「王と妃」 第69話 改革のはじまり とあらすじネタバレ感想
69話 改革のはじまり あらすじ
王妃ユン氏は上王に内官以外の下僕がいないことについてパク尚宮に尋ねました。パク尚宮は前例がないもので・・・と申し訳なさそうに答えました。端宗を哀れに思った王妃ユン氏は世祖(首陽大君)のもとに行きました。世祖は筆で絵を描いているところでした。
世祖「心が落ち着かずうまく描けない。宮中のしきたりにはもう慣れたか?」
王妃ユン氏は端宗に侍従がいないことを世祖に知らせました。
世祖「ふっふふ二十年暮らしてきたが私はそなたといるとくつろげぬ。一部の隙もないゆえ窮屈だ。」
王妃ユン氏は端宗が上王に正式に冊封されていないので侍従がいないのだと言いました。
王妃ユン氏「廃位するのですか。わが子同然の甥なのでは?」
世祖「そなたは口出しするな!私の勝手にはできぬ問題だ。王が情に左右されてはならぬ!」
世祖は突然大声で妻をどなりました。
ハン・ミョンフェは世子妃ハン氏のところにいました。ハン氏は世祖のことを命より体面を気にする人だと言いました。「何かしたくても人目が気になるのです。他人の助言も聞きません。自分の考えを隠し他人の考えを推し量った末に一人でお決めになるのです。」
ハン・ミョンフェ「それは承知しておりますが。」
ハン氏「近頃、無数のお考えをめぐらされているはずです。」
世子妃ハン氏は端宗の廃位を煽っていました。そのことを世子の桃源君は快く思っていませんでした。
ミョンフェはヒャンイに酒をついてもらいました。
ハン・ミョンフェ「殿下は恐ろしくない。」
ハン・ミョンフェは世子妃ハン氏を恐れていました。
世祖「書いてある通りにしろ」
世祖はシン・スクチュに命令を書くように命じました。シン・スクチュは議政府をお通しになるべきかと諫言しましたが世祖は意見を通しました。
首陽大君が景福宮に移り康寧殿に住み始めて二日後に大規模な人事異動がありました。領議政はチョン・インジ、左議政はハン・ファク、右議政はイ・サチョル、チョン・チャンソンは右賛成に大きく昇進した。ソン・ヒョンスは判敦寧府事(王の親類を管理する職)、イ・ゲジョンは兵曹判書に留任、パク・チュンソンは吏曹判書に任命された。クォン・ラムは吏曹参判、ハ・ウィジは吏曹参議、ハン・ミョンフェは左副承旨、ソン・サンムンは右副承旨に昇進した。ホン・ユンソンは礼曹参議に昇格されたが品行の悪いホンは礼曹には合わない人物だった。首陽大君の最初の人事は型破りに思えるものだった。
ホン・ユンソンは昇格をとても喜びハン・ミョンフェに感謝しました。ハン・ミョンフェ「お前はわかっとらん!礼曹参議に任命されて浮かれているのか?チッチッチッチ。」ミョンフェは醜い顔をさらに醜く歪めて舌打ちしました。
シン・スクチュもホン・ユンソンの前では笑っていましたが、ユンソンがいなくなると厳しい顔つきになりました。ハン・ミョンフェは首陽大君を批判していた者たちが重用されたことに反対で極めて不機嫌でした。
チョン・インジは右議政府を通すべきだったのではと世祖に諫言しました。「はっはっはっは。私が議政府にいたころの癖が抜けておらぬのだ。はっはっは。チョン大監、これが私の最初の人事ゆえにひそかに進めたかったのだ。今後は規則に従う。今回は大目に見てくれ。はっはっはっはっは。」
世祖はソン・サンムンを呼び意見を聞きました。ソン・サンムンは「六曹直啓制を行うお考えですか?ならば議政府署事制を廃止しなければなりません。」と言いました。
世祖「右議政府の古株が黙っているはずがない。私が集賢殿の学士を重用したいが、議政府署事制では容易に実現できない。私が右議政部にいたときはなんでも思うままだったが王がこれほど大変なものだとは。」
ソン・サンムン「太宗が六曹直啓制を行ったのは、乱世を平定されるため。何よりも強力な王権が必要だったからです。世宗大王が議政府署事制に戻されたのは、度を越した王権の行使は太平の世では独裁になりかねないからです。いまが乱世なのか泰平の世なのか私にはわかりません。」
チョン内官の顔色に緊張が走る。
世祖「・・・・・・。・・・・・・。泰平の世などではない。私は泰平の世にするため王になった。死ぬ前に実現できたらそれ以上の喜びはない。はっはっはっはっはっは。だから私は集賢殿の学士が好きなのだ。学問ほど自由なものはない。」
ソン・サンムン「殿下、どちらの世になるかは、君主にかかっています。泰平の世を築かれますよう切に願っております。」
世祖の表情からほほ笑みが消えました。
重臣たちは、議政府をないがしろにされたことに腹を立てていました。
世祖はソン・サンムンにパク・ペンニョンをそばに置きたいので意見を求めました。
世祖「サンムン、私はスクチュに劣らずそなたの学問と人柄に惹かれておる。私の片思いだな。はっはっはっはっはっはっは。」
夜、ソン・サンムンは家に帰ると裸になり井戸の水をかぶり何度も身を清めていました。
ソン・スン「一度汚れた耳は洗ってもきれいにならぬ。上王様は首陽大君におおいなる辱めを受けた。お前の比ではない。」
ソン・サンムン「お許しを。父上。」
ソン・スン「この愚か者め。」
端宗は王妃ソン氏と淑儀2人を呼び楽しく談笑していました。年相応の子供らしさの残るあどけない笑いでした。
世祖は府院君ソン・ヒョンスに上王さまをお世話なさってくださいと言い酒を注ぎました。
世祖「上王様には長生きしていただきたい。はっは。まだお若いので当然ですな。はっはっはっは。」
康寧殿から出てきたソン・ヒョンスのあしもとはふらつきました。「殿下が注いでくれたお酒を断るわけにはいくまい。」ソン・ヒョンスはチョン内官に頼みました。
ソン・ヒョンス「私を昌徳宮まで連れていってくれ。今夜は上王様にお会いするまで眠れそうにない。連れていってくれるか。」
チョン内官は一瞬顔を背けましたが承諾しました。その様子を別の内官が見て世祖に報告しました。
世祖「昌徳宮か。久しぶりの親子の再会だ。中宮殿へ行く。」
世祖は酔ったふりをしていました。
世祖「夫人。扉を開けてくれ。夫人。手を貸してくれぬのか。」
王妃ユン氏は首陽大君を支えて上座に座らせました。
世祖「まだ私への怒りが収まらぬのか。はっはっはっは。まるで新婦が恥じらっているかのようだ。ふっはっはっはっはっは。」
チョン内官は昌徳宮に府院君ソン氏を連れて行きました。端宗は大妃ソン氏と一緒に寝ていました。ソン氏は眠れませんでした。ソン・ヒョンスは昌徳宮の庭で泣きました。
世祖「私が王だ。そなたが私を王と認めなければまわりも私に従わぬ!明日の朝辞令を出してやろう。甥を上王に報じると命令を出す。これで気が済んだか!」
王妃ユン氏「(南無観世音菩薩)」
世子妃ハン氏「王としての威厳を見せるためね。」
ハン氏は世祖の心理を完全に見抜いていました。
世祖は端宗と王妃ソン氏を上太王と王大妃に正式に報じる命令を下しました。
ハン・ミョンフェ「それはなりませぬ殿下。後あとの面倒の種となります。幼い甥を上王にするのは理にかないません。今まで苦労してなさったことが水の泡となってしまいます殿下。」
突然ハン・ミョンフェが勝手に入ってきました。
世祖は重臣たちに上王に尽くすように命じました。
世祖は王族たちを呼びました。譲寧大君は帰ると言いましたが孝寧大君が引き止めました。
世祖「満足したか。願いが叶ったであろう。」
王妃ユン氏「感謝します殿下。」
世祖「そなたの冷ややかな態度にやりきれない思いをした。心が千々に乱れて苦しかった。自分に王の資格がない気もした。だが王になった以上しっかりやらねばとも思った。冷酷な考えも頭によぎった。上王様を廃位しようかとも思ったのだ。ふっふ。」
王妃ユン氏「よくご決断なさいました殿下。ご無礼をお許しください。」
世祖「夫人。これからは、もう夫人とは呼べなくなる。王室の決まりにより別々の部屋で過ごさねばならぬ。そして時にはむつまじく、ときには敵より憎みあう間柄になるかもしれぬ。しかし我々は二十年以上をともにした夫婦ではないか。」
王妃ユン氏「お気持ちはわかりました。」
世祖「これから私が王族と文武百官を連れて昌徳宮に行き上王様にお会いし拝礼するつもりだ。安心したか?私が譲寧叔父上をともなって私が頭を下げれば誰も上王様を軽んじぬだろう。」
王妃ユン氏「なんとこまやかなご配慮でしょうか。」
世祖「上王にしたのは私の意思表示だ。私が王位に就いている間、私は甥に礼を尽くすつもりだと。はっはっはっはっはっは。ふっはっはっはっはっは。」
端宗のもとに世祖が来るという知らせが届きました。
端宗「昌徳宮の門を閉めろ。叔父上はたいへんな王の役目を任され苦労なさっている。その最中、私を上王に報じてくださり感謝している。その私が拝礼を受けるわけにはいかぬ。殿下に伝えよ。私が康寧殿へ行く。甥の拝礼を受けていただきたいと。返事はどうした。殿下にお伝えしろ。」
端宗「これでよいか?ダメか?」
大妃ソン氏「ご立派でした上王さま。」
端宗「私は首陽叔父上より上に立つことになった。」
端宗は笑いました。
少しずつ端宗が大人になり、自分の意思というものを持つことによって首陽大君(世祖)は端宗を疎ましく思っていく展開になるようなことが示唆されてましたね。ハン・ミョンフェは首陽大君よりもインス大妃を恐れていて、インス大妃の残忍さ、悪女ぶりが伝わってきます。首陽大君は本心を偽るときには必ず笑いますので、今回はソン・ヒョンスに対して、そして妻にたいして、チョン・インジに対してはっはっはっはと自分の本心を偽りました。そしてインス大妃が明らかにしてくれたように(以前私が気が付いたように)首陽大君は決して本心を語りません。語らないからこそ本心の推測は容易であり、手に取るようにわかるのだとインス大妃は思うわけです(首陽大君の本心の推測は笑って述べていることと反対のことを考えればいいだけなので単純です)。