朱蒙(チュモン)62話
あらすじ
ソンヤンは朱蒙(チュモン)に一人で来るように連絡してきました。チュモンは天命があるなら大丈夫だろう、沸流(ピリュ)の民もいずれは新たな国の民になると一人馬を駆りソンヤンに会いに行きました。ヒョッポとマリは心配なのでチュモンの護衛に行きたいと召西奴(ソソノ)に行きました。ソソノはマリとヒョッポとオイが行けばソンヤンはそれを理由にチュモンを殺すかもしれないので我慢するように言いました。
沸流(ピリュ)。
「タムル軍の大将チュモンだ。大君長様に会いに来た。」
チュモンはピリュの武将に言うと剣を預けました。
「やれ!」
武将が手下に命じると兵士たちはチュモンに襲い掛かりました。チュモンは素手で応戦し敵の槍を奪うと兵を倒していきました。その様子をソンヤンは見守っていました。
「ご命令いただければいつでも殺せます。」
武将はソンヤンに言いました。
「そこまでだ!まったく無謀にもほどがある。この国に自分ひとりで乗り込んでくるとは。」
「私は無謀です。大君長は無謀ではないはずです。ここで私を殺せばタムル軍と全面戦争になるのは避けられません。」
ピリュの武将は部下にタムル軍の動向を探るよう命じました。
チュモンはソンヤンに会いました。
「なぜのこのこやって来たのだ。」
「私がここにやって来たのはピリュを殺すためではない。」
「沸流(ピリュ)が滅びることは永遠にない。」
「滅びるのではなくタムル軍と心を一つにして国を建てるのです。卒本を統一し漢を倒すのです。協力してくれれば玄菟(ヒョント)郡を倒します。私とタムル軍は必ず卒本を守ります。それは天の選択です。」
「外に誰かいるか。用意した物を持ってこい。片方には酒が。もう片方には毒が入っています。お前の言うことが天の定めなら毒の入った杯を避けることができる。お前は本当に天の命を受けたなら恐れる必要はないだろう。どうした。杯を選べ。そうしたらお前に協力してやる。」
チュモンの前に二つの杯が置かれました。チュモンは右の杯を飲むと、次に左の杯を飲み干しました。
「おい死ぬつもりか。」
「毒はありません。大君長は私を試しているだけです。私の判断が間違っていれば喜んで死を受け入れる覚悟です。」
「はっはっは。噂通り大した度胸をしている。」
「今度は大君長がご決心ください。力をお貸しくださいますか。それともタムル軍と戦われますか。」
チュモンは召西奴(ソソノ)たちのもとに戻ってきました。
「後はただ、大君長の決定を待つだけです。」
しばらくすると、ソンヤンと兵士がチュモンのところにやってきました。
「チュモン大将のお考えに従う。」
ソンヤンたちはチュモンに頭を下げました。
「卒本バンザーイ。タムル軍バンザーイ。」
チェサが言うと軍の兵士たちは万歳をしました。
扶余の金蛙(クムワ)王は卒本(チョルボン)がチュモンに統一されたことを知り柳花(ユファ)夫人を部屋に呼びこのことを知らせました。
「今の勢いならいずれ扶余に来るだろう。私はチュモンが怖い。私とそなたとの縁が切れることが怖い。」
「王様。チュモンを受け入れてください。私も王様とのご縁が終わってしまうことを思うと怖くてなりません。」
柳花(ユファ)夫人はイエソヤとユリに会いました。
「ユリ。ソヤ。桂婁へ行ったチュモンが卒本を統一したそうです。チュモンは大業に向かって一歩一歩向かっていますから今の試練はそう長くは続かないでしょう。つらくても耐えておくれ。」
「はいお母さま。」
ヤンソルラン夫人は夫の帯素(テソ)王子に会いました。
「チュモンは卒本を統一したのに私は何もしないでいた。」
帯素(テソ)王子は妻に言いました。
「殿下。漢と同盟を結ぶしか扶余の危機を脱出する機会はありません。殿下は漢との同盟の道筋をつけてください。」
ヤンソルランは帯素(テソ)王子に言いました。
桂婁では卒本の統一式が行われていました。
巫女のピョリハは黄色い布に朱色で三足烏の旗を描きました。
「チョルボンバンザーイ。」
チェサが叫ぶと皆も万歳しました。
「新しく生まれ変わった三足烏は建国の鳥となるだろう。今この瞬間からタムル軍と卒本は無二の同士であり三足烏を掲げ古朝鮮をまとめ上げ千年続く強大な国となるのだー!」
チュモンは皆に言いました。皆は誇らしげにチュモンを見つめました。
テソ王子はプブンノを呼び流民を装い桂婁に行きチュモンの暗殺を命じました。
「お前が数千の兵でも殺せなかったチュモンを殺したらお前を功臣として取り立てお前の家族も貴族として取り立てよう。」
テソが言うと、ナロはプブンノの家族を人質に取ったと言いました。
「チュモンのやつに非凡なところがあることに気が付いていたがこれほどとはな。」
ヨンポ王子は側近に言いました。側近は長安に行き漢の力を借りてはどうだと言いました。ヨンポ王子は長安に行きました。
モパルモはチュモンに矢が当たっても射抜かれない鋼鉄の鎧ができたと報告しました。ムソンは藁人形に鎧をかけるとオイは弓を射ました。みんなが鎧を身に行くと矢が当たった痕跡すらありませんでした。チュモンは鎧を手に取ると「この鎧ではあまりに重すぎて奇襲には向かない」と言いました。モパルモは軽い鎧を必ず作ってみせるとチュモンに言いました。そこにケピルが走ってきてヨンタバルが呼んでいると言いました。
「来ていただきたい場所があります。」
ヨンタバルはチュモンを誘いました。
チュモンはヨンタバルに着いていくとそこには宮殿がありました。
「これは新しい国を建てるときの宮殿です。長いこと準備してきたのです。」
ヨンタバルは宮殿にチュモンと陝父(ヒョッポ)たちを案内しました。モパルモは「いやあ。でかい。」と言いました。
「扶余宮殿と比べても、まったく引けを取らない宮殿です。」
摩離(マリ)は言いました。
「なぜ宮殿を建てたのですか?」
「ソソノの希望だったからです。」
ヨンタバルはチュモンに言いました。
「未来のためという君長様の意思がなければこの宮殿は完成しなかったでしょう。」
サヨンは言いました。
「ここに三足烏の巣を作るのです。」
召西奴(ソソノ)はチュモンに言いました。
チュモンはオイとムゴルとムッコに卒本の指揮系統を把握する準備をしろと命じました。チェサは誰が王になるのかという問題があるとチュモンに言いました。
ヨンタバルら卒本の陣営は部屋に集まりソソノ君長が王位に就くべきと言いました。
チェサはチュモンが王になるべきだと言うとチュモンはそのことは当分話題にするなと命じました。
夜。ソソノはチュモンに会いました。
「チュモン大将。」
「お入りください。ちょうど私もソソノ君長に会いに行こうと思っていました。」
チュモンは高句麗と書かれた旗をソソノに見せました。
「玄莬郡を打ち破り新しい国を建てたらこの名にします。いかがですか?」
「コグリョ・・・。」
「世界の中でもっとも麗しく高くそびえる国。この名前には世界で最も強く豊かな国を作り戦いと飢えに民があえぐことのないようにという私の願いが込められています。」
「大将。」
「はい。」
「大将が高句麗の王になってください。私は恨みにとらわれてソンヤン君長を許すことができず沸流(ピリュ)を部族でねじ伏せようとしました。でも大将は血を流すことなく卒本を統一できたのは大将の決断のおかげです。私はひとつとなった卒本の民とともに高句麗の礎を据え高句麗の領土を取り戻すという大将のお考えに従います。私の望んでいた国をきっと大将は建ててくれるでしょう。」
クムワ王はテソ王子とヤンジョンを部屋に呼びました。
「扶余を捨てる民の数が日に日に増えているそうですね。」
ヤンジョンはクムワ王に言いました。
「認めたくはないが卒本へと向かう民の半数が我が国の民だ。」
金蛙(クムワ)王はヤンジョンの言うことを認めました。ヤンジョンはクムワ王に同盟を求めてきました。
流民が次々と卒本に集まりいつまでも救済できないとマリとヒョッポとオイは言いました。チュモンは食料問題については考えてみるので流民に仕事を与えるように命じました。流民の選抜試験の張り紙が街に貼られました。チュモンは流民に兵士の選抜試験を行いました。プブンノは試験に応募し選抜に残りました。チュモンはプブンノに挨拶をしました。
「どこから来たのだ?」
「沃沮(オクチョ)から参りました。」
「武芸の腕が立つな。」
「軍の武将をしておりました。」
「真剣でやってみるか?」
「よろしくお願いします。」
「ムゴル。相手をしてみろ。」
チュモンが命じるとムゴルとプブンノは剣を抜いて戦いました。プブンノの力は強くムゴルと決着はつきませんでしたがムゴルがわずかに劣勢でムゴルは悔しがりました。チュモンはプブンノをホウエイ守備隊の武将に任命しました。
感想
なかなか面白くなってきました。明日はいよいよ朝鮮の歴史と同じ場所に国ができる兆候があるみたいで楽しみです。ソソノが気前よく王位を譲るなんて!歴史がわかってないとありえないことですね。プブンノはマッチョでムゴルを負かしつつありましたね。加減を知らないオイならプブンノに殺されていたかもしれませんね。