朱蒙(チュモン)64話
あらすじ
ナロのもとに何者かが扶余の国境を脱出したと報告が届きました。ナロは帯素(テソ)王子には報告しないよう部下に命じました。
挹婁(ユウロウ)に向かった朱蒙(チュモン)は一帯を支配している賊の頭を捜しました。チュモンはマリとヒョッポとオイを連れてマゴクの町に行くので召西奴(ソソノ)はチェサ、ムゴル、ムッコを連れてサンチョンの町に行くように頼みました。
帯素(テソ)王子は臣下たちを集めチョルボンを攻め滅ぼすと言いました。プドゥクプルは飢えた民がいるのに戦争する余力はないと言いました。フクチ大将軍もプドゥクプルに賛成しました。テソ王子はチュモンが死んだと思い勝てると信じていました。
柳花(ユファ)夫人は金蛙(クムワ)王にチュモンが死んだという噂について尋ねました。クムワ王はどうやらそうらしいと言うとユファはソヤとユリと遺体を捜させてくださいと頼みました。クムワ王はチョルボンは戦場になるので行ってはならないと言いました。
「この気持ちがわかるものですか。息子「に先立たれた母の気持ちが。」
「悲しいのは私も同じだ。チュモンとは縁を切りはしたが子供であることには変わらない。生涯そなたとユリの世話をして償いたいのだ。」
「もうこれ以上ご自分にうそをつくのはおやめください。王様は私を守るとおっしゃいながら死ぬよりもつらくて苦しい罰を与えておいでなのですよ。これが最後のお願いです。どうか行かせてください。」
「そなたを引き留めることが執着であり偽善だとしても行かせることはできん。そなたはただの一度たりとも心を開いて見せてはくれなかった。どれほどうつろなまなざしでもいつかは変わってくれると信じていたが歳月が過ぎてもそなたの心の中に私の居場所は生まれなかった。」
クムワ王はユファの手を取り跪き涙を流しました。
「そなたの心が手に入らぬのならばせめて体だけは離したくない。私はたとえ死んでもそなたの身体とともに過ごすつもりだ。」
ユファはつらくて涙を流しました。
挹婁(ゆうろう)マゴクの町。「ソソノ商団の行首です」チュモンと同行したヘンスのふりをしている摩離(マリ)が商人に証を見せるとアザラシの革はヘンイン国のオ大人が買い占めたと商人は言いました。チュモンは海賊のプウィヨムと裏取引したいので仲介を頼むと商人に言いました。チュモンたちの様子を海賊たちは見張っていました。チュモンが馬で走っていると道に弓が飛んできて海賊が現れました。チュモンは頭のところに案内するように海賊に言いました。チュモンはプウィヨムと会いました。チュモンは正体を明かすと海賊たちは笑いました。
「今チュモンは漢と扶余に国境を封じられて袋のネズミのなずだ。それがなぜ挹婁にいる。」
プウィヨムはテサンに酒を一甕持ってくるように命じました。
「本物のチュモンかどうか確かめさせてもらうぜ。その酒を飲め。」
チュモンは大きな甕を両手で持つと酒を飲み干しました。
摩離(マリ)は木に縛られ顔の横にヒョウタンが置かれました。
プウィヨムはマリの脇の瓢箪を射抜くようにチュモンに命じました。
「もて遊ぶのはやめるんだ。私が信じられないならさっさと殺せばいい。」
「どうせ死ぬんなら少しはあがいてみろよ。的に当たったら生かしてやる。やってみろ。」
「大将ー!やってください!」
マリはチュモンに叫びました。
チュモンは弓を引きましたが視界がぼやけて集中できませんでした。もう一度チュモンは弓を引くと目を閉じ心眼で瓢箪を射抜きました。
「こいつらは沃沮(オクチョ)軍に違いない。殺せ。」
「なあどうして信じてくれないんだよ。この方は確かにチュモン大将だ。」
陝父(ヒョッポ)は言いました。
そのとき弓矢が飛んできました。
「奇襲だー。沃沮(オクチョ)軍の奇襲だー。」
チュモンは弓でプウィヨムを助け沃沮(オクチョ)軍と戦いました。
(オクチョは遊牧的じゃなくて漢みたいなしっかりした鎧を着ていました。)
プウィムの小屋。
チュモンとソソノはプウィムと話し合うことができました。
「今は風が強くて海に出られない。」
プウィムは無茶であると言いました。チュモンとソソノは船で南下したいので助けてくれとプウィムに頼みました。
「いいだろう。大将の気持ちを汲んで南へ船をだそう。ただし、命をかけられるほどの見返りがほしい。」
扶余宮殿。
ユファはクムワ王の部屋の前で座り旅立つ許しを求めていました。イエソヤが薬を持ってくるとユファは「下げなさい。王様が行かせてくれないのにこのまま死んでチュモンの後を追います。私が死ねばあなたとユリはここを出られるだろう」と言いました。御医は何日も水一滴飲んでいないので夫人のお命にかかわると王に言いました。プブンノはユファとイエソヤを見ていました。夜になりユファは倒れました。プブンノはユファを寝所にお連れしろと部下に命じました。御医はユファに薬を飲むようにすすめました。
「もう死を覚悟していますから怖いものなどありません。お下がりなさい。」
するとプブンノは見かねてユファにこう言いました。
「テソ王子に命じられチュモン大将を殺しに行ったのはこの私です。テソ王子には大将を殺したと報告しましたが大将は亡くなっておられません。なぜお姿がないのはわかりませんが確かに生きておられます。チュモン大将は自分を殺したことにしてテソ王子にとらわれている家族を救えとおっしゃいました。私の家族はもう脱出させました。もうすぐ私はチョルボンに行きチュモン大将にお仕えします。必ずユファ様をここから出して差し上げます。どうかお体を労わってください。」
テソ王子はヤンジョンにチョルボン滅亡の手柄を半分譲るので兵糧を分けてほしいと言いました。ヤンジョンは扶余軍の兵糧は玄菟(ヒョント)城ですべて引き受けると言いました。
皇室の外戚で玄莬の太守の座を狙うファン・ジャギョン大人ヨンポ王子が長安から玄莬に来ました。ヤンジョンはファン大人を敵として憎んでいました。ヨンポ王子はファン大人にテソ王子を紹介しました。
チュモンはプウィムに高句麗という書を見せました。
「俺をからかっているのか。」
プウィムは怒りました。チュモンは兵士を葬ることもできなかった、新たな国高句麗の柱となり人間らしく生きる機会を与えたい、同士になり高句麗の主となって生きてほしいと言いました。プウィムに卑しい盗賊から貴族への扉が開かれました。プウィムはチュモンに血のりの服を取り出しました。
「俺の父の形見だ。俺の父はタムル軍で解慕漱(ヘモス)将軍に仕えていた。俺は母と逃げ延びた。そのとき母は父の血染めの服を脱がせ寒さに震える俺に着せてくれた。今でも裸で打ち捨てられていた父の姿を忘れることはできない。」
プウィムはチュモンに平伏しチュモンにお仕えして亡き父の無念を晴らしてみせると言いました。プウィムは海賊業をやめチュモンの配下の武将となりました。ソソノはプウィムの船に乗って南に行き取引をまとめてみせると心配するチュモンたちに言いました。
夜。チュモンとソソノは林で見つめ会いました。
「荒い海にソソノ君長を送り出すのは不安でなりません。」
「私も不安ですが民を導いた大将を思い出します。心配なさらないで。必ず戻ってきて大将と一緒に大業を成し遂げます。大将は早くチョルボンに戻って民を労わってください・・・。」
テソ王子はチョルボンのソンヤンの説得に行きました。チュモンは馬でチョルボンに向かいました。
感想
生きるか死ぬか。そんな日々。なんと嫌な時代なんでしょう。まともに生きられない時代、まるで獣のような一生を終えなければならない末端の人々。そんな時代がずーーーーーっと長きにわたりあったのですね。私たちが文明の恩恵を受けられるようになったのはほんの100年程度のことなのかもしれません。私たちのご先祖もつい先ごろまで不衛生で臭く野性的な日々を送ってらしたのですから・・・そんな時代のことを思うと今はまだマシだと思えます。チュモンの時代はたくさんの国が互いに乱れていて昼も夜も決して安心できなかったでしょうね。「奇皇后」にチョンバギとして出演していたユン・ヨンヒョンという俳優さんは今回初登場で「プウィム」というで出てきましたね。