「大王世宗(テワンセジョン)」(全86話) 第68話 高麗時代の国境 あらすじとネタバレ感想
68話 高麗時代の国境 あらすじ
明のヘ・スは我が国が官爵を授けたイ・マンジュら女真族の土地は明の土地だ、彼らへの攻撃は明への攻撃だと説明しました。ユン・フェは世宗にイ・スらを呼び戻そうと諫言しましたが、世宗は一歩も引く気はないといいました。世子はチェ・マルリに連れられて平安道のリョヨンに行きました。
リョヨンでは城壁を建設していました。マルリは世子の父世宗が世子さまに恥をかかせていると世子に吹き込みました。世子の文宗は父は無謀な決定をしませんと父を信じていました。チェ・マルリは奴婢に官僚の服を着せて女真族を朝鮮の民とし、大半の両班を敵にした世宗を批判しました。チェ・マルリは強制労働させられている民を指さし、民が国の中心にあるという理想とはかけ離れていると世子に言い世子をそそのかし、「己の怒りなどにとらわれず、民と国を守るためなら王様との対立を恐れぬ者、それこそが将来国を治めるにふさわしい者です」と世子を惑わしました。世子は築城の中止と国境の後退を将軍に命じました。チェ・ユンドク将軍は個人の意見とは関係なく命令に従うものですと世子に言いました。「命を懸けよ。王様が失政を犯したとき命がけで反対する者。人はそれを忠臣と呼ぶのだ将軍。」世子の文宗はマルリに唆された通りにチェ・ユンドクに言いました。
世宗はより強い大砲づくりに熱心でした。イ・チョンはなぜ世宗が兵器づくりと領土回復を急ぐのか質問しました。「女真族が連合を模索している。連合軍を作り勢力拡大を狙うなら彼らの最初の標的は朝鮮となるだろう。」世宗は女真族が勢いづいてきて最悪の条件を前提に北方を警戒していました。
チェ・ヨンドクが勝手に軍を離脱し築城を中止したという報告が世宗の耳に入りました。
世子の文宗は昭憲王后にチェ・マルリの考えに感化された自分の意見を表明しました。怖気づいたのでしょうと首陽大君は文宗に嫌味を言いました。強気の首陽大君と弱気の文宗は母の御前で激しく対立しました。昭憲王后はこの問題が解決するまでは母の前に現れてはいけないと文宗に言いました。
ファン・ヒはチェ・ユンドクの離脱は早まりすぎだと批判しました。チェ・ユンドクは国境を後退させるべきだとファン・ヒに主張しました。ホ・ジョもそれに同意しました。
「ともに戦ってくださいますか?どんなときにも屈することなく私と共に最後まで戦ってください。」世宗は左軍都総制のイ・スに言いました。
集賢殿に首陽大君が現れました。「そなたは父上の味方か?明の圧力を退ける大義名分を探しているとか。つまりは父上の味方というわけだ。」首陽大君はチョン・インジに聞きました。チョン・インジは「王様の意見に賛成する者も反対する者も皆仲間です。」と答えました。首陽大君は皆が仲間という意見には同意できない、私は世子さまに一泡吹かせてやりたい、大義名分が見つかっても誇りを取り戻せなければそのときはこぶしを振るうかもしれないと言いました。チョン・インジは首陽大君をほほえましく見つめました。
世宗「余は自立した朝鮮を望む。いつまで明の覇権主義に屈するつもりだ?ここで引いてはならぬ。引けばさらに明は圧力をかけてくるだろう。余は明の横暴な覇権主義に屈しない朝鮮を望む。川を隔てた防衛線を構築し、朝鮮の国境を遼東まで拡大する。」世宗はイ・スを兵曹判書に任命しました。
世宗「現実に負ければ未来はない。国王とは、現在の国を治めると同時に朝鮮の未来に備える者だ。いかに困難で多くの犠牲を伴おうともたとえ一代ではなしえぬ夢でも余は歩みを止めるつもりはない。」
チェ・ユンドクは直ちに動ける明の兵士は50万人いるとイ・スに話し、イ・スを兵判とは認められないと反旗を翻しました。
情報はただちにヘ・スに漏えいしました。
世宗はイ・スを部屋に呼び、内密に定界碑を探すように命じました。「戻ったら、お酒でねぎらってください」イ・スは世宗に言いました。
ユン・フェはファン・ヒに領土拡大してよいのか聞きました。チェ・マルリは高麗時代の領土と同じになるので平安を保てるか懸念しました。
ユン・フェはイ・スにコンホムジンを探さないように頼みました。イ・スは「洪武帝の約束もある。川を隔てた防御線を表立って反対できぬはずです」と言いました。ユン・フェは「我々が征伐に乗り出すとしても、あなたは兵判の任務を果たせないでしょう。兵判どのに心から従う者は今の軍部にはいません。命を投げ出してくれる部下がいないのです。」と言いました。
イ・ス「いまの王様のように?誇りを持てる朝鮮を作ること。これは王様だけの夢ではない。」
ユン・フェ「王様は民の暮らしを第一にとおっしゃいました。貧困のなかで民に国土拡大を強いることは間違っています。」
イ・ス「それでもこの件を推進するとお決めになった。王様もおつらいはずだ。今上をひとりにしないでくれ。少なくとも大監だけは今上の立場で考えてもらいたい。」
イ・スは説得をしに来たユン・フェを逆に説得しました。
明の情報機関の長のワン・ジンは錐の武器を磨いていました。「遼東を朝鮮にやることはできない。定界碑を破壊しろ。」ワン・ジンは女真族を使うようヘ・スに命令しました。
キム・ジョンソはタミにイ・スの護衛を頼みました。イ・スはキム・ジョンソに世宗のことを頼み、単独で定界碑を探しに行きました。
ワン・ジンとヘ・スは女真族の吾都里(オドリ)部族の長トン・メンガに遼東の支配権と引き換えにイ・スから地図を奪うよう命じました。そのようすをシガロが見張っていてタミに情報を伝えました。イ・スは古地図をもとに高麗時代の城跡の碑石を探しました。イ・スは方位磁石を落としてしまい、それをトン・メンガに拾われました。トン・メンガは馬の足跡を頼りにイ・スの後をつけましたがタミの機転で捲かれてしまいました。
イ・スとタミらは碑石を立てた場所に到着しました。
世宗は世子のヒャン(文宗)を呼びました。世子の文宗は明と敵対させたくない、安定のためですと世宗の高麗時代の領土奪回に反対しました。「いつまで自国の防御を明に任せるつもりだ。厳しい戦いになる。どうやら女真族や明国よりお前との闘いが厳しいようだ。私は、負けるつもりはない。全力で戦え。」世子の文宗も父の戦を受けて立ちました。
イ・スたちは同じ場所を何十回もうろうろしても公劔鎮(コンホムジン)城の碑石は見つかりませんでした。イライラしたタミは弟をつかみ倒すとそこには定界碑がありました。イ・スたちは「高麗之境」と書かれた石碑を掘り起こしました。
感想
ドラマでの世宗はずいぶんと孤立していましたが、歴史ではどうなのでしょうね。やはり重臣たちが既得権益と財産をまもるためにこぞって改革や遼東への領土拡張に反対していたのでしょうか。イ・スもずいぶんと孤軍奮闘で世宗を守っています。世宗にはまるで味方がいないかのようで、これが本当にそうだったのかどうかについてかなり気になります。朝鮮の歴史ドラマでは重臣たちは平気で王に盾突いてその点はいつも驚いています。日本の最近の文化では時代の権力者に対しては絶対服従が原則ですから、ほぼ絶対に逆らえない仕組みがありました(す)。そのため朝鮮の実力者の強権が王権を脅かすことについてはなかなか理解ができません。世子(のちの文宗)は病弱でしたがドラマの中では気持まで弱弱しいですね。ちょうどいま放送している「鄭道伝(チョン・ドジョン)」もドジョンとイ・ソンゲの夢は遼東征伐、高麗時代の領土の回復ですから、世宗と目標や理想はほぼ同じですね。遼東にはどんな魅力があるのでしょうか。少し調べてみましたら、高麗末期から朝鮮の領土は鴨緑江(今の北朝鮮の中国との国境)よりもおよそ南のほうにあったようですね。