王と妃 118話 世子の座
あらすじ
王大妃ユン氏が気づいた頃には睿宗は重病でした。ユ・ジャグァンは大妃に殿下を横たえ媽媽が国の判断をするのですと言いました。
「私は座って死ぬのだ。この私も父上と同じように座って死ぬつもりです。」
「主上・・・。」
王大妃は涙を流しました。
亡き首陽大君の屋敷。
睿宗が倒れた知らせは粋嬪の耳にも入りました。
「短命と思っていたけれどこうも死期が早いとは。」
粋嬪が言うとハン・チヒョンは大妃の隣に座り取り入るよう進言しました。ハン・チヒョンは元奴婢のイム・ウンを呼び粋嬪ハン氏を守れと命じました。イムは懐からモーニングスターをちらりとハン・チヒョンに見せました。
「母は死ぬ覚悟でまいります。大業を果たすまで戻りませんからそのつもりでいなさい。母が戻らなかったら自決なさい。」
粋嬪ハン氏は息子たちに言いました。月山君は怯えましたが乽山君は従いますと言いました。
「世祖大王は恐れることなく登ったのです。今度はこの母が登ってみせます。」
宮殿。
ユ・ジャグァンは大妃の側近キム・スオンに「しっかりしてください。粋嬪に王座を奪われますぞ」と吹聴しました。
「媽媽。今後のことを考えておくべきです。世子の空いています。」
ユ・ジャグァンは大妃に言いました。
「王子がいるわ。」
「世子に冊立なさるべきです。」
「王子はまだ五才なのよ。」
「迷っていると王族たちが王位を争います。その混乱をどう収拾するおつもりで?媽媽。王妃様と斉安大君(チェアンテグン)様をすぐに景福宮におつれえしましょう。」
「殿下はご病気だというのに。」
「正殿は景福宮です。国を守るためには景福宮におられるべきです。どうか私を信じてください。」
ハン・チヒョンはハン・ミョンフェの家に行き王位が空席になれば大妃の判断次第となってしまうと言いました。
「楽な争いではなかろう。」
「どうやら粋嬪媽媽は月山君より乽山君を王に就けたいようです。」
「それが問題だ。乽山君は娘婿だからな。」
「領相(ヨンサン、領議政)を辞任してください。領相(ヨンサン、領議政)を辞任するように粋嬪媽媽が仰せなのです。」
睿宗の部屋。
「媽媽。私がお分かりになりますか。」
王妃は斉安大君(チェアンテグン)と睿宗の見舞いに来ていました。斉安大君(チェアンテグン)は怖がって大妃に抱き着きました。
ハン・ミョンフェは粋嬪の命令に従うと妻のミン氏と妾のヒャンイに言いました。
「世祖が実の娘のように大事にした方だ。従わなくては。」
粋嬪ハン氏は睿宗の見舞いに行きました。
「恐れながら殿下は景福宮に移られました。心配なさらず帰るようにとの大妃媽媽の命令です。」
パク内官は粋嬪に言いました。
宮殿の門が閉じられました。
「景福宮に行こう。」
粋嬪ハン氏は景福宮に行きました。
「今日は誰も入れるなとの大妃媽媽が仰せだ。」
ユ・ジャグァンは兵士に命じ大妃の部屋に入りました。
「粋嬪が来ているの?粋嬪を追い返す理由はないわ。」
「媽媽。王子様が世子になられるまで誰も入れてはなりません。ハン・ミョンフェをはじめ功臣は皆粋嬪の配下です。斉安大君(チェアンテグン)様が王座に就けなければ宮殿の女主人は粋嬪です。」
ユ・ジャグァンは大妃ユン氏に言いました。
粋嬪の手下チョは門を叩き開けるように騒ぎました。粋嬪はイムにそれをやめさせ孝寧大君を呼ぶように命じました。
「あの方が来れば門は開くはずよ。」
宮殿の門。
「なあジャグァンよ。そなたは一人で立ち向かう気か?そなたがあの功臣たちに勝てると思うのか?」
キム・スオンはユ・ジャグァンに言いました。
「王子様が世子になれば勝ちです。」
「そうだが・・・。」
「キム大監は交泰殿(キョテジョン、景福宮にある王妃の寝所)をお守りください。」
睿宗の寝所。
「休ませてやりなさい。王子が眠そうにしている。王妃は今五才だったか。」
睿宗は王妃に言いました。
「媽媽。王子を世子にしてください。」
「まだ幼すぎる。国を任せるにはあまりに幼い。王位を譲ってもその座を守ることはできぬ。」
睿宗は涙を流しました。
ホン内官は大妃に孝寧大君が来たと言いました。
「入れてはなりません。」
ユ・ジャグァンは言いました。
「宮殿に入ろうという粋嬪の策略です。粋嬪は女主人の座を渡せと言うはずです。」
「まさか私の座まで奪いはしないでしょう。」
大妃は孝寧大君を中に入れるよう命じました。
「媽媽。乽山君が次期国王だとのうわさです。粋嬪の流した噂に違いありません。粋嬪は大妃の座が狙いなのでそうなると大妃様は居場所を失います。」
「心配いりません。私から粋嬪に尋ねてみるわ。誰を世子にすればよいか私が直接粋嬪に尋ねます。」
孝寧大君は交泰殿(キョテジョン)に入るよう命じました。
「ネイノン!私邸の執事の分際で宮中にまで入る気か。」
孝寧大君は一緒に行こうとするイムを叱りました。
「恐れながら粋嬪媽媽の身に危険が及びはしないかと・・・。」
「口答えするとはなんと無礼な。」
「イムよ。」
粋嬪はイムを呼びました。
「帰りなさい。」
「行くぞ。」
孝寧大君が言うと粋嬪の輿も中に入りました。
イムはひとり置き去りにされました。
粋嬪は大妃の部屋に入ると泣き崩れました。
「媽媽。なぜ呼んでくださらなかったのですか。殿下のご病状がご申告ならば斉安大君(チェアンテグン)王子を世子にする王命を下すべきでございます。媽媽。もしも殿下が世子を決めぬまま逝去されたら大きな混乱が起きます。ただちに王子様を世子にご任命ください。中殿媽媽の嫡男は王子様です。王子様が王位を継ぐべきでございます。」
「感激したわ。なぜこんないい嫁を悪く言うの。わが子や。今後はずっと私の傍にいてちょうだい。危うく私は言葉巧みな者の話術にはまり判断を誤るところだったわ。傍にいてこれからも力になってちょうだい。」
「おかあさま。私は王室の平和だけを考えて生きてまいります。王室が和やかでいてこそ月山君と乽山君の将来も保障されるのですから。息子たちをいつくしんでくださる殿下の王座を奪おうなどと夢にも思いません。」
「近くに来なさい。来なさい。」
大妃は粋嬪の手を取りました。
「わが子よ許してちょうだい。私に力を貸して。宮殿には相談できる者がいないの。いつも途方にくれているわ。今日から片時も傍を離れず力になってちょうだい。」
「おかあさま。」
粋嬪は泣きました。
孝寧大君は睿宗に謁見しました。
「私はもう長くはないでしょう。できるなら父上の喪が明けるまでは生きたかったのですが。誰を次の王にしましょう。教えてください。」
「王子様がおられます。」
「だが王子はまだ五才だ。」
「王妃様の王子さまは斉安大君(チェアンテグン)様だけです。」
「五才の子に王位を守れると思うのか。魯山君も十二で即位したものの十五のときには・・・。」
「主上。今は状況が違います。乳飲み子が王になっても問題はないでしょう。それほど王室は安泰です。心配いりません。」
「嫡子がいないと王位が継げないのですか?」
「世宗大王が定めた嫡男継承の法があります。」
「父上は長男ではなかった。私も次男です。嫡男継承の原則は崩れています。」
「だからこそ守るのです。原則を守れねばのちに混乱が起きるでしょう。」
「月山君は?乽山君は?原則に従うなら兄上の子が王位を継ぐべきではありませんか。」
「懿敬世子は王になれませんでした。資格がありません。」
「守れぬ王座を継がせるのは愚かなことです。」
「世宗大王は聖君であられた。なのになぜ天は彼の子孫を苦しめるのだろう。文宗の短命であられたしその息子も処刑された。今の国王も短命ではないか。」
孝寧大君はため息をついてチョン内官に言うと帰りました。
左議政のホン・ユンソンは輿に乗りハン・ミョンフェの家に行きました。
「はははは。気の早い左相(チャサン、左議政)がもう来たようです。」
ハン・チヒョンはハン・ミョンフェに言いました。
「一大事を嗅ぎ付ける才能があるからな。粋嬪様にお伝えください。今日中に会いに行くと。」
ハン・チヒョンが帰るとホン・ユンソンが部屋に入ってきました。
「兄上、兄上、宮殿でよい知らせを聞いてまいりました。」
「よい知らせだと?殿下が倒れたのがよい知らせか?」
「兄上も内心では喜んでいるでしょう?はっはっはっは。先ほどの方は粋嬪の従兄では?」
「分かっていたから低姿勢だったのであろう?しらじらしい。」
「兄い上。粋嬪様の従兄とも付き合いがあったとは。」
「いいから座れ。」
「これは失礼。挨拶がまだでした。へっへ。ご命令を。すべてこの私が解決してみせます。」
ホン・ユンソンはハン・ミョンフェにごまをすりました。
ハン・ミョンフェは「くれてやるとも」とホン・ユンソンに領議政の身分証を投げました。
領議政のハン・ミョンフェは辞職上疏を出しました。
粋嬪は領議政は上党君にしか務まらないからハン・ミョンフェを呼ぶように命じました。
シン・スクチュは殿下がご病気のときに辞めるのか?とハン・ミョンフェに言いました。ハン・ミョンフェは人徳がないからだと適当に言いシン・スクチュに嘘をつきました。キム・ジルら功臣たちは道理に反する不忠義だと言いました。
「兄上、兄上、お待ちを。」
ホン・ユンソンも焦ったふりをしました。
ハン・ミョンフェは王妃に「私の仕え方が間違っていたので殿下がご病気になられ、第二に王室の外戚であるので辞任します」と言いました。粋嬪は上党君が孫に王座を狙わされているという噂があるので辞めさせてほしいと大妃に言いました。
「そういうことなら仕方ないわ。後任は誰にするか言ってみなさい。」
「仁山君がよろしいかと。」
「あの者は愚かすぎるわ。」
「愚かな者は計略を思いつくことはありません。だから私はホン・ユンソンを推薦するのです。」
「ホン・ユンソン。そうしましょう。」
ホン・ユンソンは領議政になりました。ハン・ミョンフェは乽山君を王にするための辞任といえましょう。
ユ・ジャグァンは月山君か乽山君を王にしようという裏の計画があるから上党君が辞任したのだと王大妃に言いました。大妃には理解できませんでした。それを聞いていた粋嬪は「なんという無礼者!この者をつまみ出して!」と命じました。ユ・ジャグァンはすれ違った睿宗に「どうか王子様を早く世子に」と言いました。
大妃は睿宗に足を見せるように言うと睿宗はぅ便にも足を見せました。睿宗の足は腐っていました。
「どういうことなの。主上!」
大妃は驚きましたが粋嬪の表情は冷たいままでした。
感想
このドラマはすごくよく出来ていて「朝鮮」とうい感じがしますねwこの汚さ、これこそが当時の王朝であることは当事者の末裔の人にしか作れないドラマで日本人の私たちには思いもつかない思考パターンというか、そんなところが興味をそそります。ユ・ジャグァン(柳子光)は意外にもハン・ミョンフェの配下とならずに斉安大君(チェアンテグン)の後見人になり人生を一発逆転する恐ろしい道を選んでしまいましたね。それが裏目に出てしまい、やはりユ・ジャグァンはナム・イを陥れるべきではなかった、もしそうするとしても権力を握ってからするべきだったと歴史の結末からわかります。