王と妃 第160話 廃妃ユン氏の追放
あらすじ
成宗は王妃ユン氏に頬を引っかかれ激怒し自分の部屋に戻りました。王妃ユン氏は大妃に知られてはまずいと慌てました。内官たちは仁粋大妃に「どうかわたしを罰してください」と地面にひれ伏し小さくなりました。
「私は主上の母よ。主上がお病気ならば見舞いに行かねばならぬ。そこをどきなさい。そなたの罪は後でたっぷり問うわ。」
仁粋大妃は真っ暗に消された成宗の部屋に勝手に入りました。
「主上。母です。眠っておいでですか主上。暗がりの中ひとりでおいでになるとはなんと哀れなすたがですか。あっはっはっはっは。」
王妃ユン氏はイム・サホンが異動になったのでたいへん慌てて大王大妃に助けを求めるよう尚宮に連絡させました。
仁粋大妃は成宗の頬についたひっかき傷を見て笑いました。
「主上。悪寒がするのですか。脂汗をかいておいでとはだいぶ熱があるようですね。大丈夫なのですか主上。さすって差し上げますから動かないでください。はっはは。そのお顔はどうなされたのですか。手をどけてください主上。主上。爪の跡ではありませんか。」
「いいえ。今朝顔を洗う時に・・・。」
「間違いなく顔を引っかかれた傷です。大殿内官はおるか。昨夜の主上のお相手は誰なの?」
仁粋大妃は内官に問いました。ホン内官はおそるおそる寿康宮に行ったと答えました。
「中宮を廃妃とし追放なさい。私が廃位しましょうか?」
「明日・・・朝廷の重臣と相談してから・・・。」
「今夜追放するのです。都承旨を呼んできなさい。上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)と政丞を登庁させなさい。」
仁粋大妃は勝手に事を進めていきました。成宗は立場なく顔を伏せていました。
「主上を殺しかねない女です。これ以上一日たりとも宮殿に置いておくわけにはいきません主上。」
寿康宮。
「さぞうれしいでしょうね。ついにお望みがかなうのですから。あっはっはっはっは。あっはっはっは。」
王妃ユン氏は壊れました。
左議政のシム・フェは領議政のチョン・チャンソンに何があったのか尋ねました。チョン・チャンソンはきっと王妃が何かしでかしたのだろうと輿に乗り連れだって登庁しました。
ハン・ミョンフェも事態を悟っていました。
大王大妃ユン氏の弟ユン・サフンと側近キム・スオンも登庁しました。
貞熹王后(チョンヒワンフ)ユン氏は今回は王妃の味方する名目がないと王大妃(ワンテビ)に話しました。
チョン・チャンソンはハン・ミョンフェに事前に意見をまとめようと話かけました。ハン・ミョンフェは問題は王子だと言いました。
「とりあえず今日の修羅場を乗り越えて・・・。」
「よかろう。まずは目の前の火から消そう。」
孝寧大君はハン・チヒョンから連絡を受け口止めを要求されました。
「どうか大君は知らぬふりをしてください。」
「王室のことではないか。」
「黙認することが王子を守る道です。」
「上党君と政丞らは入りなさい。」
仁粋大妃は重臣を成宗の部屋に呼び入れました。
イム・サホンは王妃の実家の母に今回ばかりは助けられないと言いました。王妃の母は気を失いそうになりました。
成宗の部屋。
「昔の教えに・・・七去というものがある。その一つは子がない中宮は離縁だがこれは中宮に当てはまらない。しかし多弁な女は離縁。嫉妬する女は離縁という。よって王妃を廃位し平民に落としたいが意見を聞かせてくれ。」
成宗は重臣らに言いました。
「国保の座におられる方のことですのでふさわしくないと思います。」
チョン・チャンソンは言いました。
「殿下が七去をもとにご判断なされたのですからどうして私に異論がありましょうか。ただ・・・。ただ・・・王子の今後の処遇が心配です。」
ハン・ミョンフェは発言しました。
「中宮が王子を産めないときは側室の子を養子として世継ぎとするものです。王子の生母は王妃ですが今後は新しい王妃が王子の母となります。」
仁粋大妃は恐い顔で言いました。
「そこまでおっしゃるのなら私たちが案じることはありません。」
韓明澮は言いました。
「右相(ウサン、右議政)はどう思いますか?」
仁粋大妃は右議政に質問しました。
「ここまで来た以上迷ったりためらう必要はないと思います。」
右議政のユン・ピルサンは答えました。
「ですが殿下。太宗は元敬王后と仲たがいしたときでも離宮に閉じ込め塀を高くしました。それが最善の策だったのです。中宮を離宮に閉じ込めておくべきです。」
左議政のシム・フェは発言しました。
「中宮の不徳なふるまいは数知れません。いちいち数えたら両手でも足りぬ。中宮を廃位とし今夜中に宮殿から追放します。主上の王命が下さればすぐに実行し廃位を先祖の霊前に報告し民に知らせるのです。」
仁粋大妃は言いました。
大殿の前。
「王室の跡患を絶ったのです。ため息をつくことはありません!」
ユン・ピルサンは勝ち誇ったように大きな声で待機していた重臣らに言いました。礼曹判書のホン・ウンは「とるに足りぬ者でも夜中に追い出されたりはしません。ましてや中殿媽媽ですよ。中殿媽媽なのですよ・・・。アイゴー」と泣き崩れました。
成宗の部屋。
「主上。主上に今日、母は悪いことをしてしまいましたね。」
仁粋大妃は鼻水を垂らして涙を流しました。
「・・・・・・。」
寿康宮。
「媽媽・・・・・・。」
クォン淑儀は王妃ユン氏に声を掛けました。
「もう少し待ってちょうだい・・・。すでに心の整理はついたわ。せかさずとも出ていくわ。」
「しかし媽媽。今夜中に出ていけとの王命です。急いでください。」
仁粋大妃の側近のイム尚宮は退室を促しました。
「イム尚宮。本当に殿下がおっしゃったのですか。そのはずないわ。冷酷なお方ではないもの。最後の願いを聞いてちょうだい。宮殿を出れば二度と戻れぬだろうから殿下に別れのあいさつがしたいの。駄目なの?一目でいいから殿下に・・・。」
「すでに媽媽は平民になられました。」
クォン淑儀は王妃から顔をそむけました。
「罪人ユン氏はすぐに王宮を出よとの王命だ。」
部屋の外から兵士の声がしました。
「平民ですって?覚悟しなさい。王子が王位についたら必ず仕返ししてくれよう。」
「服をお着替えください。平民になられたのをお忘れなく。」
イム尚宮は冷たく言いました。
「いいわ。宮殿の外に追い出されるのだもの。こんな服は邪魔なだけよ。」
「媽媽。お取りいたします。」
チェ尚宮は泣きながら王妃に寄ってきました。
「いいえ。私がやるわ。この手で殿下をひっかいたのだもの。」
王妃ユン氏は白い絹の服に着替えました。
「クォン淑儀に頼みがあります。殿下にこれを渡してちょうだい。死者の遺言も聞くのだから王妃だったころの私の最後の頼みを聞いてほしいの。頼みましたよ。」
王妃はノリゲを置いて部屋を出ました。そこには両班用の小さな輿が用意されていました。
「これに乗っていくの?大きい輿だこそ。」
「申し訳ありません媽媽・・・・・・。」
内官たちは泣きました。
「大きな輿だこそ。この世で富貴栄華を極めた者は・・・死んであの世へ行くときは花飾りの喪輿に乗っていくそうね。仮にも王妃であった私が宮殿を出るというのに花飾りの喪輿より粗末な輿に乗るとは・・・。」
「媽媽。中殿媽媽。」
王妃つきの内官と尚宮は泣きました。
「何を泣いておる。平民なのだぞ。」
クォン淑儀は内官たちを叱咤して自分も廃妃ユン氏に同情しました。
「媽媽。私がお支えします。」
チェ尚宮がユン氏に駆け寄りました。
「私を哀れと思うなら王子に伝えてちょうだい。母は血の涙を流しながら花飾りの喪輿より粗末な輿に乗り宮殿を追い出されたと付け加えたり省いたりせずに今見たままその通り王子に伝えて・・・。殿下にも伝えてちょうだい。大妃様の矢のようなご催促を受け殿下にご挨拶できずに出て行ったと。体は去っても心はここに置いていくと。殿下・・・。」
廃妃ユン氏は泣きました。
成宗は自室で泣いていました。
廃妃ユン氏は宮殿を出されました。
王命の内容はこうでした。
「国の統治はまず国内から始めるもの。王妃の不届きな行いは国の盛衰に関わる故見過ごすことはできぬ。王妃ユン氏は側室の身分から一国の王妃となったがその不徳な行いは枚挙にいとまがないほどだ。よって成化15年6月2日。ユン氏を廃位し平民に引き下げる。」
ある日の大王大妃殿の庭。
仁粋大妃が輿を降りると側室たちが侍っていました。
「お祝い申し上げます。宮殿から悪鬼が消えまして誠に平穏ですわ。」
オム貴人は仁粋大妃に言いました。
仁粋大妃は厳しい顔のまま行きました。チョン貴人は言い過ぎだとオム貴人に言うと笑いました。オム貴人はチョン貴人に新王妃選びなのでふるまいに気を付けるよう言いました。
仁粋大妃は貞熹王后ユン氏に側室たちの中から新王妃を選びたいと言いました。
大王大妃ユン氏はお触れを出して市中から選ぶべきだと言いました。仁粋大妃は挑戦的に選んでみてください、あまり時間がありませんと言いました。
「王子の分別ができてからはきっと産みの母を探すはずです。その前に空位の中殿を冊立すべきです。」
仁粋大妃は部屋から出てくるとちらりとユン淑儀を見ました。
「父上はまだ観察使なの?」
「ええ。京畿道の観察使です。」
ユン淑儀が丁寧に答えるとオム貴人はチョン貴人にユン淑儀を警戒すべきだとささやきました。
宮殿の門には若い士大夫たちが座り込んでいました。
「殿下。夫婦は点が決めると詩経に書かれています。また礼記には位牌堂に報告後妻となるとあります。王妃とはご先祖が定め明の皇帝がお決めになった方なのです。」
「殿下ー。今両班家士大夫は廃位について理解に苦しんでいます。どうして王妃様を廃位なさったのですかー。王妃様は妻として立派に王子をお産みになり臣民は王妃様を敬ってまいりました。それなのに突然廃位なさるのは果たしてこれが正しいことといえますか殿下ー。」
「殿下ー。王妃様を平民に降格されるのはお取り下げくださいー。」
「捕らえよ!」
宮殿の中から兵士が現れ成均館の士大夫たちは捕まりました。
都承旨も承旨も投獄され政丞が黙って口を閉ざされていました。
「こんなとき徳彰(トクチャン)がいれば・・・。」
朝臣のひとりがつうびゃきました。
徳彰(トクチャン)とは、前の都承旨ヒョン・ソッキュの字です。イム・サホンと弾劾を受け官職から退きこの頃はピョンアン道観察使を務めていました。ゆえに廃妃ユン氏の支援勢力は宮中にいませんでした。
成宗は廃妃ユン氏のノリゲを手に取り放心していました。
廃妃尹氏の実家。
家のまわりから廃妃ユン氏に同情する民たちの泣き声が聞こえてきました。
「媽媽。なんとお労しい・・・。」
「皆帰らせてください。お母さん。あんなことをさせれば義母は私を殺します!」
仁粋大妃は王子が母の敵を討つといったので廃妃ユン氏を殺そうとハン・チヒョンに言いました。
「それでは・・・。」
「廃妃(ペビ)は宮殿を出される前に王子が王位に就いたら仕返しすると言ったそうです。だから王子が成長する前に廃妃を殺すのです。後患の根を絶つ為です。」
感想
やっと廃妃尹氏が平民に貶められました。成宗は廃妃尹氏を思って泣きの演技を見せて恋愛感情が残っていることを示唆していました。成宗には何の力もないのかドラマではまったくの空気です。歴史で聖君とされてるのに・・・なんだかおかしいですね。王が母をどうこうしたということは前代未聞のことなので仁粋大妃が暴れていても王は大妃を罰することができない風習なので大妃が威張り散らしていたのですね。朝鮮では親を罰せない風習が数々の悲劇を起こすのですね・・・。どう見ても悪行にしか見えませんけど。仁粋大妃は結局何がしたかったのか?自分の一族周辺の勢力に贅沢させたかったのでしょうか。成宗の味方も排除て何がしたいのかまったく理解できません。はじめは仁粋大妃の子飼いだったチェ尚宮やクォン淑儀が今回は廃妃ユン氏に同情を見せていました。