王と妃 第132話 成宗の反発
あらすじ
妊娠したユン淑儀は王妃の座を狙っていました。
仁粋大妃は成宗の行動を常に監視してイム尚宮に報告させていました。
成宗は若くして亡くなった恭恵王后 韓氏 の苦労を思っていました。成宗は仁粋大妃の目があり優しくできなかったと悔やみ王后に申訳がないので中殿を迎えたくないと尚膳のキム・チョソンに言いました。
「側室と向かい合ってると王妃の顔が思い浮かび思わず涙がこみ上げるのだ。ユン淑儀は親しみやすいのだ。彼女といると童心に戻れる。」
パク内官は盗み聞きをしてユン淑儀の女官に報告しました。
ユン淑儀はこれで安心ねと喜びました。
オム貴人は「あの女狐が殿下をたぶらかしている」とチョン貴人に言いました。
チョン貴人は王妃の座はもうすぐ私のものよと言いました。
ユン淑儀の母(貧しい両班)は女官から懐妊の知らせを受けて喜びました。
「仏さまお天道様ありがとうございます。」
仁粋大妃はハン・ミョンフェが下賜した薬剤を地面に投げた知らせを受けて怒りました。
「上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)は私を悪人に仕立てる魂胆でしょう。大殿に行くから支度して。」
この話はキム・スオンから大王大妃の耳にも入りました。キム・スオンは大王大妃様にも火の粉が飛ぶかもしれないので注意するよう助言しました。
仁粋大妃は成宗の部屋を訪ねハン・ミョンフェを投獄するように言いました。
大王大妃ユン氏はユン・サフンを呼びました。ユン・サフンは貞熹王后ユン氏の実弟で裏表がなく朗らかで右議政になった際も反対する者はいませんでした。
憤慨した仁粋大妃はしつこく成宗にハン・ミョンフェを捕まえるように要求していました。
「あまりに悔しくて血の涙がでそうです。」
大王大妃は仁粋大妃が粛清をするかもしれないとユン・サフンに懸念を示しました。ユン・サフンは仁粋大妃を阻止してみせるのでご安心くださいと姉に言いました。
成宗も仁粋大妃の憤怒に困りイム・サホンに助言を求めました。イム・サホンはハン・ミョンフェを罰し威厳を保つよう助言するとソン・ヒョッキュは流言であり処分に値しないとの見解を示しました。
左議政のハン・ミョンフェは自宅でヒャンイに仁粋大妃に謝るように言われていました。ハン・ミョンフェは自分は間違ってはいない、あれは毒薬だったと言いました。
仁粋大妃は部屋に領議政のチョン・チャンソンを呼び茶と菓子でもてなし上党君の天下を終わらせ新しい人材を登用するように命じました。
「院相を廃止して世祖大王のように六曹直啓制を復活させねば。」
「し・・・・心配なさらないでください。わ・・・・私がひとまず辞任いたします。」
チョン・チャンソンは粛清の気配を察知して逃げようとしましたが仁粋大妃はそれを許しませんでした。
「上党君を弾劾するのです。彼の天下を終わらせなければ。」
夜のホン・ウンの家。
「ハン・チヒョンを大司憲にするわけにはいきません。」
吏曹判書のホン・ウンはユン・サフンに言いました。
「ハン・チヒョンが大司憲になれば大勢の者の血が流れるはず。」
ユン・サフン(大王大妃の弟)はホン・ウン言いました。
チョン・チャンソンの家。
チョン・チャンソンも仲間を呼び話し合っていました。皆は我々も巻き添えになるのではと思いました。ハン・ミョンフェをかばおうという意見と、仁粋大妃の誤解を解くという意見が出ました。ハン・ミョンフェに参内させ誤解を解いてもらおうとノ・サシンはハン・ミョンフェの家に向かいました。
ノ・サシンはハン・ミョンフェの部屋に入り仁粋大妃と和解するように頼みましたがハン・ミョンフェは頭を下げないと頑張りました。ノ・サシンは和解しないと殿下が困ると説得しました。
ハン・ミョンフェは妻に平謝りしてくださいと念押しされ輿に乗り宮殿に向かいました。
成宗は大王大妃に挨拶しました。部屋には仁粋大妃と安順王大妃ハン氏もいました。
成宗はおばあさまに従いますと言いました。
「チョン貴人でよかったわね。殿下はいかがですか。私もチョン貴人がよいと思います。」
「そうなさいませ。」
仁粋大妃は成宗に言いました。
「恭恵王后が亡くなって二年しかたっていません。」
「中殿の座は一日たりとも空けてはならぬのです。」
仁粋大妃は言いました。
そこにハン・ミョンフェが目通りを願いました。
大王大妃はハン・ミョンフェの謁見を許しました。
「ようこそお越しを。ご病気だったようですね。」
成宗は言いました。
「殿下。きょう私が参ったのはお三方に許しを請うためにまいりました。王妃様が逝去なされて二年もたつのに殿下は新しい中殿をお迎えにならずにまことに心苦しい限りです。どうか中殿をお迎えください。個人的には殿下は私の娘婿であります。殿下と添い遂げることなく娘が旅立った責任は私にもあります。」
ハン・ミョンフェは低頭しました。
「安心してください。ちょうど今日新しい王妃を決めるところなのよ。仁粋大妃が薬を贈ったそうですね。効果はありましたか?中殿を迎えても心苦しく思わず今までの通り殿下にお仕えしてください。」
大王大妃は言いました。
「薬はどうでしたか?熊の胆を入れすぎて苦すぎたのではないかと思います。」
仁粋大妃は言いました。
「ご心配には及びません。良薬は口に苦いものですから。」
ハン・ミョンフェは薬をいただいたと言いました。
「それでは安心しましたわ上党君大監。ふっふっふ。」
仁粋大妃は部屋に帰りました。
「狡猾な老いぼれめ。何が主上は自分の娘婿よ。今度こそ上党君に毒薬を贈ってやそう。」
大王大妃の部屋。
部屋には大王大妃とハン・ミョンフェだけがいました。
「私は申し上げる言葉もありません。ひとつだけお気を付けください。私を弾劾した後仁粋大妃様は必ず大王大妃様の親戚をやり玉にあげるはずです。大王大妃様が摂政から退かれたのは宮中の張り紙のせいでした。あの文にあった言葉を今一度思い出してください。媽媽の親戚が要職に就き権力を濫用したと。大司憲の座を渡してはなりません。ハン・チヒョンが大司憲になったら・・・。」
ハン・ミョンフェは貞熹王后ユン氏に言いました。
「ご心配なく。私もそれくらいはわかります。」
「どうかおからだをご自愛くださいませ大王大妃媽媽。」
この話はすぐに仁粋大妃の知るところとなりました。
「ご安心くださいお兄様。」
大王大妃は大司憲の座をハン・チヒョンに約束しました。
ハン・ミョンフェはチョン・チャンソンと会いました。
「仁粋大妃はまことに血も涙もないお方ですぞ。」
ハン・ミョンフェはチョン・チャンソンに言いました。
成宗はホン内官から仁粋大妃から大司憲にハン・チヒョンを据える密書を受け取りました。
成宗は親戚を大司憲に任じることはできぬと言い人事を承認しませんでした。
ヒョン・ソッキュはこのことを仁粋大妃に報告し謝りました。仁粋大妃はヒョン・ソッキュが成宗に自分と距離を置くよう助言したことについて問い詰めました。
「母親の頼みを聞かぬ子などおらぬ。王命を賜ってきてください。」
「もう少しお待ちください。」
「すぐに院相を廃止するのです!私が直接殿下に談判します。」
「媽媽。品位をお保ちください。」
「品位を保てだと?」
「申訳ありません媽媽。」
「殿下の信任が厚いからとそなたは傲慢極まりない。承旨の役目は何ですか!母子を仲たがいさせることですか!」
仁粋大妃は立ち上がりヒョン・ソッキュに怒鳴りました。
「わかったわ。夕方まで待つから主上の裁可をとってきてください。」
「大妃媽媽の声が外まで聞こえてきたぞ。」
イム・サホンはヒョン・ソッキュに言いました。
「殿下のために死ぬとの約束を必ず守ってくれ。」
ヒョン・ソッキュは言うと立ち去りました。
「ああいう手合いもいるのだな。偉ぶって高潔を気取ってる。表では気取っているが殿下に取り入ろうと必死だ。」
ユ・ジャグァンはイム・サホンに言いました。
「まったく鼻もちならんやつだな。」
イム・サホンは言いました。
ヒョン・ソッキュは成宗に「殿下が君主の威厳のあるお姿を見せれば大妃様もお許しになる」と慰めました。
「私がすべてのお方だ。母上を落胆させることはできぬ。」
ハン・チヒョンは仁粋大妃に「急がばまわれ」と譲歩するように進言しました。
「私が大王大妃媽媽の親戚まで排除するとのうわさまで・・・。」
「排除すべきです。排除するためにおにいさまを大司憲に任命するのではありませんか。これ以上私に何も言わないでください。」
司憲府の長に仁粋大妃の従兄を就任させるという計画は暗礁に乗り上げました。この出来事は仁粋大妃とハン・ミョンフェの最終決戦につながりました。
右賛成のユン・ピルサンはチョン・チャンソンにそろそろ仁粋大妃が政治に参加するのを阻止して恩を返すべきだと言いました。
「何が国のためになるかよく考えるのです領相(ヨンサン、領議政)大監。」
左副承旨のヒョン・ソッキュは仲間を集めて大王大妃が政治に参加するのを阻止しようと言いました。
「この杯を交わし殿下が親政をなされるように誓いを立てよう。」
仁粋大妃は何度もソン内官に催促しましたがハン・チヒョンの大司憲就任はなりませんでした。
成宗は仁粋大妃の部屋に行こうとしたら「殿下。お通しするわけにはいきません。殿下は大妃の摂政をお受けになるのですか。どうかおやめください。」と承旨たちがひれ伏しました。
大王大妃は孝寧大君に承旨は無礼ではないかといいましたが孝寧大君は静観するように助言しました。
「ユ・ジャグァンは何をしているの!ハン・ミョンフェを排除したら地位を約束したのに!」
仁粋大妃はハン・チヒョンに怒鳴りました。
感想
王の力が脆弱であるとこんなにめちゃくちゃなことが起きるのですね。仁粋大妃はわが子のために根こそぎ政敵を殺してでも排除したがっていますから、女性に政治をさせるとダメな点がまさにそれ、母が子を守ろうとする欲望なのですね。逆に男のダメなところは富貴栄華を極めて女(または男)を侍らせ好き放題することが政治の目的ですからその欲望もダメなところなんですね。成宗は母の支配欲を乗り越えられずに酒と女性に溺れてしまうわけですが・・・