王と妃 121話 摂政を巡る争い
あらすじ
粋嬪ハン氏はハン・ミョンフェが大妃になるのを邪魔したと従兄のハン・チヒョンに騒ぎ立てました。粋嬪は成宗(乽山君、チャサングン)の嫁を大王大妃の命令と言い実家に帰しました。
「息子だけ奪われたも同然です。」
ハン・チヒョンは王妃ハン氏に父のミョンフェには何も言わぬようにと釘を刺しました。王妃は夜更けにハン・ミョンフェの家に帰りました。
王妃の帰省を聞いた王妃の母は早く準備をするように下男に指示しました。
「夜遅くに実家に帰るなんて奇妙でしょう。」
妻はミョンフェに言いました。
「媽媽が王妃になられるまで実家に帰省なさるよう大王大妃様がお命じになったのだ。」
ハン・ミョンフェは粋嬪を警戒し先に先手を打っておくのだと妻と側女のヒャンイに言いました。
「よくおいでくださいました中殿媽媽。」
「オモニ。」
慈聖大王大妃(チャソンテワンテビ)ユン氏は夜更けに王妃が帰省したことを知りせっかちだと言いました。王大妃ハン氏は粋嬪ハン氏に恨まれたのではないかと心配しました。大王大妃は王妃が来たら親切になさいと王大妃に言いました。
「媽媽。天寿をまっとうなさってください。長生きなさって。」
ハン・ミョンフェの妻は娘の手を取り言いましたが、娘は母と目を合わさず表情は氷のように冷たいものでした。
ヒャンイは粋嬪と若いするようにハン・ミョンフェに言いました。
「粋嬪を敵にまわしたら終わりです。大監。和解なさって。」
「腹が立っても辛抱なさいませ。」
ハン・チヒョンは粋嬪に言いました。
「おにいさま。上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)を孤立させてください。彼らが誰につくのか見てやりましょう。」
亀城君の家。
「帰りなさい。」
亀城君は執拗に自分を動かそうとするユ・ジャグァンを家に帰そうとしました。
「今日は退かぬ覚悟でここをお訪ねしました。粋嬪は恐ろしい女です。懿敬世子の死後切歯扼腕(せっしゃくわん、歯ぎしりをし腕を強く握りしめること)しつつ今日を待っていたのです。」
「言葉に気を付けろ。殿下の実母だぞ。今に大妃になられる。」
「阻止せねば。粋嬪が大妃になったら世祖大王に寵愛された若い臣下たちは皆殺されます。」
「なのに粋嬪と組んだのか。」
「ナム・イ将軍が死んだのは自業自得です。」
「私め(ソーイ)に将軍(チャングン)が従っていたら粋嬪とハン・ミョンフェはとうにこの世にはおりません。」
「・・・・・・。」
「粋嬪が大妃になるのを何としても阻むべきです。粋嬪が大妃になり摂政を始めたら我々はおしまいです。今の殿下は年少の上、粋嬪が天塩にかけて育ててきました。粋嬪には逆らえぬでしょう。粋嬪の天下になります。粋嬪は年少の王を操り政治を行うはずです。」
「帰ってくれ。私は無力だ。私は断罪された身だ。」
「大監。大監は王族です。世宗大王の孫じゃないですか。大王大妃と手を組んでください。大王大妃様は歓迎なさるでしょう。粋嬪をけん制できる人物はほかにいませんから。」
「乽山君を王にしたのは大王大妃媽媽ではないか。」
「上党君です。」
「私にはわからぬ。私は世情に弱いのだ。知りたくもない。」
ユ・ジャグァンは亀城君を懐柔しようとしていました。
大王大妃は孝寧大君を呼び摂政になるように頼みました。孝寧大君はもう七十になるので辞退しました。大王大妃はキム・ジョンソのような者が現れハン・ミョンフェが権力を牛耳るのではないかと心配していました。孝寧大君は大王大妃が摂政をするのがよいと言いました。
「それが世間の望みですか?」
「何のことでしょうか。」
「事実を教えてください。世祖が魯山君から譲位されたことをいまだに是非を論じているのですか。謀反の芽となりうるので知りたいのです。お教えください。」
「もう昔のことです。・・・世宗大王がお立てになられた嫡男継承の原則は失われました。ですが復活させねばなりません。王位が原則もなしに引き継がれていくなら王室はむろん国の安全も保証できません。月山君が後を継がれたほうがよかったのではないかと私は思います。」
「粋嬪はどうするのですか。私は読み書きができず政治を行うのが困難です。粋嬪なら政務を担えるでしょう。」
「粋嬪はだめです。殿下は実母である粋嬪に逆らえぬでしょう。粋嬪は勝手に政治を行いかねません。」
「それは誤解ですわ。粋嬪はそのような者ではありません。根は善良な人なのです。ですが粋嬪の手綱を締めることはできません。」
「だからこそ粋嬪は危険です。」
「どうせ粋嬪が権力を握るなら初めから与えたほうが面倒がありません。粋嬪の性格なら政治に口を出すとわかっているのに波風を立てる必要がありますか?」
「粋嬪の参内を禁じ・・・。」
「それはなりません。粋嬪は殿下の母ではありませんか。」
「粋嬪は世子妃です。懿敬世子の妃ゆえ規則通り宮殿の外で暮らすべきです。」
パク内官は二人のやりとりをすべて聴いていました。
キム・スオンは孝寧大君と意見が同じだったので粋嬪の参内を禁じるよう大王大妃に上奏しました。
「南無観世音菩薩。私は粋嬪が怖いのです。」
大王大妃はおびえました。
夜。パク内官は宮殿を抜け出し粋嬪の家に行き大王大妃の動向を報告しました。
「息子だけ奪うつもり?はっ。あっはっはっは。あっはっはっは。」
ハン・ミョンフェはシム・スオンに大王大妃に安心するようにと伝言を頼みました。
ハン・チヒョンは領議政のホン・ユンソンに粋嬪が身に着けていた玉(ぎょく)の指輪を渡し大妃になれるよう助力を頼みました。ホン・ユンソンは気安く引き受けました。ハン・チヒョンは上党君が粋嬪の昇格に反対していると言うとユンソンはけしからんと言いました。
ハン・ミョンフェは粋嬪を大妃にすれば殿下を意のままに操るので参内を禁じる決意をシン・スクチュに話しました。
「そなたは粋嬪の姻戚ではないか。」
「なぜ私が粋嬪を警戒していると思う?粋嬪が大妃になると摂政しようとするに違いないからだ。第二に粋嬪が摂政をすれば王以上に権勢をふるうからだ。第三にそうなったら太祖が建てたこの国は百年もたたずに滅びるだろう。私には私心はない。」
ハン・ミョンフェはチョン・チャンソンに粋嬪を大妃にするよう頼んでいました。
「粋嬪は殿下の実母です。いつまで粋嬪の参内を阻めるとお思いですか。月日が経つほど粋嬪媽媽の恨みが積もるだけかと。殿下がお母上に会いたいと言えば参内を許すほかありません。そうなれば粋嬪媽媽は自分の参内を阻んだ者に復讐するのではありませんか。自ら災いを招くことはありません。」
ハン・ミョンフェは大王大妃の部屋を訪ね拝礼しました。
「お顔が曇ってらっしゃいますね。ご心配なさらぬように。媽媽。私がいなければ粋嬪は何もできません。院相(ウォンサン)たちは粋嬪の参内に反対するでしょう。摂政をなさってください。」
「私は学がありません。」
「力を尽くしますので私を信じてください。」
「上党君大監。いつかは粋嬪が参内するのを許さねばなりません。粋嬪は殿下の実母ですから。」
「ですがその件は粋嬪の気勢を削いだ後どうするか考えても遅くはありません。媽媽。私をお信じください。私は世祖に寵愛され富も栄華も享受いたしました。これ以上望むことはありません。」
「私は上党君を頼りにしています。」
大王大妃はハン・ミョンフェを信じました。
便殿。重臣たちはそれぞれ雑談していました。
チョン・チャンソンはキム・ジルに下手をすると一族が滅ぼされかねんと少し話し合いをしました。
「義父上のお考えはどうですか。」
「粋嬪を排除できればよいが・・・。しかしそれは無理だろう。」
「ですが粋嬪は大王大妃に疎まれています。」
「どうしたらよいものか。」
ハン・ミョンフェが現れ玉座の前の床に座りました。ハン・ミョンフェは大王大妃が懿敬世子の格上げから論じるように申されたと皆に言いました。ホン・ユンソンは懿敬世子を王に追尊し諡号を贈って霊廟を建てるべきだと言いました。シン・スクチュは礼法に乗っ取るなら三年の喪に服した後に妃の称号を与えようと言いました。別の官僚は成宗を睿宗の養子にしようと言い出しました。
粋嬪が問題でした。粋嬪を王妃にするならさらに大妃にするしかなく粋嬪の参内を阻む名分がありませんでした。そうなれば若い王の摂政は粋嬪になるはずでした。
「今は喪中です。懿敬世子は王に追尊し粋嬪については三年後に話し合いましょう。」
ハン・ミョンフェは皆に言いました。粋嬪を大妃にしたい官僚は母子を引き離すことはできぬと言いました。
「いった通りです。粋嬪を後押しする者は大勢いるのです。後で粋嬪に恨まれそうです。私は孫に合わせる顔がありません。」
大王大妃はキム・スオンに言いました。
殯宮にいる成宗は上党君を呼ぶようにチョン内官に命じました。
粋嬪は輿を用意させました。
「頼むのです。お義母にお願いするのです。」
粋嬪はハン・チヒョンに言いました。
「死ぬ覚悟でお供なさい。」
ハン・チヒョンは護衛武士に言いました。
粋嬪ハン氏は数十人の共を連れて王宮に向かいました。
ハン・ミョンフェは殯宮に行き乽山君に会いました。
粋嬪は王宮の門に着きました。護衛武士が剣を抜き「無礼者め!早く門を開けろ。粋嬪様だ。殿下の実母でいらっしゃるぞ。貴様!この宝剣は世祖大王が粋嬪媽媽をお守りせよと下さったものだ。粋嬪様を侮辱する者は誰であれ斬るぞ!」というと門が開きました。
世祖大王の殯宮で祈っている成宗は「今は懿敬世子に哭泣しているのだ」とハン・ミョンフェを待たせました。
粋嬪は康寧殿に行きました。
ハン・ミョンフェの顔から汗が噴き出ていました。
「私を殺してください媽媽。開けてくださらなければこの場で自決します。」
粋嬪ハン氏は大王大妃の部屋の外で泣き崩れました。
「息子だけ奪うつもり?はっ。あっはっはっは。あっはっはっは。」
ハン・ミョンフェはシム・スオンに大王大妃に安心するようにと伝言を頼みました。
ハン・チヒョンは領議政のホン・ユンソンに粋嬪が身に着けていた玉(ぎょく)の指輪を渡し大妃になれるよう助力を頼みました。ホン・ユンソンは気安く引き受けました。ハン・チヒョンは上党君が粋嬪の昇格に反対していると言うとユンソンはけしからんと言いました。
ハン・ミョンフェは粋嬪を大妃にすれば殿下を意のままに操るので参内を禁じる決意をシン・スクチュに話しました。
「そなたは粋嬪の姻戚ではないか。」
「なぜ私が粋嬪を警戒していると思う?粋嬪が大妃になると摂政しようとするに違いないからだ。第二に粋嬪が摂政をすれば王以上に権勢をふるうからだ。第三にそうなったら太祖が建てたこの国は百年もたたずに滅びるだろう。私には私心はない。」
ハン・ミョンフェはチョン・チャンソンに粋嬪を大妃にするよう頼んでいました。
「粋嬪は殿下の実母です。いつまで粋嬪の参内を阻めるとお思いですか。月日が経つほど粋嬪媽媽の恨みが積もるだけかと。殿下がお母上に会いたいと言えば参内を許すほかありません。そうなれば粋嬪媽媽は自分の参内を阻んだ者に復讐するのではありませんか。自ら災いを招くことはありません。」
ハン・ミョンフェは大王大妃の部屋を訪ね拝礼しました。
「お顔が曇ってらっしゃいますね。ご心配なさらぬように。媽媽。私がいなければ粋嬪は何もできません。院相(ウォンサン)たちは粋嬪の参内に反対するでしょう。摂政をなさってください。」
「私は学がありません。」
「力を尽くしますので私を信じてください。」
「上党君大監。いつかは粋嬪が参内するのを許さねばなりません。粋嬪は殿下の実母ですから。」
「ですがその件は粋嬪の気勢を削いだ後どうするか考えても遅くはありません。媽媽。私をお信じください。私は世祖に寵愛され富も栄華も享受いたしました。これ以上望むことはありません。」
「私は上党君を頼りにしています。」
大王大妃はハン・ミョンフェを信じました。
便殿。重臣たちはそれぞれ雑談していました。
チョン・チャンソンはキム・ジルに下手をすると一族が滅ぼされかねんと少し話し合いをしました。
「義父上のお考えはどうですか。」
「粋嬪を排除できればよいが・・・。しかしそれは無理だろう。」
「ですが粋嬪は大王大妃に疎まれています。」
「どうしたらよいものか。」
ハン・ミョンフェが現れ玉座の前の床に座りました。ハン・ミョンフェは大王大妃が懿敬世子の格上げから論じるように申されたと皆に言いました。ホン・ユンソンは懿敬世子を王に追尊し諡号を贈って霊廟を建てるべきだと言いました。シン・スクチュは礼法に乗っ取るなら三年の喪に服した後に妃の称号を与えようと言いました。別の官僚は成宗を睿宗の養子にしようと言い出しました。
粋嬪が問題でした。粋嬪を王妃にするならさらに大妃にするしかなく粋嬪の参内を阻む名分がありませんでした。そうなれば若い王の摂政は粋嬪になるはずでした。
「今は喪中です。懿敬世子は王に追尊し粋嬪については三年後に話し合いましょう。」
ハン・ミョンフェは皆に言いました。粋嬪を大妃にしたい官僚は母子を引き離すことはできぬと言いました。
「いった通りです。粋嬪を後押しする者は大勢いるのです。後で粋嬪に恨まれそうです。私は孫に合わせる顔がありません。」
大王大妃はキム・スオンに言いました。
殯宮にいる成宗は上党君を呼ぶようにチョン内官に命じました。
粋嬪は輿を用意させました。
「頼むのです。お義母にお願いするのです。」
粋嬪はハン・チヒョンに言いました。
「死ぬ覚悟でお供なさい。」
ハン・チヒョンは護衛武士に言いました。
粋嬪ハン氏は数十人の共を連れて王宮に向かいました。
ハン・ミョンフェは殯宮に行き乽山君に会いました。
粋嬪は王宮の門に着きました。護衛武士が剣を抜き「無礼者め!早く門を開けろ。粋嬪様だ。殿下の実母でいらっしゃるぞ。貴様!この宝剣は世祖大王が粋嬪媽媽をお守りせよと下さったものだ。粋嬪様を侮辱する者は誰であれ斬るぞ!」というと門が開きました。
世祖大王の殯宮で祈っている成宗は「今は懿敬世子に哭泣しているのだ」とハン・ミョンフェを待たせました。
粋嬪は康寧殿に行きました。
ハン・ミョンフェの顔から汗が噴き出ていました。
「私を殺してください媽媽。開けてくださらなければこの場で自決します。」
粋嬪ハン氏は大王大妃の部屋の外で泣き崩れました。
感想
ハン・ミョンフェも嫌がるほど貪欲な仁粋大妃。女性に政治をさせることは当時の価値観や女性の政治とは縁遠い教育水準や保身欲の強さからいってとんでもないことでした。政治経験のない女性はまだ人類にとって未熟な存在で保身しか考えないのが関の山でした。ハン・ミョンフェは自分の子孫繁栄しか願わない粋嬪が政治の実権を握ればとんでもないことになるぞと思いました。しかし時すでに遅く、粋嬪の勢いは止められないものとなりました。まさか貪欲なハン・ミョンフェがこんな形で危険な立場に自ら陥るとは誰が予想できたことでしょう。