「王と妃」 第97話 老いた王
あらすじ
粋嬪ハン氏は涙を流しながら王妃に上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)の息子と11歳の乽山君が結婚できたら心強いと訴えました。
粋嬪ハン氏は世祖のところに行き王妃に叱られたと告げ口をしました。そしてハン・ミョンフェの娘と乽山君結婚の許しを請いました。
「権力とは何かを知った私はあきらめられません。」
粋嬪ハン氏は功臣の圧力から王室を守るために上党君の力が必要だと言いました。
世祖はハン氏の話を聞いていつまで流血が続くのだと震えました。
首陽大君が端宗の叔父だったように海陽大君もまた月山君と乽山君の叔父でした。誰が実権を握るかによって再び血の嵐が吹きかねない状況でした。
乽山君は海陽大君に弓を習っていましたが、粋嬪ハン氏が来て怖い顔をして乽山君を連れて帰りました。海陽大君はこのことを母に報告しました。
粋嬪ハン氏は乽山君のふくらはぎを(海陽大君と仲良くしたことを理由に)息子に理由も教えずむち打ちました。ハン氏は従兄に折檻した理由を話しました。「世子殿下から弓をいただくことに何か不都合でもあるのですか?」従兄はそういうと、ハン氏は乽山君は愛情に飢えているので魯山君のように実の父親よりも叔父の海陽大君を従い魯山君の二の舞になるのではと警戒していたのでした。
「魯山君は在位中に叔父を殺していれば王位を守れたのです。」
粋嬪ハン氏は情があったせいで魯山君が殺されたと先王の失脚と死について冷静に分析していました。
射会の宴席。
世祖はホン・ユンソンに十本十中を達成したら何でも望みをきいてやると言いました。ホン・ユンソンは功臣田と科田を返してほしいと世祖に言いました。亀城君は何と無礼なと怒りましたが世祖はホン・ユンソンに条件を飲むと言いました。十発をすべて命中させたホン・ユンソンは世祖が十発中五つ的に当てたらこのことはなかったことにすると世祖を挑発しました。世祖は弓を射りましたが手が震えて的を外しました。世祖は三発目を射ろうとしましたが、意識を失ってしまいました。ハン・ミョンフェはホン・ユンソンを叩きました。
「でっ・・・殿下がはじめられたことです。」
ホン・ユンソンは言い訳をしました。
「この愚か者!少しは考えて行動しろ!」
シン・スクチュはホン・ユンソンを叱りました。
ホン・ユンソンは世祖の寝所の前に「殺してください」と地面に座して許しを請いました。
「ホン・ユンソンは私を諫めてくれたのだ。もう無茶をできる歳ではない。」
ホン・ユンソンを投獄しようという亀城君に世祖は言いました。
世祖はハン・ミョンフェに語りました。
「様々なことがこじれてしまったな。私はもう長くはない。粋嬪が気の毒でならぬ。憎らしく思うこともある。だら懿敬世子や幼い孫たちのことを考えると粋嬪が哀れで悲しく思える。二十一歳の若さで寡婦となり女手一つで子を育てている。それだけではない。順当にいけば本来は大妃になれたのだ。私は粋嬪に借りがある。一つは返したがいくら返しても返しきれぬ。」
「殿下のご厚情に感じ入るばかりでございます。」
ハン・ミョンフェは三つ指突いて泣きました。
「上党君の娘を乽山君の嫁に貰いたい。」
「殿下・・・・・・。」
ハン・ミョンフェはご機嫌でした。ハン・ミョンフェは「お陰で私も助かったよ」とホン・ユンソンに言いました。
世祖は妻を「人が変わった」と非難しました。
「海陽大君の王位継承が確実なら粋嬪はもっと心細いだろう。これ以上何も言うな。」
粋嬪ハン氏は桂陽君夫人や上党君夫人から「おめでとうございます」と祝われていました。粋嬪ハン氏は喜びました。
世祖は王妃が冷たい、粋嬪が哀れだと王妃に腹を立てました。
乽山君は領議政ハンの娘を永膺大君の屋敷で迎えることになりました。世祖は内宗親(ネジョンチン、王族)と詳定所(サンジョンソ、政策を制定する臨時機関)の者がちに命じ、ハン・ミョンフェの娘を迎えに行かせた。世祖亡き後の権力争いがここからはじまるのでありました。
「何を覗いている。皆部屋に戻れ。」
十人ほどの奴婢たちは乽山君の初夜を覗いていました。
乽山君は妻のかんざしを取りました。
奴婢たちは我先にと幼い子供の情事を覗き見ていました。
ハン・ミョンフェは領議政を辞任すると妻とヒャンイに言いました。
「おそらく殿下と私は前世で夫婦だったのだろう。」
亀城君イ・ジュンは世祖とハン・ミョンフェが手を取ったことを警戒していました。
「殿下と上党君は相性が合いそうで会わぬのです。殿下は王位を奪い取ったのです。だがハン・ミョンフェは殿下よりあくどい男です。このままハン・ミョンフェを生かしておけば必ず王室を脅かす存在になります。」
ユ・ジャグァンは亀城君に言いました。
「ではどうすればよいのだ?」
「こうすれば?」
「そうか。その手があったか。」
「その通りになされば必ずハン・ミョンフェは辞任します。」
「ジャグァン。そなたの妙案は尽きぬな。」
亀城君はユ・ジャグァンの頭脳を頼りました。
「おかゆいのですか殿下。」
チョン内官は寝ようとせず体をかく世祖に言いました。
「いくら考えても妙案が浮かばぬのだ。」
「それでは亀城君をお呼びいたしましょうか。」
「亀城君の頭では解決できぬ。」
「ならば・・・・・・。」
世祖はハン・ミョンフェのずる賢さに手を焼いていました。
「辞任するように仕向けねば。王妃の言葉は正しかったのだ。ハン・ミョンフェに世子を頼むとは、猫に魚を守れという以上に愚かなことだ。」
感想
世祖の考えがころころ変わって、なぜか終わり際にいつものキレを取り戻したようです。時々世祖は知性が低下しているという演出だったのだろうか。世祖は粋嬪に対する考えは見直している様子はありません。そして世祖は海陽大君の味方であるはずなのに、月山君と乽山君に対する警戒心がないのはこれまでの世祖らしくありません。いったいどうしたというのでしょうか。冷徹な世祖はどうして粋嬪に同情しているのだろうか。話しの筋が通っていない気もしますが、世祖の頭がまともじゃないとすれば十分あり得る展開です。