「王と妃」 第99話 王妃ユン氏と粋嬪ハン氏の対立
あらすじ
世祖は粋嬪ハン氏に土地の権利書を渡しました。食べていくのに十分な土地を持っているのでと謙遜する粋嬪ハン氏は権利書を固辞しました。
「できるなら王位さえ譲ってやりたい心境だ。わからんのか。」
「おとうさま。」
「いってみなさい。いいたいことがあるのだろ。アガ(わが子よ)。そなたは単なる義理の娘ではない。私はわが娘のように思ってきた。」
世祖は粋嬪ハン氏にとりわけ優しくしました。
老齢のチョン内官はそのやりとりを聴いていて涙を流しました。
「義母の私に任せてくれたらいいのに。私の立場がないではないの。何かあげるなら私を通してくださるというのが道理というもの。」
王妃ユン氏は粋嬪と粋嬪に優しくする世祖が気に入りませんでした。
「なぜ粋嬪と気まずくなったのかしら。こんなことになるなんて。南無観世音菩薩。」
粋嬪は世祖に涙を見せました。
「懿敬世子の棺が出たときに何があっても泣かないと決めたのに申し訳ございません。子供たちには涙を見せずに厳しく育てました。なのにおとうさまに会うと・・・・・・。」
「ああも早く逝くとは、実に親不孝者だ。あまりにも優しくて心の病にかかったのだ。魯山君を助けてくれと哀願していた。魯山君の母親の墓は?命令通り掘り返したか?昨日も夢に現れた。髪を振り乱し血の涙を流しながらつばをかけてきた。死んだ彼女に会うつもりだ。私の命はもう長くない。じきに会えるだろう。下がりなさい。みっともない姿を見せてしまったな。」
世祖は脇や肩を両手でかきむしりました。
粋嬪ハン氏は土地の権利書を受け取らずに退室しました。
粋嬪ハン氏はその足で王妃ユン氏の部屋を訪ねました。王妃は勝手に会いに来ないようにという言いつけを破ったハン氏に会いませんでした。王妃は粋嬪ハン氏に体面を傷つけられていました。粋嬪ハン氏が宮殿を出ようとすると海陽大君が追いかけて仲を取り持つと言いました。粋嬪ハン氏は海陽大君に涙を見せました。優しい海陽大君は何があっても甥を守ると言いましたがそれを無視して粋嬪ハン氏は帰りました。その話はすぐに王妃のもとに届き、王妃は粋嬪ハン氏の無礼に腹を立てました。
「粋嬪の態度は無礼です。」
王妃は世祖に苦言を呈しました。世祖は王妃の言う通りにハン・ミョンフェを辞職させて六曹も都承旨に掌握させた、何が不満なのだと腹を立てました。世祖はかわいい粋嬪をよく思わない王妃が嫌いでした。世祖は粋嬪に親近感を覚えていました。
桂陽君婦人は王妃に侮辱されてよく辛抱していますねと妹の粋嬪ハン氏にきつく言いました。
「王妃様がとるべき態度ではありません。王妃は本性をあらわしたのです。」
ハン・チヒョンは漏れ聞こえる桂陽君婦人の声に聞き耳を立てていました。
「気性が荒い方ですな。」
ハン・チヒョンは言いました。
ハン・チヒョンは言いました。
王子は寺で法師と拝礼して気を鎮めようとしていました。世祖は海陽大君に「私が悪かった」と母のところに行くようにいいました。王妃についていた尚宮は内官に耳打ちをしました。
世祖は端宗の死を思い出しました。
「私はまさに悪鬼の生まれ変わりだ。この世によみがえった悪鬼の生まれ変わりに違いない。私はまさに悪鬼に違いない。」
世祖は嘆きました。孝寧大君は世祖に会おうとしましたが乱心している世祖の声が聞こえて世祖には会わずに帰りました。
世祖が王妃に腹を立てた情報は粋嬪ハン氏とハン・チヒョンのもとに届きました。
「嵐になってもらわねば困ります。」
ハン氏は血の嵐を望んでいました。上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)とシン・ミョン、亀城君らを対決させて政敵をくじくと言いました。
「上党君以外に私を大妃にできる者はいません。」
シン・スクチュはハン・ミョンフェの家を訪ねました。
ハン・ミョンフェは北方のハムギルドに朝廷が挙兵して民を虐殺するというデマが広がっていると言いました。するとシン・スクチュは私の息子を咸吉道の観察使に世祖が任命したので大丈夫だろうと言いました。ハン・ミョンフェは亀城君が都統使になるだろうと予言しました。
「殿下の狙いはそなたと私だ」
ハン・ミョンフェは笑いました。
世祖はハン・チヒョンに粋嬪の様子を尋ねました。ハン・チヒョンは粋嬪は喪服を着て自分は罪人だからとおとなしくしていたと言いました。
「罪人だと?はっはっはっは。」
世祖は笑い酒をあおりました。
亀城君の家。亀城君とシン・ミョンとク・ジャグァンは集まっていました。
「悪賢い女ではないか。」
亀城君は言いました。
「禍根となるでしょう。」
「粋嬪とハン・ミョンフェ。ジャグァン。彼らを始末する妙案はないか。」
「必ず時が来ます。」
「このまま倒れる奴らではない。」
「放っておいても古木は倒れるものです。」
「古木か。老いさらえば古木だ。」
「歩くのも大変ですか。」
ハン・ミョンフェの妻は夫を支えました。ハン・ミョンフェは腹を割って世祖と話せるのは私しかいないと笑いました。
孝寧大君はハン・ミョンフェを遠ざけるように世祖に諭しました。
世祖はハン・ファクに世話になったので粋嬪をかばっているというようなことを孝寧大君に話しました。孝寧大君はそんなことをしても罪は消えないと言いました。孝寧大君は世祖に王になる資格があると慰めると、世祖は涙を流しました。
咸吉道の民心が荒廃していました。世祖はシン・ミョンを咸吉道観察使に任命しオ・ウンを解任し急いで出発させました。これが朝鮮王朝史上最大のイ・シエ反乱となった。
イ・シエと弟イ・シハプは話し合っていました。イ・シハプはシン・ミョンが来れば民心が鎮まるのでシン・ミョンが来る前に決着をつけようと言いました。
イ・シエは検校門下府事(コムギョムナブサ、高麗時代の官職)イ・ウォンギョンの子孫で判永興大都守府事(パンヨンフンテドホブサ)イ・インファの息子でした。彼らは咸吉道に君臨していた豪族でした。そのためイ・シエには多くの者が隷属しており女真族とも親交がありました。イ・シエは慎重で緻密な性格の持ち主でした。
王妃は桂陽君婦人を呼びました。王妃はハン昭訓と息子を桂陽君婦人に見せびらかせました。王妃は粋嬪を傷つけたことで気をもんでいるというと、桂陽君婦人は無礼なのは妹のほうですと言いました。王妃は粋嬪に謝らなくてはならないので手を貸してくれと頼みました。
「太陽が西からのぼりそうだ。」
世祖は王妃が桂陽君婦人を呼び寄せたことに驚きました。
家に帰った桂陽君婦人は謝るのは王妃のほうだと王妃の悪口を言いました。
王妃が先に和解しようというと、イ・シエの乱が起きました。
「反乱が起きただと!首謀者は誰だ!」
世祖はブチ切れました。
感想
嫁姑のドロドロ愛憎劇、殺気まじりでおそろしーですね。世祖はこういったことには非常に鈍感ですね。気付かないふりをしているのでしょうか。あれだけ悪知恵を総動員して王位を奪ったのだから、悪意のうずまきに気が付かないはずはないのですが。