大王世宗(テワンセジョン)81話 王の盾
あらすじ
チャン・ヨンシルはレンズを磨ていました。チェ・ヘサンはヨンシルを心配し、少しは自分の心配をするように世宗に命乞いをするように言いました。ヨンシルは世宗のために黙々とレンズを磨いていました。
集賢殿の学士たちも、朝廷の重臣たちもチャン・ヨンシルを明に引き渡すかどうかで言い争っていました。チョ・マルセンは「チャン・ヨンシルを明に渡すことが果たして得策でしょうか」と珍しく反対しました。
ソン・サンムンは世宗に文字の研究をしている場合ですかといいました。
「調査した地名の一覧を持ってこい。」
「お断りします。これ以上お手伝いできません。どうせ無理だからです。十数年の天文研究も明に知られれば簡単に諦める。文字創製も同じでは?もっと早くに諦めるべきでした。」
「明は文字創製のことも気づいているようです。」
シン・スクチュは言いました。
「余は天文も文字創製もあきらめるつもりはない。」
「証を見せてください。」
「言うまでもなく一番の証は上護軍チャン・ヨンシル様を明の横暴から守ることです。証を確認したら、研究に復帰します殿下。」
ソン・サンムンとシン・スクチュは部屋を出ていきました。
ハ・ウィジら集賢殿の若い学士たちは世子に答えを求めました。
「お答えによって我々の行動は変わります。殿下は時期朝鮮王です。誇りのない王についていくくらいなら祖国を捨てたほうがいい。」
チェ・マルリとキム・ムンとチョン・チャンソンは彼らのやりとりをいやらしく見守っていました。
「私は明とは戦うつもりはない。だがチャン・ヨンシルは救う。」
世子は言いました。
「我々が議論すべきは明とは真っ向から戦わずにチャン・ヨンシルを救う方法だ。そなたは私に誇りを求めた。王の誇りとは、たった一人の民も天のごとく敬い尊ぶことである。だから私の誇りにかけてチャン・ヨンシルを守る。」
チェ・マルリは拍手をしました。
「民を守ることこそが王の誇りだ。感動的な演説です。しかし考えが甘すぎます。」
「やはり師匠は現実的ですね。チャン・ヨンシルを明に受け渡すと?」
「方策をお聞かせください。チャン・ヨンシルを明と敵対せずに救い出す、確固たる方策があってこそ今の演説は説得力を持つのです。」
「方策を考えるのが王の役割なら集賢殿は必要ない。」
「わかりました。もし私に明と戦わずチャン・ヨンシルを助ける道があればどんな犠牲を払ってもその道を選びますか?
チョン・インジは部屋の壁を調べていました。
「鋳字所(チュジャソ)は秘密の通路の上にある。その通路はかつて内官によって作られ高麗反乱軍の侵入にも使われた。なぜその場所に?」
本棚をどけるとどんでん返しがありました。
「ここが王様の秘密研究所か・・・・・・?」
尚膳オム・ジャチは世宗に侍っていました。
世宗は筆を置くとカン・フィを呼ぶようにオム・ジャチに命じました。
ファン・ヒはチョ・マルセンを呼びました。
チョン・インジは鋳字所らしき部屋を見つけました。そこには世宗が書いた紙きれが一枚落ちていました。
「朝鮮語・・・・・・?」
チェ・マルリも部屋に来ました。
「やっと証拠が見つかったな。事実を知った感想は?そなたと同じことをして見つけた。我々の付き合いは長いからな。チョン・インジ。」
「付き合いが長いのは王様も同じこと。共に過ごした時間はもう30年だろう?王様は我々にも隠していた。なぜだ。一言の相談もないとは。我々のせいか?」
「また王様を理解し許すつもりか?」
「文字創製という忌々しい事実を隠したのは我々のせいではないか?ともに論じてこそ王様と我々は同志だ。集賢殿は知恵で王様のお役に立てる。もう私は決して王様に同意しない。すべてに反対する。」
「では、この件を切り札にしてもかまわないな?」
「切り札?」
「明との交渉に使う。チャン・ヨンシルの問題を解決するためだ。」
チャン・ヨンシルは眼鏡のフレームを削っていたらカン・フィと兵士が来てヨンシルを捕まえました。ヨンシルは縛られてどこかに連れていかれました。ヨンシルは馬車の鍵を壊しました。
チョ・マルセンはカン・フィを止めました。
「その中にいるのはチャン・ヨンシルだな?」
「殿下の命令です。」
「私がそなたならチャンを亡き者にするだろう。」
チョ・マルセンはカン・フィの頬を打ちました。ヨンシルは縄を解き現れました。
「お前を脱出させれば朝鮮も王様も危機にさらされる。」
「自分で始末するか、それとも部下にやらせるか?」
マルセンはカンフィに言いました。
「どういう意味ですか?」
「朝鮮のためにヨンシルを始末するのだ。東廠が何をするか知っているだろう。」
「従えません。」
カン・フィはマルセンに剣を向けました。
「東廠はチャン・ヨンシルを懐柔する。拷問や脅迫もあるだろう。意志というのは自らの命が危うくなれば無力なものだ。」
「チャンの処分を決められるのは王様だけです。」
「お前は国の厄介者だ。お前を明に渡せば国家機密を渡すことになる。それは危険極まりない。お前が生きていれば引き渡しは拒めない。どうだ。ここで命を絶つといえ。そうすればお前を王様の功臣録に載せる努力をしよう。」
チェ・マルリは世子にヨンシルを救う方法があるといいました。
「どんな犠牲を払うとおっしゃいましたね。その犠牲には父上の敵になることも含まれますか?」
ヨンシルは世宗のところに行きました。
「邪魔が入ったようだな。」
「私が感謝するとお思いですか?」
「何も言わず言う通りにするのだ。」
「できません。」
「命はひとつだけしかない。」
「私の命の価値は高くなったようですね。」
世宗は机を叩きました。
「そなたは余を誰だと思ってる?余はこの国の王だぞ。お前を脱出させることなどたやすい。」
「明に行きます。」
「これ以上お前の忠誠心は必要ない。」
「この官服はあなたに忠誠をささげるために来たのではない。この朝鮮はあなただけの国ではないのです。この国はかつて奴婢だった私の国でもあります。だからあなたではなくこの国に対して重荷になるような真似はしません。
「ヨンシル。お前は、余にとって30年来の旧友だ。兄弟よりそして時には妻や子供より大切だった。一度だけでいい。何も言わずに頼みをきいてくれ。頼む。」
「申し訳ありません。私には、旧友より、この国、朝鮮のほうが大事です。」
ヨンシルは涙を流しました。
世子は世宗に文字創製をあきらめてチャン・ヨンシルを救ってくれないかといいました。
「お前は正しい。人として当然の判断だ。」
チョン・インジとチェ・マルリらは王に先駆けてワン・ジンと交渉しました。ヘ・スは文字創製とヨンシルの命が天秤にかけられていることを見抜きました。そこにキム・ジョンソがやってきて明日チャン・ヨンシルを渡すとワン・ジンに言いました。チョン・チャンソンは驚きました。
「民の命を救うために文字が必要なのだ。これ以上、無力な国のせいで民を失わないためにも文字は必要なのだ。よく聞け。我が国の文字には民の魂を込めるのだ。民族の魂をひとつに集結すれば自主性が生まれる。民が自主性を持ち国が強くなれば二度とこのようなことは起こらぬ。そのために人の道を捨てねばならないなら私は喜んで捨てよう。」
世宗はヨンシルを救えという世子(文宗)に言いました。
ヨンシルはチョン・インジに詰め寄りました。
「そなたを明にはいかせない。」
「本当の理由を言ってください。何が不安なのです?学士の信望を得られないことですか?私を助けろという若輩者たちにどうして同調するのです?人材は大切にすべきだ。だからこの才能ある手を守りたい。いや。違います。私を守りたいのではなく自分自身をごまかしたいのです。王様が憎いはずです。なぜ王様は文字など作るのか。奴婢と同じ文字など・・・」
「私は密室政治に反対しただけだ。」
「極秘にしなければ文字創製などかなわぬ夢。それが今日証明されました。初心を忘れたのですか?あなたは階級意識を嫌った。私の入廷にもいち早く賛同し奴婢だった私に隔たりなく接してくれた。あの懐の深い集賢殿のチョン・インジはどこに?私を口実に王様の邪魔をしたり、王様の夢を砕くことは許しません。忘れないでください。私は王様の盾になれますが、王様は私の盾にはなれません。最後に一言言わせて下さい。あなたがまだ国を思う真の役人であり王様の忠臣であるなら聞いてください。今こそ王様にあなたが五年間隠し続けた本心を伝えるのです。」
夜、世子はヨンシルのところに来ました。
ヨンシルは世宗の輿を作っていました。
「私がお仕えしたのは9歳のころからではなく3歳のころからです。私がこの手で輪回しを作ったころ、殿下はまだ3歳の幼子でした。」
「私は上護軍を(売ろうとした)・・・・私は・・・・・。悔しくないのか?」
「世子様。頑張ってください。王様にはもう世子様しか。」
「上護軍、私はそなたのような臣下を決して持ちはしない。忠誠心を捧げることしか知らない愚かな臣下を決してそばには置かない。」
ヨンシルは車輪を点検していました。
新たな王の乗り物(馬車)ができました。捕まったヨンシルは役人に世宗の前まで連れてこられました。世宗は馬車に腰かけたところ、馬車の車輪が壊れて出発する前に馬車は沈んでしまいいました。ヨンシルは世宗から目をそらしました。
イ・チョンは昨夜の馬車制作の担当は誰だと声を張り上げました。
世宗はヨンシルをにらみました。
「そなたの狙いは何だ?」
「見捨てられた腹いせです。当然でしょう。」
「けしからん。」
「すぐに上護軍を捕らえ鞠庁を開け。余が自ら尋問する。」
感想
ほほう。そうきましたか。ヨンシルが馬車がわざを崩れるようにしたという設定。しかしあれだけの乗り物が世宗が腰かける前までに壊れずに門の前まで引いてくることが可能だったのでしょうか???馬車といえば、百済時代の武王のドラマ「ソドンヨ」でも出てきましたね。馬車は古代からあったのかな?ヨンシルを明に渡すということは発明の秘密も明け渡すという意味になるので、ヨンシルは国を売り渡すことはできません。そうかといって世子に守られては文字創製をあきらめることになるようです。両方を守るためにはヨンシルが罪人となり公的に罰せられることで朝廷から永久追放とされる必要がある。どうやらそんな風にヨンシルは考えたのではないかと思います。