太陽を抱く月 1話あらすじとネタバレ感想 恋のさざなみ 前編
1話あらすじ (前編)
世の始まりには天に太陽が二つ。
月もまた二つだったそうです。
昼は燃えるように暑く夜は凍えるように冷たい。
天地万物は混乱し人々はもがき苦しんでいた。
そこに英雄が現れ太陽と月を一つずつ矢で射落としようやく安らかな世が訪れたと。
大妃殿の大妃の部屋。
大妃ユン氏は蓮の花に湯を落とし、茶を飲みました。
「乱世には英雄が不可欠なのです。そう思いませぬか。側室の子だというのに我らが主上(チュサン)はウィソン君をひいきしておられる。」
ユン・デヒョンは黙って大妃の話を聴いていました。
「それゆえウィソン君を推す不届き者が現れるのです。どうしたものでしょう。現世を救う英雄を待つだけでよいのですか。」
「大妃媽媽は私に何をお望みでしょうか。」
ユン・デヒョンは大妃ユン氏に言いました。
「英雄におなりなさい。忠義を尽くすのです。表立って動けぬ王に代わり功を立てるのです。天に太陽は一つ。王宮に大王(テワン)は一人。ウィソン君は存在自体が王の座を脅かしています。射落とさねばならぬ太陽です。」
夜。ウィソン君の屋敷に黒い服の刺客が忍び込み黄色い紙に朱書きの札を貼り地面の中に本を埋めました。刺客は扉を開けると部屋には誰もいませんでした。刺客の喉元に剣が突き付けられました。
「誰の命で来たのか申せ。」
ウィソン君は言いました。刺客は身をひるがえすとウィソン君に手刀を投げました。ウィソン君の左胸に刀が刺さりました。
「はあっ!」
巫女のアリは眠りから目が覚めました。
「どうしたの。何があったの?深夜にどこへ行くのだ?」
隣で寝ていた巫女チャン・ノギョンはアリに言いました。
「わからないの?確かに殺気を感じたの。」
アリはチャン・ノギョンに言い出かける支度をはじめました。
「アリや。アリや。アリや。・・・・・・あっ!」
平服に着替えて林の間を走るアリをチャン・ノギョンは追いかけましたがチャン・ノギョンの身体に突然神が降りノギョンはその場に立ち尽くしました。
ウィソン君の屋敷の庭。
「久しぶりですな。ウィソン君大監。」
ユン・デヒョンは四人の刺客に地面に這いつくばらせられ胸に傷を負っているウィソン君に言いました。
「貴様は何度も私にすり寄って来たくせに私が後ろ盾になるのを拒んだため手を変えたのか?それとも別の後ろ盾を見つけたか。」
「その通り。今後は今上を後ろ盾にしようと思う。あなたは”犬や牛が権力を欲するが政治は君主がするもの。立場をわきまえよ”と言った。」
「陰謀に惑わされる今上(クムサン)ではない。主上がどちらの言葉を信じると思うのだ。」
「残念ながら大監は二度と主上殿下に会うことはできません。天に召されますので。」
ウィソン君は剣を抜こうとしましたがユン・デヒョンの剣に倒れました。
「いい夜だ。月が供をしてくれれば墓に行く道も悪くなかろう。」
塀の外から見ていたアリは声を出しそうになり口を押さえました。
「追え!」
ユン・デヒョンは刺客に命じてアリを追わせました。アリはすぐに崖に追い詰められました。刺客がアリに剣を向けるとアリは崖から落ちました。
翌日の大妃ユン氏の部屋。
「アリ。アリか。」
大妃はユン・デヒョンに言いました。
「類稀なる神力がありノギョンとともに次の国巫(クンム)候補とされる者です。どうせ遠くへは逃げられません。付近の森一帯を探しており・・・。」
「王族と巫女が恋仲か。天が味方した。」
「味方とは?」
「ウィソン君の屋敷で下女をしていた女だ。二人の関係は公然の秘密だった。」
「だとしたら危険なのでは?」
「なぜだ。」
「愚かな女は恋ごときに命を懸けるもの。今上のもとに駆け込むのでは?」
「慕った相手が王位を狙っていたことにするのだ。願いを叶えるために札を書いた。ありうる話でしょう。」
「しかし札を書いた確かな証拠もなしで・・・・。」
「星宿庁(ソンスチョン)の国巫は私の味方だ。問題ない。謀反ということにしろ。」
両班のホ家の身重の正室シン夫人が輿に乗って林を進んでいると侍女の奴婢が悲鳴を上げました。
「あーっ。」
「どうしたのだ。」
「そ・・・そこに人が。」
シン夫人はアリが倒れているのを見ました。
「おなかのお子様に障ります奥様(マーニー、奥様)。」
「もし。私の声が聞こえますか?」
シン夫人は地面に座りアリを揺すりました。
「あなた様の無念は・・・私が・・・。」
アリは息絶え絶えに言いました。
「早く輿に乗せなさい。」
「えっ?素性の知れない者など・・・。」
「お前たち(イボシゲ)。手伝っておくれ。」
シン夫人は輿を担いでいた奴婢の男たちに命じました。
アリは輿に隠され都城に入りました。
「止まれ。」
門の警備の兵士がシン夫人の侍女に言いました。
「何でしょうか。」
「罪人を探しておる。輿の扉を開けよ。」
「大逆罪人ですか?」
侍女は兵士の持つアリの人相描きを見ました。
「あっ・・・両班の女人が乗る輿を覗くおつもりですか?」
侍女は兵士に言いました。
「あ・・・お待ちを。」
侍女の制止も聞かずに兵士は輿の窓を開けました。
「何事だ。なぜ足止めをする。」
輿の中にいたシン夫人は兵士に言いました。
「罪人を探しております。輿を降りていただきたい。」
「子のために祈願をした帰りだ。乗り降りが大儀ゆえ疑うなら屋敷へ参れ。どうするのだ。聞いておらぬのか。」
「失礼いたしました。」
兵士は窓を閉めました。
「行こう。」
輿が出発すると兵士は輿の中から血がしたたり落ちていることに気づきました。
「待て!」
兵士は輿を止め窓を開けました。
「やはり輿を・・・。」
「ああっ・・・・ああっ・・・・。」
苦しみ声を出すシン夫人のチョゴリには血が滲んでいました。
「奥様が出血されたわ。臨月だから気を付けろとお医者様がおっしゃっていたのに。通してください。大変なことになります。大司諫(テサガン)様の奥方ですよ。責任が取れますか?」
「道を開けよー。道を開けよー。」
兵士は部下に命じました。
「奥方様。もう少しの辛抱です。」
シン夫人と侍女は都城に入りました。
「この御恩をどう返せばよいのでしょうか。お召し物を汚してしまい偽りの陣痛までさせてしまい・・・。」
アリはシン夫人に感謝しました。
「先ほどの痛みはまことだ。死ぬ思いをした。この子がそなた(チャネ)を守ったようだ。」
「月のように美しい御子(みこ)様です。」
「そうなのか。ならばこの子はおなごなのか。」
「さようでございます。」
「まことにそなたは巫女なのか。かわいい娘を望んでいるがまことであるな?」
「そうです。お嬢様は高貴な運命を背負っておられ・・・!」
アリは子の未来が見えました。
「どうしたのだ。」
「い、いいえ。少しめまいが。」
「ほんとうに一人で大丈夫なのか。」
「どうかご心配なく。助けていただいた御恩は死んでも忘れません。」
「私は(ネガ)巫女には及ばぬが人を見る目はある。そなたは悪い人ではない。」
巫女はシン夫人に頭を下げました。
「奥様。御子様は命に代えてもお守りいたします。」
アリは輿を追いかけるとシン夫人に言いました。シン夫人は優しくアリに頷きました。
アリは町の路地で黒ずくめの兵士に捕まりました。
夜の牢屋。
「アリや。アリや。」
チャン・ノギョンは牢屋のアリに言いました。
「どうして屋敷に行ったのだ。私が言っただろう。行ってもなにもできないと。」
「私の代わりに守ってほしい子がいるのだ。太陽に近づけば凶を招く子だがお傍にお仕えすべき運命を持っている子だ。その娘を私の代わりに守ってほしい。」
「いったい何を言っているのだ。守らねばならぬ子とは何だ。」
「私の運命はもう尽きる。そなたは生きて星宿庁(ソンスチョン)を守るのだ。」
「その娘とは何なのだ。アリや。アリや。」
チャン・ノギョンはアリと引き合わせた自分の身が心配になった見張りの兵士に追い出されました。
翌日。大逆罪人の処刑が行われました。
「二つの太陽と・・・一つの月・・・どうか・・・ご無事でありますように。」
アリの四肢は牛に引き裂かれました。チャン・ノギョンは目を背けました。
同じころ、ホ家に娘が生まれました。
「まことに月のように美しい。ヨムよ。そなたもそう思うか?」
シン夫人は息子のホ・ヨムに言いました。
「はい。とても美しです。」
「わが子(アガ)や。そなたの名前は煙雨(ヨヌ)。ホ・ヨヌだ。明の使節となったそなたの父上がつけてくださった名前だ。気に入ったか?おっほほ。」