王と妃 120話 成宗即位
あらすじ
ハン・ミョンフェは乽山君を喪主にするのが嫌なら斉安大君(チェアンテグン)を王になさいませと王大妃ユン氏に言いました。ハン・ミョンフェは乽山君しか王になれる方はいないと言いました。高霊君(コリョングン、シン・スクチュ)が大妃の部屋に入ってきました。シン・スクチュは誰を王にするか考えてから喪主を決めるのが礼法だと進言しました。
「媽媽。誰が後継者にふさわしいでしょうか。」
「王子は幼く月山君は病気がちなので・・・乽山君(チャサングン)を後継者にします。」
部屋の外で話を立ち聞きしていた粋嬪ハン氏は涙を流しました。
「お喜び申し上げます媽媽。」
女官たちが粋嬪ハン氏にひれ伏しました。
王室の礼法に最も詳しいシン・スクチュは哭泣の儀式の前に即位式を行うべきと言いました。国王の遺体は放置され乽山君の即位式が行われました
「乽山君は君主になられました。座っていてください。拝礼をお受けください。」
粋嬪ハン氏は息子に拝礼しました。
睿宗の義父ハン・ベンニュンは「あんまりではないか」と睿宗の遺体の前で王妃とともに泣きました。
「府院君大監。ここはご自愛なさいませ。」
チョン内官は言いました。
ハン・チヒョンは康寧殿にある睿宗の遺体を別の場所に移すようホン内官に言いました。ハン・チヒョンはハン氏を大妃だと言いました。
粋嬪ハン氏は自分を大妃にする約束は覚えているか乽山君に尋ねました。乽山君はもちろん覚えていると言いました。
睿宗が逝去したその日の午後クンジョンムンで成宗(ソンジョン)の即位式が行われました。
即位文には「世祖大王が突然この世を去られた後息子である先王様はたいそう悲しんでおられた。だが急に病が悪化し先王様も去ってしまわれた。慈聖王大妃様は余に王位を継ぐよう下命くださった。余は断り切れず王位に就くことを決心した。これより慈聖王大妃(チャソンワンテビ)様を大王大妃(テワンテビ)に、そして先王様の妃を王大妃にいたす。」と書かれてありました。
「千歳、千歳、千々歳。」
粋嬪ハン氏が渇望していた大妃の座には就くことはできませんでした。
ハン・ミョンフェは勝手に人事を決めました。
成宗(乽山君)は重臣を連れて大王大妃に挨拶に行きました。成宗は二人の大妃に拝礼しました。
「お喜びします主上。」
大王大妃は言いました。乽山君は王大妃ハン氏にも嫌々拝礼しました。
「粋嬪も殿下の拝礼を受けねば。」
大王大妃が言うと粋嬪は身分が違うので拝礼は受けられないとシン・スクチュは言いました。
「粋嬪様は落胆しただろうな。そなたは間違っておらぬ。」
ハン・ミョンフェはシン・スクチュに言いました。
粋嬪ハン氏は立腹していました。
「殿下にお伝えして。私は居場所がないので実家に帰ると。」
「母上が侮辱を受けたのだ。さぞかし母上は胸を痛めておられるはず。」
十三歳の成宗はパク内官とホン内官に言いました。
「申訳ございません殿下。」
成宗は粋嬪に拝礼できなかったので喪服を着ないと言いました。
斉安大君(チェアンテグン)はチョン内官の付き添いで哭泣を待っていました。府院君は成宗が来ないので孫を連れて帰ろうとしましたがチョン内官は国葬なので罰せられるかもしれないと心配して引き止めました。
孝寧大君は大王大妃に成宗を殯宮に連れていくと言いました。
「そなたが領相(ヨンサン、領議政)か?領議政の役目とは何だ。このようなときに今上に代わり領相(ヨンサン、領議政)が国政をとりしきるのが務めではないか。即位文は誰が書いたのだ。そなたが書いたのか?」
孝寧大君はホン・ユンソンとすれ違いました。
「いいえ・・・。ハン大監とシン大監が・・・。」
「なんと情けないことだ。」
大王大妃の側近キム・スオンはこのままでは殿下は粋嬪の言いなりなので大王大妃様が摂政をなさるべきだと進言しました。
便殿に重臣たちは集まっていました。ホン・ユンソンは孝寧大君はどうなさるつもりなのかと言いました。重臣は粋嬪が大妃になるのがもっともだと言うと、懿敬世子だから大妃になれないという意見がありました。まずは懿敬世子を王に追尊すれば粋嬪を大妃にできると言いました。重臣のひとりが高霊君(コリョングン、シン・スクチュ)のせいだというとシン・スクチュは粋嬪に謝ろうと言いました。ハン・ミョンフェはゆっくり話し合おうと言いました。
孝寧大君は成宗に着替えて殯宮へ行くよう言いました。成宗は母に拝礼していないので行けないと言いました。
「ご安心ください。孝行心は十分示されました。度を超すと礼儀を欠くことになります。このままですとお母上の粋嬪に累がおよびますよ。」
「そこまで言うなら。喪服を持ってこい。」
成宗は喪服を来て殯宮に行きました。
「義父上。先王様の訃報を聞き急いでいたので王妃を屋敷に置いてきました。大王大妃様の許可をもらって宮殿に王妃を連れてきてください。」
成宗はハン・ミョンフェに言いました。
「仰せの通りにいたします。」
成宗は喪主として睿宗の位牌に礼をしました。
成宗は十三歳とは思えぬほど毅然たる態度を示しました。また二十歳で寡婦となった粋嬪に孝行心が高まりました。それが波乱を巻き起こすことになりました。
ハン・チヒョンは粋嬪ハン氏の実家に行きました。粋嬪は位牌堂で懿敬世子に語り掛けていました。
「今日あなたの息子が王になりました。ひとつ願いが叶いましたがもうひとつは叶いませんでした。だから喜びより悲しみのほうが大きいのです。」
「懿敬世子に王の称号を贈りなさい。実家にあるおとうさまの位牌を王家の位牌堂にするのです。」
即位式の前に粋嬪は成宗に言いました。
「生前即位は果たせずとも王として名前を残せるのです。二十一歳で世を去られた無念を晴らすのです。」
ハン・ミョンフェの家。
ヒャンイは粋嬪は簡単には粋嬪になれないと夫人に言いました。
「殿下が大王大妃様と王大妃様に拝礼なさった後、高霊君は異を唱えたのです。ハン様が言われたと誤解されます。誤解どころか犬猿の仲になるかもしれません。」
ハン・チヒョンが「お喜び申し上げます」とあいさつに来ました。ハン・チヒョンは粋嬪が怒っているとハン・ミョンフェに伝えました。
「粋嬪様が過ちを犯されたのだ。あの場にいてはならなかったのだ。」
「粋嬪様のせいにするのか?」
「よく聞け。チャサングンは即位なされたばかりなのだぞ。粋嬪様を礼遇せよとははy過ぎる話だ。懿敬世子様や粋嬪様の昇格を乞えば大王大妃様もお認めになるはず。それなのに何の考えもなしに殿下が王大妃に拝礼なさる場におられたのが間違いなのだ。」
「そのまま粋嬪様に申し上げましょうか?」
「言葉を選んで申し上げよ。私の意を曲げることなくお伝えするのだぞ。」
「大監には失望しました上党君大監。大監は粋嬪様と誰よりも親しいのですぞ。」
「だからこそ軽率には振る舞えぬ。」
「上党君は粋嬪様を突き放すおつもりか。」
「どうしてわからんのか。私が粋嬪様を擁護すれば人々はどう思う。帰りなさい。」
「誰の味方ですか?」
「何だと?」
「はっきり答えてください。」
「私が粋嬪様を裏切る理由はない。粋嬪様が大妃になられることを誰よりも切望しているのはこの私だ。粋嬪様にお伝えしろ。静かに待っていれば望みのものを得られる。だから落ち着いて待つようにと。」
亀城君の家。
「私の言葉が信じられぬのですか。粋嬪とハンは袂を分かったのです。」
ユ・ジャグァンは亀城君を抱き込もうとしていました。
「私には興味のないことだ。ナム・イの次に私を殺す気か。けしからん奴だ。」
「粋嬪もハン・ミョンフェの欲深いやからです。権力を独占するため遠からず二人は互いを蹴落とそうとするでしょう。亀城君は国政を取り仕切れる唯一のお方です。老いぼれの孝寧大君や字も読めぬ大王大妃には無理です。近々粋嬪が摂政に名をあげるはずです。」
ハン・ミョンフェの家。
「このままでは粋嬪と共倒れします。」
ヒャンイはハン・ミョンフェに言いました。
粋嬪の家。
「いいから今すぐ実家へ移りなさい。」
粋嬪はハン・チヒョンに言いました。
「媽媽落ち着いてください。」
「落ち着いてられますか。上党君がこのような仕打ちをするとは!」
感想
ああ。面白い。欲深い者同士の争いは実に下賤で面白いです。どうしましょ。睿宗が死んでさらにつまらなくなるかと思っていたけど、こんなに面白いとは。味方同士が争っているのですから愉快です。