朱蒙(チュモン)51話
あらすじ
朱蒙(チュモン)率いるタムル軍はヤンジョンを討ちに谷に向かいました。
ヨンポ王子は父金蛙(クムワ)王に拝礼してあいさつしました。クムワ王はヨンポ王子に酒と食事を振る舞いました。
「父上のお体のことが心配でいつも気にかけていました。王様どうかわたしを信じてください。王様を差し置き摂政をしている兄上を私はこれ以上放ってはおけません。すぐにも兄上の勢いをくじいてすべてを元通りにしてみせます。」
「ヨンポ。気持はうれしいがもう帯素(テソ)と反目して混乱を招いてはいかん。」
「父上。私は兄上の横暴にとても我慢できません。辱めを受けたことがとても忘れられないのです。」
「ヨンポ。いつかはなぜ私がなぜこの境遇に堕ちたのかお前にもわかるだろう。お前にひとつだけ言っておこう。テソの天下は長くは続かない。権力を取り戻すためにも私は親子の争いを避けたいと思う。二度と宮殿に血の雨が降ってはならん。二度とそのことを忘れるな。」
チャンチョン谷の族長とヤンジョンは会いました。その様子をオイとムゴルは見張りチュモンに鉄騎軍も入れて敵は50名あまりと報告しました。
「中山(チュンサン)へ向かう途中でやつを攻撃する。」
チュモンはオイとムゴルに攻撃できそうな場所を探させました。
チュモンとマリたちはチェサたちと作戦を立てました。ムッコは族長を生け捕りにして彼らの考えを確かめようとチュモンに言いました。チュモンはヤンジョンと戦っている間にヒョッポにオイとムゴルとともにチャンチョン谷の族長を捕まえるように命じました。
翌日。チュモンたちは落ち葉の中に潜みヤンジョンに奇襲をかけました。チュモンは逃げようと馬に乗るヤンジョンに弓を放ちました。ヤンジョンは刺さった矢を折り馬に乗り数人の鉄騎軍とともに逃げました。チュモンはマリたちとともに馬でヤンジョンを負いました。
「行くぞ!」
朱蒙(チュモン)は二本の弓をつがえて鉄騎軍に放ち敵を倒していきました。そして最後の一本をヤンジョンの背中に命中させました。
「騙されました。替え玉です。」
マリは死んだヤンジョンの顔を確かめました。
ヤンジョンに逃げられたもののチャンチョン谷の族長はタムル軍に加わる意を示しました。
チュモンはチャンチョン谷の族長にしばらくはタムル軍についたことを黙っているように言いました。族長は桂婁(ケル)のヨンタバルと取引をしたとチュモンに言いました。
召西奴(ソソノ)は休憩するのでサヨンにチャンチョン谷の様子を探るように命じました。
チャンチョン谷の族長は兵を雇いたいとヨンタバルに頼まれたことをチュモンに言いました。
サヨンはチャンチョン谷はすでにチュモンの配下となったとソソノに報告しました。
「桂婁に引き上げましょう。」
「ヨンタバル様がまとめられた取引ですよ。ケルに兵を連れて行かねば。」
「チャンチョン谷がタムル軍と組んで漢と戦うつもりなら傭兵を貸す余裕はないはず。取引は大事だけど大事な戦力を奪いたくないわ。いつかタムル軍が桂婁のために戦ってくれるかもしれない。今はこのまま引き下がりましょう。」
「わかった。桂婁に帰るぞ。皆準備をしろ!」
優台(ウテ)は商団に号令しました。
ヤンジョンは中山を奪わねば太守の座が危うくなりました。ヤンソルランは父のためにテソに扶余の軍を送りタムル軍に奪われた中山を取り戻すように頼みました。テソ王子はヤンジョンを助けるのは難しいと妻に言いました。テソは「言葉に気を付けろ」と妻を叱りました。話を聞いていた王妃は「言葉に期をつけなさい」とヤンソルランを夫に対する心持が悪い「今度テソに暴言を吐いたら許しません」と呼びつけました。
ヤンソルランはイエソヤを呼び選択を命じました。
「これからはここで下働きをするがいい。お前が身ごもったせいで私は辱めを受けた。この辱めを晴らすためにお前の子を流してやる。」
「ヤンソルラン様のご命令には従いますがわが子に何かあれば死んで霊となってもヤンソルラン様を許しません。」
「貴様。」
ヤンソルランはイエソヤを殴ろうとしましたがイエソヤはヤンソルランの手首を掴み子供を守りました。
「体面をお守りください。目下の者の前でみっともない。」
「子供が無事に生まれるか今から楽しみだ。」
イエソヤは川で洗濯させられていました。イエソヤは手を休めて腹の子をさすりました。
「見ていてください。この子は必ず守ります。あなたのようにたくましく育ててみせます。」
チュモンはマリとヒョッポとオイとチェサ、ムゴル、ムッコを呼び新たな命令を下しました。
「鉄鉱石の採掘場まで掌握して新たな国を建てる基礎は整った。日々拡大するタムル軍を補強するため責任者を置く。」
チュモンはみなに言いました。
「国造りの仕事は大きな苦難と忍耐をともなう険しい道のりです。みなさんの犠牲があってこそ子々孫々まで栄華を誇る強い国ができるのです。これから与えられる職務は天地の神々が与えられた使命だと思いなさい。」
ヨミウルは皆に言いました。
「まず、ダムル軍の巫女はヨミウル様だ。戦略と戦術を司る右軍師(ウグンサ)には摩離(マリ)、左軍師(チャグンサ)にはチェサ。兵馬担当の天官使者(チョングァンサジャ)は陝父(ヒョッポ)、秋官使者(チュグァンサジャ)には烏伊(オイ)、本渓山(ポンゲサン)と砦の守備を担当する地官使者(チグァンサジャ)にはムゴル。財政担当の冬官使者(トングァンサジャ)にはムッコ。鍛冶頭にモパルモ。タムル軍訓練体長にムソン。今与えた職務は位ではなく任務だ。国の基礎を造る大事な時だ。万事ぬかりなく各自任務をまっとうするように。」
「あいつらタムル軍に入って間もないのに軍師に大使かよ。」
ヒョッポはチェサ、ムゴル、ムッコに腹を立てました。
「なんでここにきたばかりのあいつあらとなんでおんなじ役割なんだよ!」
オイは怒りました。
オイはムッコに喧嘩を吹っ掛けました。オイはムゴルにもう一度勝負しようと挑発しました。オイとムゴルは素手で戦いました。チュモンと左軍師(チャグンサ)となったチェサも喧嘩を見に来ました。オイは先にヒョッポの腰から剣を抜きました。
「やめろ。どうやら武芸の修練ではないようだな。」
チュモンはオイとムッコに協力して砦を建て部族の偵察を命じました。
「くそっ。全部お前のせいだ。今度無礼のまねをしたら許さないぞ。」
二人きりになったムゴルはオイに言いました。
「こっちのセリフだ。ここでケリをつけようじゃないか。負けたほうが弟分だ。」
オイはムゴルを挑発しました。オイとムゴルは倒し倒されつかみ合い地面に転がりました。
チュモンはヨミウルに扶余を脱出できたのは「召西奴(ソソノ)様のおかげだったのです」と言いました。ヨミウルは知っているといい桂婁を手助けできず心苦しいと言いました。
「タムル軍も大きくなったのです。大将の思い通りなさい。」
ヨミウルはチュモンに言いました。チュモンは摩離(マリ)と陝父(ヒョッポ)を呼びソソノに会いタムル軍が手助けをしたいと言いました。
ソソノはヨンタブルに傭兵を得られなかったことを報告しました。召西奴(ソソノ)は何とかすると父に約束しました。
マリとヒョッポは屋敷に忍び込みサヨンに会いソソノと謁見しました。
「チュモン大将は桂婁が苦境に立っていることをご存じです。大将はソソノ様と桂婁に恩を返すためどうすればよいか話し合って来いと言われました。」
「ありがたいことですがお断りします。今タムル軍と手を組めば漢を敵に回して共倒れです。桂婁の心配などせずタムル軍の拡大に全力を尽くしてくださいと言ってください。」
ソソノは兵はいらないと言いました。
「あのうサヨン行首。またお会いできるまでどうかお元気で。」
ヒョッポはサヨンに言いました。その様子はヨンチェヨンに部下を通じて伝えられました。ヨンチェヨンは息子のチャンスにソソノとチュモンが「はかりごとをしている」と密告するよう命じました。チャンスは姉上を危険な目にあわすことはできないと断りましたがヨンチェヨンは言わなければお前の立場が危ういと言いました。
「王様。テソ王子が権力を握ってから扶余の状況は目を覆わんばかりです。このままでは遠からず漢の属国となってしまいます。王様。この危機を脱するには王様が再び力を取り戻さなければ。命令を下してください。今すぐにでも事を起こします。」
扶余の将軍はクムワ王に言いました。
「祭儀を行います。滝の水で心身を清めてください。」
ヨミウルはチュモンに言いました。チュモンは裸になり滝の下で水に入り手を合わせました。
夜になりました。チュモンは簡素な白い服を着て天地の神に一晩中祈りました。翌朝、急に風が吹き雷が鳴りました。チュモンが天を見ると日食が起こりました。
「ヨミウル様。あの太陽は・・・。」
巫女のひとりが言いました。
扶余。
「殿下外にお越しください。」
ナロはテソ王子を呼び日食を指しました。テソは日食を恐れました。
「ヨミウル様、どういうことなのですか。なぜ太陽が急に消えるのです?」
チュモンはヨミウルに言うとヨミウルは白目をむいて気を失いました。