刑事フォイル 第12話 エースパイロット 後編あらすじとネタバレ感想
主演 マイケル・キッチン(Michael Kitchen)エースパイロット 後編 あらすじ(ネタバレ) 原題FOYLE'S WAR AMONG THE FEW
1940年9月。戦争の行方を左右する石油などの燃料は国の厳しい統制下にあった。ところがベクスヒル燃料貯蔵所では大量の燃料がなくなっていた。盗難の可能性を探るためフォイルはサムを潜入捜査員として送り込む。アンドリューは親友でエースパイロットのレックスとともに飛行隊をしょって立つ存在になっていた。二人とも貯蔵所で働く女性を恋仲にあったが、ある朝レックスの交際相手が自宅で死んでいるのが見つかる。
サムはコニーの遺体を最初に発見しました。
フォイルとミルナーはすぐに駆けつけ検分を行いました。
「首が折れてます。」
「酔いつぶれた挙句の転落事故か。」
「ああ、でもあざがある。もみ合ったのかも。石油の横流しがらみで雇い主とやりあったのかもしれません。」
「かもな。かわいそうに。部屋はこの上か。」
「はい階段の上です。」
フォイルとミルナーは二階のコニーの部屋を見ました。
「同居人の名前はバイオレット・デービス。ベクスヒルの同僚です。」
「バイオレット・デービス。それはそれは・・・。」
「何か?」
「いや・・・どっちのベッドだ?コニーはこっちか?」
フォイルはコニーが大事にしていた写真を見つけました。写真立てのガラスは割れていました。
「恋人かな?調べます。」
「彼なら知っている。アンドリューの友達だ。レックス・タルボット。」
「ほかの住人は?」
「大家はサットン夫人という人で、今は留守です。なんでこんな物を置いてあるんだろう。鏡台に重曹?妻も飲んでます。」
「聞いてみろ。」
「はい。」
「やっぱりあった。日記帳だ。」
日記帳には男性の兵士の写真が挟まれていました。
「他殺ですか?もしかして・・・自分から飛び降りたとか。ゆうべ落ち込んでいたから。レックスの彼です。乱闘に加わったから・・・」
サムはフォイルに言いました。
「コニーは自殺じゃない。レックスだけか?コニーが会っていたのは。」
「はい。」
「バイオレットは?」
「よく知りません。」
「いいから正直に言え。アンドリューと付き合ってるんだろ。」
「そうです。言いたくなかったんです。アンドリューは関係ないし。」
「関係ないはずないだろう。これは捜査だ。息子とはいえ特別扱いできん。」
ベクスヒル貯蔵所。バイオレットは泣いてミルナーに言いました。途中からフォイルも部屋に入ってきました。
「コニーとはいい友達で支えあっていました。今年のはじめから同居しました。同じころに貯蔵所に入って気が合ったものだから。コニーがレックスと出会ってからは打ち明け話も減りましたけどとにかく首ったけで。でも泣かされることもありました。この前みたいにきっとあの喧嘩はオハロランのせいですよ。コニーが楽しみにしていた夜があんあことになるなんて。レックスとはもう長いです。知り合ってすぐに体から。もう六カ月、七カ月。付き合っていたのは彼だけです。ほかに男は・・・よく知らないけど…いないと思います。コニーはゆうべ酔ってとりみだして"利用されるのはもううんざりだ。秘密を知っている"と周囲に向かって大声で。それが姿を見たのが最後です。私はホテルに恋人と一緒に泊まりました。私は軽い女じゃありません。こんなことをしたのははじめてです。だって特別な人だから。婚約者なんです。結婚するつもりなんです。彼がコニーを送って戻ってきて10時ごろに行きました。彼ってとてもすてきなんです。フォイル・・・あなたと同じ苗字なんですね。」
「それは私が父だから。」
「警視正、厄介なことになりましたね。」
ミルナーは息子が事件に巻き込まれたことを気遣いました。
「厄介どころの騒ぎじゃない。」
「でもアンドリューは容疑者じゃないし。」
「そうか。そうは思えない。」
「ベネットさん、あれは・・・あの二人はなんです。」
ショーン・オハロランはフォイルとミルナーが去るのを見て雇い主のベネットに聞きました。
「警察だ。知らないのか。ゆうべ階段から突き落とされてコニーは突き落とされた。ひどい話だ。管理局から何を言われるか・・・」
ベネットはオハロランに答えました。
空軍基地にフォイルとミルナーは行きました。
「フォイル警視正。お会いできて光栄です。アンドリューを誇りにお思いでしょう。素晴らしいご子息です。」
ターナー中佐はフォイルに握手をしました。
「ありがとう。ああ、今日は公式な立場でここに伺いました。」
「というと?」
「女性の遺体が発見されました。基地に燃料を配達していたコニー・デューアー。」
「聞き覚えのない名前です。」
「ない?彼女は何らかの関係とパイロット二人ともっていたのです。ひとりはアンドリュー、もうひとりはレックス・タルボット。」
「ここには尋問にいらしたのですか?歓迎はできませんね。死因はなんですか。」
「他殺です。階段から突き落とされて首の骨が折れた。状況からいって事故ではありません。」
ミルナーは答えました。
「この件で私が何よりも心配なのは部下たちの士気です。ご存じのように多くの戦死者が出る中、顔に出さなくてもみんな追い詰められている。そこにエースの二人が尋問となると士気に影響があります。」
「よくわかります。私も息子に尋問したかったわけでもここに来たかったわけでもない。しかし犠牲者が出た以上、許可していただけないなら二人を連行して尋問します。」
「もちろん許可します。ただ我々の状況をわかっていただければ・・・」
「それはもう。」
ターナー中佐は尋問を許可しました。
「フォイルさん。これは驚きました。まさかあなただなんて。」
レックスはフォイルに言いました。
「レックス。悪い知らせがあって。コニー・デューアーという女性を知っているね。」
フォイルはレックスへの尋問をはじめました。
「彼女に何かあったんですか?」
「亡くなった。」
「死因は?」
「首の骨を折って、転落事故かあるいはもみ合って突き落とされたか・・・」
ミルナーは説明をしました。
「バイオレットは?同じ部屋に住んでたから目撃したはずです。」
「バイオレットはいなかったんだ。最後にコニーと出会ったのは?」
「フラミンゴです。数日前喧嘩したんです。アイルランド人と乱闘したことで責められて・・・。ゆうべ会えるとは思ってなかったけど事務所から出てきました。相当酔ってて・・・僕のかわりにアンドリューが送っていきました。アンドリューは?かわいそうに。死ぬなんで・・・。なんて哀れな。」
「真剣だったのか?結婚の話とかは?」
「ええ、してました。でも戦時中で、先のことはわからない。でも愛してた。コニーは優しくいちずで素晴らしい人でした。仕事は楽しそうでした。パイロット仲間ならおかしくない。誰が次に死んでも。でもコニーが・・・。」
レックスは落ち込みました。
フォイルは基地で次に息子のアンドリューと会いました。
「まさかレックスを疑ってる?」
「ああ、まあ。」
「そんなのバカげてるよ。レックスとコニーは・・・。レックスは恋人を階段から突き落とすような奴じゃない。レックスは英雄だよ。みんながあこがれてる。そのレックスを尋問したら反感を買う。」
「でも尋問せざるを得ない。もしお前たちでなければ連行したところだ。」
「僕も?僕も容疑者だってこと?」
「気づいてないのか。現時点でお前はコニーに会った最後の人間だ。でも容疑者ではない。」
「家まで送っていったけど?何もない。送ってすぐにクラブに戻った。わかった?」
フォイルはコニーの日記に挟んであったアンドリューの写真を息子に見せました。
「覚えているか?」
「ああ。僕が入隊した時のだ。父さんにあげたろ?それ?」
「いいや、枕の下にあった。コニーの日記帳に挟んであった。」
「ええ!?」
「あげたのか。」
「いいや。知らないよ。」
「じゃあなぜコニーが?ほかのだれかにあげたのか?」
「知らないよ。僕がばらまいたって言うのか?特別な写真だからあげたのにひどい誤解だ。」
「バイオレットには?ゆうべ一緒だったろ?」
「聴いたんだ。ほかにも何か?」
「ホテルの名前と部屋の番号。コニーは脅迫めいた台詞を吐いたあと殺された。お前はコニーを送り生きているコニーを最後に見た人間でしかも日記から写真が・・・・・・」
「僕を調べてたのか?サムを送り込んで友達とのことやバイオレットとの関係まで探るなんて!」
「私の気持も考えてみろ。お前がいかがわしい場所で女と逢引きしてしていることをちっとも知らなかったなんて。」
「うちに連れてきたほうがよかったか?」
「あの子が好きか?」
「あの子じゃないバイオレットだ。でも関係ないだろ!父さんは・・・僕をわかってない。僕が何を考えているかとか、基地まで・・・押しかけてきて、誰にとってもどうでもいいことを根ほり葉ほり!コニーは死んだ。でも僕は関係ない。レックスだって関係ない。いい加減にしろ!」
アンドリューは父に怒って行ってしまいました。
警察署。ミルナーはフォイルの部屋をノックしました。
「入れ。」
「医師の所見を読みました。」
「コニーは妊娠四カ月の所見だった。日記にも気持ち悪いと書いてある。最後の日記にも気分が悪いからDHに予約と。」
「父親が誰かは?」
「それは書いてない。」
「レックス・タルボットじゃないのですか?」
「彼のことはたくさん書いてある。本当に私を愛しているのかとか。それから、合同結婚式の計画。」
「合同?」
「自分とレックス、それからバイオレットと・・・アンドリューだ。」
「燃料の横流しについては何か書いてありますか?」
「それらしい記述が二つ。支払いの記述だ。MBから10ポンド。MBから5ポンド。」
「MB・・・MB・・・マイケル・ベネット。」
「うん。ほとんど毎週金が支払われている。かなりの量の燃料が盗まれてるな。」
「逮捕できそうですか?」
「殺されたのだとしたら、なぜ殺されたのか。なぜアンドリューの写真を持っていたのか、わからない。」
「それは書いてないんですね。」
「書いてない。・・・二人のどちらが父親でもおかしくない。二人が妊娠を知っていたか確かめてくれ。その間に私はサムを引き揚げさせる。そういえば重曹があっただろう?つわりを抑える作用があるらしいぞ。奥さんはなんだって?」
「まだ・・・話は・・・・・・。」
「聞いてみろ。」
「はい。」
フォイルはサムを引き揚げさせるために貯蔵所に行きました。
「君は十分やってくれた。それにこれ以上は危険すぎる。」
「まだばれてないのに・・・それじゃ辞表を出します。」
「そうか?わからないぞ。明日、いつもの時間に迎えに来てくれ。」
「わかりました。おっしゃる通りにします。」
フォイルはコニーの診断をしたグレアム医師を尋ねました。医師はコニーはショックを受けており、四カ月なら気が付きそうなものなのに、コニーは妊娠を伝えに行くと言っていたと話しました。医師のグレアムは赤ん坊まで亡くなりもったいないとフォイルに言いました。
ベネットは忙しそうにしてサムに急いで配達をするように命じました。サムは辞めることを話せませんでした。
「私は妻とコニーの両親に会いに行ってくる。書類は私の机の上に置いておいてくれ。それで君の話はなんだったんだ?さあ、行くぞ!」
ターナー中佐はレックスを慰めました。
「レックス、大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます。」
「彼女のことは残念だった。もう飛べるか?」
「正直言って飛びたくてたまりません。」
「ならよかった。ここ何週間か主に交戦区域が東のケント州だったおかげで我々は新米を訓練できてついていた。とはいえ、それももう終わりだ。」
「出番ですか。」
「戦況の悪化でいつ来てもおかしくない。お前には期待している。心の準備をしておけ。」
「もうできています。」
「また警察だ。嫌なら相手しなくていいぞ。」
「彼女のためです。話相手くらいなら。」
「そうか。行ってよし。」
ミルナーはレックスにコニーが妊娠していたことを教えました。
「聞いてなかった?」
「ないです。」
「あなたの子?」
「ほかに誰がいるんです?コニーに対して失礼でしょ。亡くなったばかりなのにまるで彼女が。僕の子です。絶対に。」
「じゃあなぜ聞いていないんです?」
「それは・・・圧力をかけたくなかったんでしょう。結婚の話はしてました。」
「ご両親はどう思ったでしょう。結婚前に妊娠していても?」
「何が言いたいんだ。結婚したくないから僕が殺したとでもいうのですか?それは違う。彼女を相手していました。それに妊娠していたとは知らなかったのですから。予定日は?」
「妊娠四カ月でした。」
「・・・言ってくれなかった。でも子供は僕の子です。望んでたとは言えないし、複雑だけど絶対に僕の子です。」
フォイルはフランク・ガノンを尋ねました。
「コニー・デューアーを知っているな。君の醸造所で樽のワックス塗りをしてたろ?」
「その通り。うちで働いていました。聞きました。かわいそうに。あなたには死神がついているらしい。」
「逆だ。私が死神を追っている。コニーは身ごもっていた。君の子なのは知ってたか?」
「コニーがそう言いました?」
「コニーは医者に診察が終わったら妊娠を伝えに行くと言っていたそうだ。それでここに君に会いに来て三時間後に死んだ。」
「私はコニーが好きで面倒を見てきた。恋人が撃墜されたときもコニーは私を頼ってきた。彼が入院していた三週間くらいでしたかね。一緒にいるうち、つい成り行きでそういうことに。褒められたことじゃありません。祖国にすべてを捧げるエースパイロットの恋人を寝取るなんてね。でもコニーにとっては私でもレックスでも誰でもよかったのでしょう。」
「君には家庭がある。」
「ええ。子供が生まれたら大変になる。でも産ませる必要はありませんでした。私には法律を何とも思わない知り合いもいます。対処の仕方はありました。」
「父に会ったんだってね。尋問されたよ。」
アンドリューはバイオレットと手をつないで丘を歩いてました。
「あなたとコニーとは何の関係もないのに。」
「疑ってるみたいだ。枕の下から僕の写真が出てきたって。なんで持ってたんだろう。」
「まさかあなた・・・コニーと?」
「違うよ。僕も知りたい。」
「なぜ家まで送っていったの?時々わからなくなる。最初は新しくやってきたサムと思ったけど今度はコニー。私たち結婚するんじゃないの?」
「父にとういったのか?まいったな・・・・・・。」
「どうしてよ。結婚するんのに?アンドリュー。結婚をちらつかせたのは私と寝るため?パイロットなんてみんな勘違いしている。自分は特別だってうぬぼれすぎ。愛想が尽きたの。コニーが言ってた通り、パイロットなんて信用できない。」
バイオレットはアンドリューから去りました。
サムはベクスヒルの貯蔵所にいました。サムはベネットの金庫を開けて調べましたら革靴にズボンを履いた女が部屋に入ってきました。サムは机の下に隠れました。女は机の上にスーツケースを置くと扉に鍵をかけました。箱の中には時限爆弾が入っていました。
「誰か!誰かいない?ここから出して!誰か、助けて!誰か来て!誰か!助けて!」
サムは閉じ込められた部屋から助けを求めました。部屋は鉄の策で囲まれていて外に出られませんでした。サムはフォイルに電話をして助けを求めました。
「あとどれくらいだ?」
「10分ほどです。」
「無理なら机の下にもぐって腹ばいになれ。すぐに行く!」
フォイルと爆弾処理班はべクスヒルの燃料貯蔵所に向かいました。
すぐに扉が開きました。
「サム!」
「あそこです!」
「よし、慎重に。」
爆弾処理班は起爆装置を解除しました。
「一体何を考えていたんだ。」
フォイルはサムを叱りました。
「これがほしかったんです。申込書です。金庫にあった。」
サムは懐から紙を取り出しました。
「無茶しすぎだ。もう少しで死ぬとこだった。」
爆弾処理班は作りは雑だが施設が吹っ飛ぶほどの爆薬だったとフォイルに報告しました。
「とにかく死なずに済んでよかった。今の運転手がひどくてね。」
フォイルとミルナーはオハロランの家に行きました。
「なんだよ!」
「アイルランドに戻るのか?これを返しに来た。」
「やめろ!」
「中身を知っているのか?」
「殺人未遂の容疑で君を逮捕します。オハロランさん、あなたには黙秘権があります。」
「殺人?人を殺そうとはしていない。」
オハロランは逮捕されました。
フォイルとミルナーは次にフランク・ガノンとカーターのところに行きました。
「ガノン君、君を逮捕に来た。」
「悪いことをした覚えはないけど。」
「爆弾は失敗に終わった。オハロランが自供した。」
ミルナーは言いました。
「君はカーターか?」
「ああ。」
「よし。」
「あなたも逮捕します。」
「君は石油を盗んだことと破壊工作を企んだことだ。君たちは戦争努力に多大な貢献をした。ゆえに長期間の重労働が課されるだろう。おめでとう。」
フォイルとミルナーはべクスヒル貯蔵所に行きました。
「三名はすでに逮捕しました。盗まれた正確な量は不明です。数千ガロンにはなるでしょう。」
フォイルは言いました。
「信じられない。」
エバンズは言いました。
「私は何も知りませんでした。嘘じゃない本当です。私は悪党じゃない。ガノンなんて男には会ったこともありません。」
マイケル・ベネットは釈明しました。
「前にも会った通り、私にはベネットが嘘をついているとは思えないんです。」
エバンズは言いました。
「そうかもしれませんが、コニー・デューアーは一枚噛んでいました。」
フォイルはエバンズに言いました。
「コニーの日記によれば、何回か金を受け取っています。MBから。」
「マイケル・ベネット・・・」
エバンズがつぶやきました。
「盗みのからくりも判明しました。サムが配達の手順を教えてくれました。」
「サムって?サムはあなたがたの部下だったの?」
ベネット夫人は言いました。
「ええ、黙っていて申し訳ありません。」
フォイルは謝りました。
「サムの説明によれば手順に穴はありません。申し込みが必要なうえ、双方が控えを交換する。ごまかしようがありません。」
ミルナーは犯罪の手口の説明をはじめました。
「私が考案した手順なんだ。」
エバンズは言いました。
「そうお聞きしております。でも申し込みは配達員がバイクで届けます。そして申込書を受け取るのはいつも決まってベネット夫人。夫人が本物の申込書を偽物にすり替えても誰も気が付きません。客の注文は300ガロン、夫人は500にすり替えます。コニーは500を車に積み込む。コニーは300を客に配達した後残りの200をガノンの手下に渡す。帳簿の上では計算が合う。発覚するのは数カ月先か、いや、何年も先かもしれません。」
「パメラ・・・」
「ここの責任者は主人です。私には何の権限もないのに。」
パメラ・ベネットは自分にはできないといいました。
「そうだ。パメラの言う通りですよ。そんなことパメラにできるはずがないんじゃありませんか。だって・・・」
ベネットはおろおろとしました。
「コニーを雇ったのは誰ですか?以前はガノンに雇われていたことはご存知ですか?ガノンは奥様と知り合って奥様を雇い、奥様がコニーを雇ったのです。」
「でも日記では、彼女に支払いをした人物のイニシャルはPBじゃない。MBだ。」
エバンスは口をはさみました。
「はい。でもコニーの使う略語は独特でして、例えばDHはドクター・ヘンダーソン。それに倣うとMBはミセス・ベネットでしょう。」
「何を言っているんだ君は。勘違いも甚だしい。パメラがそんな・・・できないよ。」
ベネットは混乱しました。
「もちろんできますよ。」
パメラは白状しました。
「なに?」
「私がどんな思いで耐えてきたと思うの?従業員相手にいばりちらして、大物気取りでまったくごみ扱い。ヒトラーみたいに。仕事をしても、お給料さえもくれない。若い女にデレデレして。私がその場にいても自重もしない。へどがでそうよ。もう毎日が屈辱だった。」
「じゃあガノンは?」
フォイルがパメラに尋ねました。
「出口をくれたの。お金と自立。戦後は自由に暮らせるはずだった。誰も私とは思わない。そこが最高。私はお金を得る。ベネットは責任を負う。コニーはわかってくれて二人でバカにしてた。ざまーみろって。気が晴れたものよ。」
ベネット夫人は夫への恨みを告白しました。
「ひとつだけわからないことがあります。爆弾は?」
エバンズはフォイルに訊きました。
「記録や証拠を吹き飛ばして、どれくらいの燃料が盗まれたか、ガノンとつながりがあるのがばれないようにしたのでしょう。」
フォイルが説明しました。
「オハロランは?」
「雇い人です。考えてますよ。彼なら警察が政治がらみかと疑われますからね。IRAとか。石油よりそっちに目を向けようとしたのでしょう。」
ミルナーが説明しました。
「殺されたコニーの犯人はわかったのか?」
エバンズはフォイルに訊きました。
「・・・・・・多分」
フォイルは答えました。
フォイルはレックスのところに行きました。
「こんにちは。」
「やあレックス」
「いらっしゃると思っていました。あなたなら突き止めると思ってましたから。いつわかりました?」
「君は早い段階でボロを出した。最初にコニーの遺体が発見されたと知らせに来たとき、君はこう言っていたんだよ。同じ部屋に住んでたからバイオレットが目撃したはずですって。現場がうちだって知ってた。それに君はあの夜バイオレットがいないって知っていた。なぜなら君がいたからだ。」
「原因は子供です。妊娠したって聞いて、子供を盾に結婚を迫られるって思った。でもそんなこと母が許すはずがない。」
「・・・・・・君の子じゃなかったのに?」
「へ?」
「自分の子じゃないのはわかってたろ。コニーが身ごもったのは君が入院している間だ。」
「何が言いたいんです?」
「君は子供を利用して真実を覆い隠そうとしている。コニーがしたように。」
「やめてください。」
「私を悩ませたのはなぜコニーがアンドリューの写真を持っていたのか。でもあれはコニーが持っていたものじゃない。君が持っていたものだ。」
「そうです。」
「上着を投げたときに、君のポケットから(アンドリューの写真が入った)財布が落ちがんでしょう。」
「コニーは日記で君に愛されている実感がないと書いている。体を求められないから。でも写真を見てすべて腑に落ちた。君は女性に興味はないんだね。」
「そうです。ほんとうは僕が好きなのは・・・・・・。」
「アンドリュー。」
「気持ち悪いでしょう。」
「いやちっとも。」
「ならうれしいけど。」
「ほんとだ。」
「仲間に知られるわけにはいきません。あなたには分からないでしょう。ここの空気が。理由はもうひとつ。ばれたら飛ばせてもらえない。除隊になる。それが嫌でした。」
「そうとは限らない。」
「でも危険は冒せない。真実を知ってコニーは僕を脅した。」
「コニー頼むよ。誰にも言わないでくれ。」
「どうして。私を利用したくせに。愛してるなんて。ふりだけじゃない。結婚しようなんて言ってしてくれるはずがない。私に触れようともしないのに。」
「コニー、君を嫌いじゃないんだ。」
「ほんとの自分を隠すために私を利用しただけじゃない。」
「仕方なかったんだ。言わないでくれ。除隊になる。」
「なっちゃえば。あなたなんて大嫌い。あなたとなんか出会わなければよかった。」
「頼むよ!・・・コニー・・・。」
コニーは階段から落ちました。
「僕は押していません。自分で落ちたんです。」
「手首にあざがあったのはなぜだ。」
「もうどうでもいいんです。今回の件は事故だ。もういいでしょう。」
招集の鐘の音が鳴る。
「緊急発進だ。言われなくてもわかってます。罪は償います。過失致死か殺人か知りませんけど戻ってくるまで待ってください。」
「それはだめだ。」
「でも行かないと。僕は小隊の二番機でエースパイロットです。僕が抜けたら機能しません。逃げたりしません。どうかお願いします。もう一回だけ飛ばせてください。」
「・・・・・・。」
フォイルは横を向いて僅かに頷きました。
「ありがとう。もうひとつ、お願いがあります。アンドリューには言わないでください。子供のせいにしてくれないでしょうか。どんな恥よりもマシだ。知られるよりは。」
「どこにいたんだ。来ないかと思った。」
飛行準備をしているアンドリューはレックスに言いました。
「俺が、おててつないでてやらないとな。」
「記録更新だ。」
「そうだ。アンドリューが邪魔しなければな。」
「幸運を祈る。君と飛べること、誇りに思う。」
レックスはアンドリューに言いました。
「ご自宅ですか?」
「ああ、頼む。」
フォイルはサムに家まで送ってもらいました。
「父さん。」
「アンドリュー。」
「この前はごめん。」
「私こそ・・・悪かった。」
「レックスが死んだ。海峡の、上空で。敵はおよそ20機のメッサーシュミット。高度3600メートルで襲い掛かってきた。僕はいつも通りレックスの隊だった。あんな空中戦はじめてだ。最低でも6機は撃墜した。もっとかも。でも後ろに敵が2機あらわれて。脱出するって信じてた。だから見守ってた。パラシュートが見えたらすぐに助けに行けるように。でも機体は・・・炎上し・・・。気を失ったのかもしれない。そのまま海に墜ちていった。」
「残念だ。」
「これからどうすればいいのかわからない。親友だったのに。」
「彼は立派だった。だから彼のために・・・・・・。」
「頑張るよ。」
「実に立派だった。」
アンドリューは父に抱き着きました。
「酔いつぶれた挙句の転落事故か。」
「ああ、でもあざがある。もみ合ったのかも。石油の横流しがらみで雇い主とやりあったのかもしれません。」
「かもな。かわいそうに。部屋はこの上か。」
「はい階段の上です。」
フォイルとミルナーは二階のコニーの部屋を見ました。
「同居人の名前はバイオレット・デービス。ベクスヒルの同僚です。」
「バイオレット・デービス。それはそれは・・・。」
「何か?」
「いや・・・どっちのベッドだ?コニーはこっちか?」
フォイルはコニーが大事にしていた写真を見つけました。写真立てのガラスは割れていました。
「恋人かな?調べます。」
「彼なら知っている。アンドリューの友達だ。レックス・タルボット。」
「ほかの住人は?」
「大家はサットン夫人という人で、今は留守です。なんでこんな物を置いてあるんだろう。鏡台に重曹?妻も飲んでます。」
「聞いてみろ。」
「はい。」
「やっぱりあった。日記帳だ。」
日記帳には男性の兵士の写真が挟まれていました。
「他殺ですか?もしかして・・・自分から飛び降りたとか。ゆうべ落ち込んでいたから。レックスの彼です。乱闘に加わったから・・・」
サムはフォイルに言いました。
「コニーは自殺じゃない。レックスだけか?コニーが会っていたのは。」
「はい。」
「バイオレットは?」
「よく知りません。」
「いいから正直に言え。アンドリューと付き合ってるんだろ。」
「そうです。言いたくなかったんです。アンドリューは関係ないし。」
「関係ないはずないだろう。これは捜査だ。息子とはいえ特別扱いできん。」
「コニーとはいい友達で支えあっていました。今年のはじめから同居しました。同じころに貯蔵所に入って気が合ったものだから。コニーがレックスと出会ってからは打ち明け話も減りましたけどとにかく首ったけで。でも泣かされることもありました。この前みたいにきっとあの喧嘩はオハロランのせいですよ。コニーが楽しみにしていた夜があんあことになるなんて。レックスとはもう長いです。知り合ってすぐに体から。もう六カ月、七カ月。付き合っていたのは彼だけです。ほかに男は・・・よく知らないけど…いないと思います。コニーはゆうべ酔ってとりみだして"利用されるのはもううんざりだ。秘密を知っている"と周囲に向かって大声で。それが姿を見たのが最後です。私はホテルに恋人と一緒に泊まりました。私は軽い女じゃありません。こんなことをしたのははじめてです。だって特別な人だから。婚約者なんです。結婚するつもりなんです。彼がコニーを送って戻ってきて10時ごろに行きました。彼ってとてもすてきなんです。フォイル・・・あなたと同じ苗字なんですね。」
「それは私が父だから。」
「警視正、厄介なことになりましたね。」
ミルナーは息子が事件に巻き込まれたことを気遣いました。
「厄介どころの騒ぎじゃない。」
「でもアンドリューは容疑者じゃないし。」
「そうか。そうは思えない。」
「ベネットさん、あれは・・・あの二人はなんです。」
ショーン・オハロランはフォイルとミルナーが去るのを見て雇い主のベネットに聞きました。
「警察だ。知らないのか。ゆうべ階段から突き落とされてコニーは突き落とされた。ひどい話だ。管理局から何を言われるか・・・」
ベネットはオハロランに答えました。
空軍基地にフォイルとミルナーは行きました。
「フォイル警視正。お会いできて光栄です。アンドリューを誇りにお思いでしょう。素晴らしいご子息です。」
ターナー中佐はフォイルに握手をしました。
「ありがとう。ああ、今日は公式な立場でここに伺いました。」
「というと?」
「女性の遺体が発見されました。基地に燃料を配達していたコニー・デューアー。」
「聞き覚えのない名前です。」
「ない?彼女は何らかの関係とパイロット二人ともっていたのです。ひとりはアンドリュー、もうひとりはレックス・タルボット。」
「ここには尋問にいらしたのですか?歓迎はできませんね。死因はなんですか。」
「他殺です。階段から突き落とされて首の骨が折れた。状況からいって事故ではありません。」
ミルナーは答えました。
「この件で私が何よりも心配なのは部下たちの士気です。ご存じのように多くの戦死者が出る中、顔に出さなくてもみんな追い詰められている。そこにエースの二人が尋問となると士気に影響があります。」
「よくわかります。私も息子に尋問したかったわけでもここに来たかったわけでもない。しかし犠牲者が出た以上、許可していただけないなら二人を連行して尋問します。」
「もちろん許可します。ただ我々の状況をわかっていただければ・・・」
「それはもう。」
ターナー中佐は尋問を許可しました。
「フォイルさん。これは驚きました。まさかあなただなんて。」
レックスはフォイルに言いました。
「レックス。悪い知らせがあって。コニー・デューアーという女性を知っているね。」
フォイルはレックスへの尋問をはじめました。
「彼女に何かあったんですか?」
「亡くなった。」
「死因は?」
「首の骨を折って、転落事故かあるいはもみ合って突き落とされたか・・・」
ミルナーは説明をしました。
「バイオレットは?同じ部屋に住んでたから目撃したはずです。」
「バイオレットはいなかったんだ。最後にコニーと出会ったのは?」
「フラミンゴです。数日前喧嘩したんです。アイルランド人と乱闘したことで責められて・・・。ゆうべ会えるとは思ってなかったけど事務所から出てきました。相当酔ってて・・・僕のかわりにアンドリューが送っていきました。アンドリューは?かわいそうに。死ぬなんで・・・。なんて哀れな。」
「真剣だったのか?結婚の話とかは?」
「ええ、してました。でも戦時中で、先のことはわからない。でも愛してた。コニーは優しくいちずで素晴らしい人でした。仕事は楽しそうでした。パイロット仲間ならおかしくない。誰が次に死んでも。でもコニーが・・・。」
レックスは落ち込みました。
フォイルは基地で次に息子のアンドリューと会いました。
「まさかレックスを疑ってる?」
「ああ、まあ。」
「そんなのバカげてるよ。レックスとコニーは・・・。レックスは恋人を階段から突き落とすような奴じゃない。レックスは英雄だよ。みんながあこがれてる。そのレックスを尋問したら反感を買う。」
「でも尋問せざるを得ない。もしお前たちでなければ連行したところだ。」
「僕も?僕も容疑者だってこと?」
「気づいてないのか。現時点でお前はコニーに会った最後の人間だ。でも容疑者ではない。」
「家まで送っていったけど?何もない。送ってすぐにクラブに戻った。わかった?」
フォイルはコニーの日記に挟んであったアンドリューの写真を息子に見せました。
「覚えているか?」
「ああ。僕が入隊した時のだ。父さんにあげたろ?それ?」
「いいや、枕の下にあった。コニーの日記帳に挟んであった。」
「ええ!?」
「あげたのか。」
「いいや。知らないよ。」
「じゃあなぜコニーが?ほかのだれかにあげたのか?」
「知らないよ。僕がばらまいたって言うのか?特別な写真だからあげたのにひどい誤解だ。」
「バイオレットには?ゆうべ一緒だったろ?」
「聴いたんだ。ほかにも何か?」
「ホテルの名前と部屋の番号。コニーは脅迫めいた台詞を吐いたあと殺された。お前はコニーを送り生きているコニーを最後に見た人間でしかも日記から写真が・・・・・・」
「僕を調べてたのか?サムを送り込んで友達とのことやバイオレットとの関係まで探るなんて!」
「私の気持も考えてみろ。お前がいかがわしい場所で女と逢引きしてしていることをちっとも知らなかったなんて。」
「うちに連れてきたほうがよかったか?」
「あの子が好きか?」
「あの子じゃないバイオレットだ。でも関係ないだろ!父さんは・・・僕をわかってない。僕が何を考えているかとか、基地まで・・・押しかけてきて、誰にとってもどうでもいいことを根ほり葉ほり!コニーは死んだ。でも僕は関係ない。レックスだって関係ない。いい加減にしろ!」
アンドリューは父に怒って行ってしまいました。
「入れ。」
「医師の所見を読みました。」
「コニーは妊娠四カ月の所見だった。日記にも気持ち悪いと書いてある。最後の日記にも気分が悪いからDHに予約と。」
「父親が誰かは?」
「それは書いてない。」
「レックス・タルボットじゃないのですか?」
「彼のことはたくさん書いてある。本当に私を愛しているのかとか。それから、合同結婚式の計画。」
「合同?」
「自分とレックス、それからバイオレットと・・・アンドリューだ。」
「燃料の横流しについては何か書いてありますか?」
「それらしい記述が二つ。支払いの記述だ。MBから10ポンド。MBから5ポンド。」
「MB・・・MB・・・マイケル・ベネット。」
「うん。ほとんど毎週金が支払われている。かなりの量の燃料が盗まれてるな。」
「逮捕できそうですか?」
「殺されたのだとしたら、なぜ殺されたのか。なぜアンドリューの写真を持っていたのか、わからない。」
「それは書いてないんですね。」
「書いてない。・・・二人のどちらが父親でもおかしくない。二人が妊娠を知っていたか確かめてくれ。その間に私はサムを引き揚げさせる。そういえば重曹があっただろう?つわりを抑える作用があるらしいぞ。奥さんはなんだって?」
「まだ・・・話は・・・・・・。」
「聞いてみろ。」
「はい。」
フォイルはサムを引き揚げさせるために貯蔵所に行きました。
「君は十分やってくれた。それにこれ以上は危険すぎる。」
「まだばれてないのに・・・それじゃ辞表を出します。」
「そうか?わからないぞ。明日、いつもの時間に迎えに来てくれ。」
「わかりました。おっしゃる通りにします。」
フォイルはコニーの診断をしたグレアム医師を尋ねました。医師はコニーはショックを受けており、四カ月なら気が付きそうなものなのに、コニーは妊娠を伝えに行くと言っていたと話しました。医師のグレアムは赤ん坊まで亡くなりもったいないとフォイルに言いました。
ベネットは忙しそうにしてサムに急いで配達をするように命じました。サムは辞めることを話せませんでした。
「私は妻とコニーの両親に会いに行ってくる。書類は私の机の上に置いておいてくれ。それで君の話はなんだったんだ?さあ、行くぞ!」
ターナー中佐はレックスを慰めました。
「レックス、大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます。」
「彼女のことは残念だった。もう飛べるか?」
「正直言って飛びたくてたまりません。」
「ならよかった。ここ何週間か主に交戦区域が東のケント州だったおかげで我々は新米を訓練できてついていた。とはいえ、それももう終わりだ。」
「出番ですか。」
「戦況の悪化でいつ来てもおかしくない。お前には期待している。心の準備をしておけ。」
「もうできています。」
「また警察だ。嫌なら相手しなくていいぞ。」
「彼女のためです。話相手くらいなら。」
「そうか。行ってよし。」
ミルナーはレックスにコニーが妊娠していたことを教えました。
「聞いてなかった?」
「ないです。」
「あなたの子?」
「ほかに誰がいるんです?コニーに対して失礼でしょ。亡くなったばかりなのにまるで彼女が。僕の子です。絶対に。」
「じゃあなぜ聞いていないんです?」
「それは・・・圧力をかけたくなかったんでしょう。結婚の話はしてました。」
「ご両親はどう思ったでしょう。結婚前に妊娠していても?」
「何が言いたいんだ。結婚したくないから僕が殺したとでもいうのですか?それは違う。彼女を相手していました。それに妊娠していたとは知らなかったのですから。予定日は?」
「妊娠四カ月でした。」
「・・・言ってくれなかった。でも子供は僕の子です。望んでたとは言えないし、複雑だけど絶対に僕の子です。」
「コニー・デューアーを知っているな。君の醸造所で樽のワックス塗りをしてたろ?」
「その通り。うちで働いていました。聞きました。かわいそうに。あなたには死神がついているらしい。」
「逆だ。私が死神を追っている。コニーは身ごもっていた。君の子なのは知ってたか?」
「コニーがそう言いました?」
「コニーは医者に診察が終わったら妊娠を伝えに行くと言っていたそうだ。それでここに君に会いに来て三時間後に死んだ。」
「私はコニーが好きで面倒を見てきた。恋人が撃墜されたときもコニーは私を頼ってきた。彼が入院していた三週間くらいでしたかね。一緒にいるうち、つい成り行きでそういうことに。褒められたことじゃありません。祖国にすべてを捧げるエースパイロットの恋人を寝取るなんてね。でもコニーにとっては私でもレックスでも誰でもよかったのでしょう。」
「君には家庭がある。」
「ええ。子供が生まれたら大変になる。でも産ませる必要はありませんでした。私には法律を何とも思わない知り合いもいます。対処の仕方はありました。」
「父に会ったんだってね。尋問されたよ。」
アンドリューはバイオレットと手をつないで丘を歩いてました。
「あなたとコニーとは何の関係もないのに。」
「疑ってるみたいだ。枕の下から僕の写真が出てきたって。なんで持ってたんだろう。」
「まさかあなた・・・コニーと?」
「違うよ。僕も知りたい。」
「なぜ家まで送っていったの?時々わからなくなる。最初は新しくやってきたサムと思ったけど今度はコニー。私たち結婚するんじゃないの?」
「父にとういったのか?まいったな・・・・・・。」
「どうしてよ。結婚するんのに?アンドリュー。結婚をちらつかせたのは私と寝るため?パイロットなんてみんな勘違いしている。自分は特別だってうぬぼれすぎ。愛想が尽きたの。コニーが言ってた通り、パイロットなんて信用できない。」
バイオレットはアンドリューから去りました。
サムはベクスヒルの貯蔵所にいました。サムはベネットの金庫を開けて調べましたら革靴にズボンを履いた女が部屋に入ってきました。サムは机の下に隠れました。女は机の上にスーツケースを置くと扉に鍵をかけました。箱の中には時限爆弾が入っていました。
「誰か!誰かいない?ここから出して!誰か、助けて!誰か来て!誰か!助けて!」
サムは閉じ込められた部屋から助けを求めました。部屋は鉄の策で囲まれていて外に出られませんでした。サムはフォイルに電話をして助けを求めました。
「あとどれくらいだ?」
「10分ほどです。」
「無理なら机の下にもぐって腹ばいになれ。すぐに行く!」
フォイルと爆弾処理班はべクスヒルの燃料貯蔵所に向かいました。
すぐに扉が開きました。
「サム!」
「あそこです!」
「よし、慎重に。」
爆弾処理班は起爆装置を解除しました。
「一体何を考えていたんだ。」
フォイルはサムを叱りました。
「これがほしかったんです。申込書です。金庫にあった。」
サムは懐から紙を取り出しました。
「無茶しすぎだ。もう少しで死ぬとこだった。」
爆弾処理班は作りは雑だが施設が吹っ飛ぶほどの爆薬だったとフォイルに報告しました。
「とにかく死なずに済んでよかった。今の運転手がひどくてね。」
フォイルとミルナーはオハロランの家に行きました。
「なんだよ!」
「アイルランドに戻るのか?これを返しに来た。」
「やめろ!」
「中身を知っているのか?」
「殺人未遂の容疑で君を逮捕します。オハロランさん、あなたには黙秘権があります。」
「殺人?人を殺そうとはしていない。」
オハロランは逮捕されました。
フォイルとミルナーは次にフランク・ガノンとカーターのところに行きました。
「ガノン君、君を逮捕に来た。」
「悪いことをした覚えはないけど。」
「爆弾は失敗に終わった。オハロランが自供した。」
ミルナーは言いました。
「君はカーターか?」
「ああ。」
「よし。」
「あなたも逮捕します。」
「君は石油を盗んだことと破壊工作を企んだことだ。君たちは戦争努力に多大な貢献をした。ゆえに長期間の重労働が課されるだろう。おめでとう。」
フォイルとミルナーはべクスヒル貯蔵所に行きました。
「三名はすでに逮捕しました。盗まれた正確な量は不明です。数千ガロンにはなるでしょう。」
フォイルは言いました。
「信じられない。」
エバンズは言いました。
「私は何も知りませんでした。嘘じゃない本当です。私は悪党じゃない。ガノンなんて男には会ったこともありません。」
マイケル・ベネットは釈明しました。
「前にも会った通り、私にはベネットが嘘をついているとは思えないんです。」
エバンズは言いました。
「そうかもしれませんが、コニー・デューアーは一枚噛んでいました。」
フォイルはエバンズに言いました。
「コニーの日記によれば、何回か金を受け取っています。MBから。」
「マイケル・ベネット・・・」
エバンズがつぶやきました。
「盗みのからくりも判明しました。サムが配達の手順を教えてくれました。」
「サムって?サムはあなたがたの部下だったの?」
ベネット夫人は言いました。
「ええ、黙っていて申し訳ありません。」
フォイルは謝りました。
「サムの説明によれば手順に穴はありません。申し込みが必要なうえ、双方が控えを交換する。ごまかしようがありません。」
ミルナーは犯罪の手口の説明をはじめました。
「私が考案した手順なんだ。」
エバンズは言いました。
「そうお聞きしております。でも申し込みは配達員がバイクで届けます。そして申込書を受け取るのはいつも決まってベネット夫人。夫人が本物の申込書を偽物にすり替えても誰も気が付きません。客の注文は300ガロン、夫人は500にすり替えます。コニーは500を車に積み込む。コニーは300を客に配達した後残りの200をガノンの手下に渡す。帳簿の上では計算が合う。発覚するのは数カ月先か、いや、何年も先かもしれません。」
「パメラ・・・」
「ここの責任者は主人です。私には何の権限もないのに。」
パメラ・ベネットは自分にはできないといいました。
「そうだ。パメラの言う通りですよ。そんなことパメラにできるはずがないんじゃありませんか。だって・・・」
ベネットはおろおろとしました。
「コニーを雇ったのは誰ですか?以前はガノンに雇われていたことはご存知ですか?ガノンは奥様と知り合って奥様を雇い、奥様がコニーを雇ったのです。」
「でも日記では、彼女に支払いをした人物のイニシャルはPBじゃない。MBだ。」
エバンスは口をはさみました。
「はい。でもコニーの使う略語は独特でして、例えばDHはドクター・ヘンダーソン。それに倣うとMBはミセス・ベネットでしょう。」
「何を言っているんだ君は。勘違いも甚だしい。パメラがそんな・・・できないよ。」
ベネットは混乱しました。
「もちろんできますよ。」
パメラは白状しました。
「なに?」
「私がどんな思いで耐えてきたと思うの?従業員相手にいばりちらして、大物気取りでまったくごみ扱い。ヒトラーみたいに。仕事をしても、お給料さえもくれない。若い女にデレデレして。私がその場にいても自重もしない。へどがでそうよ。もう毎日が屈辱だった。」
「じゃあガノンは?」
フォイルがパメラに尋ねました。
「出口をくれたの。お金と自立。戦後は自由に暮らせるはずだった。誰も私とは思わない。そこが最高。私はお金を得る。ベネットは責任を負う。コニーはわかってくれて二人でバカにしてた。ざまーみろって。気が晴れたものよ。」
ベネット夫人は夫への恨みを告白しました。
「ひとつだけわからないことがあります。爆弾は?」
エバンズはフォイルに訊きました。
「記録や証拠を吹き飛ばして、どれくらいの燃料が盗まれたか、ガノンとつながりがあるのがばれないようにしたのでしょう。」
フォイルが説明しました。
「オハロランは?」
「雇い人です。考えてますよ。彼なら警察が政治がらみかと疑われますからね。IRAとか。石油よりそっちに目を向けようとしたのでしょう。」
ミルナーが説明しました。
「殺されたコニーの犯人はわかったのか?」
エバンズはフォイルに訊きました。
「・・・・・・多分」
フォイルは答えました。
フォイルはレックスのところに行きました。
「こんにちは。」
「やあレックス」
「いらっしゃると思っていました。あなたなら突き止めると思ってましたから。いつわかりました?」
「君は早い段階でボロを出した。最初にコニーの遺体が発見されたと知らせに来たとき、君はこう言っていたんだよ。同じ部屋に住んでたからバイオレットが目撃したはずですって。現場がうちだって知ってた。それに君はあの夜バイオレットがいないって知っていた。なぜなら君がいたからだ。」
「原因は子供です。妊娠したって聞いて、子供を盾に結婚を迫られるって思った。でもそんなこと母が許すはずがない。」
「・・・・・・君の子じゃなかったのに?」
「へ?」
「自分の子じゃないのはわかってたろ。コニーが身ごもったのは君が入院している間だ。」
「何が言いたいんです?」
「君は子供を利用して真実を覆い隠そうとしている。コニーがしたように。」
「やめてください。」
「私を悩ませたのはなぜコニーがアンドリューの写真を持っていたのか。でもあれはコニーが持っていたものじゃない。君が持っていたものだ。」
「そうです。」
「上着を投げたときに、君のポケットから(アンドリューの写真が入った)財布が落ちがんでしょう。」
「コニーは日記で君に愛されている実感がないと書いている。体を求められないから。でも写真を見てすべて腑に落ちた。君は女性に興味はないんだね。」
「そうです。ほんとうは僕が好きなのは・・・・・・。」
「アンドリュー。」
「気持ち悪いでしょう。」
「いやちっとも。」
「ならうれしいけど。」
「ほんとだ。」
「仲間に知られるわけにはいきません。あなたには分からないでしょう。ここの空気が。理由はもうひとつ。ばれたら飛ばせてもらえない。除隊になる。それが嫌でした。」
「そうとは限らない。」
「でも危険は冒せない。真実を知ってコニーは僕を脅した。」
「コニー頼むよ。誰にも言わないでくれ。」
「どうして。私を利用したくせに。愛してるなんて。ふりだけじゃない。結婚しようなんて言ってしてくれるはずがない。私に触れようともしないのに。」
「コニー、君を嫌いじゃないんだ。」
「ほんとの自分を隠すために私を利用しただけじゃない。」
「仕方なかったんだ。言わないでくれ。除隊になる。」
「なっちゃえば。あなたなんて大嫌い。あなたとなんか出会わなければよかった。」
「頼むよ!・・・コニー・・・。」
コニーは階段から落ちました。
「僕は押していません。自分で落ちたんです。」
「手首にあざがあったのはなぜだ。」
「もうどうでもいいんです。今回の件は事故だ。もういいでしょう。」
招集の鐘の音が鳴る。
「緊急発進だ。言われなくてもわかってます。罪は償います。過失致死か殺人か知りませんけど戻ってくるまで待ってください。」
「それはだめだ。」
「でも行かないと。僕は小隊の二番機でエースパイロットです。僕が抜けたら機能しません。逃げたりしません。どうかお願いします。もう一回だけ飛ばせてください。」
「・・・・・・。」
フォイルは横を向いて僅かに頷きました。
「ありがとう。もうひとつ、お願いがあります。アンドリューには言わないでください。子供のせいにしてくれないでしょうか。どんな恥よりもマシだ。知られるよりは。」
「どこにいたんだ。来ないかと思った。」
飛行準備をしているアンドリューはレックスに言いました。
「俺が、おててつないでてやらないとな。」
「記録更新だ。」
「そうだ。アンドリューが邪魔しなければな。」
「幸運を祈る。君と飛べること、誇りに思う。」
レックスはアンドリューに言いました。
「ご自宅ですか?」
「ああ、頼む。」
フォイルはサムに家まで送ってもらいました。
「父さん。」
「アンドリュー。」
「この前はごめん。」
「私こそ・・・悪かった。」
「レックスが死んだ。海峡の、上空で。敵はおよそ20機のメッサーシュミット。高度3600メートルで襲い掛かってきた。僕はいつも通りレックスの隊だった。あんな空中戦はじめてだ。最低でも6機は撃墜した。もっとかも。でも後ろに敵が2機あらわれて。脱出するって信じてた。だから見守ってた。パラシュートが見えたらすぐに助けに行けるように。でも機体は・・・炎上し・・・。気を失ったのかもしれない。そのまま海に墜ちていった。」
「残念だ。」
「これからどうすればいいのかわからない。親友だったのに。」
「彼は立派だった。だから彼のために・・・・・・。」
「頑張るよ。」
「実に立派だった。」
アンドリューは父に抱き着きました。
感想
いやぁ。そっち系でしたか。ダンディでかっこいいレックスがゲイちゃんで。なるほどね。でもなんだろうこの気持ち!レックスのドラマに胸が重いっ☆飛行機の物語は切ないドラマがありますねー。やっぱりゲイの人って女性には指一本触れたくないのでしょうか!?ミステリーです。
今回はすごくややこしい話でサムが危険な目に、そしてアンドリューも事件に巻き込まれてしましました。主要人物が事件に巻き込まれる話はサスペンスでは王道ですけど、やっぱりハラハラしちゃいます。きっとバイオレットが怪しいと思われた方も多いのではないでしょうか?
今回はすごくややこしい話でサムが危険な目に、そしてアンドリューも事件に巻き込まれてしましました。主要人物が事件に巻き込まれる話はサスペンスでは王道ですけど、やっぱりハラハラしちゃいます。きっとバイオレットが怪しいと思われた方も多いのではないでしょうか?