師任堂(サイムダン)、色の日記4話完全版のあらすじと感想<いつか一緒に金剛山へ>
あらすじ
師任堂(サイムダン)の日記を手に入れたソ・ジユンは日記の解読を先輩の専門家に依頼しようとしましたがミン・ジョンハク教授が裏で手を回したためにことごとく断られました。先輩はミン・ジョンハク教授は執念深いと関連業界まで噂が広まっていると言いました。ミン・ジョンハクがいる限り、ジユンの復帰は絶望的でした。
公園のベンチ。
「子曰く悪衣悪食を恥ずる者とは議するに足らず。学問を志す者が粗末な衣や食事を恥じるならその者とは議論に値しない。論語の里仁篇に出てきます。」
ジユンが自宅近くを歩いているとハン・サンヒョンは公園で子供たちとお母さんに儒教を教えていました。授業が終わり、お母さんたちは手作りの料理をサンヒョンにお礼にあげました。ジユンは日記のコピーをサンヒョンに見せました。
「読んでみて。」
ジユンは偉そうな態度でサンヒョンに言いました。
「我が父の忌日。吾向かう北坪村。故郷の路、遠くして剣難も苦にあらず。北坪村に至り児が我を呼ぶ。幼児の時節の事、母の温情の姿、眠前に展がる。」
ハン・ヒョンはすらすらと漢文を読み始めました。
「いつから漢文の勉強を?」
ジユンは質問しました。
「父生我身。母鞠吾身。父は私に命を与え母は私を育て・・・。最初に習いました。私は五歳で四字小学(サジャソハク)を、その後家の系譜を覚えました。安東地方の家では普通のことです。」
サンヒョンは答えました。
「意味もわかるの?」
ジユンは尋ねました。
「私は四人の子どもたちを連れて漢陽(ハニャン)へ居を移す前に江陵(カンヌン)へ向かう道中のことだ。前の月に大雨で橋が壊れ山道を歩くのは大変だろうと心配をしていたがお天道さまのおかげか楽な道のりだった。」
サンヒョンは言いました。
朝鮮時代。
申師任堂(シン・サイムダン)は子どもたちを連れて江陵(カンヌン)へ向かっていました。
イ・ギョムはサイムダンと彼女の子どもたちが進む道を家来のゴロツキどものイム・コッチョンらに先回りさせ整備させていました。イム・コッチョンと数人の男たちは大きな石を拾って川を渡る道を作りました。
「道を整備しました。壊れた橋も無いしましたし獣が出る所には罠を仕掛けました。」
作業を終えた子分はイム・コッチョンに報告しました。
「ところで兄者。誰ですか。大関嶺(テグァルリョン)を通るたびに気を使われるあのお方は?」
子分はイム・コッチョンに尋ねました。
「お美しい・・・。私が尊敬する人が慕っているお方だ。お美しい。兄者はお元気だろうか。」
コッチョンは花を一輪片手に気取ってみせました。
子分たちはよほど大物の人物(男)なのだろうと思いました。
妓房(キバン)の一室。
「お兄様。くすぐったいどす。こんなに素敵な梅もすぐに消えると思うと残念どす。」
肌もあらわな妓生(キーセン)の女は自分の脚に梅の花を描いてもらっていました。
「枯れぬ花はないぞ。この世に永遠などないのだ。」
イ・ギョムは妓女(キニョ、妓生の女)と遊んでいました。
「なんてステキなお言葉。お兄さまったら。」
妓女(キニョ、妓生の女)は喜びました。
「私はお前の兄ではない。」
イ・ギョム(宜城君)は言いました。
周囲に何人もの妓女(キニョ、妓生の女)たちが休んでいました。
突然、先輩の妓生が部屋に入ってきて女たちをを追い出しました。
「どいて。チャンモ(上司の女)に対する礼儀がなっていない。あなたは出て行きなさい。行きなさい。痛い目に遭いたい?醜女(しこめ)のくせに出ていきなさい!」
イ・ギョムの屋敷の庭は順番待ちをしている女でいっぱいでした。
女はすぐイ・ギョム(宜城君)に描いてもらおうとしました。
イ・ギョム(宜城君)は女将の肌に絵を描いてあげました。
「あ~ん。くすぐったい~。」
女は喜びました。
妓楼の庭。
イ・ギョムの五番目の甥イ・フは次々と女が集まってくる屋敷を見て羨ましいと思いました。
部屋。
「兄貴ーーー!兄貴!兄貴ーーー!」
イ・フは勝手に部屋に上がるとイ・ギョムに何度も口づけをしました。
「男色が来たわーーー!」
女は叫びました。
「悪い女!これでも食らえーー!」
先ほど追い出された妓女(キニョ、妓生の女)はズルをした女に小便の壺をひっくり返しました。小便はイ・フの顔にかかってしまいました。
妓房(キバン)の外。
「はいはい終わり。男色の振りをして何しに来た。私がお前をダメにしたと一族がうるさい。」
イ・ギョムは妓生を振り払い屋敷を出て行きました。
「どこへ行かれるのですか!おじ上!おじ上!」
イ・フはイ・ギョム(宜城君)の後を追い掛けました。
1540年の江陵(カンヌン)の北坪村(プクピョンチョン)。
使用人のタムはサイムダンの母、龍仁イ氏にイ・ギョムの二十年ぶりの帰還を報告しました。
「軒轅荘(ホノンジャン)に若様が戻られるようです。ご婚礼されるようです。二十年も村に帰らなかった方がお嬢様とすれ違うなんて。」
タムはイ氏に言いました。
「サイムダンには気づかれないようにしなさい。」
イ氏はタムに言いました。
「分かってます。ソン様を生まれるまで三年間ロクに何も食べず口もきかれませんでしたよね・・・あっ・・・。」
タムは言いました。
「噂もしないようにね。わかった?」
イ氏は言いました。
軒轅荘(ホノンジャン)。
「大叔母様は胃が痛むと聞いた。亡くなられたか?そちも老いたな。月日は薬ではなく毒だな。」
イ・ギョム(宜城君)は執事に尋ねました。
イ・ギョムは育ちの家に帰ると老いた執事が出迎えました。執事は体のあちこちが痛むと言いました。
「来たのなら早く入りなさい。」
大叔母はイ・ギョムを部屋に呼ぶと、キム判事(パンサ)の娘の四柱(サジュ)を渡しました。
「犬のように無理やり添わせるのですか?」
イ・ギョム(宜城君)は断りました。
「10年あれば山河も変わる。もう20年になる。私たちが行く当てのないお前を王の血が流れているから育ててやったら破落戸(パラクホ=道楽者)に落ちぶれるとは。もはや見過ごせぬ。この縁談を断りまだ放蕩を続けるのなら私はお前の目の前で死ぬ。」
大叔母は小刀を自分の首に突きつけました。
「ふくよかなお体に刃物は似合いません。話はこれで終わりです。ご存知でしょう。私は変わりません。」
イ・ギョムは立ち上がりました。
「ネイノン!それで状況が変わるというのか?聞くところによるとシン・ミョンファの娘はイ氏に嫁いで子どもを何人も産んでいる。まだ受け入れられぬのか。放蕩を続けても何一つ変わらぬのだ。私が怒りのあまり死んでしまうかお前が婚礼に臨むか選びなさい!」
大叔母は怒りました。
イ・ギョム(宜城君)は逃げるように部屋から出て行きました。
イ・ギョムは薄暗い自室に戻ると筆掛けに掛けていた手編みの若葉色の装身具を手に取りました。イ・ギョムは少女サイムダンと過ごした日々を思い出しました。
20年近く前。
師任堂(サイムダン)はイ・ギョム(宜城君)と共に野に赴きました。師任堂(サイムダン)は野の花を描いてはイ・ギョム(宜城君)に微笑みました。師任堂(サイムダン)は赤い芍薬の花と華に留まる蝶を描いてキョムに見せました。二人は山に登り、師任堂(サイムダン)は崖の上で琵琶を演奏しました。キョムはコムンゴ(玄琴)を奏でました。二人はお互いに寄り添いました。
山中の楼閣。
イ・ギョム(宜城君)はうたた寝をしてしまいました。キョムを飛び起きると、師任堂(サイムダン)は微笑みました。二人は寄り添い、手をつなぎました。
竹林。
師任堂(サイムダン)は身に着けていた萌黄色の装身具をイ・ギョムの腕に着けました。師任堂(サイムダン)はお揃いの装身具を自分の腕に身にも着けました。二人は手をつないで竹林の中を歩きました。
見晴らしの良い崖。
「はぁ。同じ山でも違って見えます。気分によって天気によって・・・誰と一緒に見るかによって。ここもきれいだけど絹や宝石のように美しいといわれる絶景はどんなのかしら。風になれたらと思います。絶景を見ながらどこにでも行けます。北から南へ、西から東へ自由に飛んでいけます。」
師任堂(サイムダン)はイ・ギョムに言いました。
「師任堂(サイムダン)。私から離れても大丈夫だと思っているのか?」
イ・ギョム(宜城君)は言いました。
「え?あなたという人は何をおっしゃっているのですか?」
師任堂(サイムダン)は眉をひそめました。
「これはまた危ない女人(にょにん)と出会ったものだ。これではいけない。帰ろう。そして夫婦になって一緒に行こう。一人で行ってはならぬ。他の誰とも行ってはならぬ。一緒に行くのは私とだけだ。冬の白い雪岳山(ソラクサン)やそれから、南道(ナムド)に咲く椿の花も描こう。御踏山(オダプサン)のふもとにひろがる星も描こう。そうやって暮らそう。なぜ黙っているのだ?」
イ・ギョムはサイムダンが自分から離れていきそうに思いました。
「金剛山(クムガンサン=現在の北朝鮮の山)。金剛山だけは絶対に行きます。死ぬ前に必ず金剛山の毘蘆峰(ピロボン)から景色を眺めたいです。」
師任堂(サイムダン)は言いました。
「金剛山(クムガンサン)へ行くのに死に際まで待つことはない。今から行こう。ついでに関東(クァンドン)八景をしかと見て回ろう。」
イ・ギョム(宜城君)が言うと、師任堂(サイムダン)は嬉しくなりました。
「約束しましょう。」
師任堂(サイムダン)はイ・ギョム(宜城君)に言いました。
「ああ。約束だ。金剛山に一緒に行こう!そうだ。金剛山(クムガンサン)。金剛山(クムガンサン)はあちらの方向ではないか?待っていろーーーーっ!」
イ・ギョム(宜城君)は言いました。
現代。
「このイ・ギョムって母犬図(モギョンド)のイ・ギョム?」
ハン・サンヒョンはジユンが見せた古書を読みサイムダンとイ・ギョムが初恋の相手であることを知りました。
「イ・ギョム(宜城君)とシン・サイムダンは同じ年頃である可能性があるわ。」
ジユンは続きを読むように言いました。
「そうだったらその人たちはお互いに初恋の相手なんですか?400年から500年前の日記だと思うけど。」
ハン・サンヒョンはジユンに尋ねました。
「続きを読んでみて。」
ジユンは言いました。
「宜城君(ウィソングン)は王様に婚書(ホンソ)を書いてもらえず、結局、自分で直接書いて(サイムダンの)父親のもとに持参した。」
ハン・サンヒョンは続きを読みました。
朝鮮時代の鳥竹軒(オジュッコン)。
青年イ・ギョムは自筆の婚書と四星(サソン=生まれの四柱が書かれた文書)をサイムダンの父に見せました。
「婚書が新郎の手渡しとはどういうことだ?」
シン・ミョンファはイ・ギョム(宜城君)に尋ねました。
「ご存知のとおり私には婚書を書いてくださる父がいません。主上殿下に頼んでみましたが国王が書くものではないと断られましたので自分で書きました。王様の許婚はまだですが貴重なみかんを賜りました。ささやかなものですがどうぞ。」
イ・ギョムは持参した包みを師任堂(サイムダン)のお母さんに渡しました。
「本人たちの気持ちが大事なのはわかりますが、順序というものがあります。戻られてお待ちください。」
サイムダンの母、龍仁李氏は家に帰って沙汰を待つようにと返答しました。
「では帰って待っています。」
イ・ギョム(宜城君)は部屋を出ました。
サイムダンは庭で様子を伺いつつ待っていました。
「どうだった?」
師任堂(サイムダン)は庭に出て来たイ・ギョム(宜城君)に尋ねました。
「待つことになった。」
イ・ギョムはサイムダンの手に触れました。
「帰ってください。婚書を貰って親も驚いてるはずです。今後は行動に気を付けないと。」
サイムダンはすぐに手を引っ込めました。
「わかった。」
イ・ギョム(宜城君)は帰ろうとして、振り返りました。
「早く行ってください。」
師任堂(サイムダン)はイ・ギョム(宜城君)に手を振りました。
橋。
イ・ギョムが橋を渡りました。
両班を輿に乗せた使用人たちが道行く人にどくように言いました。
イ・ギョム(宜城君)は押し倒された貧しい人に「大丈夫ですか?」と声を掛けました。
川で洗濯をしていた奴婢の娘ソクスンはイ・ギョムを見つけると放心して立ち上がりました。
イ・ギョムは厳しい労働に苦しむ高齢の奴婢に対しても優しく振舞っていました。
ソクスンは身分の差に苦しむ人々の気持ちを理解しているイ・ギョムのことがますます好きになりました。
イ・ギョム(宜城君)はおじいさんの手を引き橋を一緒に渡ってあげました。
国王の行幸。
朝鮮国王の行列が丘を歩いていました。
「ギョムが惚れた女に早く会ってみたい。早く行くぞ。」
中宗(チュンジョン)は行列を離脱し、内禁衛将とともに馬に乗って鳥竹軒(オジュッコン)に向かいました。
江陵(カンヌン)北坪村鳥竹軒(オジュッコン)。
「金剛山(クムガンサン)を見に行く詩人や画家はここによるそうだ。一晩泊めてくれと頼んでくれ。」
中宗(チュンジョン)は内禁衛将に命じました。
「頼もう。誰かおらぬかー!」
内禁衛将は門で叫びました。
中宗(チュンジョン)と内禁衛将は屋敷に入りました。
「どうなさいましたか。」
内禁衛将(ネグミジャン)が中宗(チュンジョン)に声を掛けました。
「見たことのある男だ。」
中宗は屋敷で佇んでいる申命和(シン・ミョンファ)を見て言いました。
中宗が庭に入るとたくさんの奴婢が働いていました。
書生の青年は目立たない服装で絵を描いていました。
師任堂(サイムダン)は庭で金剛山図を模写していました。
中宗は垣根の外からその様子を見ていました。
「あれが私がキョムに与えたアン・ギョンの金剛山図か。高価な絵だぞ。キョムのやつはあの人に目がくらんだのか。おや。よく描けていたぞ。ここで世話になる旅人だ。これはアン・ギョンの金剛山(クムガンサン)か?うまく描けているのになぜ伏せるのだ。」
中宗(チュンジョン)はサイムダンに話しかけました。
「金剛山は見たことがないので私が描いても魂がこもことはありません。同じ木の葉でも春には薄緑、夏には濃い緑、秋には紅葉します。光や風により時々刻刻と色が変わります。自分の目で見て感じたままに描きたいのです。」
サイムダンは情熱を込めて、しかし中宗には目を合わせずに言いました。
「仕方あるまい。女人は金剛山には行けぬのだから。」
中宗(チュンジョン)は言いました。
「女人には許されないことが多すぎませんか?」
サイムダンは顔を上げて中宗の目を見ました。
「それがこの国の掟だ。その不満を王に伝えては?」
中宗(チュンジョン)は言いました。
「できるならそうします。どうして女人にはそれすら許されないのですか?」
師任堂(サイムダン)は言いました。
「はっはっは!絵だけでなく口も達者なようだ。そなたの願いがいつか叶うことを祈る。」
中宗は去りました。
様子を伺っていた書生イ・ウォンス(李元秀)は師任堂(サイムダン)に微笑みました。
師任堂(サイムダン)はイ・ウォンスを無視しました。
夜になりました。
中宗(チュンジョン)は内禁衛将と食事を摂りました。
「はっはっは。婚書を断られて自ら書いてしまう男と金剛山に登りたいと王に頼む娘とは。すばらしい組み合わせだ。キョムの奴がどんな娘を選ぶかと思ったらお似合いの相手だ。絵と音楽でも話が合うと聞いた。」
中宗は内禁衛将(ネグミジャン)と話していました。
内禁衛将は中宗(チュンジョン)に話を合わせました。
タムが膳を持ってくると書生のイ・ウォンスはナムルがないぞと言いました。
タムは娘にナムルを取り行くように言いました。
「お前さん。お嬢様は相変わらず絵を描かれているのか?」
イ・ウォンスはタムに尋ねました。
「構わないでください。」
タムは冷たく言いました。
「あれはなんだ?」
中宗は後ろで飯を食べている生意気な男、イ・ウォンスについて尋ねました。
「あの者はここでひと月以上寝泊まりしている書生です。山に入って科挙の勉強をするつもりが居座っていると。師任堂(サイムダン)お嬢様の美しさに惹かれているようです。」
内禁衛将は王様に言いました。
「ギョムの恋敵か。はっはっはっは!」
中宗(チュンジョン)は笑いました。
夜の池のほとり。
「殿下。私に会いたくてお越しいただいたのでしょうか?」
イ・ギョムは中宗と会いました。
「はっはっはっは。ただ酔っただけだ。迷惑だったか?婚礼の話はすすんでいるのか?」
中宗(チュンジョン)は尋ねました。
「はい。」
イ・ギョム(宜城君)は答えました。
「そういえば娘を慕う男がほかにもいるそうだ。お前は気づかなかったか?これで頑張ってこい。龍煤墨(ヨンメモク=中国の貴重な墨)だ。詩画に明るい娘と聞いておる。使えるぞ。婚礼のあとには必ず漢陽に住まわねばならぬぞ。わかったか。余には心を開いて話す相手が必要だ。義父となる人物には徳があるようだ。詩人や画家を泊めてやっている。はっはっは。義父の名前は?」
中宗(チュンジョン)は言いました。
「シン家ミョンファという方です。」
イ・ギョム(宜城君)は答えました。
「シン・ミョンファだと?」
中宗(チュンジョン)の表情が変わりました。
1519年。
シン・ミョンファを含む士林派はチョ・グァンジョ(趙光祖)を頭目としてペク・インゴルらを筆頭に秘密の集会を開いていました。士林派は命をかけて中宗の側近を排そうとしていました。
「なぜ主上はかようにあらせられるのですか?我々が大臣を排除しようとしたのは主上に民のための政治をしていただくためです。」
目下の両班は言いました。
「だが主上はご決心なされたようだ。我らサリムに血の雨が降るであろう。黙っているわけにはいかぬ。」
小太りの男が言いました。
「言い過ぎですぞ。犯上(ホンサン臣下の王への悪行=)の罪を負うつもりですか?」
シン・ミョンファは発言しました。
「犯上(ホンサン)だと?何をいっておるのだ。我々の命運をかけて何かをすべきというのです。」
まだ若い両班、ペク・インゴルは言いました。
「私は、このような議論にこれ以上参加できぬ。」
シン・ミョンファは会合から出て行きました。
三人の両班はシン・ミョンファに続いて会合を出て行きました。
その様子を内禁衛将が見張っていました。
シン家の中宗が泊っている寝室。
「知っていたのか?黙っていたのか?なぜ言わなかった!」
中宗は寝間着姿で内禁衛将(ネグミジャン)にシン・ミョンファについて尋ねていました。
「あとで申し上げようとしました。」
内禁衛将は釈明しました。
「ここはチョ・グァンジョら新進の士大夫(サデブ)が謀反を企てた場所ではないか。そのような雰囲気の中でシン・ミョンファは国を揺るがせてはならぬと余をかばってくれた。そのような者を傍に置きたかった。功臣も新人の士大夫(サデブ)たちも誰も信用できぬ。四方を見回しても頼れる者はいない。そうだ。せっかくだから詩を授けるとしよう。真面目な人士ならささいなことでも感動するだろう。はっは。民心は操りやすい。ああいう者を味方にすればよい。墨と筆を用意せよ。」
中宗(チュンジョン)は悪だくみをしました。
夜明け。
「旦那様。おととい来られた方からです。」
タムは詩を吟じているシン・ミョンファに手紙を渡しました。
シン・ミョンファは手紙を無視して詩を吟じ続けました。
「地味な方だったけど使っている紙は贅沢ね。高麗紙(コリョジ)を使っていたわ。」
タムは娘に言いました。
シン・ミョンファはタムの話が気になり手紙を読みました。
「此の下民を哀しむ天の彝(い)を喪(うしな)う。己卯(きぼう)の逐客、心断絶す。国に人無く我を知る莫(な)し。予(われ)独り鬱してそれ誰と語らん。李懌(イ・ヨク=中宗)。」
「悲しいものだ。哀れな民よ。道理まで失ったのだな。己卯(きぼう)の年に追い出された者を切なく思う。国には忠臣がおらず誰も余の心を知らぬ。独り悩む心を誰に話せばよいのだろうか。」
中宗の寂しい気持ちが詠まれていたことを知るとシン・ミョンファは震えました。
シン・ミョンファは走って中宗を追いかけました。
中宗(チュンジョン)と内禁衛将は馬に乗っていました。
中宗が振り返るとシン・ミョンファは大きな声で叫びました。
「殿下ーーーー恐れ多きことでございますーーーー!殿下のお気持ちを私は知りませんでしたーーー。ご聖恩の極みでございますーーーーー!」
シン・ミョンファは地面にひれ伏しました。
「あの日席を立ったものは?」
中宗(チュンジョン)は内禁衛将に尋ねました。
「シン・ミョンファのほかに三人います。」
内禁衛将は答えました。
「では三人の所にも行ってみよう。」
シン・ミョンファの反応に中宗(チュンジョン)は他の三人も同じ反応をするだろうと期待していました。
師任堂(サイムダン)が彫り物をしていると彫刻刀が滑り手が傷ついてしまいました。
シン・ミョンファの部屋。
シン・ミョンファは中宗(チュンジョン)の詩を模写していました。
「此の下民を哀しむ天の彝(い)を喪(うしな)う。己卯(きぼう)の逐客、心断絶す・・・誰の詩ですか?」
サイムダンは父の部屋に置いてあった中宗の詩を読みかけました。
「何でもないのだ。」
シン・ミョンファは白い絹の布で詩を隠してしまいました。
「己卯(きぼう)の逐客とは、己卯(きぼう)の年に飢えた民たちのことですか?」
師任堂(サイムダン)は父に尋ねました。
「はは。そうか。私に何の用だ?」
シン・ミョンファは言葉を濁しました。
「彫刻刀を貸して欲しいのです。私の物では削れなくなりました。
師任堂(サイムダン)は父に彫刻刀を借りました。
「そうか。」
シン・ミョンファは師任堂(サイムダン)に彫刻刀を貸してあげました。
美しい山の中。
師任堂(サイムダン)とイ・ギョム(李岒)は会いました。
師任堂(サイムダン)は木彫りの小鳥の飾りをイ・ギョムの手のひらの中に置きました。
「これで、もう目を開けていいか?」
イ・ギョム(宜城君)は目を閉じていました。
「ええ。」
師任堂(サイムダン)は答えました。
「怪我をしたのか?一体どうしたのだ?」
イ・ギョム(宜城君)はサイムダンの指に巻かれた包帯に気が付きました。
「かすり傷です。気に入りましたか?」
師任堂(サイムダン)は言いました。
「いいや。大切な手を傷つけた。それになぜ羽が一つしかないのだ。」
イ・ギョム(李岒)は心配ながら言いました。
「比翼鳥(ピイクチョ)です。翼と目が一つしかない伝説の鳥です。伝説の鳥を表す鶼(ギョム、けん)は若様の岒(ギョム)の名前と同じ音を持っています。もう一羽は若様(トリョンニ)が直接掘ってください。婚礼の日に。二人が一つになって飛べるように。」
師任堂(サイムダン)は言いました。
「わかった。私が彫ってみよう。」
イ・ギョム(宜城君)は優しく頷きました。
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感想
1回目の視聴感想
この手の過去と現在をフュージョンさせたドラマは苦手ながらも続きを見てしまいました。はじめからサイムダンとイ・ギョムの恋愛は羨ましいくらい順調です!視聴者の私は指を咥えて見て・・・あんなに思春期から初恋がとんとん拍子に順調だったらよかったのにな!なんて誘惑に駆られながらも中宗があの悪いアイツと同じ人な理由がまた意味不明。たぶん中宗(チュンジョン)が善人の仮面の中から悪を覗かせサイムダンの邪魔をするのではないか?と勘ぐってしまいます。歴史のサイムダンはイ・ギョムと恋愛関係にないようですが・・・一体このドラマはどうなっているのでしょうか・・・。中年になったイ・ギョムが漫画のようにサイムダンの行く先を見守っているという親切設計に胸キュンですか♪
それにしてもサイムダンという名前がややこしいですね。はじめのうちは慣れなくてサムイダンと書いてしまいました。ハン・サンヒョンもなぜか過去ではサイムダンの恋人を演じてますし、しかも過去の民族衣装のほうがイケメンに見える不思議!サイムダンも名前は「サイムダン」じゃなくて本当の名前はわからないのにドラマでは「娘」とか「お嬢様」としか呼ばれておらずめちゃくちゃですね。
師任堂(サムイダン)色の日記は本も出版されているみたいなので小説も一度読んでみたいです。
※2017年8月17日の感想です。
2回目の視聴感想
1回目の視聴から3年後の感想です。今回は師任堂(サイムダン)とイ・ギョム(宜城君)の美しい初恋が描かれていました。朝鮮の山河の美しさにも劣らぬ恋だと思います。よく見ると師任堂(サイムダン)は琵琶のような弦楽器を演奏していました。宜城君(ウイソングン)はコムンゴ(玄琴)を演奏していました。それはそれは楽しくて幸せでしょうね!!!
中宗(チュンジョン)は己卯(きぼう)の年に士林派の会合を抜け出たシン・ミョンファに寂しい気持ちを書いた奇妙な恋文を贈りました。国王の詩に感激したシン・ミョンファは、ドラマをよく見ると「王様の詩を模写」しています。一回目の視聴では気づきませんでしたが、しっかりと模写して有難く思っているのです。
しかし中宗(チュンジョン)は他の3人もシン・ミョンファと同じように自分に感謝感激するだろうと欲をかきました。純粋なシン・ミョンファだからこそ国王の密かな詩に感動してその秘密を守ろうとしているのですが・・・他の3人はそこまで微妙な気持ちを察することができるのでしょうか?
そして当時はさほど気にしていなかったのですがイ・ウォンスが師任堂(サイムダン)を覗き見ているではありませんか。勉強もせずに女人(にょにん)を覗き見るとはまことに不埒な輩です。
ソクスンがイ・ギョム(宜城君)に憧れるのは、まるで庶民が有名イケメン芸能人に憧れるかのような演出でしたね。
よく見たらペク・インゴル先生も出てましたね。
サイムダン各話のあらすじと感想