王と妃 130話 親政をめぐる対立
あらすじ
成宗の部屋。
右副承旨のイム・サホンは十九歳になった成宗に摂政を終えて親政をすべきだと換言しました。成宗は大王大妃が辞意を示しても院相が反対するだろうと言いました。左副承旨のヒョン・ソッキュは成宗の言う通り院相が問題なので後ろ盾となる人材を集めなければならないと言いました。
ハン・チヒョンはイム・サホンに尋ねると成宗は時期尚早だと言っていたと伝えました。
イム・サホン。元礼曹判書イム・ウォンジュンの子です。イム・サホンの二人の息子は睿宗の娘顕粛公主(ヒョンスクコンジュ)と成宗の娘徽淑公主(フィスクコンジュ)をそれぞれ娶ったため彼は外戚として権勢を極めました。のちに廃妃ユン氏事件で燕山君を唆し甲子士禍(カプチャサファ)を起こした張本人です。
イム・サホンは学者を味方につけている左副承旨のヒョン・ソッキュを憎んでいました。
「学者は何かとつけあがる。口先ばかりの連中ですよ。なぜ学者を引き入れるのだ。院相制度を廃止するべきです。ハン・ミョンフェら院相を抑えねばなりません。議政府と六曹を差し置いてなぜ院相が国政に干渉するのですか。」
イム・サホンが不満をぶちまけるとハン・チヒョンは穏やかに笑いました。
成宗の部屋。
左副承旨のヒョン・ソッキュはソン・イムとチョン・ナンジョンとチェ・スを推薦しました。
「先日はホ・ジョンを推薦したな。彼はどんな人物だ。」
「万事において冷静沈着な方で剛直な学者です。」
「シム・フェはどうだ。」
「シムは大王大妃様の側なので・・・。」
「朝廷には官僚が山ほどいるのに上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)一人に歯が立たぬとは。」
仁粋大妃の部屋。
仁粋大妃はハン・チヒョンを呼び朝廷の様子を報告させいまだにハン・ミョンフェを抑えられずに悔しがっていました。
「こんな屈辱はありません。主上は十九歳になるというのにまだ摂政を受けているのよ。」
ホ・ジョンは高麗の待中ホ・ゴンの子孫でした。成宗が王妃を廃そうとしたとき異議を唱える者はいませんでした。ですがホ・ジョンだけが中国皇帝の故事を例に挙げ廃位が妥当ではないと王を押しとどめたという。それほど彼はで剛直思慮深い人物でした。
ソン・イム。字は重卿で知中枢府事(チチュンチュブサ)ソン・ヨンジョの子でした。おおらかな性格で流麗な文体を誇るが多少軽薄な人物でした。ホ・ジョンがソンを見下す態度をとるのが万事いい加減な彼の性格を快く思っていなかったからでした。チェ・ス。聡明かつ温和で人々の仲を取り持つのが得意でした。チョン・ナンジョンは晋州牧使(モクサ)チョン・サの子でありました。チョンは達筆で文武両道に秀でており端正な顔立ちでした。ヒョン・ソッキュは左参賛ヒョン・ヒョセンの息子でした。彼は成宗の信頼が厚く都承旨を経て大司憲になり、勲旧派らの排除を謀る中心人物でした。
五人は酒を飲み親交を深めました。
「殿下のためにどうすべきか考えていたのです。」
「大体のサッシはつきます。大王大妃様が摂政をおやめになるそうです。」
「そうおっしゃったのは事実ですが・・・。」
「ならば殿下が親政されればよいのでは?」
「勲旧大臣が反対するのです。」
「院相や勲旧大臣らが殿下の親政を阻もうとしているのでしょう。」
「老いぼれめが。」
「最初の一歩を踏み外せば殿下は勲旧大臣に振り回されてしまう。」
「今殿下のために死ぬ覚悟ができているのはここに集まった皆さんだけでしょう。」
「ノ・サシンもいます。シム・フェはホン・ウンもいる。」
「ホン・ウンは仁粋大妃の側の人間でシム・フェは大王大妃側の人間だろう。」
「我々だけで事を進めるべきだ。」
五人の集まりはイ・グクチュンの報告によりハン・ミョンフェの知るところとなりました。ハン・ミョンフェは成宗が仁粋大妃から離れるまで大王大妃ユン氏が摂政をするべきだと考えていました。
「大王大妃が摂政をやめれば殿下は親政をなさると思うか?今度は仁粋大妃が摂政をするだろう。」
ハン・ミョンフェはヒャンイに言いました。
領議政のチョン・チャンソンは仁粋大妃を警戒していました。
大王大妃の部屋。仁粋大妃は貞熹王后ユン氏に王妃の座が空いていると言いました。仁粋大妃は成宗の側室の中から王妃を選ぼうというと大王大妃は同意し摂政の辞意を表明しました。仁粋大妃は摂政をおやめになるのはまだ早いと反対(というか謙遜)しました。大王大妃が茶を飲むのを見て仁粋大妃は笑みを浮かべました。貞熹王后ユン氏はチョン貴人やキム淑儀もいいわねと言いました。ホン貴人はどうかと大王大妃が言うと王妃の器ではないと仁粋大妃は言いました。二人はチョン貴人を王妃にすることで話がまとまりました。
イム尚宮はチョン貴人にこのことを耳打ちしました。
「一刻も早く摂政をやめなければ。仁粋大妃が怖くて長生きできそうにないわ。」
貞熹王后ユン氏はお付きの尚宮に言いました。
チョン貴人はイム尚宮とユン淑儀はどうやって殿下の心をつなぎとめているのだろうかと雑談しました。イム尚宮はユン淑儀は母から教えを受けたのではないかと言いました。
仁粋大妃は配下の領議政のチョン・チャンソンを呼び出し上党君を恐れて摂政を辞める上奏をしないことを叱りつけました。
「大臣らは皆黙殺を決め込んでおりまして・・・。」
「何のために上党君でなく府院君を領議政にしたと思うの。もう結構です。保身に終始して何ができますか。」
「そなたが先頭に立てばよいではないか。」
傍観して涼しく笑うハン・チヒョンにチョン・チャンソンは言いました。
貞熹王后ユン氏は姻戚のホン・ウンを呼び摂政をやめる時期について相談していました。
吏曹判書ホン・ウン。仁粋大妃の一人娘明淑公主(ミョンスクコンジュ)はホン・サンに嫁ぎました。ホン・ウンはその父親で大王大妃とは姻戚でした。字は応之(ウンジ)高麗の待中ホン・ジャボンの子孫です。世祖がクォン・ラムに君子の名を挙げろというとホン・ウンにまさる君子はいないとクォン・ラムは答えたそうです。史官の記録によるとホン・ウンは清廉潔白かつ誠実、純朴で官職の斡旋を頼む者はいなかったそうです。
ホン・ウンは大王大妃に水は上から下に流れるものですと言いました。ホン・ウンは大王大妃に従うと言い摂政をするのであれば命令通りに支えるました。
月山大君には朴氏という妻がいました。朴氏は燕山君に辱められる悲運の女性で中宗反正(チュンジョンバンジョン)を引き起こしたパク・ウォンジョンの姉でした。
睿宗の妃は「賢明なご判断ですわ」と仁粋大妃をおだてました。斉安大君(チェアンテグン)も仁粋大妃の部屋にいました。部屋の外では月山大君が待ってましたが仁粋大妃は主上の部屋に行くと言いました。
(睿宗の妃と仁粋大妃がやけに仲良くしていてびっくり)
「苦労をかけているわね。」
仁粋大妃は月山大君の嫁に冷たく言い輿に乗り成宗に会いに行きました。月山大君は仁粋大妃に無視されました。
成宗はユン淑儀に淑儀の母が作ったよもぎ餅を箸で食べさせてもらっていました。妻が夫によもぎ餅を食べさせると息子ができるということでした。
仁粋大妃が成宗の寝所に行くと成宗の楽しそうな笑い声が聞こえてきました。
「殿下が散策中にユン淑儀様に出会われたのです。」
内官は仁粋大妃に言いました。
「取り次がなくていいわ。楽しそうにしているから邪魔したら悪いわ。キム内官と言ったわね。今日はチョン貴人の部屋に主上をお連れして。」
「はい大妃媽媽。」
キム内官は嘘をつきました。
成宗とユン淑儀は仁粋大妃が来た知らせを受けました。ユン淑儀は大妃など怖くないわと言いました。
もうひとりのユン淑儀はユン・ホの娘でユン・ギョンの娘とは格が違い士大夫の家系でした。
夜になりました。成宗はチョン貴人の部屋にいました。
「いつも気にならなかったが今日のそなたは別人のようだ。楊貴妃もそなたの美貌に叶わぬ。そなたは美しい。」
チョン貴人はろうそくの灯りを消しました。
その晩、天地が覆ることが起きました。宮殿内のいたるところに張り紙が張られていました。大王大妃は摂政をやめるように書かれていました。ユン・ピルサンはチョン・チャンソンに成宗に報告するように言いました。チャンソンが怖気ずくとユン・ピルサンは自分で報告に行こうとしました。
感想
人間は馬鹿な生き物ですね。生来の攻撃心を向ける相手を常に探していて、閉ざされた世界で互いに傷つけあっているだけの馬鹿な生き物だとこのドラマを見ているとつくづく思います。傍観者だってその様子を見て自分の内なる攻撃心を満たしているのですから・・・アホですね。ハン・チヒョンはまさに傍観者でしょう。仁粋大妃はいつになったら権勢を振るえる日が来るのでしょうか。燕山君に辱められたという月山君の妻様はやけにお年を召しておられましたね・・・。冒頭から登場したイム・サホンも俳優の見かけによらず謀略がお好きなようで。