王と妃 第147話 改革をはじめる成宗
あらすじ
成宗はいまだに大妃らの顔色を窺う臣下をよく思いませんでした。成宗は世宗の意思である集賢殿の機能を弘文館(ホンムンガン)に継がせると宣言しました。成宗は功臣や勲旧派大臣の政治を終わらせると決め自ら執政を宣言し以前より饒舌になりました。成宗は仁粋大妃に挨拶に行きませんでした。仁粋大妃は成宗がどのような政治を行ったか知らせる者がいなくなり情報が伝わっていませんでした。成宗は女官たちの外部との往来を禁じていました。
イム・サホンは成宗は独裁だとヒョン・ヒョッキュに王の悪口を言いました。ヒョン・ヒョッキュは王妃と通じたイム・サホンを「不正役人だ」とののしりました。
成宗は決して屈さぬと王妃ユン氏に言いました。
「いつも大妃様のお話しをなさいますもの。いつになったら大妃様から離れられるのですか?私は悪妻になると決めました。死を覚悟で申し上げます。二度と大妃様のことはお口になさらないでください。」
王妃が言うと成宗は苛立ちました。
王妃は部屋に帰ると母に「母と子の絆を断ってやります」と意気込みました。
仁粋大妃はハン・チヒョンに臣下は猿と同じだと言いました。
「主上は母親も丸め込めぬとは。」
仁粋大妃は涙を流しました。
ハン・チヒョンは大王大妃に仁粋大妃が成宗に会えずに落ち込んでいると相談しました。この話を知った王妃は仁粋大妃は屈したとイム・サホンに言いました。
仁粋大妃に挨拶しない成宗について、大王大妃の弟は知らぬ顔をするのが最善だと大王大妃に言いました。
チョン・チャンソンら老臣は成宗を警戒していました。
都承旨ヒョン・ソッキュの私邸に集まった仲間たちは仁粋大妃を弾劾する上疏を出そうと話し合いました。ソッキュは態度を保留していました。ヒョン・ソッキュは大妃や功臣たちが簡単には引き下がらないだろうと見込んでいました。
ヒャンイは仁粋大妃の側近のイム尚宮と会っていました。中殿に仕える尚宮内人たちが楽しそうにしているのは親蚕礼(チンジャムネ)があるのでにぎやかになっているということでした。
王妃と側室たちは会食していました。
側室はクォン淑儀ににらまれて息がつまりそうだと王妃に言いました。
「嫉妬は女にとってもっと悪しきことなのよ。私は殿下に側室を訪ねるようすすめているわ。ところでチョン貴人の予定日はいつかしら?体調はよいのかしら?」
チョン貴人は出席していませんでした。側室のひとりは王妃の徳の深さをたたえました。オム貴人は目を丸くしてやり取りを聞いていました。
ヒャンイは仁粋大妃と謁見しました。ヒャンイは昨日まで大妃にすり寄っていた者たちがいなくなったと悲しみました。仁粋大妃は笑いハン・ミョンフェの様子を尋ねました。ヒャンイは韓明澮が返り咲く時期を待っていると正直に言いました。仁粋大妃は上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)の力は借りたくないと言いましたが「一度会いに来てもよいわ」と踵を返しました。
「嫁に実権を奪われても大口を叩くとは。」
韓明澮は仁粋大妃を笑いました。
韓明澮は朝廷に出仕しチョン・チャンソンと会いました。韓明澮は仁粋大妃に会うのに手ぶらでは行けないので大妃の弾劾の上疏を出さぬようにしてほしいと言いました。
「現役の功臣などそう何人もおらぬ。弾劾されたらそなたも退けばよい。(=チョン・チャンソンが領議政になれたのは仁粋大妃のおかげであろう)」
韓明澮は成宗と会っていました。そこに王妃が勝手に入室しました。
「私が上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)と話している最中だぞ。」
成宗は王妃に言いました。
「わかっています。上党君の府夫人にお世話になったのでお礼に参っただけです。」
王妃は言いました。
「王妃様に聞かれて困る話ではございません。」
ハン・ミョンフェは続けて言いました。
「王が民を治めるにあたり基本となるのは孝です。なので君主は万民の父と呼ぶのでございます。孝がないところに忠はありません。近頃大妃様にご挨拶なさらないそうですがそれは親不孝です。恐れながら殿下。君主が孝を行わぬのにどうして民に忠誠を望めましょうか。大妃殿にお出ましになり許しを請うべきです。」
「上党君の言うとおりだわ。私が人々に悪く言われてしまいます。上党君の言う通りになさってください。」
王妃は成宗に言いました。成宗は唸りました。王妃は今年の親蚕礼(チンジャムネ)は盛大に行いたいと言いました。「そうなさいませ。なんの問題もございません。」とハン・ミョンフェが言うと王妃は府夫人にも来てほしいと要求しました。
ハン・ミョンフェは王妃が去ると成宗に集賢殿の機能の復活は世祖の意思に反し世祖を侮辱するものだと言いました。士大夫を起用すれば功臣を否定することになるとハン・ミョンフェは言いました。その様子を王妃は部屋の外から立ち聞きしていました。王妃は満足そうに笑いました。成宗は目に涙をためました。
クォン淑儀は王妃の実家であろうと貢物は受け取ってはならないというと、王妃は女命婦(ネミョンブ)は側室を管理するものなので王妃である自分にものを申してはならないと言いました。
親蚕礼(チンジャムネ)とは毎年王妃が女命婦(ネミョンブ)と外命婦(ウェミョンブ)の者を率いて採桑壇(チェソンダン)で養蚕を行う儀式です。儀式の規模によって中殿の力の強弱が決まるのでありました。ゆえに中殿ユン氏にとっては仁粋大妃を抑え威厳を示す絶好の機会でした。そんな時中殿ユン氏の実家に賄賂が送られてくるのは一見当然のように思われました。だがそれは中殿ユン氏が没落する序章でもありました。
仁粋大妃は韓明澮の来訪を受け入れました。
「中殿を廃せるか聞きましたね。そんな前例はないと申し上げたら君主も廃したのにとおっしゃった。私の記憶は正しいですか?」
「それで?」
ハン・ミョンフェと仁粋大妃は笑い会いました。
感想
今話から成宗はやたら饒舌になり、しっかり話をするようになりました。以前までなら小さな声でぼそぼそと話していた演技が、少し王らしく威厳のあるものになりました。王妃もまた王とともに威張っておりそれは成宗も疎んじるほどの勢いでした。ということで、人は権力を得ると別人のように凶暴に振る舞うのですね。下の人間からはまるで人間らしくない振る舞いですが、しかし金と権力を持つ層にとっては当たり前のことなんですね。イム・サホンは曲者ですが、王妃とともに沈んでいくのでしょうか。