「王と妃」 第70話 上王冊立
70話 上王冊立 あらすじ
上王の端宗は世祖(首陽大君)の拝礼を受けない、「殿下から上王の地位を賜ったので、殿下に拝礼するのは礼儀に反する」ということでした。
シン・スクチュとクォン・ラムは世祖と譲寧大君を連れたまま戸惑いました。スクチュは「甥だから叔父上に拝礼すること」は礼儀に反することだと世祖に言いました。シン・スクチュは上王に取り次ぎを頼みましたが端宗は拝礼を受けることはでいない、自分から康寧殿へ世祖に拝礼に行くと断りました。
世祖「都承旨、もう一度取り次げ。」
端宗は昌徳宮から出てきました。「どうして私の考えを分かってくれぬのだ。立ちなさい都承旨。私から叔父上にお礼を申し上げに行く。安心せよ。私を心配してくれている都承旨そなたに礼を言うぞ。」端宗は世祖のところに行きました。世祖は優しく端宗を見つめました。端宗は「どう感謝を申し上げればよいか言葉が見つかりません。百歩譲っても辞退するのが礼儀でしょう。拝礼いたします。」と昌徳宮の外で端宗は拝礼を始めました。「殿下、おやめください。」世祖は輿から降りて端宗を止めました。端宗は「本来なら庶民に降格され一生償っても償いきれぬところを私の顔を立ててくださったのです、だから私が拝礼すべきなのです、どうか拝礼をお受けください」と世祖に言いました。
和やかならぬ雰囲気の中、端宗は地面にひれ伏し世祖に拝礼しました。
ハン・ミョンフェは世子妃に事を伝えました。ハン氏はあっはっはっはと端宗を笑いました。ミョンフェは保守勢力の勢いが強まるだろう、と言いました。「上王の株が下がったわね」とハン氏は言いました。ハン氏はミョンフェに同じ船に乗っていると信じてよいのですね?と言いましたらミョンフェもハン氏に忠誠心を示しました。
ホン淑儀は王妃ユン氏の慈悲深さをたたえました。端宗も王妃の配慮に感謝の言葉もありませんと礼を述べました。ユン氏は憐れむ目で端宗を見て涙を流しました。
譲寧大君は金宗瑞と安平大君の仲間がまだ残っているので錦城大君と恵嬪を殺さなければなりませんと世祖に言いました。
大妃ソン氏は糸車の使い方をパク尚宮に習っていました。王妃ユン氏が大妃ソン氏のところに来ました。大妃は拝礼しようとする王妃にそのまま座ってくれるようにお願いしました。大妃は民の着物が来てみたいという上王のために糸を紡いでいたといいました。王妃ユン氏は大妃にお受入くださいと頼みました。大妃は何のことですか?と知らないふりをしました。王妃の頼みで上王は世祖の宴を受け入れました(が拝礼は受けませんでした)。
端宗が世祖(首陽大君)の拝礼を受けなかったのは世祖に反発する勢力に新たな意味を与えました。
ソン・サンムンとハン・ミョンフェは宴に出席していませんでした。ハン・ミョンフェは上王を認めていないとサンムンに言いました。サンムンはハン・ミョンフェをにらみました。
翌年、首陽大君夫人ユン氏は王妃に冊立されました。首陽大君は次々と人事を発表しました。首陽大君は議政府署事制を無視していました。
懿敬世子(桃源君)は上王の端宗に拝礼しました。端宗は懿敬世子の健康を願いました。
世子妃は上王が生きている限り玉座は安泰ではないと桂陽君夫人に言いました。
「だまされたのが悔しい。ただ笑っている己が哀れでなりません」端宗は涙を流しました。
「天が、助けてくださるはずです。」義父のソン・ヒョンスは端宗をなぐさめました。
端宗は自分の状況を理解するまでに成長していました。
端宗は自分の状況を理解するまでに成長していました。
ハン・ミョンフェは居留守を使ってクォン・ラムを避けていました。ハン・ミョンフェは嵐の前なのでおとなしくしていました。
クォン・ラムとシン・スクチュは議政府署事制が廃止になるのではと懸念していました。
ハ・ウィジはソン・スン(ソン・サンムンの父)のもとを訪問しました。
ハン・ウィジ、字は天章(チョンジャン)、号は丹渓(タンゲ)で出身地は晋州(チンジュ)だ。世宗20年科挙の文科で主席合格。官職に就いた。剛直な性格で正しくないと判断すれば王に直言。出世の道は平たんではなかった。そんな彼を世祖は重用したので集賢殿の学者の中には彼を疑う者がいた。それをソンは冗談にした「目くそが鼻くそを笑ったな」のである。
ハ・ウィジとソン・サンムンは話し合っていました。
ソン・サンムン「先日は探りを入れられたよ。パク・ペンニョンを重用したいがどう思うかとな。」
ハ・ウィジ「首陽大君の下で働くとなるとはらわたが煮えくり返る。職を辞して野に下ろうかと思う。」
ソン・サンムンは「毎日耐えているのだ。上王様は王位を奪われ昌徳宮に幽閉されている。いっそこの場で死にたいがそれでも悔しさは晴れぬ。しかし、生きねば。生き残ってこそ上王様を復位させることもできるのだ。」
ハ・ウィジは自らの浅はかさを反省しました。
世祖(首陽大君)は夜中に都承旨のシン・スクチュを呼び酒を注ぎました。
世祖「議政府署事制をどう思う?酒がこぼれているぞ。はっはっはっは。驚かせてしまったようだな。私はこう思う。主君が統治力を発揮するためには六曹を直接治めるべきであると思わぬか都承旨。六曹は議政府と協議せずに万事承丞府を通して大殿へ報告するよう王命をまとめよ。今後は朝廷のすべてを私が統括する。」
シン・スクチュに反論する隙は与えられませんでした。
感想
時代が逆行する古典的な政治をとる首陽大君。李芳遠のようにより単純で原始的な政治形態へとなりました。つまり、自分が好き放題するために権力を奪ったという事実に変わりありません。官僚の助言をきいて知恵を総動員してより多くの仕事が同時に行えるようにする政治とは正反対です。当然血みどろの結果になったことは明らかで、この政治形態にしたばかりに暴君が現れてしまいます。チョン・ドジョンが愚かな王の代になったときの国力の低下と治安の乱れ、などの諸問題が、周辺の女真を勢いづかせることにもつながります。そして清が中国と朝鮮を支配する結果になりました。王の独裁のダメなところは、ダメな王があらわれ外敵の脅威が増すことです。何度もこれが原因により滅んできた王朝は数知れず。弱肉強食の政治ではひとりひとりが自分の君主となり自分を管理することができないので国民の人間性も荒廃してしまうことでしょう。端宗が上王となったことでうっとおしい敵から毎日のように親類を殺せといわれることはなくなりました。ほうっておけば端宗の気力が回復し、精神的に強くなっただろうことは容易に想像できますね。今の私は端宗には同情していますが、もし私が首陽大君の恩恵を受ける立場だったら、やはり端宗は「玉座を脅かす心配の種」として映ることでしょう。物事の道理に照らし合わせれば首陽は悪人です。その間違っていることを間違っていると貫き通した集賢殿の学士は尊敬に値することだと思います。