「王と妃」 第85話 悲しみの昌徳宮 とあらすじネタバレ感想
85話 悲しみの昌徳宮 あらすじ
王妃はパク尚宮を呼び尋ねました。
「申し訳ございません媽媽。」
「見た通りに話してちょうだい。包み隠さずに正直に言って。」
「上王殿下と王大妃媽媽はずっと泣いておられます。」
「同副承旨と大殿兵監が早く宮殿を出るように催促しているとか。」
「左様でございます媽媽。」
「・・・・・。まだ夜も明けていないではないの。一国の君主上王が夜逃げをするように宮殿を追い出されるとは。」
「恐れながら媽媽・・・・・。」
「話してみなさい。」
「上王殿下は父王の位牌に合掌したいと申しております。ですが承旨や別監がそれを許さぬので・・・・・。」
「なんということ。別れのあいさつも許さぬとは。私が上王様を文昭殿にお連れするわ。」
「ですが・・・」
「立ちなさい。」
「感謝申し上げます媽媽。」
「なりません王妃様。誰も大殿の外に出すなとの王命でございます。」
王妃つきの尚宮が反対しました。
「私はこの国の王妃よ。パク尚宮は来なさい。」
王妃はパク尚宮を連れて部屋を出ました。
「道を開けなさい。私は中殿だ。」
「道を開けよ。」
ハン・ミョンフェは兵士に命じました。
「恐れながら申し上げます。誰も大殿の外へ出すなとの王命でございます。ですが王妃様の行く手までは殿下も阻まぬはず。愚かな兵どもが失礼をしました。どうかお怒りをお鎮めください媽媽。」
「都承旨が道を空けてくれたことに感謝するわ。」
「めっそうもございません。王妃様が昌徳宮に向かわれるぞ。明かりを照らせ。夜道は暗うございます。」
「上王様の行かれる道よりは暗くないはず。都承旨が道を空け道を照らしてくれたこと、死ぬまで心にとめておくわ。」
世祖は酒をあおっていました。
「殿下、昌徳宮は涙の海になるでしょう。誠に王妃様は人情に溢れておられ、慈悲深くいらっしゃいます。」
ハン・ミョンフェは世祖に言いました。
「分かったからもう下がりなさい。」
「何をしているのだ。酒をもってこい。」
王妃は端宗の部屋に行きました。
「私が糸を紡ぎこしらえた上王殿下のお着物でございます。宮殿を出ていく日があるかもしれないと思い作ったのです。もちろん殿下は着るものに困ることはないでしょう。ですが不格好でも、私の手で作って差し上げたかったのです。もしかしたら、上王様と生き別れになるかもしれぬ。そんな予感はしていました。悪い予感は当たると母が言っていましたがその通りですね。媽媽、私に会いたかったらこのお着物をお召ください。一糸一糸に思いをこめましたので私と思ってください。そうすれば私にも媽媽のぬくもりが伝わるはず。」
王大妃ソン氏は話しました。
「媽媽、天も無常すぎます。どうしてお二人を引き離すのでしょう。」
パク尚宮は泣き崩れました。
「大妃様、ただただ申し訳ありません。阿鼻叫喚の地獄絵図もこれほど残酷ではないはずです。南無観世音菩薩」
王妃も泣きました。
「いいえ。仏さまはおっしゃいました。生きること自体が苦であると。上王様の今後を思うと私は胸が張り裂けそうです。私がこの世をさまよう魂ならば地獄を味わずに済んだでしょう。」
「もうすぐ夜が明ける。魯山君はまだ中なのか?」
ハン・ミョンフェはしびれを切らしていました。
「中殿媽媽が中にいらしゃるので。」
「急いで準備を済ませなさい。ヨンウォルまでは長旅になるからな。」
「上王様。殿下は上王様の叔父であります。今は仕方なく上王様に流刑を申しつけておりますが・・・・・。」
「伯母上。叔父上にお伝えください。私たちを引き離すつもりならいっそ私を殺すようにと。叔父上の手では殺せぬというのなら私は自分で首をつります。大妃と離れたくありません。離れられません。王位も譲り宮殿から去るのです。それでも大妃と離れ離れになることはできません。」
端宗は泣きました。王妃も涙を流しました。
「父上である世宗大王は、私を見るたびにため息をつかれたものだ。ある日、学者らと兵書を編纂してうっかり寝てしまった。そのとき父上が集賢殿に入ってこられた。私は起きていたが私の寝顔を眺めておられる父上のお顔が見られず目をつぶったまま寝たふりをした。すると小さくつぶやく父の声が聞こえた。高い才能があるのに、せめて、その半分でも徳があるならば。そうおっしゃって静かにため息をつかれた。王衣を脱ぎ私にかぶせてくださった。はっはっはっは。ふっふっふっふ。」
世祖は涙をこぼし、酒を溢れさせました。
「殿下、お酒があふれております。」
チョン内官は言いました。
「徳がないとおっしゃったのだ。私が下劣だということを父上はご存じだった。才能はあふれるが徳はないが・・・・・・昌徳宮が涙の海になるだと?ふふふふふふはははははははははふふふふふふ。はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは。泣くがよい。世の中を涙であふれさせるがよい。皆が血の涙を流そうと私は一滴も涙を流さぬぞ。私に徳がないだと父上。まさに今の私には徳のかけらもございません。この座は誰のものですか?私のものでした。父上が偏愛した兄上でなく私のものだったのです。そうでなければ眠った私に王の衣をかけてくださるはずがない。」
世祖は涙を流し立ち上がって叫びました。
「殿下・・・・殿下・・・・大丈夫ですか殿下・・・・。」
「そなたは泣いているのか?私のために泣くでない。今宵流されるすべての涙はすべて昌徳宮の上王のために流す涙でなければならぬ。」
世祖は酒をあおりました。
「父上も泣いておられますか?兄上はどうですか?号泣なさるがいい。杯が涙であふれたら私が飲み干してさしあげましょう!はっはっはっはっはっは。あーはっはっはっは。」
世祖は涙を流して叫びました。
翌朝。
譲寧大君が世祖に会いに来ました。
「殿下は先ほどお休みになりました。」
「今お休みになられたらいいものを見逃してします。魯山君が宮殿を出る日ではないか。それでは。」
世祖は酔いつぶれてまだ泣いていました。
「泣くがいい。泣くがいい。」
「魯山君は宮殿を出たのか?」
譲寧大君は王族たちに言いました。
「まだ昌徳宮のはずです。」
「夜が明ける前に城外へ出ろとの王命のはず。府院君を捕らえたときから準備をしておかねば。ところで孝寧大君はどこに?」
「孝寧大君は内仏堂におられます。」
「王室の威厳を取り戻せたのだぞ。」
重臣たちは集まり昌徳宮に向かいました。左議政のチョン・チャンソンは領議政のチョン・インジはお疲れなので行かないとホン・ユンソンに言いました。
「行きましょう領相(ヨンサン、領議政)大監。」
シン・スクチュはチョン・インジに言いました。
「私は長生きしすぎたようだ。今までいろんなものを見てきたが、こんなつらい場面に立ち会うとは。」
「よいほうに考えてみては?今上王様に会っておかねば今度いつ会えるか。二度と戻ってこられぬはず。」
「世宗大王と文宗大王は死んで宮殿を出られた。だが幼い上王様は生きて宮殿を追われるのだな。行こう。最後に一目お会いしなければ。」
「何をしている。早く魯山君を追い出せ。」
譲寧大君はハン・ミョンフェに言いました。
「申し訳ございませんが上王の衣を御脱ぎになってください。」
「夜が明けております。早くお着換えください。」
「下がらぬか。上王様を守れなかった私は白い衣を着たが殿下は君主だった方よ。叔父に王位を奪われ昌徳宮に幽閉されても世宗と文宗の王位を受け就いた君主よ。ネイノーン!誰にものを言っている。それでも文宗大王に顔向けできるのか。今すぐ下がりなさい。」
「媽媽、私たちの立場もお考え下さい。」
「都承旨に言いなさい。上王様は私がお連れするわ。皆は昌徳宮から出るように。頼まれても昌徳宮にとどまることはないわ。」
「お急ぎください。」
男たちは端宗の部屋から出ていきました。
端宗と大妃は二人きりになりました。
「殿下。」
「何も言う出ない。私はそなたとともに行く。」
「もうおたちください。さらに侮辱を味わうだけです。殿下。」
「私にどうしろというのだ?ヨンウォルとはどこだ。見も知らぬ土地で一人で暮らせというのか。私は一人では行かぬぞ。」
「媽媽。私の顔を見てください媽媽。王妃様にお願いしますわ。私を上王様のおられるヨンウォルに行かせてくれと。私を見てください。」
端宗は顔を上げました。
「願いがかなわねば浄業院の塀を越えてでも行きます。どんなに遠くでも構いません。歩けなくなったら這ってでも媽媽に会いに行きます。私を信じてください。必ず上王様のところに行きます。」
「来てくれ。」
「行きます。」
「待ってるからな。昼も夜もそなたが来るのを待っているからな。」
「はい。行きます。」
「来られるわけがない。それを許す叔父ならはじめから私たちを引き離したりせぬはず。」
「媽媽。」
「私はいかぬ。いっそこの場で死ぬ!」
「しっかりしてください。魂だけになっても私は御傍にまいります。」
「私がわからぬと思うのか。今別れれば二度とそなたに会えぬ。そんなことくらい私にもわかるのだ。」
端宗とソン夫人は抱き合って泣きました。
孝寧大君は寺で祈っていました。王妃ユン氏は自分の部屋で涙を流し祈っていました。
「うっ・・・・・!」
世祖は目を覚ましました。
「夜が明けたのか?」
「左様でございます殿下。」
「いつの間によるが明けたのだ?」
「上王様はまだ昌徳宮におられるのか!?」
懿敬世子は昌徳宮に行きました。昌徳宮からは端宗とソン夫人が出てきました。
「殿下、殿下!」
懿敬世子は端宗を見て泣き叫びました。ソン夫人は敵の息子に嫌悪感を抱きました。
「魯山君に告ぐ。特別に魯山君に降格しヨンウォルへ住まわせることにした。罪をつぐない悔い改めよ。」
ハン・ミョンフェは世祖の宣旨を読みました。
「魯山君は殿下の王命をお受けください。」
「府院君を救いたければ王命を受け取りください。」
ハン・ミョンフェは端宗を脅しました。端宗は地面に座りました。
「王命を受け取る前にひとつ頼みがある。王大妃は浄業院に送られるがなぜ私たちを引き離すのだ?都承旨、どうか頼む。王大妃と一緒に行かせてくれ。」
「チッチッチ。」
ミョンフェは舌打ちし尚宮に合図しました。
「お連れして。」
ソン夫人は女官に連れていかれました。
「媽媽!」
「中殿!」
「媽媽・・・・・。」
「中殿!手を離さぬか!中殿ーっ!中殿ー!」
端宗とソン夫人は引き離されました。
端宗はオ・ドクヘは兵50人を連れて端宗をヨンウォルに運ばれました。
ソン・ヒョンスは釈放されました。
「命が助かって何よりです大監。」
妻は喜びました。
「殿下はどうなったのだ?」
「ヨンウォルへ護送されました。」
「媽媽は?上王様と一緒に行かれたのか?」
「媽媽は浄業院へ行かれました。」
「私だけおめおめと生き残るとは。媽媽・・・・・・。この父を、お許しください媽媽・・・・・。」
「上王様の身を守るためじっと耐えていたがもう黙っていることはできない。首陽大君は上王様を廃止次は上王様のお命を狙うだろう。それだけは阻止せねばならない。すでに私は死を覚悟した。命が惜しくない者は私についてこい。」
錦城大君は立ち上がりました。
「これは生死をともにするという証だ。」
錦城大君は赤い鉢巻を仲間に配りました。
孝寧大君は「老いぼれる前に金剛山に遊山に行こうと思う。もし余力があれば妙香山に入ろうと思う」と桂陽君に言いました。
「申し上げにくいのですが魯山君の件について叔父上が不満を抱いていると誤解なさっております。」
「殿下が寂しがられるはずがない。すべて思い通りになったのだ。ふっふっふ。はっはっは。」
孝寧大君は嘆きました。
「孝寧叔父上はすぐに戻られるでしょう。」
桂陽君は孝寧大君の言動を世祖に報告しました。
「ヨンウォルに行かぬとよいがな。」
世祖は孝寧大君を疑っていました。
世子妃の陣痛がはじまりました。
「恥ずかしがることはありません。妊婦が叫ぶことは恥ずべきことではありません。」
姉は世子妃を励ましました。
世祖は都承旨を呼びました。
「廃大妃が世子妃の腹に死んだ子供の魂を吹き込んだ。顕徳王后の呪いで世子は不治の病にかかった。そんな噂が飛び交っているのだ。」
「あまりにも恐ろしい噂なのでなんとお答えすれば・・・・・。」
「捕らえよ。噂を立てたり広めたりする者は貴賤を問わずに捕らえろ。」
「恐れながら世子様が意識を失われました。」
内官は世祖に報告しました。世祖は慌てて懿敬世子の部屋に向かいました。
「ここは魯山君がいた場所ではないか。いったい誰が世子をここに移したのだ。どいつがやった。」
「申し上げにくいのですが、昌徳宮を東宮にせよと殿下が命じられたのでございます。」
世子妃は男子を出産しました。
「夢を・・・夢を見たのだ。」
世祖は言いました。
「殿下・・・。」
王妃は心配しました。
「私の夢に現れたのだ。血だらけの顕徳王后が現れ世子を指さして言った。私の息子の命を奪うなら先にお前の息子の命を奪うと。」
感想
あの手この手で嘘ついて何も悪いことをしていない人を悪人に仕立ててほんとうに世祖は悪党ですね!端宗がいなくなったら、こんどはこの世にいない人間を悪人に仕立てています。もしや精神の病気でしょうか!?気持ち悪いですねー。