チュノ18話 -獣の涙
目次
あらすじ詳細
テギルとテハは処刑台に連行され先に嫌がるテギルの首が締め上げられました。テギルは縄を掴んで抵抗しました。
チョン・ジホは仕立て屋の夫人から赤い布を受け取りました。処刑を見物に来ていたチョン・ジホは赤い服を着て武官に成りすましました。
オンニョンは検問所から追いかけてきた武官に呼び止められました。武官はオンニョンに喀血は家族も隔離せねばならないと忠告しました。オンニョンは医員の指示で使用人を官庁に遣いに出したと答えました。武官は自分の口を押えてわかったと言うとオンニョンと石堅(ソッキョン)を見逃しました。
下級武官になりすましたチョン・ジホは槍を片手に処刑台の背後に回りました。
「ここでいっちょ演武でもやろうか。」
チョン・ジホが処刑人を刺そうとしした瞬間、どこかから手裏剣が飛んできて処刑人の胸に刺さりました。
「襲撃だ!捕らえろ!」
複数の両班風の服を着た男たちが剣を片手に次々と役人に襲い掛かり、その場は騒然となりました。
「テギル!テギルーー!ヒャッハッハッハッハ!」
チョン・ジホは木の棒で刺客の背中を何度か叩くとテギルの縄を外そうとしました。
刺客はソン・テハの縄を斬りテハを連れて逃げました。処刑を見に来ていたオッポクたちも逃げました。
「射手を配置しろーー!」
役人は叫びました。
チョン・ジホは奇声を上げながら武官を殴るとテギルを釣り上げている縄を歯で噛み切ろうとしました。
テハは首を吊り下げられて意識を失っているテギルを振り返ると縄目掛けて刀を投げました。テハの投げた刀はテギルの縄を斬りテギルは床に落ちました。
「テギルーーー!テギルーー!ヒャッハッハ!ヒャーッハッハッハー!テギルー!!」
チョン・ジホはテギルに駆け寄り心臓を何度も叩きました。
「うっ・・・ごほっ・・・ごほっ・・・・。ここは?」
テギルが目を覚ましました。
「地獄に決まってるだろう!ヒャーッハッハッハ!」
テギルは目を覚ますとすぐに起き上がり武官を殴ってジホと逃げました。
テハ目掛けて矢が放たれました。何人かの刺客は背中を射抜かれて倒れました。
オ捕校(ポギョ)は自らは将校を守ると言い訳をして部下に刺客を追うように命じました。
納屋。
「ソン将軍・・・お会いしたかったです。」
胸を射られたテハの部下ヨンイは事切れました。
「これに着替えてください。」
生き残った若い部下がテハに言いました。
「ヨンイを置いていくのか?」
「軍人は、死に場所を選べないのです。」
「・・・・・。」
テハはヨンイの目を閉じました。
妓楼。
イ・ギョンシクは女将とチェミを侍らせチョ先生に酒をすすめました。チョ先生は盃を逆さに返しました。
「なぜ私にこのような侮辱を与えるのですか。刑曹の牢に戻してください。」
「それはできぬ。あなたは罪人ではない。ソンという者は軍人を殺して逃亡した奴婢で推奴(チュノ)師のイという者(テギルのこと)は狎鴎亭(アプクジョン)での殺人に関与した。あなたは何をしたかね?何もしてないではないか。」
テハは両班の服に着替え逃亡していました。
テギルはチョ・ジホと逃げていました。ジホは背中に矢が刺さりました。
「・・・・・・。何してるんだー。行くぞー。へっへっへっへ。」
ジホはテギルに言いました。テギルがジホの前に回ると矢はジホの胸を貫いていました。ジホは膝を突きました。
「貴様ー立てよー。行くぞー。」
テギルはジホに言いました。
「行くぞこの野郎。」
ジホは答えました。
「はっは。ははははは。」
テギルはジホを引っ張り上げました。
清の将軍が滞在する宿屋。
「ソン将軍!よく来てくれた。」
ヨンゴルテ将軍はテハを見て喜びを表しました。
「お元気ですか。」
テハは少し安堵したような表情を浮かべました。
「さあ座ってくれ。」
「ヨンイが・・・逝きました。」
妓楼。
「王孫を王位に就かせたい理由は何だね?民の暮らしを安定させ外国への門戸を開放する、その程度だろ?」
イ・ギョンシクはチョ先生に言うと鼻で笑いました。
「その程度だと?王座に執着する国王(仁祖)や腐敗した重臣にもそれができるとでもいうのか?」
「あなた(クデ)がやればいい。」
「私を懐柔するつもりですか?私が同志を裏切るように見えますか?」
「あなたに寝返るように説得しているのではない。あなたはやりたいことをやりなさい。それだけだ。」
「左相(チャサン、左議政)大監(テガム)。」
イ・ギョンシクの部下が現れました。
「ソン・テハを助けた奴らは何者だ?」
イ・ギョンシクは廊下に出ると部下に尋ねました。
「それがわからぬのです。死体も号牌も持ってません。」
「正体不明か・・・。」
「ソン・テハの部下では?」
「部下ならこれほど早く知らせを聞きつけ駆けつけるとは思えぬ。ヨンゴルテだ。腕の立つ者を集めて使臣館を見張れ。」
「はい。」
「ソン・テハが死んだそうだ。あの者の妻が王孫を連れているようだが女の身では検問をくぐり抜けられまい。捕まるのは時間の問題だ。」
イ・ギョンシクは再び宴席に戻るとチョ先生に言いました。
「・・・・・はぁ。」
チョ先生はため息をつきました。
「ひとつ聞きたい。あなたに忠誠を誓う者はいるのか?前左議政イム・ヨンホに従う者ではないか?」
「私も師匠と志を同じくした者です。」
「それが問題だ。イム・ヨンホの名を掲げないとあなたは何もできん。生きているあなたより故人のイム・ヨンホの功績となる。あなたが志を遂げても巧妙はイム・ヨンホの墓に行く。誰かの陰で大きくなった者は生涯その陰から出られない。」
女将は箱を開け筆をチョ先生に差し出しました。
「そこに(仲間の)名前をすべて書け。過去はすべて吐き出して私と出発しよう。今後はあなたが大木となりその陰に人を集めるのだ。」
宿屋。
「すぐに発ちます。」
テハはヨンゴルテ将軍に言いました。
「どこへ行くのだ。ここが一番安全だ。」
「王孫様を捜します。」
「居場所を言えば私が捜させよう。」
「婚礼を挙げました。私の妻が王孫様を連れています。」
「どこへ向かっている?」
「おそらく実家のあるヨジュでしょう。」
「夫人ひとりで王孫を・・・。」
「思慮深く勇敢な女性です。ですが何が起きるかわからないので急がねばなりません。」
どこかの町。
オンニョンは背中に石堅(ソッキョン)を隠して兵士の目を逃れました。
「どうですか?温かいですか?握ってみてください。どうです?」
オンニョンは焚火で石堅の足を温めました。温かくなった石を石堅の手に握らせました。
「あったかい。」
「今日は寒かったですね。握っていてくださいね。薪をくべます。」
オンニョンは雪で焚火の痕跡を消して旅立ちました。
「今は左議政が監視しているだろう。城の外に出る前に捕まるぞ。」
ヨンゴルテ将軍はテハに言いました。
「主上殿下に狩りを申し出てください。」
「狩りを?それは名案だ。我々が狩りに行けばそれに紛れて城外に出られる。」
ヨンゴルテ将軍は頷きました。
雪の積もる林の中。
チョ・ジホは口から血を吐いて木にもたれました。
「もう歩けないのか?捨てていくぞ。兄貴思いの弟でも限界がある。」
「おいお前。訓練院のファン・チョルンだ。そいつがお前と俺以外の仲間をすべて殺した。お前と一緒に復讐しようと思った。だからお前を助けたんだよ。」
「夢がでかいな。」
「やいお前。俺様が貴様に教えたことは覚えているか?」
「もちろんだ。恩を忘れたとしても仇は絶対に忘れるな。いいこと習ったよ。」
「矢が十二本飛んできても平気だったのに・・・。」
チョン・ジホの声はかすれていました。
「もうしゃべるな。俺はオンニョンを捜し出したんだ。」
「余計なことをしやがったな。」
「そうかもな。」
「俺が見つけてやると言っただろ。」
「幸せに暮らしてると思ったが違った。」
「俺の言うことを聞く気が無いのか?この俺が見つけてやるって言ったのに。」
捕盗庁(ポドチョン)の武官は数人の部下と林の中を走っていました。
オッポクは雪の積もる林の中を銃を手に持ち逃げていました。
「いいことを教わったなら兄貴の話を聞いたが、兄貴は俺が出合った中で一番最低な人間だからな。チャッキを除いてな。」
テギルはチョン・ジホに言いました。
「この野郎。心配いらぬ。これからもっと世の中で最低な奴らに出会うぞ。」
「世の中のことはもう十分に経験したさ。」
「世の中は経験だけでわかるもんじゃない。テギル〜。テギル。」
ジホはテギルの襟首をつかみました。
「それでも貴様は俺の最期の花道のためにこの服を作ってくれた。ひっひっひっひ。」
「ひっひっひっひ。」
テギルはジホを抱きしめました。ジホは(三途の川を渡るための)銭を口に入れました。
「テギル。足の指が・・・どうしてこんなに痒いのだろう。最後に気持ちよく・・・お前が・・・・俺の足の指を・・・かいてくれないか?」
「はははは。ははは。兄貴は変なことを言いやがる。」
テギルはジホの靴を脱がせると指をかいてあげました。
「臭いな。くすぐったいか?」
「こいつめ。」
「気持ちいいだろ。どうだ?え?久々にかいてもらって気持ちいいだろう?」
「・・・・・・。」
「だろ?ん?」
テギルはジホを見ると涙を流しました。
「何で黙ってるんだよ?何か言ってみろよーーー!」
テギルはジホの足の裏を叩くと息を吹きかけて温めました。
「兄貴。足がカチカチに凍っちまったぜ。どうだ?温かいだろ?」
武官と兵士たちはテギルを取り囲みました。
「立て。」
武官はテギルに言いました。
「旦那様。私は罪を犯しました。一言言ったらすぐに立ち上がります。・・・・・・(兄貴)。儲けは山分けだ。え?」
テギルは武官をすべて倒しました。
オッポクは林の中を銃を持ったまま逃げていました。
「兄貴の分だ。見たろ?俺はテギルだぞ。イ・テギルだぞ!兄貴みたいな奴が大勢来ても俺は倒せない。それを知ってて助けに来たのか?兄貴は俺に何をしてくれた?オンニョンを早く見つけてくれたらこうならずに済んだ。殺されずにすんだんだよ。この間抜け!こんな死に方をせずに済んだのに!!!チョン・ジホー!虫けらのように生きて虫けらのように死んでいくのか・・。足の指をかけが最期か?」
テギルは息絶えたチョン・ジホにずっしりした銭を投げました。
オッポクはテギルを見つけると銃を構えてテギルを狙いました。
「俺が泣くとでも思ってるのか?俺も世の中を経験してわかってるさ。泣いても何もならないって。あ?」
テギルはジホに話し続けました。
テギルは再びジホの足に息をかけて温め始めました。
オッポクはテギルを見て哀れに思い銃を下ろして行きました。
夜になりました。オッポクはチョボクと歩いていました。
「何があったの?」
「わからなくなった。大事のために人を殺していいのか。」
「え?」
「人生ってものは、意味の無い人生は無い気がする。なあ。狼が泣くのを見たんだ。」
「泣かない獣はいないわ。」
「虎狩りの訓練では獣が泣いている時は打つなと習った。」
「どういう意味なの?」
「次の機会に殺せということだ。」
「誰を?」
「獣のことだろう。帰ろう。牛の餌を作る時間だ。・・・あれは?パンチャクじゃないか」
オッポクとチョボクは塀にしゃがみ込んでいる女性を見つけました。
奴婢の家。
「どうしたの?散歩の途中なの?・・・逃げてきたのね。」
チョボクはパンチャクに話しかけました。
するとパンチャクのお母さんが駆け付けました。
「早くご主人様のところへ戻りなさい!」
お母さんは困ったように娘の手を握ると揺さぶりました。
「死んでもいやよ。」
「なんてこというのよ!」
「毎晩どれほど怖い思いをしてるかお母さんわかるの?」
パンチャクは泣き出しました。
「えい!どの女もおなじような目に遭ってる。こんな身分に生まれてきた以上仕方ないんだ!逃亡して暮らしが楽になるとでも?推奴(チュノ)師に捕まるに決まってる。逃げ延びても一日三度も飯は食えねぇんだよ!」
奴婢の男がパンチャクの頬を叩きました。パンチャクは地面に倒れてしまいました。
「死んだつもりで何も考えずに生きるの。考えちゃだめ。わかるわ。お母さんもそうやって生きてきたの。でも母さん生きてるでしょ?」
「・・・送ってやれ。見つかったときは散歩をしていたとうまく言いつくろうんだ。食べて寝るを繰り返していればいずれ死ぬ。それが人生ってものだ。」
パンチャクを叩いた男はそう言うと立ち去りました。
チョボクが同情して泣いているとオッポクはパンチャクを助ける決心をしました。
チャッキの隠れ家。
チャッキはおいしそうに飯を食べていました。チェ将軍とワンソンはチャッキの前に侍らされていました。
「イボゲチャッキ兄貴。」
チェ将軍はチャッキに話しかけました。
「“イボゲ”は余計だ。」
チャッキは言いました。
「数日間滞在するから食事と寝床を頼む。兄貴。」
「テギルを早く呼べ。すぐに殺したい。」
「連絡したらすぐに来る。」
「そうだ(クロッチ)。そうだ。飯も食ったしやるべきことでもするか。テギルと決闘したのは暑い夏の日だった。」
チャッキは汁を飲み混むと短刀を抜きました。
「冬だったのでは?」
「ああ!そうだった(クロッチ)。そうだった。冬だ。テギルがチョン・ジホに殴られた後俺のところに訪ねてきたんだ。武術を習いたいというから教えてやったんだ。」
回想シーン。
人々は通りでテギルとチャッキを取り囲んでいました。チャッキは獣の皮をまとっていました。
「俺は何一つ習ってないが。礼を言うぞ。」
テギルはタバコを持った手で髪をかき上げました。
「そうだ。そうだ(クロッチ)。礼は当然だ。感謝してるやつが独立を?人生は短いぞテギル。俺にかかってこい。」
「その短い人生を俺が終わらせてやる。え?」
テギルとチャッキはにらみ合うと殴り合いをはじめました。チャッキはすぐにテギルを倒しました。
「脚の生えたオタマジャクシが、ヒキガエルに挑んだのさ。テギルは負けた。」
「テギル。上下をはっきりさせると国が安定する。」
チャッキはテギルを見下しました。
「すんませんでした。俺が兄貴に勝てると思ってました。」
「独立などやめて俺のもとに戻ってこい。学ぶことはまだ多い。」
「もちろんですとも。兄貴のもとへ戻りるよ。はっはっは。」
「そうだ(クロッチ)。そうだ。そうだ。しっぽを振れ。」
「あ〜こうか?あはははははは。」
「たかが推奴(チュノ)師として生きてはならん。漢陽を牛耳る猛者になるのだ。昼の国王は宮殿にいるが俺たちは夜の国王だ。」
「兄貴に忠誠を誓うよ。うはははは。」
「うはははは。はっはっはっはっは。」
チャッキはテギルに背を向けました。テギルは短剣を抜くとチャッキの耳を斬って去りました。
「耳を斬られたから俺の負けだと皆は思ってる。人生は噂ひとつで終わることもあるんだ。そして俺は漢陽を去った。」
チャッキはチェ将軍とワンソンに語り終えました。
チェ将軍は痛そうな表情を浮かべていました。
「テギルの話と正反対だ。私は自から耳を切って命乞いしたと来てるぞ。」
チェ将軍が正直に言うとワンソンはチェ将軍の腕を引っ張りました。
「うーん。お前らの耳も切ってやる。」
チャッキは剣を抜いたまま立ち上がると二人に近寄りました。
「アイゴ兄貴。俺たちはいつでも兄貴の味方ですよ。」
ワンソンはチャッキの機嫌をとりました。
「そうだろう(クレ)。そうだろう。ゆえにお前から切る。」
「いい加減にしろ。テギルが来たら怒るぞ。」
チェ将軍はチャッキに言いました。
「テギルが来たら両耳を切ってやるさ。」
「おお兄貴兄貴。やめてくれ。やめてくださいよぉ。」
ワンソンは泣き出しました。
「大丈夫だ。耳を切ったくらいで死ぬか。」
「ああ、アイゴー。」
「おじさん!」
突然扉が開き少女が納屋の中に入ってきました。
「テギルおじさんは?」
「まだ来てないぞ。なぜ?」
チャッキは少女に言いました。
「おじさん!私を覚えてる?」
「ああお前だったか。もちろん覚えてるとも!」
ワンソンは少女のことを思い出せなくても知っているふりをしました。
チェ将軍も少女に微笑みました。
王宮の一室。
イ・ギョンシクはパク・ジョンスと一緒にいました。その部屋に官職を得たファン・チョルンが入ってきました。
「ソン・テハを逃がした者がいるとか。」
ファン・チョルンはイ・ギョンシクに言いました。
「調査中だ。」
「全員急所をやられたそうです。訓練を受けた武人ならおそらく清の武人でしょう。狩りに行きます。」
「早耳だな。」
「狩場を包囲するのですか?」
「もう下がれ。」
「狩場を包囲するのは間違いです。ソン・テハは狩りに行きません。」
宿屋。
「私は狩りに行きません。」
テハはヨンゴルテに言いました。
「どうしてだね?」
「すぐに出発します。」
「すぐに?」
「彼らは今、狩りに誘った理由を考えているはずです。相手が探っている今が好機です。」
王宮の一室。
「兵力を一か所に集め悠々と逃げるつもりです。私に任せてください。」
ファン・チョルンはイ・ギョンシクに言いました。
「自重しろ。まだ状況を把握できていない。」
「左相大監(チャサンテガム)が失敗したので私が失敗を取り戻します。約束をお守りください。ソン・テハの事態は一刻を争います。」
「使臣館周辺はすでに監視している。」
「監視の目を抜けられぬ奴ではありません。すぐに兵士を使臣館に配置すべきです。」
「そなたは強情だな。」
「意地を貫けとおっしゃったのは大監(テガム)です。」
宿屋。
「ソン将軍と再試合しようと準備していたものだ。」
ヨンゴルテ将軍は幅広の刀を箱から取り出しました。
回想シーン。
昭顕世子(ソヒョンセジャ)を清に送ることを拒んだテハはヨンゴルテ将軍と対峙していました。
「お前が勝てば部下を生かしてやる。私が勝てばお前は何をしてくれる?」
ヨンゴルテの剣の切っ先がテハに向けられました。
「私はお前のような荒くれ者に負けない。」
テハはヨンゴルテをまっすぐ見つめて言いました。
「何だと!朝鮮の剣術とやらを見せてもらおう!」
ヨンゴルテはテハに襲い掛かりました。
テハとヨンゴルテの戦いは互角になりそれぞれ傷を負いました。
「朝鮮の武人を侮辱してすまない。」
「荒くれ者と言ったことを謝ります。」
テハとヨンゴルテ将軍の間に武人としての尊敬の念が芽生えました。
「王孫と清へ行こう。勢力を大きくしてから王座に据えればよい。」
ヨンゴルテ将軍はテハに言いました。
「王孫様を捜し出してら邸下の鳳林大君(ポンニムテグン)に会って恩赦を請いたい。」
「世子に会うだと?」
「まずは王孫様の安全を確保せねば。」
「よかろう。行ってこい。待っているぞ。」
ヨンゴルテ将軍が言うとテハは発ちました。
「準備はできているか?」
ヨンゴルテ将軍は部下に言いました。
「はい。」
「密かに尾行するのだ。どんな手を使ってでも王孫を連れて来い。」
夜の山中。
最期にチョン・ジホが来ていた赤い服を身に着けたテギルは石を積み上げジホの墓を作っていました。
「兄貴。最近の俺は泣きすぎた気がするんだ。涙が枯れてしまったようだ。俺も兄貴のように低俗な人間になるかもな。これからヨジュに行かなければならない。捕校(ポギョ)どもがオンニョンを追っているからだ。だがすぐに戻るよ。ファン・チョルンを殺したら、兄貴をもっと日当たりのいい場所に移してやる。動かないで待っていろ。」
テハは城壁の前で立ち止まり壁をよじ登りました。
テギルも同じように壁を登り漢陽を脱出しました。
石堅(ソッキョン)を背負っているオンニョンは街で捕校(ポギョ)に呼び止められました。
「待ちなさい!」
捕校(ポギョ)はオンニョンを追いかけました。
オンニョンは靴が脱げて転んでしまい地面に両手を突きました。捕校(ポギョ)と兵士はすぐにオンニョンを取り囲みました。
「両班の女に無礼ですよ。」
オンニョンは捕校(ポギョ)たちにいいました。
「なぜ逃げた?」
「放せ!」
「潔白ならすぐに放免する。」
捕校(ポギョ)はオンニョンの首に剣を突きつけました。
テギルは走ってオンニョンの後ろを通り過ぎかけて何かに気が付きました。
テハも通りを走っていました。
藁が敷かれた部屋(おそらく役所の馬小屋)。
「国の衰退の兆しだ。逃げた奴婢がうろうろしている。」
テギルはテハをにらみ上げました。
「お前は帰れ。これは私がやるべき事だ。」
「貴様が言える立場か。国中で王孫だか石堅(ソッキョン)だかを捜しているのに、それをほったらかしにして名分ある死を選んだくせに。」
「あの子は王孫である前に私の息子だ。」
「結局は王の孫だ。お前の孫じゃない。王孫と知ってたらここまで来なかった。」
テギルは行こうとしました。テハはテギルの肩を掴むと殴り合いがはじまりました。テギルとテハは拳を固めて対峙しました。
役所。
「なぜ逃げたのだ?」
役人はオンニョンに尋ねました。
「罪のない者を捕らえた理由を女人に言うのが先ではありませんか?」
「お前が質問に答えれば済むことだ。身元を言え。言わぬか!」
「オモク村のキム・ソンファンの妹、キム・ヘウォンです。私の家は近所でも徳の高い両班だと自負しています。実家に帰る女人をなぜ罪人にするのですか?」
オンニョンが答えると役人の部下が上司に耳打ちしました。
小屋の中。
「お前に付き合っている暇はない。」
テハはテギルに言いました。テギルはテハに殴りかかりました。
「おい奴婢よ。ひとつ教えてくれ。お前が救おうとしているのは国王の孫か?オンニョンか?」
テギルとテハは掴み合いました。
「言ったはずだ。私はオンニョンなどという女は知らぬ。」
「ふっ・・・貴様も下劣な両班と同じだったか。」
「貴様は関わるなと言ったはずだ。」
「お前は自分の仕事をしろ。俺は自分の仕事をする。」
感想
推奴(チュノ)18話もとても面白かったです。あらすじが読めない韓国ドラマは久しぶりです。何かやらかすと期待していたチョン・ジホがここで死んでしまって残念です!ジホを演じているソン・ドンイルさんの口は本当に臭そうですね・・・。あの俳優さんをはじめて見たときには何て臭くて嫌な感じのおじさんなのだろうと思ったものでした。しかしチュノでのソン・ドンイルの演技は他のドラマで見た役よりも素晴らしいです。
驪州(ヨジュ)という地名はソウルの南東50kmほどにある現在も実在する市のようです。 神勒寺(シルルクサ)に江月軒というドラマの中に出てきた狎鴎亭(アプクジョン)によく似た川沿いの楼閣がありますね。この寺は韓ドラの薯童謠(ソドンヨ)で新羅のソンファ公主が隠れていた寺によく似てますね。
そして18話からはテギルの武術の師匠、チャッキが出てきました。チャッキは「クロッチ、クロッチ」と言葉を二度繰り返すピエロの役回り。腕っぷしの強いテギルもゴロツキの素人だった時期があって短剣の使い方はチャッキに習ったと思わせる演出がありました。
テギルとテハは同時にオンニョンを捜して「この野郎!」と動物の雄同志の戦いに(笑)ドラマではかっこよく見えますけれど、本質的には雄が雌をめぐっての戦いですね。テハ役のオ・ジホは演技が下手なのかセリフが棒読みで・・・表情も一通りしか無いので日本で言えば舘ひろしみたいな大根役者の部類でしょう。オ・ジホは「イニョプの道」でも割とへたっぴだったヨン。この手の役者さんって、やっぱり感情の機微に疎いのかなぁ。
関連リンク
- チュノ1話のあらすじと感想
- チュノ2話のあらすじと感想
- チュノ3話のあらすじと感想
- チュノ4話のあらすじと感想
- チュノ5話のあらすじと感想
- チュノ6話のあらすじと感想
- チュノ7話のあらすじと感想
- チュノ8話のあらすじと感想
- チュノ9話のあらすじと感想
- チュノ10話のあらすじと感想
- チュノ11話のあらすじと感想
- チュノ12話のあらすじと感想
- チュノ13話のあらすじと感想
- チュノ14話のあらすじと感想
- チュノ15話のあらすじと感想
- チュノ16話のあらすじと感想
- チュノ17話のあらすじと感想
- チュノ18話のあらすじと感想
- チュノ19話のあらすじと感想
- チュノ20話のあらすじと感想
- チュノ21話のあらすじと感想
- チュノ22話のあらすじと感想
- チュノ23話のあらすじと感想
- チュノ24話のあらすじと感想
- チュノ全話24話の詳しいあらすじとネタバレ感想(総合)
- 石堅(ソッキョン=慶安君=李檜)は昭顕世子の息子で世孫-波乱万丈な王子の生涯: 朝鮮の歴史