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チュノ推奴19話の詳しいあらすじネタバレ

チュノ19話 -別れの決意

チュノ 韓国ドラマ

目次

あらすじ詳細

イ・テギルとソン・テハは小屋の中で決闘をしていました。テギルは髷にチェ将軍の髷留めを差していました。
「お前に付き合っている時間は無い。」
ソン・テハはテギルに言いました。テギルは無言でテハに殴り掛かりました。二人は腕を掴み合いながら睨み合いました。
「おい貴様。教えてくれ。貴様が救おうとしているのは国王の孫か?それともオンニョンか?」
「言ったはずだ。私はオンニョンという女は知らぬ。」
「ふっ・・・貴様も醜い両班どもと同じだったか。」
「関わるなと言ったはずだ。」
テハの腕が震えました。
「貴様は自分のやるべき事をしろ。俺も自分がすべきことをする。」
テギルとテハは掴み合っていました。
役所。
「オモク村のキム・ソンファンの妹、キム・ヘウォンです。」
オンニョンは石堅(ソッキョン)を背負いながら地方長官の質問に答えていました。
「オモク村か・・・。」
長官はつぶやきました。
「私の実家は近所でも徳の高い家です。里が帰りする女人をどうして罪人扱いするのですか。」
「その村は確か・・・。」
長官の部下が上司に耳打ちしました。オンニョンは視線を左右に動かすと再びまっすぐ長官を見つめました。
「チュノ師に刺されただと?族譜の検証結果はどうだ?」
長官は驚きました。
「まだ調査中ですが族譜を買ったようです。この女は婚礼の日に逃亡したとか。」
部下は答えました。

テギルとテハはまだ掴み合っていました。
「役所を甘く見ているのか?」
テハはテギルに言いました。
「貴様は自分の心配でもしてろ。」
テギルは不敵な笑みを浮かべるとテハに襲い掛かりました。テハはテギルを背負い投げるとテギルは逃げました。テハは槍を持ちテギルを追いかけました。
「そちは婚礼の日に逃げたそうだな。」
長官はオンニョンに尋ねました。
「女人に“そち”とは無礼ではありませんか。」
「婚礼の日に逃げた者にどうして子がおるのだ。」
石堅(ソッキョン)はオンニョンの背中にしがみ付いていました。
「無礼だと言っています。」
「また両班の真似をするのか?兄の名はキム・ソンファンだそうだな。何が徳の高い両班だ。キム・ソンファンは・・・あぅっ・・・・!」
長官が言い終えないうちに天井から男が飛び降りてきて長官の首に短刀が突きつけられました。部下は目を丸くして驚きました。
「貴様何者だ。顔を見せろ。」
長官は男に言いました。
「顔を見たら怖くて小便を漏らすぞ。女を解放しろ。」
テギルは長官を脅しました。
「役所で騒ぎを起こして無事に済むと思うなよ?」
「早く解放しろ。おい。長官の旦那。たかが地方の長官で人生終わらせたいか?長生きしたいだろ?解放しろ。」
「何を言うのだ。援軍を呼びこやつを捕らえよ!命令に従え!」
長官は兵士に命じました。十人ほどの兵士が槍を持ちながらうろたえていました。
「こいつの首が飛んでもいいのか!」
テギルは怒鳴りました。
「包囲しろ!」
長官が命じると兵士たちはテギルに襲い掛かりました。そこに広刃の長刀を持ったテハが現れ兵士たちをかく乱しました。テギルは兵士を飛び越えオンニョンの前に降り立ちました。テギルはオンニョンの顎に触れると再び兵士と戦いはじめました。テギルとテハは兵士と長官を倒してしまいました。
「役所で脅しは通じない。役人の多くは命よりも名分を重んじることを忘れるな。」
テハはテギルに言いました。テギルはテハを睨んでいました。オンニョンはただ驚いていました。
「どういうことですか?」
オンニョンはテハに言いました。テギルは少し離れたところからオンニョンを見守っていました。

テハは石堅(ソッキョン)を抱きオンニョンを導きながら逃げました。テギルもオンニョンとテハと行動を共にしました。
「今逃げてもすぐに捕まる。日没まで隠れる所を探そう。」
テハは塀に身を隠しながらオンニョンに言いました。
夜になりました。

妓楼。
「そなたの盃はひっくり返せても世の中は覆せない。飲みなさい。」
チョ先生はイ・ギョンシクの言葉を聴きました。妓生の女がチョ先生に酒を注ぎました。チョ先生は盃を手に持つと逆さに返しました。
「盃すら返せなくては世の中も変えられません。ソン将軍のところへ行きます。」
「奴婢のソンとやらはもはや生きてはおらぬ。」
「どういう意味だ?」
「察しが悪いな。」
「あり得ません。刑曹で判決が出たら朝廷へ報告が送られる。それだけの手続きを一日ではできません!」
「奴婢を一人殺すのにそのような手続きは不要ですわ。」
妓生の女は酒の入った茶器(どう見ても茶器でした)を手に持ったまま白い歯を見せてチョ先生に微笑みました。
チョ先生は盃を手で払いのけました。
「酒をつげとはいっておらぬ。」
「ひとつ尋ねたい。真心(チンシン)からそなたに従う者はいるのかね?誰かの陰で大きくなった者は生涯その陰から出られない。そこに同志の名前を書け。過去はすべてさらけ出してあなたと私で再出発しよう。今後はあなたが巨木となりその陰に人を集めるのだ。」
イ・ギョンシクはチョ先生を誘惑しました。
チョ先生は妓生から筆を受け取ると「一」という文字を書きました。
「答えになりますかな?」
「あなたを買いかぶっていた。帰りなさい。ソン・テハも死に雲住寺に集まっていた儒者も皆死んだ。国を動かすことが子どもの遊びのように簡単だと思ったのか?家に帰り生涯無名の儒者で甘んじるがよい。チャンや。お見送りしろ。」
イ・ギョンシクは立ち上がると部屋から出ていきました。
「三十両あれば旅費は十分ですね?」
女将のチャンはチョ先生に金の入った巾着を投げました。
「貴様。私をバカにしておるのか!」
チョ先生は怒りました。
「私にはあなたを尊敬する義務があるのですか?腐敗した朝廷では官職に就かないと言ったそうですね。何度も科挙に落ちた自分を慰める言葉ですわ。」
「黙らぬか!」
「世の中に認められない恨みのため人を集めたというわけですか。」
「・・・・・・。」
チョ先生は顔を背けました。
「左相(チャサン、左議政)大監(テガム)は長い間人材を探しておられました。なぜ先生を処刑せずここに呼んだと思いますか。大監(テガム)を翼にして志を果たせばよいのです。尊敬されるためには立派な志だけでなく、力が必要です。」
チョ先生は新しい紙を敷き直し震える手で筆を持ちました。墨が紙に滴りました。チョ先生は水原・・・と文字を書き始めました。
テギルとテハとオンニョンは納屋の中に隠れていました。オンニョンは石堅(ソッキョン)を膝の上に抱いていました。
「どうしてですか。あの日から行方がわからなかったのに二人同時に現れるとは・・・。」
「暗く成ったら漢陽(ハニャン)に戻る。」
テハが言いました。
「笑わせるな。行くわけが無い。虎どもが口を開けて待ってるぞ。」
テギルは藁を手に遊ばせながら言いました。
「チョ先生がどうなったか確かめないと。」
テハは言いました。
「どうなったのか・・・先生に何かあったのですか?」
オンニョンはテハに尋ねました。
「状況次第では世子に石堅(ソッキョン)様の赦免を請う。」
テハは真面目に言いました。
「わけのわからないことを言わずに隠れて生きろ。」
テギルはテハとは視線を合わせず手に持っている藁を弄んで気を紛らわせていました。
「お前には関係のないことだ。」
「そこらじゅうで捕校(ポギョ)たちがお前らのことを捜しているんだぞ。夕立を避けたら月岳山(ウォラクサン)へ向かえ。安全な場所がある。命を粗末にするな。」
「・・・・・・。」
テハは視線を外に向けていましたがちらりとテギルを見ました。
「旦那様(ナウリ)。どうして返事をなさらないのですか。何日も戻らないので悪いことが起きたのだと思いました。王孫様をお兄様に預けて・・・旦那様を捜しに行くつもりでした。ご無事で安心しましたが、私は旦那様のそばにいる資格がありません。王孫様をお渡ししたら去ろうと思います。」
沈黙していたオンニョンが重い口を開きました。テギルはオンニョンの“お兄様”という言葉を聴いて一瞬動揺しましたが平静を装いました。
「夫人。」
テハは何か言いかけました。
「チッ・・・!」
テギルは気配を感じて短刀を抜くと扉の隙間から外を警戒しました。
「捜索だ。」
テハは言うと三人は姿を消しました。槍を持った兵士が小屋の中に入り藁の中を調べました。テギルたちは屋根裏に上って隠れていました。テギルは着地するとテハから石堅(ソッキョン)を任されました。テハはオンニョンを抱いて地上に降ろしました。テギルは愛らしい石堅(ソッキョン)に戸惑いました。
「王子様を・・・・・・。」
オンニョンはテギルが抱いていた石堅(ソッキョン)を抱きました。オンニョンは伏し目がちに何度もまばたきをして気まずそうにしました。
「人がいた気配を消さないと。」
テハは言いました。テギルは戸惑いを隠せずに外に出ていきました。

昼間の川辺。
二人の両班は妓生を侍らせ小さな宴を開いていました。奴婢のチョボクは川魚を焼いていました。
「お前たち。早く魚を捕まえろ。」
両班の男は奴婢に命じました。
「わかりました。旦那様。」
オッポクとクッポンは川の中で主人に頭を下げました。
「いまのうちに食っておけ。月末には棺桶の中だ。」
クッポンは憎しみを露にしました。
「今月の末にはすべて終わる。」
オッポクは屈辱に耐えていました。

回想シーン。
夜の奴婢たちの集会所。
「今月の末に巨事(コサ)を行います。」
“あのお方”はオッポクとチョボクたちに言いました。
「大きなことをするって意味だ。」
奴婢の一人が言いました。
「サダンにいる世話人の男も“コサ”と呼ぶよな?」
「あはははは!」
「仲間は増えますか?」
オッポクは正座をしたままあのお方に尋ねました。
「数日後に腕の立つ奴婢が集まってきます。今月の末に宣恵庁(ソネチョン)を襲い掌隷院(チャンネウォン)に火をつけます。」
あのお方は言いました。

川床。
「宣恵庁(ソネチョン)は宮殿の穀物や材木が集まる所で掌隷院(チャンネウォン)は奴婢の証書がある所だが、本当に火をつけるのか?」
クッポンは不思議そうにオッポクに言いました。
「戦争だ。」
オッポクは腹をくくりました。

回想シーン。
「王宮の食糧が底を突けば、役所の搾取に耐えかねた民が暴動を起こします。掌隷院(チャンネウォン)が燃えたら各官庁に隷属する奴婢が内部から加勢します。内と外から攻めれば王宮の塀を壊すのは民家の垣根よりも簡単です。」
あのお方は奴婢たちに言いました
「なるほど。両班どももおしまいだなその後毎晩俺たちの代わりに両班が縄をなうのだ。」
奴婢の一人は嬉しそうに言いました。
「巻き割りもだ。」
「ははははは!」
「まだあるぞ。畑仕事もだ。」
「糞の始末もだ。」
「わっはっはっはっは!」
「冬に魚を捕らせてやる。」
「わっはっはっはっは。」
奴婢たちは自分たちが受けた仕打ちをそのまま返したいと夢に描きました。
あのお方は奴婢たちが嬉しそうにしている様子を見て彼らに合わせて微笑しました。
「あの。まず最初にしたいことがあるのですが。」
オッポクが深刻そうに口を開きました。
「どうぞおっしゃってください。」
あのお方は丁寧にオッポクに言いました。
「あの・・・その・・・・・・。他家の奴婢を救い出したいです。」
オッポクはチョボクを気に掛けながら言いました。
「今回の標的は代々武官をしている家です。家の奴婢も軍律で裁き殺しもしました。そのような家を狙ってこそ我々の士気も上がります。」
「ですが・・・その娘があまりにも不憫で。」
「その娘だけでしょうか。今後の事に成功すれば同じ境遇の奴婢が朝鮮の主人になれます。」
あのお方が言うとチョボクは希望を抱きました。
「わかりました。」
オッポクは引き下がりました。

川床。
「その奴婢の娘って一体誰なんだ?」
クッポンはオッポクに言いました。
「お前がいる家に売られたパンチャクという娘だ。」
「確か牝牛一等と交換された娘か!」
「あまりに不憫だから旦那を殺してやりたいと思う。」
「ご主人様を!?」
「しっ!」
オッポクは人差し指を口に当てました。
「俺のご主人様はやめとけ。俺が殺す。」
クッポンは妓生を抱きながら笑っている主人を見ました。

夜の妓房。
「実に力強い字だ。当代の名筆(めいひつ)だな。主上はあなたのような人材を起用したがっている。推薦してやれ。」
イ・ギョンシクは紙に書かれた名簿を見て満足しました。
「はい。当庁はいつにしますか?」
チョ先生の脇に座っているパク・ジョンスは言いました。
「明日からがよい。することが多いからな。はっはっはっは。」

小屋の中。
テギルたちはまだ先ほどの小屋に隠れていました。
「行こう。逃げるなら人の少ない今がいい。」
テギルはテハに言いました。
「漢陽とは方向が違う。別々に出よう。」
テハは言いました。
「わけのわからないことを言うな。王孫だとバレたら同志は皆死ぬんだろ?だからその子は隠しておけって言ってんだ。」
「お前とは議論する余地は無い。我々とは進む道が違う。」

「私もここを出ます。」
オンニョンが口を開きました。
「どこへ行くのですか?」
テハはオンニョンに言いました。
「お兄様が心配です。それに既に言いました。もう一度言えとおっしゃるのですか?」
「別の時にしてください。」
「先延ばしにしても解決しません。既に“旦那様(ナウリ)”も知っていることです。ただ隠して避けているだけです。違いますか?私の名前は、オンニョンでした。」
「そんな名前の女人は知らぬ。」
「オンニョンは、もう死にました。そして・・・キム・ヘウォンとして生き返りました。」
オンニョンが言うとテギルは小屋の外に出ていきました。
テギルは夜空を見ていました。
「旦那様を騙しました。奴婢という言葉が恐ろしくて、口にする勇気がなかったのです。」
「聞きたくない。私はオンニョンなどという女人は知らぬ。」
「もうご存知ではありませんか。私がお慕いした方は・・・あの方は高官になり世の中を変えることが夢でした。身分の分かれていない平等な世の中を、一人の女のために国を変える勇気を持っていました。その人の愛が、私にはもったいないほどでした。」

「キム・・・ヘウォン。」
テギルは地面に木の棒で文字を書いてつぶやきました。

「あの方はもう亡くなったと思ったのに忘れられませんでした。その後、旦那様と出合いました。婚礼を挙げたのは、旦那様が両班だからではありません。でも旦那様は両班です。だから私が去るべきです。」
オンニョンは石堅(ソッキョン)を抱いて立ち上がりました。オンニョンの目には涙が溢れていました。
「どうかいい世の中を作ってください。その世の中は、身分の違いが・・・
人の心を切り裂くことはないでしょう。私のような者がいない世の中にしてください。短い間でしたが旦那様に罪だけ犯して去ります。王孫様もお元気で・・・。」
オンニョンは石堅(ソッキョン)をテハに渡しました。オンニョンは石堅(ソッキョン)の頬を指で撫でると小屋から出ていきました。テハは衝撃を受けて立ち尽くしていました。

オンニョンはテギルを振り返り、そして去りました。

小屋に残ったテハはオンニョンが身分の壁で苦しんでいたことを思い出していました。
「自分が変われば、世の中も変わるのです。」
テハはすぐに小屋から飛び出すとオンニョンの肩に触れました。
「待っていてください。」
「何をですか?」
「民の苦しみを悟ろうとはしましたが、奴婢の身分の差をなくすことまでは考えていませんでした。」
「無理なさらないでください。」
「奴婢になっても考えが及びませんでした。時間がかかっても私が考えを正すまでそばにいてくれませんか?約束したはずです。互いの義理を守ると。去るのは義理ではありません。」
テハはオンニョンの手を取り気持ちを込めて言いました。テギルはうなだれて小屋に入りました。

テハとオンニョンを塀の外から見張っている男がいました。

深夜の役所。ファン・チョルンのいる部屋。
「何の御用でしょうか。」
武官のなりをしたファン・チョルンはイ・ギョンシクに言いました。
「ふっふ・・・娘婿を訪ねる義父に理由は必要かね?」
「大監(テガム)にそう言われると鳥肌が立ちます。」
「深い溝があるようだ。」
「ご用命は何でしょうか?」
「そちには水原(スウォン)へ行ってもらいたい。謀反の首謀者は承政院(スンジョンウォン)」のイ・ジェジュン大監だった。」
「禁府(クムブ)の仕事では?」
「今後はそなたは自分の出世を考えるだけでよい。まずは功を立てろ。前左議政イム・ヨンホの残党を討て。そうすれば朝廷では王孫の名を出す者はいない。」
「私はソン・テハと王孫の捜索をしています。」
「二人とも生きているが私の目的は既に果たした。」
「失礼しました。」
部屋に部下が入ってきて下がろうとしました。
「いや。報告しろ。」
ファン・チョルンは部下に命じました。
「両班の妹を名乗る女が検問で捕まりましたが男二人と逃亡したそうです。」
部下はファン・チョルンに報告しました。
「武官ともあろう者が情けないことだ。」
ファン・チョルンは言いました。
「人相書きの奴婢のソンと推奴(チュノ)師のイに似ています。」
部下は付け足しました。
「二人は一緒にいたのか?」
「そのようです。女は四歳ほどの幼児を連れており・・・。」
部下が報告しているとイ・ギョンシクも反応を示しました。
「射手を含む部隊を作れ。驪州(ヨジュ)へ行く。」
ファン・チョルンは立ち上がりました。
「水原はどうするつもりだ?」
イ・ギョンシクはファン・チョルンに言いました。
「水原へは行きません。」
「命令だぞ。」
「私は官職も名前も失いました。この戦いにケリを付け私を取り戻します。」

夜の誰もいない街。
テギルは石堅(ソッキョン)を抱いているキム・ヘウォンを連れて移動していました。テギルも一緒について来ていました。すると奴婢のような身なりの男二人が行く手を遮りました。
「捕盗庁(ポドチョン)だ。号牌(ホペ)を見せろ。」
男が言うとテハは男の肩を殴りました。テギルもすぐに足で蹴りました。男は笛を吹いて仲間を呼び寄せました。テギルたちは走って逃げました。

役所。
ファン・チョルンは役人、オ捕校(ポギョ)を呼び寄せました。
「町で一番詳しいと聞いて呼んだ。推奴師のイという者を知っているか?」
「イという者は、イ・テギルですか?」
オ捕校(ポギョ)は小さく振る舞い丁寧な仕草で尋ね返しました。
「話せ。」
「はい。」

しばらくしてテギルたちがアジトにしていた宿屋の二人の女将とパン画伯が役所に連れてこられました。
「推奴師のイ・テギルと奴婢ソン・テハが処刑場から逃げた。二人は仲間としか考えられぬ。知っていることをすべて話せば褒美を与えるが、隠したことがあれば厳罰に処する。いいな?」
ファン・チョルンは三人に言いました。
「ああ、思い出したことがあるのですが。」
パン画伯が真っ先に口を割りました。
テギルたち三人は走って逃げていました。
「待てーーー!」
捕校(ポギョ)と兵士がテギルたちを取り囲みました。テギルは素手で追っ手を倒していきいました。テハは刀を使い槍を持つ兵士と戦いました。
「あいつは腕は立つが俺の言うことは聞かない。月岳山(ウォラクサン)の霊峰へ行きチャッキを訪ねろ。わかったな?月岳山(ウォラクサン)の霊峰だ。」
テギルはヘウォンに言いました。
「若様(トリョンニ)・・・。」
ヘウォンはテギルに何か言いたげでした。
「必ず生きろよ。」
テギルはヘウォンから石堅(ソッキョン)を預かると走り去りました。
「若様(トリョンニ)・・・・・・。」
「王孫様は?」
テハはヘウォンに駆け寄り手を取って走りました。

テギルは石堅(ソッキョン)を抱えて山の中を月岳山(ウォラクサン)目掛けて走っていました。

クッポンは火縄銃を手に持ち四人の仲間を連れて進んでいるとファン・チョルンとその部下を見かけて塀の陰に隠れました。クッポンは恐ろしさのあまり思わず声を出しそうになり仲間の奴婢に口を塞がれました。ファン・チョルンは気配を感じてしばし立ち止まると犬の鳴き声と思い去りました。
「オッポクは?」
クッポンは仲間に尋ねました。
「糞をしてから追いつくって。」
「糞かよ。あのお方は?」
「先に行ってるはずだ。」
「うっ・・・・・・!」
クッポンは緊張のあまり吐き気を催しました。

オッポクはクッポンの家の主人を銃で狙っていました。白い寝間着姿のクッポンの主人はパンチャクを呼び寄せました。オッポクは事に及ぼうとする男を撃ち殺すと逃げました。パンチャクは悲鳴を上げました。

「こんな時に長々とクソをしているとは・・・驚いた!汗をかいているのか?糞を出すのに苦労したとか?」
クッポンたちの所にオッポクが駆け付けました。
「・・・・・・。」

宿屋。
「誰だ?誰だね?」
パン画伯は訪ねてきたソルファに言いました。
「おじさんこそ誰なの?」
「何だって?失礼だな。違うか?」
パン画伯はソルファに向かって握りしめた拳を上げました。
「違う。女将さん!ただいま!」
ソルファは大きな声を出しました。すぐに二人の女将が出てきました。
「ああ、おかえり!」
「ところで、あなた一人なの?」
「ええ。それで、テギルお兄様は帰ってきましたか?」
ソルファは女将に言いました。
「チェ将軍はどこに?」
チェ将軍のことが好きな女将は落ち着かない様子でソルファを引っ張って裏に連れて行きました。
「テギルお兄様はどこに?」
「チェ将軍はどこにいるのよ?」
「知らない。」
「どうして知らないの?」

「お前さん・・・おかしくなりそうだよ。アイゴ。捕盗庁(ポドチョン)に知らせるべきかな?」
パン画伯はもう一人の女将の腕を掴むと不安そうに言いました。
「なんてこと言うのよ!」
「テギルに関することはすべて知らせろと令監(よんがむ)が。」
「まったく正気なの?アンタには義理ってものがないの?お店を見ててよ。」

夜が明けました。
二人の女将とソルファは部屋で話し合いました。
「テギルお兄様は生きてるんでしょ?」
ソルファは女将に尋ねました。
「分からない。見た人がいないの。」
「誰も見てないなら生きてるわよ。」
ソルファは希望を抱いていました。
「生きてる姿も誰も見てないわ。」
「とにかく、ここにはもう来ないわ。」
「ねえ。チェ将軍はどうなったの?」
チェ将軍のことが好きな女将は身を乗り出しました。
「ある日姿を見なくなったの・・・。」
「どうしていなくなったの?誰かに捕まったの?」
「どこかへ行ったみたい。推奴師はやめると言ってたわ。」
「だったら、もうここにも二度とこないの?」
「時が来たら連絡するって・・・。」
「ここに?それともテギルさんに?」
「心配ないわ。チェ将軍ならきっと大丈夫よ。テギルお兄さまはどこに行くか言ってなかった?」
「生きていたらどこかに隠れているわ。」
女将が言うとソルファはテギルが月岳山(ウォラクサン)のチャッキに会えと言っていたことを思い出しました。
「女将さん。馬を貸して。お金ならあるわ。足りないだろうけど全財産なの。チェ将軍もワンソンお兄様もきっとそこにいるわ。」
ソルファが話している様子を障子に耳を当てながらパン画伯は盗み聴いていました。
「ちょっと静かに。」
女将は障子に映った影に気づいて扉を開けるとパン画伯が転がりました。
「ここで何をしているのよ!」
「何もしてないよ。人聞きの悪いこと言うなよ。」
「オ捕校(ポギョ)に言うつもりね?」
「俺だって男だ。口は堅いんだ。」

月岳山(ウォラクサン)のチャッキの家。
「チャッキおじさんはテギルおじさんと何かあったの?」
少女はチェ将軍に尋ねました。
「チャッキが捕盗庁(ポドチョン)に捕まりテギルが助けたんだ。」
「何の罪で?」
「テギルの密告によればチャッキが盗賊に盗品を渡した。」
「密告したのになぜ助けたの?」
「耳を切って詫びたんだ。」
「なんで?」
「盗品の中にテギルの家の権利書があった。」
「なんでそこにあったの?」
「チョン・ジホから南大門のケペッチョンが奪ったんだ。」
「その人は誰なの?」
「はぁ・・・・俺たちは忙しいんだ。明日話してやる。」

テハとヘウォンは霧の立ち込める森の中を歩いていました。
「旦那様。大丈夫です。信じられる人ですから。旦那様。すみません。王孫様をお守りできず。」
オンニョンは急ぐテハに必死で釈明をしていました。
「謝罪は不要です。あの者が何者かは知らぬが悪人ではなさそうです。」
「私もそう信じてます。」
「それに、あの者はあなたのためなら何でもする。」

役所。
旅装束ファン・チョルンは部下とともに役所に現れ武官を呼びました。
「見せろ。確かか。」
ファン・チョルンが命じると部下はテギルとテハの人相書きを見せました。
「そうです。あの者どもは何者ですか?」
「夜に現れたそうだな。」
「はい。城外へと追いましたが逃げられました。」
「場所は?」
「忠州(チュンジュ)と長湖院(チャンホウォン)の分岐点です。」
「分かった。」
ファン・チョルンたちは役所を出ました。

「二か所は方角が正反対です。」
部下はファン・チョルンに言いました。
「街で聞いただろ。月岳山(ウォラクサン)に知り合いがいると。忠州(チュンジュ)に向かっているはずだ。」
山。
テハとヘウォンが山を登っていると子どもの鳴き声が聞こえ駆け出しました。
「泣くなー。これ以上泣いたら承知しないぞー。泣くなー。」
テギルは石堅(ソッキョン)の扱いに困り果てていました。
「ああ・・・王孫様。」
ヘウォンは大事そうに石堅(ソッキョン)を抱きました。石堅(ソッキョン)はすぐに泣きやみました。
「ガキは逃げた奴婢より手が焼けるぜ。」
テギルが言うとテハはテギルを殴りました。
「王孫様に無礼だぞ。お前もこの国の民だろう。」
テハはテギルを叱りました。
「この地はな。この国の王さえもがあきらめた鬼の国だ。俺は東大門のイ・テギルだー!隠れているのはわかってる。さっさと出て来い!」
テギルはテハの暴力については気にせず山に向かって叫びました。すぐに山賊たちが現れました。
「安全だと言いながら盗賊の巣窟だったとはな。」
テハはテギルを見下しました。
「並みの盗賊じゃない。朝鮮一残酷な盗賊だ。殺した宮中の密使は数えきれない。」

テギルは山賊のアジトにテハたちを案内しした。
「チャッキー!やあチャッキー!」
テギルは叫びました。
「テギルーーー!はっはっはっはっは!」
チャッキは両手を広げてテギルを歓迎しました。

「テギルが来たか!」
チェ将軍の表情が明るくなりました。
「兄貴が?兄貴が来ると思ってたよ。」
ワンソンは飛び起きて外に出ました。

テギルとチャッキは再会しました。
「おーい。チャッキー。久しぶりだな。」
「久しぶりだなテギル。会いたかったぞ。」
「俺にか?」
「(テギルの)耳にだよ。切る。」
「右と左のどっちを?」
「両方だ。」
「やー。兄貴は欲張りだな。」
「人生の半分は欲張りで、残りの半分は貧欲だ。」
「やー!すごいことを言うなー!お釈迦様の言葉か?いつ切る?」
「嬉しいだろう?今すぐ切ろう!」
チャッキは言うとテギルに殴り掛かりました。テギルは倒れてしまいました。

感想

またまた今回も面白かったです。とても友達になれそうにないテギルとテハ、そしてオンニョンが行動をともにして山賊たちのアジトに行きました。まだテギルとチェ将軍とワンソンは直接再会はしていませんが、嬉しい場面でした。ソルファが行先を宿屋で漏らしたせいで・・・ファン・チョルンの知る所となったところは嫌な役回りでした。テギルとテハという恋のライバル同志が一緒に戦うシーンは特に男性の視聴者にとっては魅力的に感じられたことでしょう。オンニョンはテハに告白をしたことでやっと自分らしくなれました。でもオンニョンはお兄様がテギルにうっかり殺されてしまったことは知りません。あれはうっかりといいますか、キム・ソンファンが武器を持ってるテギルの手を握って自刃したので自害に等しいですが、キム・ソンファンも感情的になって自分の暗い人生を終わりにしたくて大事なオンニョンのことを忘れていたんじゃないかしら?<

ファン・チョルンは自立しはじめてイ・ギョンシクに初めて逆らいました。イ・ギョンシクはそんなことはお見通しといった感じでまだ余裕綽々です。ファン・チョルンの心はまだ子どもですね。だからこそ執拗にテハに執着する。そういった設定なのでしょう。

今回からオンニョンはやっとキム・ヘウォンとして生きられるようになりました。キム・ヘウォンという女性をすべて認めている人はテハしかいませんから。テギルはオンニョンがテハに認められたことで、他人の妻となった女性としてオンニョンを認識できるようになりました。がっくりとうなだれたテギル、可哀そうでしたが、オンニョンを心底愛してはいるものの、人妻となったことでもう手の届かない女性となってしまったことに男としてのあきらめも付いたような印象を受けました。だからこそテギルはテハと行動をともにすることができたといいますか、恋慕の情に支配されたままでは冷静ではいられなくなるところをクールに振舞うように心がけている健気なテギルでありました。でもテギルの心の中にはオンニョンのお兄さんを殺したという罪悪感が・・・あるかもしれなしい、ないわけがないでしょう。その件でテギルにはオンニョンと一緒になる資格がもう無いとも言えます。

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