「王と妃」 第81話 孤独な上王 とあらすじネタバレ感想
81話 孤独な上王 あらすじ
譲寧大君は世祖(首陽大君)をたしなめました。
「考えたのです。彼らが命を捧げてくれる臣下が私にいるだろうかと。彼らが欲得ずくで謀反を企んだと思いはじめは怒りが込み上げました。忠義を尽くされる上王様に羨望を覚えました。譲寧叔父上。私は忠臣たちを殺しました。」
「ならば上王をこのまま昌徳宮に置いておくのですか。上王が昌徳宮にいる限り謀反は絶えません。それはおわかりのはずです。甥の将来を考えるなら上王から降格し宮殿の外に住まわせるのが正しい選択です。昌徳宮の上王もそれを望んでいるはずです。死六臣を忠臣扱いするなら他のものも競って彼らの真似をするでしょう。」
「廃位はできん。できぬからこそこれほどまでに苦しんでいるのです。」
「ではどうなさるのですか?」
「廃位はしませんが厳しく対処します。幼い甥が叔父に譲位した美談を地で汚したくないのです。それに上王様を廃位すれば民は悲しむでしょう。ですが謀反はあってはなりません。ご安心ください叔父上。昌徳宮の上王様をめぐる波乱はこれ以上置きません。」
「殿下のお考えがわからぬ。」
譲寧大君はハン・ミョンフェにつぶやいて去りました。
「昌徳宮を幾重にも囲んで警備中です。府院君も立ち入り禁止にしました。殿下は知らぬふりをなさってください。ですが上王が幽閉中のように見えたらまた謀反が起きるかもしれません。それでひと月に一回ほど上王様と公の行事に出席なさるのがよいかと。寧陽尉と錦城大君はどうなさるおつもりですか?」
ハン・ミョンフェは世祖に今後の方針について尋ねました。
「私が酒を贈るのがよいだろう。」
「二度と謀反を起こしてはならん。わかるな。」
「謀反の兆しがないかしかと調べます。」
「私たちは心を一つにして同じ目標を追っている。そなたの耳と目は私の耳と目だ。これからは私に尋ねるな。そなたの思うとおりに進めてよい。」
「誠にありがとうございます。」
ハン・ミョンフェは世祖に拝礼しました。
王がハン・ミョンフェに一心同体だと言ったうわさが広まった。ハン・ミョンフェは権力を手中に収めたのである。
両班たちは楼閣で酒を飲んでいました。
「兄上、ハン殿の天下ですね。」
ホン・ユンソンはミョンフェをおだてました。
「はっはっはっは。」
「殿下に一心同体といわれたそうだが?」
「そんな事は仰せにならなかった。」
「なんですって兄上?みんなそういってますよ。」
「殿下は私の信義をお確かめになっただけだ。」
「殿下はやっとお目覚めになったのだ。生死をともにした功臣を遠ざけ学者を重用したから報いを受けたのでは?兄上、この際議政府の老人たちを辞職させるべきです。殿下の側近が重職に就けば謀反を企む者もおりますまい。」
「その通りです。謀反が発覚した時大臣たちは見物していただけです。」
「様子をうかがい殿下が劣勢になったら上王に取り入るやつらばかりです。」
「それくらいにしておけ。兵曹参判なら少しは考えてものを言え。」
「何を考えろと?」
「チッチッチッチ。」
ハン・ミョンフェはバカなホン・ユンソンをたしなめました。
チョン・チャンソン親子がハン・ミョンフェの宴席を訪れました。
「はっはっは。立たんでよい。座ったままで結構だ。」
「どんな御用でいらしたのか?」
「迷惑か?」
「とんでもない。あちらへどうぞ。遠慮せず上がってください。」
ハン・ミョンフェはキム・ジルを席に上げました。
「客が上座に座るなんて。」
「右賛成大監がおられなければ我々は殺されてさらし首になっておりました。」
ハン・ミョンフェはチョン・チャンソンを立って出迎えました。
「さあ、いっぱいどうぞ。」
ホン・ユンソンは腹を立てて机をたたき立ち上がりました。
「事が成功していたら領議政になっていた人がよくもぬけぬけと。癪に障るのでここにはいられません。」
ホン・ユンソンは帰りました。
「あやつときたら。」
「ふっはっはっは。実にうまい酒だ。逆徒とののしられながら飲む酒は実にうまいな都承旨兵監。」
「ならば今後は私がののしられることにします大監。」
ハン・ミョンフェはチョン・チャンソンをかばいました。
「そしられるのもおつなものだ。」
「はっはっはっは。」
「さあ飲みましょう。」
「これからは嬪宮媽媽の天下になります。ご機嫌うかがいに行ってください。」
ヒャンイは嬪宮ハン・ミョンフェの妻ミン氏に宮殿に行くように助言しました。
「呼ばれもしないのに宮殿に行っても?」
「世子妃様はミョンフェ様を信じておられます。少しは如才なく振る舞ってくださいまし。世子様が王になられるにはハン様が必要ですから。」
「そんなわけはないでしょう。」
「お金が入用になったら私が集めます。奥様は嬪宮媽媽のご機嫌を取ってください。」
「そなたに聞きたいことがあるわ。主人は袖の下を受けているの?」
「それは当たり前でしょう。」
「今までは清廉潔白に生きてきた人よ。」
「宮直をしていた時とは状況が違います。袖の下をもらうのも絆のうちです。人とは絆がなければ政治はできません。袖の下はもらい方によって損にも得にもなります。ミョンフェ様は遠からず領議政になられます。殿下にとってかけがえのない方ゆえ当然ではありませぬか。」
「はっはっはっは。はっはっはっは。さあ飲もう。ホン・ユンソンは礼儀を知らぬのです。さあどうぞ。」
キム・ジルとチョン・チャンソン、ハン・ミョンフェ以外の両班は宴から引き上げました。
ハン・ミョンフェはチョン・チャンソンに酒を注ぎました。
「気にしないでくれ。あのくらいなんでもない。」
「度量の広いお方ですね。」
「はっはっはっは。なあミョンフェよ。私と手を結ぼう。私は誰よりも殿下のお気持ちを承知している。」
「どういう意味ですか?」
「私は殿下が何を望んでおられるか見抜いている。」
「そうですか。」
「なあミョンフェよ。私とともに、一つの時代を築き上げよう。」
「そうしましょう。」
「ありがたい。本当に礼を言うぞ。ありがとう。」
チョン・チャンソンはハン・ミョンフェの手を取り固く握りました。
端宗は昌徳宮から外を眺めていました。
昌徳宮をたくさんの兵士が取り囲んでいました。
ソン・ヒョンスはその外で端宗と娘に思いを寄せました。
王妃ユン氏は世祖に懇願しました。
「昌徳宮を守っている兵は府院君も通さぬそうです。私が送った大殿尚宮まで・・・・・・。」
「そうか。ならば王妃が自分で行ってみてはどうだ?」
「上王様が幽閉されていることが噂がなったら大変です。」
「甥の身を案じて警備しているのだ。よいか。出入りは自由だったから外戚は謀反を企んだ。ソン・サンムンらも上王様から謀反の同意を得たという噂だ。私は目をつぶったものの議政府と六曹の重臣たちが抗議したら甥も責任をとるはめになったはずだ。私は誰よりも甥の安全を気にかけている。これ以上口出しするな!」
「どうでしたか媽媽。」
ホン淑儀は王妃に訊きました。
「ご立腹になられました。」
「剣を下賜しながら私を斬れと言ったらしい。私がこれほど庇ってきたのに・・・・・・。」
「申訳ございませんがお声が聞こえませんでした。」
チョン内官は聞こえないふりをしました。
「考えただけでぞっとする話ではないか。」
王大妃ソン氏は糸車をまわして絹の糸を作っていました。
「私が手伝おうか?」
端宗は妻に言いました。
「紡いだ糸を絡まぬように巻いてください。」
「こうしていると時間が経つのも忘れてしまいそうだ。」
パク尚宮はほほえましく見守っていました。
「上王殿下が糸をお紡ぎになっているの?」
王妃は内官に尋ねました。
「はい媽媽。」
「お止めしなかったのか?上王殿下の威厳が台無しではないか。」
懿敬世子は言いました。
「内官を責めないで。上王殿下はおつらくて王大妃様が気をまぎらわせようとなさったのよ。南無観世音菩薩。」
懿敬世子は妻の嬪宮ホン氏に言いました。
「糸巻きですって?それすら贅沢では?」
「嬪宮そなたは何を言うのだ。」
「父上が帰国なされます。殿下が父を派遣なさったのは意図があってのことです。」
「どんな意図だ。」
「従兄を父のもとに送ったので近々吉報が届くかと。」
「殿下は何を命じた。」
「上王を廃位する承諾を明の皇帝から得よと。世子様のためでございます。父は皇帝の承諾を得たはずです。」
「嬪宮そなたは誠に恐ろしい人間だな。」
「世子様は王位をお継ぎください。そうすれば世子様の子孫も王位を継げます。」
「上王殿下を廃位することは道理に反している・・・げふっげふっ・・・」
ハン氏に心をかき乱された懿敬世子は激しく咳き込みました。
病気で帰国の途上で寝込んでいる左議政ハン・ファクを嬪宮の従兄ハン・チヒョンが訪ねました。
「叔父上。叔父上に話がある。皆下がってくれ。嬪宮媽媽の使いできました。叔父上からご伝言があるそうですね。」
「あわ・・・あわ・・・・。」
「なんでしょうか。」
「ふー・・・・。」
「叔父上。」
「あばばば・・・・・。」
「上王が昌徳宮にいる限り王室に騒動が絶えません。何としても早急に終止符を打つべきではありませんか。」
ハン・ミョンフェは領議政チョン・インジの家を訪ねていました。
「だからといって上王様を廃位することはできぬだろう。」
「やるのです。廃位よりひどいことでもすべきです。」
「集賢殿の学者たちが殺されたばかりですぞ。」
「集賢殿の学者が殺されたのではなく謀反人が処刑されたのです。」
「しかし・・・」
「これだから皆が政丞は無為徒食だと不満を言うのです。」
「・・・・・・・。」
「議政府が先頭になって上王の廃位を主張してください。そうすれば政丞は謀反を見物していたという汚名を返上できます。」
「見物などしておらん!」
「本当のことでしょう。弁解はできません。提案に従えぬなら辞職されるのが道理です。これが殿下のお考えです。」
チョン・インジは遅れて登庁しました。
「遅かったですね。」
右議政のイ・サチョルは言いました。
「左参賛殿はうかない顔をしておいでですね。都承旨が大監のお宅にも行きましたか?」
「領相(ヨンサン、領議政)大監のお宅にも?」
「来ました。」
「私の家にも来ました。」
「ハン・ミョンフェは何と言っていましたか?見当はつきます。」
」左参賛カン・メギョンは言いました。
「あれが殿下のお考えとは・・・。」
「領相(ヨンサン、領議政)大監は殿下のお考えを確かめてみては?」
「それはできません。本当に都承旨が命じたのかと殿下に伺うのは無礼かと。」
「どうしましょうか。領相(ヨンサン、領議政)大監。」
チョン・インジは困りました。
イ・ゲジョンはハン・ミョンフェのご機嫌を取りに楼閣で飲んでいました。
「もう結構です。都承旨殿に注いでいただき光栄です。」
「大監。大監の甥イ・ゲは謀反の中心人物でしたな。」
「そうなんです。殿下に面目が立ちません。」
「殿下に罪滅ぼしすべきです。」
「集賢殿の直提学イ・ゲはソン・サンムンに劣らず殿下に寵愛されていました。だが謀反の忠臣となり殿下のお命を狙ったのです。殿下は裏切られたと憤慨しておられることでしょう。殿下は大監に責任を問うおつもりでしたが承政院が必死に止めました。殿下に償うべきでは?」
「どうやって?お怒りを解けるなら火の中水の中ですぞ。」
「覚悟はできていますか?」
「もちろんですとも。」
「ならば結構です。お注ぎしましょう。」
酒を飲むイ・ゲジョンの手は震えていました。
「近頃私を避けているようだな。」
クォン・ラムはホン・ユンソンとホン・ダルソンに会いました。
「もちろんクォン兄貴こそ我々を避けておられるのでは?はっはっはっは。」
「おいダルソン、何を考えているのだ?」
「それはミョンフェ殿に聞いてください。」
クォン・ラムはハン・ミョンフェに言いました。
「何を考えているのだ。」
「気にしないでくれ。そなたにもスクチュにもできぬことだ。」
「そなたと私の仲だ。秘密にすることはなかろう。」
ハン・ミョンフェは知らないふりをしました。
世祖はシン・スクチュを呼び酒を注ぎました。
「殿下・・・私は・・・・・・。」
「いいから飲んでくれ。ソン・サンムンやイ・ゲ、パク・ペンニョンとそなたは同門で学んだ集賢殿の学者だったな。そのことで咎めているわけではない。何も言わないでくれ。大勢の友を失いそなたもやりきれないだろう。」
「誠にありがとうございます殿下。」
「返杯するのが礼儀ではないか。ふっふ。」
シン・スクチュは酒を一口飲み手元に持っておこうと思ったら世祖は言いました。スクチュは酒を飲み干し杯を返しました。
「私はある件をクォン・ラムとそなたに黙って進めている。そなたは知らぬほうがよい。私はそなたに大きな罪を犯した。そなたが明へ行っている間にそなたの妻を看取れなかった。」
「誠におそれおおいことでございます殿下。」
「ぐずぐずするな。門を早く開けろ。門を開けぬか。」
ホン内官は世祖のもとに帰ってきました。
「殿下、左議政様が沙河浦で(サハポ)で息を引き取りました。」
ホン内官は泣きました。
「今何と言った。早く中に入れ。今何と言ったのだ。」
「左相(チャサン、左議政)大監がお亡くなりに・・・申訳ございません殿下。」
「ハン大監がなくなるとは・・・まさかそんな事が・・・・・・。」
世祖は震えました。
謝恩使ハン・ファクが明から帰る途中死んだ。ハン・ファクは清州の人間で高麗の侍守ハン・ガンの子孫である。ハン・ファクの姉は明の皇帝永楽帝の側室となった。皇室はハン・ファクを明の朝廷に呼び常に傍らに置いた。そしてその後光禄寺少卿に任じられた。ハンの訃報を聞いた世祖は悲しみ役人を贈って鴨緑江(アムノッカン)で棺を送って迎えさせた。都承旨ハン・ミョンフェにも付き添うよう命じた。ハン・ファクにはマリとヒョッポとオイの息子がいたが傑出していたのは娘だった。それが後のインス大妃だった。
王妃は嬪宮ハン氏を見舞いました。
「座りなさい。」
「私は喪中のため外にお迎えにまいれませんでした。」
「気落ちしたでしょう。霊前に行けなくてなおさらおつらいでしょうね。悲しいでしょうけど体に気を付けて。身重なのだから。」
「大丈夫です。私は父が安らかな気持ちでこの世を去れなかったことがやるせないだけです。」
「それはどういうこと?」
「父は寝ても覚めても孫のことを案じていました。世子様が病気がちゆえ余計に心配だったのです。もしや幼い孫が王位を継げぬのではないかとそればかりに・・・・。」
「もちろん継げるわ。」
「媽媽。媽媽は孫をお守りくださいまし。」
ハン氏は涙を袖で拭きました。
「南無観世音菩薩。」
桂陽君夫人は冷たい視線を王妃に投げかけていました。
「王妃様はぎくりとなさったはず。上王様の心配ばかりしているので後ろめたかったのでしょう。よくぞおっしゃいましたね。見ていたら王妃様は青ざめておいででした。うふふふ。」
ハン氏姉妹は王妃をあざ笑いました。
「嬪宮は悲しみを隠そうとしていて、不憫になりました。」
王妃は世祖に報告しました。
「ですがご心配はいりません。」
「世子妃を呼んで慰めてやりなさい。出産の日も近づいているだろう。嫁はしっかりしているゆえ乗り越えるだろう。」
嬪宮ハン氏は従兄からハン・ファクの遺言を聞きました。ハン・チヒョンは四日間見守りましたが何も聞けなかったと謝りました。ハン氏は腹を立てました。
「こんな時にもし殿下が命を落とされたら世子は王位を継げぬかも。何としても世子様に即位してもらいます。たった一日でも王位を継がせねば。そうすれば私の息子も王位を受け継げられます。」
感想
インス大妃にとって息子以外はすべて単なる道具なんですね。実の父も従兄も世祖もただの道具で愛のかけらさえもない。このドラマではそんな風に演じられていますね。そしてハン・ミョンフェを重用して世祖は甥を大事にしているふりをしながら甥を殺す手立てを何度も考えていたようですね。あらかじめ伏線を張っていたので計画的殺害です。隠しきれない悪行をしているのに世祖の平時の振る舞いは偽善者そのもので、なぜそこまでして本性を隠したいのかまったく理解できません。心のままに振る舞っていたとしても、ここまでくればもう誰も逆らう者もでなかったのではないかと思います。この悪党たちが主役を演じるドラマは実に面白いですね。