャンはウヨン公主を見舞いに行きました。
「容体は?」
「激しい拷問を受け回復には時間がかかるかと・・・・・・。」
コモ技術士はチャンにウヨン公主の容体を報告しました。
「武康太子様です。」
内官は部屋に向かってチャンの来訪を伝えました。
チャンが部屋に入るとウヨン公主は寝間着のままチャンを迎え立ち上がりました。
「武康太子様。」
「横になっていて。」
「いいえ。寝たまま太子様をお迎えするなんて。」
「では座ってください。」
ウヨン公主は椅子に腰かけました。
「私のせいでひどい目に合わせてしまった。どうかお許しください。」
「謝るのは私のほうです。何とか五色夜明珠をお渡したかったのですが、兄上に悟られてしまいました。善徳寺の計画も私が台無しにしてしまいました。」
「ご自分を責めないで。」
チャンは胸の五色夜明珠をウヨン公主に見せました。
「善徳寺でこれを受け取った瞬間、私は勝利を確信しました。危険を顧みずウヨン公主は取り戻してくれたのですね。感謝します。お休みください。」
ウヨン公主は愛情を込めてチャンを見つめました。
新羅宮。
「なんて親不孝な娘なの。」
「お母さま。お母さま。」
「ええ。苦労したでしょう。」
皇后はソンファ公主の腕をさすって泣きました。
百済の王宮。
「なんだと。新羅の国境を越えた?」
チャンは聞き返しました。
「衛士佐平は新羅に逃げていったそうです。」
大将はチャンに報告をしました。
「なんてことた。」
ワング将軍は呻きました。
「どういたしましょう。」
「勅書はありますか?」
チャンはワング将軍に尋ねました。
「はい。」
「例の物も?」
「はい。便殿へ。」
「はい。」
百済の便殿。
チャンは玉座に座り、死んだククヨンテク以外のヘドジュを含む貴族たちもいつも通り椅子に腰かけました。
「威徳王の勅書です。」
ワング将軍は先々王の勅書を出しました。
「威徳王は惠王が即位する直前に、四番目の王子さまを武康太子に任命されました。王室の重要文書庫や太学舎など宮中の三か所に保管していたのです。どうぞご覧ください。」
貴族の机の前に三つの文書がおかれました。ヘドジュとサドゥガンとペク士は目の前に置かれた文書を開き読みました。
「私、百済第二十七代王は四男彰を阿佐太子に続く太子に任命する。その名を武康とする。」
「このヘドジュ。威徳王の命令に従います。武康太子様。」
「ノサジ(領土の名前)のサドグァン、ご命令に従います。」
「辟中ペクチャンヒョン、ご命令に従います。」
「従います、武康太子様(一同)」
「政事巌(チョンサアム)の貴族も認めてくれた。これで名実ともに百済の太子で威徳王の後継者だ。その最初の務めとしてプヨソンの尋問を行う。皆も見よ。」
「はい。太子殿下。」
牢屋。プヨソンとフクチピョンは白い服に着替えさせられ同じ牢獄の中に捕らわれていました。プヨソンは自分の即位式や、それより以前のことを思い出していました。
「・・・・・・。殺すべきだった。」
「チャンをですか?」
「ああ。殺すには惜しくても、敵側にいるのなら気に入った者ほど早く消さねば。最も気に入った者は先に殺すべきだった。阿佐は常に王になったらどうするかを考えていた。私はどうすれば王になれるかだけを考えていた。生まれながら王座を持つ者と奪わねばならぬ者との差だ。私の目に映る阿佐は鷹揚すぎた。いかなる瞬間にものし上がるのに必死だった私からすれば、阿佐は怠惰で無能な男にしか見えなかった。しかしそれでも私はチャンを殺せなかった。チャンは阿佐が選んだ者。それが理由だ。私には即位した後の準備ができていなかったからな。いや、それでさえ阿佐が準備したものを奪えばよいと思った。それで、王座は奪えても、人を奪うのは、許されないようだ。」
チャン(武康太子)は黄金の冠をかぶり、金の刺繍を身にまとい、プヨソンとフクチピョンを茣蓙の上に座らせ文書を手にしました。正装したウヨン公主とヘモヨンも同席していました。
「罪名を申せ。」
チャンはプヨソンに言いました。
「私と同じく他人の王座を奪った男に、罪人と呼ばれたくない。私の罪は戦いに負けたことだ。阿佐太子と威徳王を殺したことも、後悔していない。」
ワング将軍はプヨソンを睨み付けました。
「後悔していない?無実の民を殺したこともか。」
「仕方なかった。」
「仕方なかった?王になるためなら民を殺しても問題ないと?それが敗因だ。お前と同じように民も民の座を望む。搾取されながらも平穏なたったひとつの民の座をだ。なのにお前は、身勝手な欲のために民の唯一の権利を奪った。権利を奪われ国に保護されないと感じると、民は黙っていない。決起した民を相手にお前が勝てるものか。お前や欲のため民は生きるために戦うのだから。王であったお前が最後にできることは、民の前で許しを乞うことだ。プヨソンとフクチピョンを民の前に立たせろ。」
「はい。連れていけ。」
ヨン・ギョンフ大将は部下に命じました。
プヨソンとフクチピョンは民の前に連れて行かれました。民たちは槍を持ってプヨソンに突きさすそぶりを見せました。プヨソンに迫る群衆の中から死んだ阿佐太子と威徳王が現れました。
「ついに復讐の時が来た。」
阿佐太子はプヨソンに言いました。
「息子を殺された父親の復讐だ。いや、王による断罪だ。」
阿佐太子と威徳王は剣を抜きました。
「陛下、どうなさったのです?」
フクチピョンはプヨソンに言いました。
「阿佐太子と、威徳王が、そこに・・・・・・。」
プヨソンの恐怖心は頂点に達していました。
「私を殺す気だ。お願いです。私を助けてください。私が間違っていました。フクチピョン、お前も謝れ。阿佐太子と威徳王に謝れ。このとおりです。助けてください。どうかお助けください。」
プヨソンは地面にひれ伏しました。阿佐太子と威徳王は剣を振り上げました。
「陛下!陛下!」
フクチピョンはプヨソンを呼びました。
「どうか、お助けください。お助けください。ああーーーっ。ああーーっ。どうか助けてください。」
プヨソンは何度も謝りました。フクチピョンは縄を解くとプヨソンの腹を刺しました。
民たちは静まりヨン・ギョンフ大将は絶句しました。
「ありがとう。助けてくれて。」
「陛下ーーーー。」
「だが、どうすればいい。死んだ先には阿佐と威徳王が、いるだろうに。」
「陛下、陛下ーーーー。」
プヨソンが息絶えるとフクチピョンは叫びました。
「陛下、心配いりません。そこへ私もついていきます。最後まで陛下をお守りします。やーー!」
フクチピョンは自害しました。
「ペーハー。」
プヨソンとフクチピョンは死にました。
新羅の港。サテッキルは力なく川を見つめていました。
「体調もよくないのになぜ外にいる。」
キム・サフムは息子に言いました。
「私は、再びここへ戻るとは夢にも思いませんでした。」
「しばらくは何も考えるな。体の回復に専念しろ。」
「陛下が亡くなりました。」
部下がサフムに報告しました。
「なんだと。」
「結局・・・チャンが・・・チャンが・・・・・・。
百済の王宮。
チャンは王の部屋に入りました。
「チャン、来たか。」
阿佐太子と威徳王がチャンに微笑みました。チャンは嬉しそうに二人を見つめました。
「今まで、ずいぶん苦労したのだな。顔がやつれている。」
「そうですね。これから忙しくなるだろう。」
「こんなことしかしてやれないが、少しでも休みなさい。」
兄と父はチャンに言いました。兄と父の姿は消えてしまいました。
「一緒にいてください。私のそばにいてください。」
「太子様。」
チャンが振り返るとソンファ公主の幻が微笑んでいました。
「公主様。帰ってきてくれたのですか。寂しかった。一人で寂しかったです。」
「殿下。」
ウヨン公主はチャンに呼びかけました。チャンは落胆してため息をつき部屋を出ました。
「公主様?」
新羅宮のソンファ公主の部屋。
「プヨソンは死んだそうです。武康太子様が勝利なさったのです。」
女官のボミョンはソンファ公主に言いました。
「ようやく王になられるのに即位式にも行けないなんて。陛下は許してくれないでしょうし、このままお別れなのですか?」
チョギは言いました。
「ですが公主様。陛下は公主様を百済へ送るかもしれません。」
「どういうこと?」
「侍従たちの話によると・・・・・・。」
新羅の真平王の間。
「百済は新しい王を迎えるそうだ。真興王(チンフンワン)の時と同様に百済と同盟を結び、高句麗を責める。」
真平王の私室。
「可能でしょうか?百済は真興王が聖明王(ソンミョンワン)を裏切ったと新羅を敵視しています。」
チョンミョン公主は父に言いました。
「はい陛下。急ぐ必要のない問題です。しばらくは百済の様子を見ましょう。」
貴族も王に言いました。
「だめだ。国王の即位式が終わり次第ソンファ公主を使臣として送る。」
「陛下。ソンファは政治に関与させない約束です。お忘れに?」
妹を憎むチョンミョン(天明)公主は反対しました。
「そうではないが、事情が変わった。」
「といいますと?」
「ソンファ(善花)公主が愛した相手は百済の武康太子だ。もうすぐ王となる武康太子なのだ。即位式がすんだらソンファを和親の使臣として送る。」
「陛下ー。」
「そのつもりで。」
ソンファ公主の部屋。
「陛下がほんとうにそう言ったの?」
「はい。」
「王になったソドン公に会えるわけですか?」
チョギはソンファ公主に言いました。
百済の王宮。
チャンの即位式が行われました。ウンジンとポムノは喜びました。
「陛下に、威徳王の直系の息子に玉璽を渡します。」
ワング将軍は宣言しました。
ヘモヨンは玉璽と勅書をチャンに渡しました。
「万々歳。万々歳。万々歳。」
臣下たちは声を揃えました。
「ウヨン公主です。陛下にご挨拶を。」
「万世つつがなくお過ごしください陛下。」
ウヨン公主はチャンに恭しく挨拶をしました。
「万世つつがなくあられますよう。」
サドゥガンがチャンに挨拶をしました。
「万世つつがなくあられますよう。」
コモ技術士はチャンを祝いました。
「恥辱の王は悲しみを生み、悲しみは過ちを生み、だが過ちから生まれた者自ら香を焚き、香を焚いた者は王になる。王になった者は再び百済を興し栄光を掴む。」
百済の便殿。
「王になって私がやりたい事は一つだ。尋問上でも言った通り、民に安らかな暮らしを与えることだ。」
武王、第三十代百済王チャンは貴族たちに言いました。
「それは簡単に実現できる。我々が民の暮らしをおびやかさなければよいのだ。プヨソンの暴政による二重の租税から民を開放し、民から奪った土地を返してあげる。そして私益を目的とした勝手な取り決めをなくすのだ。これこそが百済が富強につながる道となる。私に従い国の再建のために力を尽くせ。」
「はい陛下。」
ワング将軍は誇らしげにチャンを見つめました。ヨン・ギョンフ大将も復権して百済の貴族の一員となりました。
感想
とうとうプヨソンとフクチピョンは死んでしまい、チャンが武王になりました!やっとです。そして新羅の真平王はソンファ姫をチャンの妻にとお許しが出ました。ドラマを見ているとソンファ姫のことを皆は「ソナコンジュ」と言ってるように聞こえますね。では正しい名前はソナなのでしょうか!?ソナというと「花、ハナ」という日本語とそっくりですね。ハがあるかないかの違いだけで「ナ」は一緒です。何か関係あるのか韓国語と日本語は同じ発音や似たような発音がたくさんありますね!でも中国語と韓国語もなんとなく聴いているだけでは共通するような音もあるのに、韓国語と日本語でも共通するところはあるのに、中国語と日本語はまったく似てませんよね。言葉って不思議です。
プヨソンは心の病になったような表現をしていましたね。恐れるあまり、恐れていた物が見えてしまうという。フクチピョンはなぜプヨソンを殺してしまったのでしょうか。プヨソンがあまりにも苦しんでいてかわいそうだったからあの世に葬ってあげた、そう見るのが妥当でしょうか!?いやいや、別の見方もあるよという方もいらっしゃいますか?結局サテッキルは最後でプヨソンを裏切って新羅に父と一緒に逃げ帰ってしまいましたね。サテッキルはいつになったらチャンへの執着を捨てられるのでしょうか。そもそもなぜチャンを憎むのか理解できません。気に入った女性が別の男と愛し合う憎しみってそんなに長く続くものなのでしょうか?チャンが憎いのであればチャンの傍に行かなければいいのに(笑)。
そしてコモ技術士はサドゥガンに次いで万々歳と言っていましたね。コモ技術士の立場はどれくらい高いものなのでしょうか。プヨソンからも信頼されていましたから、コモさんも百済の貴族の一員なのかしら。そしてチョンミョン王女は意地悪ですね!ソンファ姫に尋常ならぬ憎しみを抱いてあり得ませんw何がそんなに憎いのか理由がわかりません。チョンミョン王女にとって政敵になるのはソンファ姫じゃなくてトンマン王女のはずなんですがねー。
そういえば、「スベクヒャン」という百済のドラマに「ヘ佐平」という貴族が出てきていましたね。これはつまり、「ソドンヨ」でも描かれている「ヘ氏」のことなのかもしれませんね。
そういえば、「スベクヒャン」という百済のドラマに「ヘ佐平」という貴族が出てきていましたね。これはつまり、「ソドンヨ」でも描かれている「ヘ氏」のことなのかもしれませんね。
そして王の部屋に入ったチャンはとても寂しそうでしたね。チャンのウヨン姫への態度が冷たすぎ。意地悪の域です。
まだ最終回まであと五話です。続きが楽しみです。