「薯童謠(ソドンヨ)」(全66話)第57話 王位奪還 のあらすじとネタバレ感想
第57話 王位奪還 あらすじ
ソンファ公主は床に座り込んで涙を流し泣きました。
寺を出た真平王は帰途へつきました。
「陛下、お話しがあります。」
女官ボミョンは真平王の前にひれ伏しました。
「公主様のお相手は百済威徳王(ウィドクワン)の四男武康太子(ムガンテジャ)です。」
ボミョンは真平王(チンピョンワン)に言いました。
百済(ペクチェ)。衛士部(ウィサブ)の達率(タルソル)の部屋。
ヨン・ギョンフ大将が部屋に入りチャンに知らせました。
「チン大人(デイン)はお父上に会いに新羅へ行かれました。」
「父上に?」
「はい。個人的な用とはこのことでしょう。」
「達率様。」
元奴婢の衛士部の兵トウィルが部屋に入ってきました。
「大変です。衛士佐平(ウィサチャピョン)が行方不明です。」
「何の話だ。」
「送られたはずの寺には現れてもいないそうです。」
衛士佐平サテッキルたちは船を盗まれ元山島に取り残されていました。
「稗(ひえ)の粥をどうぞ。何日も食べておられません。お体が心配です。」
兵士はサテッキルに粥をすすめました。
「いらん。」
サテッキルが山を見ると、黒い煙が出てました。
「あれは何だ?」
「山火事です。」
「行ってみろ。」
「はい。」
三人の兵士たちは山に行きました。夜になり彼らのうち二人が落とし穴に落ちました。
モンナス博士は黙って彼らを見ました。
翌日。
「なぜ帰ってこないのだ。」
サテッキルは部下を叱咤しました。
「煙はとまったので、食べ物を・・・探しに?あそこにまた煙です。今度は向こう側です。」
「どういうことだ。行ってみろ。」
サテッキルは兵士に見に行かせました。
四人の兵士が煙の方に走りました。
夜になりました。兵士は戻ってきませんでした。サテッキルは頭を押さえました。
「戻ったか?」
返事がありませんでした。
「誰もいないのか?」
サテッキルが小屋の外を見ると兵士が首を押さえて苦しんでいました。
「おい、何があった。しっかりしろ。」
サテッキルが粥の匂いをかぎました。
「毒が入っている。モンナス博士が死にやつらが戻ってきたのだ。」
繁みから音がしました。
「誰だ。出てこい!」
サテッキルは剣を抜きました。
「何者だ。さっさと出てこい。」
モンナス博士はサテッキルを怖い目でにらんでいました。
影はサテッキルを翻弄し、物が投げられました。
「誰だ。」
モンナス博士はサテッキルに襲い掛かりました。二人はもみ合いになり、そして妙な音がしました。
サテッキルの頭からは血が流れていました。サテッキルがうめき声を出すと彼の脚の上には大きな丸太が乗っていました。モンナス博士は血のにじむ腹を押さえていました。
「結局、こうして・・・お前と私は死ぬのだな。誰もいない場所で、結局、こうやって・・・お前に斬られた時から私はお前にその木をどかしてやれない。お前は私の仕掛けにはまり、私を助けられない。私は、弟子のお前を、お前は師である私をこんな目に遭わせた。一体なぜ・・・一体・・・・・。」
「知らないまま、死んだほうがいい。」
「言いなさい。言え。チャンに奪われたものが何なのか、言うんだ。」
「・・・国です。女です。権力です。恋です。私の人生です。自分です。私は、新羅の貴族です。新羅の花郎です。」
「何だと。」
「花郎として、新羅のため天の峠学舎に潜入しました。新羅の王の公主、ソンファ公主と結婚するために。しかし、その女性をチャンに奪われたのです。」
「それでは・・・。」
「チン・ガギョンは、新羅のソンファ公主です。」
「公主・・・・・・。」
「私は百済では悪者ですが、新羅に対しては恥じることなどありません。だが、チャンが邪魔をしました。邪魔して、私のすべてを何から何まで奪ったのです。私も阿佐太子と威徳王を殺したことは認めます。私とて、そんな方法で権力を得たくはありませんでした。そうせずに済む方法もあったはずです。チャンさえ、いなければ。私の恋は不純だったと?恋をして結婚する人間など、王室にいません。公主との愛が結ばれると信じる民などいません。無謀な真似をしたのも私ではなくチャンです。私ではなくチャンなのです。博士はチャンを煽りました。・・・チャンが私の罪を断罪できますか?ならば私はチャンの無謀さを責めます。私はチャンから何も奪っていませんがチャンの無謀な行動は私のすべてを失いました。正気を失った男と私を罵ってください。私でもわかっています。」
「キルや・・・・・・。」
「新羅人が百済の太子を殺して出世し、いつばれるかと夜も眠れません!正気ではいられません!」
「・・・・・・。」
サテッキルは泣きました。
「・・・よかった。こうして、一緒に逝けて幸せだ。チャンには自分の道を歩ませられる。お前にも安息の道を与えられる。本当になによりだ。」
「そんな話があるか!冗談じゃない!みんな殺す。殺してやる!四男は生きているんだろ?誰なんだ!チャンに四男は擁立させない。俺より出世させるものか。四男はどこだ。四男は。皆殺しにしてやる。四男はどこだーー!」
「うわーーーーーーー!」
サテッキルが暴れるとモンナス博士は崖の下に落ちました。
「博士!博士ーーー!」
王宮の裏山。
元山島から脱出したモジンはチャンと会いました。
「どうやってここに来たのですか?」
「キルにすべて気づかれたの。」
「彼が元山(ウォルサン)島に来たのですか?」
「まだ疑っていたらしいわ。」
「では、博士は・・・?」
「出し抜いたの。私たちがキルの船を奪ったのよ。」
「ええっ。博士たちは?」
「毎日来ていた船でチュソン島へ向かったわ。だから心配せずにどうするか早く決めろと。キルの単独行動ではないわ。」
「ええ。陛下と話しをしたはずです。」
「陛下はお前を疑っているのね?」
「半信半疑と。わかりました、手を打ちます。モジン様はチュソン島へ。」
「ええ、わかった。チャンあ。事が済んだら礼を尽くすわ。私はヨンガモを恨んできたわ。でも彼女がどれほど苦しんだかわかったわ。お前を博士に預けた理由もね。でもね、チャン。すべて終わったら博士を私に返して。・・・私も、一度くらい・・・・・・。」
「はい。モジン様。約束します。」
チャンとモジンは別れました。
モンナス博士は崖の途中で引っかかって倒れていました。
「う・・・・うっ・・・はあ。博士・・・。博士・・・。博士・・・。一人で、私を残して逝くのですか?私とは、市の道も共に歩みたくないのですか。結局私を師まで殺した男にして一人で逝くのですか。いいでしょう。私も知りたい。果てはどこか。私の悪行はどこへ行きつくのか。だから私は生き抜きます。生き抜いて四男を殺し、ソンファ公主を殺し、チャンも殺します。ほんの少しでも私に危害を加えた人間は全員殺します。一人残らず・・・。博士・・・はぁ、はぁ。」
サテッキルは丸太をどかそうともがいていました。
チン・ガギョン商団。チャンはソンファ公主とヨン・ギョンフ大将と会っていました。
「ええ?キルが?」
ソンファ公主たちはサテッキルが元山島にいることを知りました。
「では陛下が達率様を疑っていると?」
大将はチャンに聞きました。
「親衛隊長の話とは違います。」
「キルが陛下に進言したはずです。」
ソンファ公主が言いました。
「元山島にユリムを送りキルを始末しましょう。」
大将はサテッキルを暗殺しようといいました。
「はい。砦に連絡を。」
「キルが戻らなければ陛下に疑われます。戻る日を約束していたかも。」
ソンファ公主が言いました。
「蓮灯祭りの頃でしょう。」
大将は姫に言いました。
「商団を撤収する準備を。決行日も早めます。」
チャンは二人に支持しました。
「達率様。」
トウィルが部屋に入ってきました。
「どうした。」
「便殿(ピョンジョン)会議に出ろと。」
「私もか?」
「衛士佐平が留守なので達率様が出ろと。」
便殿。貴族たちは皆集まりました。
「善徳寺へ行かれたとか。」
サドゥガンはウヨン公主に尋ねました。
「はい。」
「準備は問題ありませんか?」
「はい。基本的な準備は終えました。」
法王(扶余損)が部屋に入ってきました。貴族たちは立ち上がり礼をしました。
「ウヨンも帰ったか。」
「はい。」
「蓮灯祭の日程を教えろ。」
「蓮灯祭は阿錯(アチャク、現在の益山イクサン)の善徳寺(ソンドクサ)で行われます。開催日は五日後の二月二十八日です。」
ウヨン公主は兄に答えました。
「(五日後・・・・・・。)」
チャンは心の中でつぶやきました。
「準備は順調です。陛下と貴族の皆さまは二日後に出発し、一日お休みください。前夜祭を手始めに十日間行事があります。」
「今回は、陛下の初めての遠出です。どなたも武器は所持できません。貴族の方々も護衛は五人までといたします。親衛隊二百人と衛士部四百人が陛下と皆さまをお守りしますのでご安心ください。」
フクチピョンは貴族たちに言いました。
「ところで、ソンドク寺に行った衛士佐平は?」
貴族の一人がフクチピョンに尋ねました。
「それは・・・・・。」
フクチピョンが答えに窮するとプヨソンが発言しました。
「衛士佐平はまだ現地で私のために働いておる。(なぜ衛士佐平は戻ってこないのだ?)」
会議が終わり、ウヨン公主はチャンに言いました。
「衛士佐平は別のところに・・・。」
「わかっています。衛士佐平は元山島にいます。」
「何ですって?陛下が疑っているの?」
「私にも、わかりません。」
皇后とウヨン公主の母は部屋で談笑していました。
「媽媽(マーマー)。ご存じで?」
王妃は皇太后に言いました。
「私にもわかりません。」
ウヨン公主は母(皇太后)の部屋に行きました。
「ウヨン公主です。」
「通しなさい。」
ウヨン公主が部屋に入ってきました。
「皇后様はどのようなご用件ですか?蓮灯祭の衣装のことでご相談があるのですが。」
ウヨン公主は皇后に言いました。
「そうか。」
「陛下が調査に来たそうよ。」
皇太后が言いました。
「何でしょうか。」
「陛下には内密にと言われたのですが、いくら調べてもわからなくて。」
ウヨン公主と年頃は同じかと思われる若い皇后は言いました
「何がですか?」
「衛士佐平と達率です。」
「どうして?」
「衛士佐平と達率が反目を続けているので陛下のことが心配なのです。特に衛士佐平はチャンを警戒しています。理由を知っていますか?陛下は二人が憎みあっているとお思いですが、理由がわかりません。」
「女人のせいです。」
「女人(ヨイン)?」
「同じ女人に心を寄せたため、衛士佐平は深く傷ついたそうです。」
「そうなのか?」
「はい。」
「モンナス博士とチャンを裏切ったのもそのためです。」
「なるほど。」
プヨソンの部屋。
「衛士佐平が正しかったのか?だとしたら報告しに戻ってくるはずだ。何の確証を得られず時間を持て余しているのか?」
皇后が部屋に入ってきました。
「ようこそおいでくださった。」
「陛下、二人が争いをしている理由がわかりました。女人をめぐる争いです。」
「女人?」
「同じ女性に心を寄せ衛士佐平が傷ついたとか。だから太学舎のモンナス博士とチャンを裏切ったのです。」
「たかが女人のために敵対を?」
「寛大なお心の陛下にはわからないかもしれません。小さな恨みこそが人の心を揺さぶるものなのです。」
皇后は醜聞の情報を得て嬉しそうにプヨソンに話しました。
「・・・・・・。」
「陛下、フクチピョンです。」
「入れ。」
フクチピョンは二本の巻物をプヨソンに渡しました。
「蓮灯祭での護衛計画です。親衛隊二百人と衛士部四百人です。」
「そうか。」
「ところで陛下、衛士佐平が不在ですが衛士部の引率は?」
「達率に任せ恩率を元山島へ送れ。」
「へっ?」
「衛士佐平が元山島にいるのだ。」
「ええ?」
「達率に気づかれぬよう兵を送り衛士佐平を戻らせろ。」
「はい。」
衛士部の部屋。
恩率(ウンソル)はチャンに何かを話していました。
「衛士佐平様の代わりに・・。」
そこにフクチピョンが入ってきました。
「恩率は元山島へ行け。」
「元山島にですか?」
「衛士佐平は達率を疑い島に渡った。証拠がないなら戻ればいいのに。恩率は蓮灯祭までに衛士佐平を善徳寺に来させろ。」
「はい。明朝の船で行きます。」
「今すぐ行け。」
恩率は部屋を出ていきました。
「ははははは。蓮灯祭へ連れていく衛士部の兵を四百人選んでおけ。」
「私が?」
「そうとも。」
「衛士佐平がいないからな。ははははは。」
チャンはトウィルに命令をしました。
「私は砦に行く。チン大人を呼べ。」
「はい。」
チャンは馬を駆りました。
砦。
「衛士佐平がも元山島に?」
ワング将軍は大将に言いました。
「ユリム港が衛士佐平を始末してくれ。」
大将はユリムに言いました。
「はい。」
チャンが来ました。
「なぜここへ?何かあったのですか?」
「どうなさいましたか?」
「蓮灯祭の時に決行する。」
アビジ商団。
「蓮灯祭は近いのに戻らぬとは妙だ。」
キム・サフムは戻らぬ息子を心配し、元花郎の側近に言いました。
「そう思いますが・・・・・・。」
「元山島の件がいくら重要でも蓮灯祭は王室の行事だ。衛士佐平が欠けるなどありえん。」
「失礼します。」
「何だ?」
部下が部屋に入ってきました。
「変です。ある人を見ました。元山島へ行ったモジン技術者です。こっそり船を借りていました。」
「行こう!」
「はい。」
サフムたち三人は港に行きました。
「こちらです。あそこに、あの船です。」
「行先は?」
「さあ、わかりません。」
「嫌な予感がする。船を用意する。元山島へ行け。」
キム・サフムは元花郎に命じました。
砦。チャンたち仲間は集まっていました。
「ええ?蓮灯祭に決行を?五月を念頭に準備中なので無理では?」
ソンファ公主はチャンに言いました。
「仕方ありません。明日恩率が元山島へ。ユリム公がサテッキルを殺しても恩率まで戻らなければ私が陛下に疑われます。五月までもちません。退却するか、試してみるかどちらかです。」
とチャン。
「同行する兵士は太子様が選べます。衛士佐平もいません。我々の兵は衛士部に百人、親衛隊に二十人ほどいます。」
大将は皆に言いました。
「私とユリム公の兵士は約千人です。」
ワング将軍は言いました。
「ですが、ヘドジュたち貴族をまだ抱き込めていません。どうします?」
ソンファ公主が言いました。
「問題はそれです。」
「東明祭では陛下と貴族は別々に行動しますが今回は貴族も同行します。」
「はい。お嬢様とワング将軍が貴族の担当をしてください。前夜の放生游燈祭(パンセンユドゥンチェ)しか機会はありません。翌日からは民が大勢集まります。陛下と貴族も行動を共にするかも。しかし放生游燈祭では貴族だけが灯籠を流し、陛下は一人で千拝(チョンベ)を行います。」
「では、その時に?」
「はい。千拝を告げる太鼓の音とともに進撃します。衛士部の三百人を寺の外郭に配置しておきます。大将は彼らを足止めしてください。我々と通じる百人は善徳寺の塀を囲むように配置します。そうすれば善徳寺は我々に包囲され親衛隊と陛下だけになります。この計画は実質的に我々衛士部の百人と親衛隊の二十人で行います。」
「もし善徳寺の外郭の三百人が攻めよってきたら?厳しい状況に。」
大将がチャンに訊きました。
「それは避けなければ。反撃される前にプヨソンを捕らえます。」
「ならば、衛士部の百人に計画を知らせましたか?」
「今は幹部しか知らんが決行と同時に伝わるだろう。」
ワング将軍は答えました。
「親衛隊が問題ですね。」
ユリムが言いました。
「大方はプヨソンをよく思っていない。プヨソンが捕まれば太子様に従うはずだ。先に親衛隊を味方にしたいがそんな時間もない。」
「決行を繰り上げるしかありません。元山島のサテッキルに気づかれたのですから。攻撃が始まったらお嬢様は貴族たちに事実を伝えてください。」
「陛下を捕まえたら?」
「殺さずに。」
皆は顔を見合わせました。
「皆の前で罪を問うのです。」
「しかしそれは危険です。」
「威徳王が自ら裁くのは王として当然ですが、私は違います。私は王位を奪うわけではありません。今の王の罪を民に問い、簒奪者だと知らしめます。容易ではありませんが実行します。そのつもりで。」
夜。
「ついに今夜、出撃する。」
ワング将軍は兵士たちに言いました。
「わー。」
兵士の士気は高まりました。
「さあ、いよいよ時が来た。」
ヨン・ギョンフ大将が言いました。
「わー。」
「必ずや衛士佐平を阻止するのだ。」
ユリムが言いました。
「はい。」
三人は太子にひざまずきました。
「殿下、我々は出発します。」
ソンファ公主が取った剣をチャンは三人に渡しました。
「私は死をも覚悟している皆への礼は、入城してから言う。」
「今我々は天の手中にある。敵の手中にはない。出発しろ。」
兵士たちはチャンを称えました。
元花郎は兵士を連れて元山島に向けて出発しました。
ユリムも兵士を連れて島に出発しました。
威徳王の墓。
「父上・・・・・・。」
チャンは墓の前にいました。
「お前の復讐心と怒りは私が背負って生きたい。私と阿佐の思いを継げ。百済を再興するのだ。私もお前も自分の役割を果たすのだ。」
チャンは威徳王のことを思い出しました。
「百済を・・・百済を頼む・・・チャンや。」
チャンは死にゆく阿佐太子のことを思い出しました。
「陛下と太子様が夢見ていた百済の姿を教えてください。私がやってみます。知識も能力も必要なものはみにつけ他人にひざまずいてもやってみます。たった一日で終わろうともやっています。」
チャンは昔父に誓ったことを思い出しました。
「私に力をください。父上、一度だけ・・・。」
チャンの手をソンファ公主は取り指輪をはめました。
「殿下は天の手中にあるとおっしゃいましたが、それは違います。天が太子様の手中にあるのです。だから私は少しも怖くありません。」
王の部屋の前。ウヨン公主は箱を持ち隠れていました。プヨソンと皇后が出かけると、ウヨン公主はプヨソンの部屋に忍び込みました。
「落ち着くのよ。チャンの五色夜明珠がここにあるはず。」
ウヨン公主はチャンの身分を証明する首飾りを探しました。
「陛下。城外で身に着けていただく短剣を忘れました。」
皇后がプヨソンに言いました。
「あれは戦争の時に持たせてくれるお守りでは?」
「神器のように陛下の御身を守ってくれると、サビ城を出るときは必ずお持ちでございました。」
「そうだったな。持って来い。」
プヨソンはフクチピョンに命じました。
「はい。わかりました。」
ウヨン公主が部屋で探していると誰かが来る音がしたので机の下に隠れました。
フクチピョンは剣をとると箱が置いてあるのに気が付きました。
「誰の箱だ?侍従が置いて行ったのか・・・?」
フクチピョンがウヨン公主の箱を開けると金の詩集の入った王の衣が入っていました。
フクチピョンは気にせずに部屋を出ました。
ウヨン公主は引き出しから朱色の箱を取り出し鍵を開けて五色夜明珠を取り出し衣の中にしまいました。
「ああ、陛下は駕籠に?」
「はい。お見送りして戻ることです。」
「陛下は服をお忘れになったのか?」
「服は太学舎の者が持っていく手はずです。」
「では、寝所に服が置いてあったのは誰の物だ?」
「陛下がお着替えになる前にお召しになっていた服では?」
「そうか。わかった。行け。」
フクチピョンは女官に尋ねていました。
ウヨン公主が部屋を出ようとすると先ほどの女官二人が入ってきました。
「どこに行ってたの?」
「陛下がご出発になりお見送りを。」
「なんだと。もうお出かけになったのか。」
「はい。公主さまはこちらで何を?」
「ここで陛下が着替えていくよう行事服を持参したの。」
「では親衛隊長にお会いになりませんでしたか?」
「私はお前たちを探していたのだ。その間に来たようね。今の服で行くしかないわね。持ち場を離れぬように。」
ウヨン公主は部屋を出ていきました。
「公主様の様子が変じゃない?」
「なぜ服を置いて捜しに行ったのかしら?」
「親衛隊長に知らせる?」
「そうすべきよね。」
「陛下、政事の心配はせずに安心してお出かけを。」
ヘドジュはプヨソンに言いました。
「ああ。行ってくる。」
「お父さま、行ってまいります。」
「お気をつけて。」
「出発だ。」
プヨソンと皇后は輿に乗り出発しました。
「もう出発したの?」
「こんなことで止めたら叱られるんじゃない?」
寝殿の女官はフクチピョンに言いませんでした。
王の一行は善徳寺に向かいました。チャンも行列についていきました。
サテッキルはまだ丸太に挟まれていました。
感想
いよいよラストですか???ですよね。サテッキルはモンナス博士に自分の正体を洗いざらい話してしまいました。モンナス博士は反応がないところを見ると、死んじゃったのでしょうか!?サテッキルは極悪人の本性全開ですね。危機になると人間の本性があらわれるというより、狐の皮をかぶっていただけですから、もともと悪い子だったんですね。ソンファ姫のことを前から「物」としか思ってないし。性根が悪い人は自分を偽り自分を隠さなければいけませんから大変ですね。プヨソンは王になったら善く思われたいといつか言ってましたね。今はプヨソンが王位についてから一体どれくらいの期間がたったのでしょうね。チャンが百済に来てから二年ですから、そう長くはないと思うのですが。いよいよ明日は最終回なんじゃない!?最終回が楽しみです。