「薯童謠(ソドンヨ)」(全55話)第52話 なぞの盗賊 のあらすじとネタバレ感想
52話 なぞの盗賊 あらすじ
奴婢のチャンは労役場で休憩中のモンナス博士に言いました。
「盗賊の根城に?」
「もうすぐ宮殿まで噂が広がるでしょう。事情を確かめます。用心します。」
チャンとモンナス博士は握り飯を食べました。
夜。
チャンはヨンガクに盗賊の根城に案内されました。
「兄貴。」
「ヨンガクか。どうしたんだ。」
「モンナス博士に手紙を渡したろ?」
「失敗したのか?」
「そうじゃない。モンナス博士と一緒に来た恩率のチャン様だ。」
ヨンガクはチャンを紹介しました。
「ええ、本当か?御見それを。太子様!太子様!この方が恩率様です。」
小屋の中から身なりのよい男が現れました。
「本当にチャン公ですか?」
「そうですが。」
「はじめまして。中へ。どうぞ。」
チャンは小屋の中に入ると男に短剣を突き付けました。
「何ですか。」
「それは私が聞きたい。なぜこんな真似を?私は武康太子を知っている。なぜ太子様をかたる?太子様をかたって金品を奪い張り紙で民を惑わすとは。命が助かると思うか。」
「かたっていません。」
「山賊に太子と呼ばれるのを聞いた。何者だ?」
「私は威徳王の在位中、点口(チョムグ、民生を司る部署、10官等)の季徳(ケドク)でした。威徳王が市場で殺害された時、その場にいました。」
「なぜこんな真似を?」
「今の王の下ではどうしても働きたくなくて。官職を退きました。酒浸りだったある日、殺戮の現場で父親を失った人と出会い、この砦に来ました。ここにはわけありの人々がいました。うっぷん晴らしに貴族の金品を奪いそれを民に配るようになりました。ご存知でしょう?」
「それが本当だとしてもなぜ武康太子様をかたる?」
「かたってなどいません。」
「ならば私が聞いたのはなんだ?」
「チャン公は民の願いと希望を聞いたのです。」
「嘘は通じないぞ。」
「武康太子と民が呼ぶことがなぜ願いと希望だ?」
「奪った金品の一部を民に配ったところ、民は我々のことを武康太子だと。民は我々の略奪品をもって行ながら武康太子万歳を小さく声を上げ、我々は武康太子の従者になったのです。民は殺戮を忘れていません。武康太子が犯人ということも太子が死んだということも信じていません。生きていてほしいと願っているのです。王の暴政に疲れた民が武康太子を見たこともない太子を生きる希望にしたのです。私が武康太子と呼ばれるようになったのは字を知っている砦で唯一の人間だったため私が武康太子でないことは砦の皆も知っています。」
「ほかの地域でも盗賊が出現している。お前たちか?」
「いいえ。我々が民の支持を得たので各地の盗賊たちも奪った品を民に配りながら武康太子を名乗ったのです。我々も心配しています。」
「ならなぜモンナス博士と私を助けようとした?」
「私たちは民の希望になりました。しかし私には今の状況は荷が重すぎます。それで怖くなったのです。だから博士とチャン公をお迎えしようと思ったのです。我々の指揮を。それが阿佐太子と威徳王に最後まで仕えたお二人の役目かと。あの方たちの代わりとして民の二人を仰ぐでしょう。お願いします。二日後に宿舎の近くまでお迎えに参ります。」
「・・・・・・。」
チャンは昨夜のことをモンナス博士に知らせました。
「本当に民が武康太子万歳と?」
「嘘とは思えません。二日後に迎えにくるそうです。」
「どうすれば?」
「衛士佐平様にはどう報告を?」
ソンファ公主はフクチピョン(法王の親衛隊長)を招いて相談をしました。
「張り紙をしろと二人が指示したようだと。」
「盗賊については?」
「特にご命令はなかった。」
「これは衛士佐平の策略です。」
「何のことだ?」
「先日四男をかたる盗賊を捕らえました。」
「四男を騙る盗賊?」
「はい。同じような盗賊が大勢います。」
「捕まえて殺してやる。」
「もちろんですが、考えてみてください。四男をかたると民が守ってくれるそうです。」
「何だと。」
「なぜだと思いますか。四男は民の心を掴んでいました。そこへきて博士と恩率を奴隷にされた愚かな民たちは同情心から四男を支持しているのです。四男は生きていると。さらに二人を打ち首にまでしたら陛下は暴君と思われます。」
「暴君だと?よくもそんなたわ言を!」
フクチピョンの顔が赤くなりました。
「無知な民がそう考えると申しているのです。」
「・・・・・・。」
「民心の動きを陛下に進言なさるべきです。彼らを殺せば反感を買います。衛士佐平が二人を殺したがっているのは彼らを恐れているためです。」
「恐れている?」
「理由はわかりませんが、衛士佐平は彼らばかり責め立てます。」
「そうだな。」
「衛士佐平を牽制する人物が必要だと申しました。彼らが適任かと思います。二人は命乞いまでしたそうですね。ご検討ください。衛士佐平は自分が有利になろうとしているのです。」
「盗賊の件で今我々は危険な立場に。宮殿にも帰れません。」
チャンは労役場でモンナス博士を腕をつかんで言いました。
「同感だ。」
「では今夜・・・・・・。」
「俺も行きます。」
トウィルは話の中に入ってきました。
「俺たちは一心同体でしょう。時間に遅れずにね。あとは俺に任せて。」
チャンとモンナス博士はトウィルに愛想笑いをしました。
夜。
「決ますか?」
盗賊のひとりが頭に聞きました。
「どうかな。」
チャンとモンナス博士とトウィルは待ち合わせの場所に向かいました。そうしたら隠れていたたくさんの兵士に囲まれました。サテッキルが現れました。
「この人数じゃ救い出せません。」
「攻撃は無理だ。彼らに賭けよう。張り紙を。民の力を信じてみよう。」
盗賊の頭のユリムは子分に言いました。
チャンとモンナス博士は縛られて労役場の役所に連行されました。
「どういうこと?」
ウヨン公主はチャンと博士を見てサテッキルに聞きました。
「陛下は彼らが張り紙の黒幕だとおっしゃいました。」
サテッキルはウヨン公主に言いました。
「護送する。行くぞ。」
「私も宮殿へ行く。」
「今回は公主様でもチャンを救えないでしょう。」
「奈率(ネソル)は準備を。」
「ご自由に。」
奈率は答えました。
「チャンの最期を見たいのなら。」
サテッキルは付け加えました。
「チャンとモンナス博士をどのようになさいますか?」
フクチピョンは法王(プヨソン)に聞きました。
「もちろん打ち首にする。」
「しかし、それは・・・・・。」
「陛下、上佐平がお見えになりました。」
「大変です陛下。」
ヘドジュがプヨソンの部屋に入ってきました。
「どうしたのだ。」
「私兵の話によれば南部を起点に張り紙が張られていると。」
「どんな張り紙ですか?」
「恐れながら、陛下がモンナス博士とチャンを打ち首にするお見送りをと。」
「何だと!」
「サビ城に至るまで張り紙が。」
「いったい誰の仕業だ!捕まえろ!あの時殺さなかったのが災いの種になった。」
「助言に従ったら、大事になった!」
フクチピョンはソンファ公主に怒りました。
「どういうことですか?」
「陛下がお怒りになっている。」
「何事ですか?」
「張り紙だ。」
「張り紙?」
「チャンとモンナス博士が打ち首になるから見送れと。」
「ええっ?」
「今回は衛士佐平に任せて・・・・・。」
「親衛隊長様、陛下に謁見をさせてください。」
「それどころではないのだぞ。」
「今の状況は私の話が正しかった証です。」
フクチピョンは口を大きく開けてのけぞりました。
「親衛隊長様。」
サテッキルはチャンとモンナス博士を宮殿に移送中でした。ウヨン公主もそれについて来ていました。
「佐平様!」
兵士が走ってきました。
「どうしたのだ。」
「あちこちに張り紙が。」
サテッキルは張り紙を見ました。
「おのれ・・・・・。」
サテッキルは馬から降りて剣を抜き民を威嚇しました。チャンとモンナス博士を心配して見に来ていた民たちはおびえて逃げていきました。
夜。
「どうだ?」
盗賊の頭ユリムは子分に聞きました。
「全部張りました。みんな無事です。行列を追う者が増えています。」
「次の計画は?」
「各地で進めています。」
「相談があるのですが。私宛に手紙が。」
太学舎の技術士の一人がモジンとコモ技術士に手紙を見せました。
「あ・・・・これは!」
モジンは驚きました。
「どんな内容ですか?」
コモ技術士はモジンに聞きました。
「モンナス博士とチャンの処刑に反対しろと。逆らえば全員殺すと。」
「なんだと!」
「実は私ももらいました。」
別の技術士がモジンに言いました。
「本当ですか?」
「はい。」
「反対などできません。」
「反対したらすぐさま殺されます。」
技術士はおびえました。
「どうしたらいいのですか。」
ソンファ公主はプヨソンに謁見しました。
「陛下・・・お悩みでも?」
ソンファ公主がプヨソンに話しかけましたが部下がプヨソンに報告を持ってきました。
「大変です。」
「どうしたのだ?」
「下級役人に手紙が来ました。博士とチャンの処刑に反対しろと。」
「何だと!」
「(誰がこんなことを?)」
ソンファ公主は心の中で思いました。
「ヤツらを・・・・。」
「陛下、衛士部の副官が参りました。」
「張り紙のためかサビ城が近づくにつれ護送者を追う民の数が増えているそうです・・・・・。」
「何だと!」
「(民の数が増えている・・・・?)」
「どうしましょう。」
「(ほかに術はない。)」
「軍を出動させ、衛士佐平を守れ。」
「(私がここで殺されるとしても説得するしかない。)」
「陛下、このチン・ガギョンは陛下に黙っていたことをお許しください。ご機嫌を損ねたとしても申し上げるべきでした。そうすれば事前に防げたのに。」
「何のことだ。」
「民の噂のことです。」
「噂だと?」
「あの張り紙のように阿佐太子と威徳王を陛下が殺したという噂が民の間に流れています。父親である先代王まで殺したと・・・・・・。」
「何だと!誰に向かってそんなたわごとをぬかす!」
プヨソンは剣を抜きました。フクチピョンはおろおろと慌てました。
「私はすでに陛下に命を捧げました。お伝えしなかったことを後悔しております。陛下。その噂が広まったのはモンナス博士とチャンを奴婢にしウヨン公主を追い払ったからです。先代王の一等功臣と妹を虐げるのは、噂が本当だからだと。そのころから四男を騙る盗賊が出現し、民が盗賊をかばいはじめたのです。わが商団でも偽の四男を捕まえました。ですが何の力も志もないただの盗賊でした。彼らは強奪品を民に少し配りさえすれば捕まらずに追いはぎができたのです。これが今起きている事件の真相です。恐れながら申し上げます。民は陛下のお話しを信じていません。四男の死も信じていないのです。お願いです。民から信望を得られる処置を。今モンナス博士とチャンを打ち首にすれば彼らは民の英雄となります。何が陛下のためになるかよくお考え下さい。陛下への忠誠心から申し上げています。お察しください。」
プヨソンは剣を捨てました。フクチピョンは胸をなでおろしました。
サドゥガンは輿を止めさせて人だかりを調べさせました。
「どこに行くつもりだ。」
「博士と恩率様が打ち首に。」
「市場で何が起きたか忘れたのか?」
「何も起きないよ。」
「あの時もみんなそう思ってた。」
民たちは集まっていました。
「モンナス博士とチャン恩率を見に行くか、皆もめてます。」
部下はサドゥガンに報告しました。
「何だと。」
「言っちゃダメ。父ちゃんは市場で殺されたんだよ。」
「俺は死んだとしても博士とチャンを守る。」
「もうすぐ衛士部が来るわよ。」
「でも行くよ。母さん、大丈夫だよ。矢になんか当たらない。」
母と息子の会話をキム・サフムは驚いた様子で聞いていました。
貴族たちは集まりました。
「見ましたか。」
「市場ですか?」
「見ました。」
「民が集まっています。何か起きるかも。張り紙に従うつもりでは?」
ペクチャンヒョンは言いました。
「市場の惨事を覚えているのです。」
サドゥガンは言いました。
「覚えている?」
「犯人は四男だと公表しましたが民はそう思っていません。」
「陛下、民がサビ城の市場に続々と集まっているそうです。」
話を聞いていたヘドジュはプヨソンに報告しました。
「民は張り紙に従っているのですか。」
プヨソンはヘドジュに訊ねました。
「はい。」
「皆外へ。」
「陛下、どうしたら・・・・。」
「さがれ!」
「市場に集まっている・・・・・・また市場に集まっている・・・・・・。」
「陛下、この間のような殺戮は無理かと。」
フクチピョンは言いました。
プヨソンはフクチピョンを見ると、フクチピョンは恐れました。
「はっ!・・・・チ、チ、チン大人の話はもっともな気がしまして・・・・・・。」
プヨソンは悔しそうに机をたたき、ため息をつきました。
チャンとモンナス博士は街の中を移送されていました。メクトスたちも集まってきました。
「チャン・・・・・・。」
「チャンア・・・・・・。」
ポムノとウンジンもチャンを心配しました。
民たちは手に石を握りしめて集まっていました。
「皆、一様に内心では恐れている顔だ。だがそれでも殺戮のあった場所に来た。本当だった。武康太子万歳と民は本当に言ったのだ。これで十分だ。この光景を見て死ねるだけで私は満足だ。」
モンナス博士は涙ぐんでチャンに言いました。
「いいえ、私たちは死なない気がします。」
チャンはまだ希望を捨ててはいませんでした。
「衛士佐平さま!どけ!佐平さま、ご案内します。」
衛士部の副官が来ました。
「わかった。行こう。」
「佐平様、民が罪人を逃がそうとしています。」
「追い払え!」
サテッキルはいら立ちました。
「きゃあああ、何するんですか。」
女性は傷つけられた子供に悲鳴をあげました。
「剣を抜こうとして誤って・・・・・。」
兵士は女性に言い訳をしました。
市場は民で埋め尽くされました。
「また・・・また殺すしかないのか?」
サテッキルは迷いました。
「下がってください。威徳王が亡くなった場所でまた罪のない民を死なせられません。みなさんけがをさせたくないのです。百済のみなさん、お願いだからやめてください。お願いします。下がってください。」
チャンは民に叫びました。
「構うな!行け!」
サテッキルは行列を進めました。
「チャンとモンナス博士は民にとってこんな存在になっていたのね。」
ウヨン公主は思いました。
「陛下に進言を?」
ソンファ公主はプヨソンの部屋の外でフクチピョンに聞きました。
「ご機嫌が悪い。忠言はできなかった。」
「とにかく市場の状況を把握すべきでは?」
ヘドジュはプヨソンに言いました。
「調べに送った者が戻りました。」
部下がフクチピョンに耳打ちするとフクチピョンはすぐにプヨソンの部屋に入りました。
「どうだ?」
「暴動が起こる寸前でした。」
部下はヘドジュに言いました。
「何だと?暴動?何があった?」
プヨソンはフクチピョンに訊きました。
「それが・・・・・来る途中・・・・・チャンとモンナスを民が逃がそうとして。」
「何だと?」
「兵が剣を抜き子供が怪我をしましたそれに民が怒り一触即発の状況でしたが幸いチャンとモンナス博士が思いとどまらせました。」
「幸いだ?何が幸いだと?衛士部には逆らう民が二人には従順なのだぞ!」
「ごもっとも。嘆かわしい・・・・・。」
「陛下、衛士佐平とモンナス博士とチャンが宮殿に到着しました。」
兵士がプヨソンに報告をしました。
「何だと?」
チャンとモンナス博士はプヨソンの部屋の前に連れてこられました。
「ソドン公・・・・・。」
ソンファ公主は心の中で縛られているチャンに話しかけました。その様子を見たウヨン公主は嫉妬を傷つきを覚えました。
「公主様、公主様は民の声を聴きましたか。民の目を見ましたか?」
チャンはソンファ公主を見つめて思いました。
「ええ、もちろんです。」
「民は兄上と父上の死を忘れずにいました。民も私のように忘れなかったのです。」
「はい。忘れていると思った私は浅はかでした。どうか生き抜いてください。」
チャンはソンファ公主に頷きました。
乱心したプヨソンはチャンに弓を放ちました。モンナスはチャンを庇いました。フクチピョンはプヨソンの乱心におろおろとしましたが、弓は何本も放たれ一本も命中しませんでした。プヨソンは弓を投げ捨てました。
「衛士佐平、来い。」
プヨソンはサテッキルを部屋に呼びました。
「四男を騙る盗賊がいることを知っていたか?」
プヨソンはサテッキルを問い詰めました。
「はい。」
「民が盗賊をかばっていたことも?」
「はい。」
「私が殺人犯だと民に思われていることも?」
「・・・・・・はい。」
「なぜだ!なぜ張り紙の話しかしなかった?なぜチャンとモンナスが関係していると偽った?監視されている奴婢の身で盗賊の指揮などできん。」
「・・・・・・。」
「民心の問題だ。二人の謀反ではない。」
「ですが陛下、二人を殺せば民心の問題も・・・・・。」
「判断するのは、この私だ。民が私をどう思っているか報告すべきだった。二人を殺せば民心がどう思うかどうかは私が判断する。民が王である私をどう思っているかも知らず統治できるか。」
「お許しください陛下。しかし陛下。隠し事をするつもりはありませんでした。下劣な噂を報告できなかったのです。盗賊が四男を騙っているのはご存知のとおり事実ですが、張り紙は二人がいた場所と関係があります。二人の護送中にも張り紙が張られ役人には手紙が来ました。内密に動く連中がいるということです。チャンとモンナス博士たちが盗賊を動かすのは状況からして無理ですが、盗賊の象徴的存在になっていることは確かです。チャンとモンナスを打ち首にしてください。」
「・・・・・・。」
プヨソンは唸りました。
フクチピョンはサテッキルの言い逃れに悔しい思いをしました。
「来なさい。」
ウヨン公主はソンファ公主を呼びました。
「陛下の寝殿に出入りできるように?」
「公主さまのお考え通り我々の今後のためです。今は陛下に進言もできるのです。陛下に民心の動きをお伝えしました。今ソドン公とモンナス博士を処刑するのは民の恨みを一身に買う行為だと。公主様も進言してくださると信じています。公主様と私の目的は今度も同じですから。」
「陛下、私の意見を受け入れてください。いいえ。即位なさったとき私の意見を受け入れ処刑すべきでした。そうすればこんなことには・・・・・・。」
サテッキルはプヨソンに上奏しました。
「今は当時より状況がより複雑だ。」
フクチピョンはサテッキルに反対しました。
「今から処刑するべきです。」
「それはいかん。余計に民の恨みを買う。」
「しばらく騒がれても始末するべきです。」
「騒がれては困るのだ。結局は陛下が民に恨まれることになる。」
「生かしておいて何の解決に?」
「陛下が恨まれることは絶対にダメだ。」
「しかし・・・・・!」
サテッキルとフクチピョンはプヨソンの前で口論しました。
「二人とも静かにしろ。下がれ。聞こえんのか。」
プヨソンはサテッキルを叱りました。
「どうして二人を殺したがるのだ?」
部屋を出たフクチピョンはサテッキルに訊きました。
「なぜ政敵を消すのに陛下を利用するのですか?」
ソンファ公主はサテッキルに言いました。
「何だと?」
「なぜ陛下を悪者に仕立て上げるのですか。」
「商人の分際で図に乗るな!」
「衛士部の情報網はチン・ガギョン商団より劣っている。チン・ガギョンのほうが命がけで進言する度胸もある。」
サテッキルはソンファ公主の味方をしました。
「おやめになさってください。私は陛下と民の関係を心配し忠誠心から申し上げただけです。」
「そうだ。忠誠心でもお前は彼女に劣る。」
フクチピョンは勢いづきました。
「今は歩み寄り民心をなだめるべきです。」
「そうだ。今は歩み寄らねばならん。」
フクチピョンはサテッキルを倒したくてソンファ公主の味方をしました。
ソンファ公主の本心を知るサテッキルの口は歪みました。
ウヨン公主はプヨソンへの取次を頼みました。
「私がお会いする。」
サテッキルはウヨン公主の邪魔をしました。
「指示があるまで誰も通せません。」
フクチピョンはサテッキルがプヨソンに拒絶されて喜びました。
「モンナスとチャンはここに座らせておけと。」
プヨソンはチャンとモンナス博士が民心を集めている事実と、ソンファ公主の言う通り助けるべきかサテッキルの言う通りに殺すべきか悩んでいました。
市場では、また新たな張り紙がありました。メクトスとウンジンは噂を話す民の声に驚きました。
「モンナス博士とチャンを処刑するらしいぞ。」
「本当か?」
「今日か明日打ち首だってさ。」
ウンジンと一緒に反物を見ていたメクトスは驚き固まりました。
「まさか殺さんだろう。」
「凶暴な王様なのでわかり・・・。」
ウンジンはつい民にしゃべってしまいました。
「おい。親衛隊に聞かれたらどうする。」
メクトスはウンジンの口を手でふさぎました。
「♪威徳には阿佐がいる。♪阿佐には武康がいる。」
「よせ。お前。こらっ。」
メクトスは歌を歌う子供の口をふさぎました。
「どうも。」
「おいしい。」
ソンファの次女チョギはポムノに露店で食事を食べさせてあげていました。
「♪阿佐には武康がいる。♪武康にはチャンスがいる。♪チャンスには誰がいるだろう。私がいる。」
子供は歌を歌っていました。
「大変だ!」
ポムノは顔色を変えました。
「この歌、どういうこと?」
ポムノとチョギは慌てて店を出て走るとサテッキルにぶつかりそうになりました。
「こんにちは。」
サテッキルは無言で立ち去りました。
「急いで。」
チョギはポムノを引っ張り商団に戻りました。
「広めたか?」
ユリムは部下に聞きました。
「はい。民が大勢いるのですぐ広まります。」
「母親に会うのが先でしょ。待っていたのよ。」
先代王の王妃のヘモヨンはウヨン公主に言いました。
「陛下にご挨拶をと思ったので。」
ウヨン公主は釈明しました。
「会ってきたの?」
「いいえ・・・・。」
「公主様、失礼します。」
官僚が部屋に入ってきました。
「どうぞ。」
「今巷に妙な歌が広まっています。」
「歌だと?」
「どんな歌なんです?」
ヘドジュは重臣に訊きました。
「話を聞いただけで内容までは知りません。」
「お聞きに?」
「それが・・・口にするのは・・・・・・。」
貴族のひとりが紙をヘドジュに渡しました。
「威徳には阿佐がいる。阿佐には武康がいる。武康にはチャンスがいる。チャンスには誰がいるだろう。私がいる。お前がいる。我々がいる。我々がいる。」
「歌詞が簡単なので大人だけでなく子供も簡単に歌えます。」
「何ということだ。」
感想
もうすぐ最終回だというのにチャンとモンナス博士は命が危うい大ピンチ。ソンファ姫の正体もサテッキルの正体もまだ秘密のままですからどうなるのでしょう。フクチピョンは残忍で怖い人なのに、なぜか前回あたりから憎めないキャラに変わっていますよね。サテッキルのほうが極悪人として描かれていますね。最期まで面白いですね、このソドンヨは。続きが楽しみです。