「大王世宗(テワンセジョン)」(全86話) 第85話 訓民正音の誕生 あらすじとネタバレ感想
85話 訓民正音の誕生 あらすじ
「回回人の医者か。」
遺体が台の上に横たえられました。
世宗とヨンシルは解剖の様子を観察しました。
「はじめてくれ。」
妓楼の座敷。
「チェ・ヘサンの死を弔うべきだ。取引した官吏を知っているはずだ。外交問題にならぬよう解決策を示せ。」
チョ・マルセンはチェ・マルリに言いました。
「副提学様!」
チョン・チャンソンが血相を変えて報告に来ました。
「この国は滅びてしまいます!」
チェ・マルリは立ち上がりました。
回回人の医師が解剖し、チャン・ヨンシルは人体の構造を絵に描きました。世宗はじっくりと人体を観察していました。
「解剖だと?」
マルセンは驚きました。
「行きます。」
チェ・マルリは怒りました。
「考えすぎではないか。」
「そう願いたいです。しかし万に一つ事実だったら何としても王様を王座から引きずり下ろします。」
チョ・マルセンは寺に向かいました。
「学士は?」
「既に津寛寺に向かいました。」
ヨンシルは首から上の様子を図に表しました。
「チチチ陛下。」
オム・ジャチは世宗を呼びました。
キム・ムンは学士を率いて津寛寺に向かいました。寺に行く森の道をイ・チョンと兵士が阻みました。
「取引だと?」
首陽大君はチェ・マルリとチョン・チャンソンに言いました。
「もし私がそなたに教えたとして、見返りはなんだ?」
「それは言うまでもなく、この国の玉座です。王子様に次期国王になってもらいたいのです。」
「取引はしない。」
「解剖の証拠を出せば王子様はこの国の玉座を手にできる。媽媽にとって悪い条件ではありません。」
「私の策士になりたいならば、取引ではなく自ら証拠を探すべきだ。」
チェ・マルリは口をゆがめました。
部屋の向こうで安平大君が聞いていました。
オム・ジャチは「解剖を中断すべきでは?殿下。」といいました。
「父上に反旗を翻すつもりか?」
昭憲王后は首陽大君を叱りました。
「天命を見定めます。」
「それを口実に権力を狙うつもりでは?」
「安平・・・・・・。」
「勝敗は、天が決めるだろう。父上が正しいなら天はチェ・マルリに味方しないはず。」
「津寛寺に行きチェ・マルリたちの動きを止めよ。」
「嫌です。」
「ならば尚衣院へ行きこの母の棺を用意せよ。」
「母上。」
「ほかでもないそなたがなぜなのだ。文字創製にかける父上の情熱にどの王子よりも賛同したはずだ。それをなぜ?」
「解剖さえなかったら、今でも父上の志を支持していました。」
「父上と敵対してはならぬ。」
「もう私には何もできません。すべては私の手を離れました。」
「お帰りを。」
カン・フィは寺の門前でチェ・マルリを止めました。
「道を開けよ。」
マルリはカン・フィに言いました。
「誰も入れるなとの王命です。」
「構えよ。」
学士たちは剣を抜きました。カン・フィはチェ・マルリの首に剣を向けました。
「やめよ!」
世子(文宗)が現れました。
「刀を納めよ。」
世子はカン・フィに支持しました。
「君主の刀を民に向けてはならぬ。収めよカン・フィ。早くしろ。」
カン・フィは剣を収めました。
「何事ですか?」
「殿下はご存じのはず。」
「役人が王様のおられる寺を襲おうとしているとこですか?」
「これらの刀は殿下にではなく私たちに向けられているのです。この国を救える証拠を見つけられねば斬られる覚悟です。」
「ご自由に。ただし、武装した者は断ります。集賢殿の学士のみを連れてお調べください。」
「津寛寺には武装した者が配置されています。」
「王様が警護を受けるのは当然のこと。」
「つまりこの津寛寺は私たちの死に場所にもなりますね。」
「三十年も仕えていながら大監はまだわかりませんか。政敵を抑えるために王様は刀など使いません。」
チェ・マルリは若い学士を連れて寺に入りました。
部屋の中にはチョン・インジとイ・スンジが仕事をしていました。
「何をしているのだ。」
チェ・マルリがチョン・インジに言いました。
「暦象集の編纂準備をしている。」
「そんなはずは・・・・。」
「何のことだ?」
「ここで今上が解剖をしたはずだ。」
チェ・マルリは机(解剖台)の上に置かれた本をまき散らしました。
「解剖?」
「正直に言え!」
「今や妄想にまで憑りつかれたか。」
「証拠を見つけよ。」
チェ・マルリは二人の学士に命じました。
若い学士は血が机の下に落ちていることを見つけましたが、若い学士は血の上に本を置いてそれを隠しました。
チェ・マルリは若い学士を見つめましたが学士は目を背けました。
部屋の隣には医者がいました。
「回回人(ウイグル人)の医者だ。これは決定的な手がかりだぞ。何をさせていた。」
チェ・マルリはチョン・インジに言いました。
「回回暦と七政算の引けく研究だ。」
「回回暦だと?なぜ医者が?」
「医者ですが、天文学者でもあるのです。そうですね?」
イ・スンジはマルリに答えました。
「七政算は素晴らしい。アラビアに持ち帰りぜひ研究をしたい。」
回回人の医者は言いました。
チョン・チャンソンは医者をぎょろっと見ました。
チェ・マルリは拍手しました。
「見事だ。うまく口裏を合わせたな。だが、まだ終わらんぞ。」
「何が言いたい。」
「今上が遺体を運び入れたことはわかっている。そしてこの者は遺体を傷つけた。」
「大雄殿に行ってみろ。」
「なんのことだ?」
大雄殿。
「来たか。」
世宗はチェ・マルリに言いました。
「何事ですか。」
「民が一人死んだのだ。貧しく知識もなかったうえに身寄りもいなかった。盗みを働いていきていたようだ。」
「それにしても盛大な弔いのようですね。」
「民は余の子供も同然だ。生前は世話できなかった。逝く道くらいは整えてやらねば。」
「王様の役に立ったからでは?恐れながら王様、その遺体を確認してもよろしいですか?」
「良くないことだ。」
「私にとってですか?あるいは王様にとってですか?」
「好きにせよ。」
チェ・マルリは遺体を見ました。遺体は疫病で死んだ人間でした。
「これは!」
「疫病です。お下がりください。」
ハ・ウィジはとぼけた顔をしました。
「チェ・ヘサンが?」
「文字創製は彼の悲願でもあった。彼の忠心をどう受け止めるかそなた次第だ。」
世子はハ・ウィジとパク・ペンニョンに言いました。
「文字創製は同意できません。」
ハ・ウィジは世子に言い返しました。
「チェ・ヘサンの選択にも納得できません。ですが、時間をください。チャン・ヨンシルは不自由な体になっても忠誠心を忘れません。そしてチェ・ヘサンは何の迷いもなく自ら体を捧げた。その二人の忠心の意味を私は考える時間が必要なようです。」
ハ・ウィジは世子を目を合わせました。
「余が集めたのだ。孤独な民の死に見送る人は多いほうがよいだろう。よくみればここには学を修めた者もいれば豊かな者もいる。弔いながら、自らを振り返るのもよかろう。人の世では、学んだものはその知恵を分かつ。財を成した者は富を分け合い皆で共に生きるのだ。無関心は孤独を作り出す。二度とこのような孤独な死を許してはならん。」
学士も兵士も世宗に頭を下げました。
「尚膳。」
「はい殿下。」
オム・ジャチが前に出ました。
「死者を手厚く葬るのだ。」
僧侶は遺体を荼毘に付しました。
「(死者を、手厚く葬ってくれ・・・・・。)」
チャン・ヨンシルは解剖を終えたチェ・ヘサンの棺を背負って歩いていました。その後ろをイ・チョンとキム・ジョンソは見守って歩いていました。
ワン・ジンはチェ・マルリとチョン・チャンソンに手刀を投げました。
「部下のヘ・スには能力がなく上官のワン・ジン殿には礼がない。」
「口を慎め。」
「ヘ・ス殿にも同じ態度で?」
「何のことだ。」
「ヘ・スは上官を信じられず朝鮮から盗んだ新兵器の技術を蒙古に流そうとした。そのせいで朝鮮は重要な技術者を失ったのです!」
「チェ・ヘサンをヘ・スが殺した?」
「ヘサンの口を封じるためです。」
「完成したか?」
「はい王様。」
ヨンシルは木彫りの何かを世宗に差し出しました。
世宗は拡大鏡で首から上の模型を見ました。
「牙、舌、唇、喉・・・・・。」
世宗は拡大鏡で小僧や学士の口を確かめました。
「牙音、舌音、唇音、歯音。そして喉音。朝鮮語の音は五つに分けることができる。さらにそれらは特性によって・・・・・。」
「日本に行けと?」
世子はファン・ヒに訊き返しました。
「我らが明の警告を無視して文字創製を続ける限りさまざまな圧力をかけてくるだろう。」
「朝鮮を裏切り明国につきそうな人物を探るのですね。」
シン・スクチュは言いました。
「さすが外交の達人ユン・フェが育てた人物だけあるな。」
ファン・ヒはスクチュをほめました。
「文字創製の作業がまだ続いています大人。」
チェ・マルリはチョン・チャンソンを連れてワン・ジンと話をしていました。
「ではわれらの取引も続けねばなりませんね。」
ワン・ジンはチェ・マルリに言いました。
「東廠の有能な部下を送っていただきたい。敵の網にかかり身動きのできない者などと朝鮮は取引など不可能です大人。」
チェ・マルリは大きな声でワン・ジンに圧力をかけました。
「ヘ・スを朝鮮国内で殺した理由は?」
ワン・ジンはプンゲに言いました。
「裏切者に情けは無能です。」
「いつ見てもお前は有能な部下だ。朝鮮国王のことはお前に任せよう。」
ワン・ジンは笑いました。
「東廠の新しい長?」
皇帝はワン・ジンに訊きました。
「ソ・チョン(シャオ・チェン)でございます。東廠が育てた最高の秘密兵器でございます。部下とともに上官を助けよ。お前の任務だ。東廠はさらに強くなります。不届きな朝鮮の王を抑え皇帝に忠誠を誓う新王を立てさせます。」
ワン・ジンはプンゲにソ・チョンの補佐を命じました。
「多くの者たちが文字創製に反対している。たとえ完成しても実用化は難しいだろう。最近の状況から推測できる。」
首陽大君はつぶやきました。
「だからその反発を利用して、媽媽は権力を握ろうというのですか?」
シン・スクチュは首陽大君の心を見透かしていました。
「国の安定と王室を守る方法を探しているのだ。」
「今の王子さまの行動は権力を得るための名目づくりに見えます。そのような行動を認める気はありません。」
昭憲王后は頭を押さえて世子(文宗)と安平大君にいました。
「世子は晋陽(首陽大君)の話を聞いていますか?」
「安平に聞きました。」
「腹立たしいですか?」
「・・・・・・。」
「御医のすすめもあり、王様が数日王宮に戻られます。」
「私になにをせよというのですか?」
「王様とお話しして晋陽を抑える方法を探しなさい。ことが大きくなる前に芽を刈り取るのです。これは、母の願いです世子。もう王室で、王位をめぐる争いがあってはなりませぬ。権力争いによってどれほど多くの血が流れるか、この目で見てまいりました世子。」
「母上・・・・・。」
世宗は手探りで口の模型をなぞってました。
昭憲王后は研究室に来ていました。
「単純な構造だ。目をつぶりなぞってみると音の出る場所が実に単純なように見える。できるだけ単純な文字にするのだ。単純な形にすれば目を閉じて書けるほどとても簡単な文字になる。」
「牙音は舌の根で喉をふさいで出る。その形を表し直線で単純な文字としよう。舌音は、舌が上あごにつく様子を表そう。唇音は唇の形とする。歯音は歯の形。喉音は、丸い喉を表そう。」
「牙、舌、唇、歯、喉、あなたが作った美しい朝鮮の文字です。今はただこの文字の誕生を喜ぼうではありませんか。」
昭憲王后は世宗に言いました。
チョン・インジやシン・スクチュ、ソン・サンムン、世子たちが津寛寺に集まり新しい文字を見ました。
「この五つだけですべての音があらわせるのですか?」
「これは、母音だ。」
世宗は字を書きました。
「基本の五つよりも強い音には画数を増やす。音の出る場所は同じでも特性が異なれば字母も異なる。」
「全部で17個ですか。」
「これは音を決める子音だ。」
「初声、と終声は子音であるから同じ字母を使う。」
「中音を成すのは母音だ。」
世子は懐から天人人・・・と書かれたタミが書いた文字を取り出しました。
「その昔、一人の民が切ない願いを込めて余にくれたものだ。」
「丸い天。その下に広がる大地。大地を踏みしめる民。すべての朝鮮の民が平等であることを、その民は願った。そして余に託したのだ。願いは重なり広がっていき文字創製という大きな夢になった。だが彼らは、その実現を見ずして世を去っていった。」
「彼らの思いもこうして文字に込めよう。この十一字母が母音を表す基本となる。」
夜、世宗と仲間たちは夜道を歩いていました。
「天よ~地よ~、そして人よ~」
チョン・インジとソン・サンムンは歌いました。
「17の子音、11の母音、余の作った28の字母を組み合わせれば朝鮮のすべての音を表すことができる。いかなる民でも簡単に覚えられるはずだ。余はこの文字を民に訓える正しい音、訓民正音と名付けよう。」
皆は訓民正音を投影した夜空を眺めました。世宗は文字が完成して喜びました。
「これが朝鮮の訓民正音だ。余はこの文字をこに朝鮮の民に広げていく。役所や郷校を通じて速やかに普及せよ。」
世宗は訓民正音を重臣たちに見せました。
チェ・マルリは「とうとう完成してしまったか」と怒りました。
明の学者ファン・チャンは訓民正音を見ました。
「これを、本当にそなたたちの王が作ったのか?」
シン・スクチュとソン・サンムンは文字を見せました。
ファン・チャンはさっそく朝鮮の文字に興味を覚えて墨で字を書きました。
「どんなに複雑な中国語の発音もすべて書き表すことができる。」
「そのとおりです。」
「はー。驚くべきことだ。たったひとりの力で文字を作り上げるとは、しかもこんな短期間で。信じられぬ。不可能だ。」
「韻書の編纂は認められません!この身を削り取っても野蛮人の文字を扱うことはできません。」
チェ・マルリは反対しました。
「自国の文字を野蛮族の文字というのは自国の民を貶めることだ。わからぬか。」
チョン・インジは言いました。
「司憲府と司諫院の説得が先でしょう。集賢殿よりも彼らのほうがもっと反対するはずです。お望みならわれらが確認しましょう。どのみち集賢殿と彼らは志をともにするのですから。」
「王様が何も考えていないとお思いか?」
キム・ムンは司憲府の扉を開けました。そこにはファン・ヒと部下が訓民正音を書き写す作業をしていました。
「ここへは何の御用かな?この者たちと訓民正音の検討をしに来たか?」
「司諫院は文字創製を支持するのですか?」
チョン・チャンソンはチョ・マルセンに言いました。
「私も驚いているのだ。司諫院といえば諫言ばかりだからな。まさに今の朝鮮は太平の世を謳歌している。」
マルセンは笑いました。
「今こそわれらに賛同する有力者と学士を動員して文字創製を阻止する!」
チョ・マルセンは決心しました。
明。
「なぜ朝鮮は文字を持ちたがるのだ?」
皇帝はワン・ジンに言いました。
「蒙古族が元を建てたのと同じです。天下を制する夢を見ているのです。」
「天下を制する夢を見ている?」
賓庁。
「朝鮮の文字。その普及を邪魔する者は朝鮮の自主性を踏みにじる行為である。それが誰であれ許すことはできぬ。断固として戦っていく。」
世宗は宣言しました。
感想
素晴らしい!あの意味不明な文字が人体の構造を表しているとは!驚きです。世宗の考えがほんとうにこのように下々のことを大事に思っていたのかどうかは日本には情報がないでわかりませんが、もしそうなら世宗は奴婢の民生まで考えた朝鮮で初めての王様かもしれませんね。そんな王様は私が韓ドラを見る限りでもいませんし。あと一回でテワンセジョンも終わりなのですね。作り話ではありますけど、面白かったです。