王と妃 第152話 投書事件
あらすじ
夜。
王妃ユン氏の母府夫人(ププイン)は娘の寝所を訪ね頼まれていたハングル文字の文書を娘に渡しました。
「媽媽。もう一度だけお考え直しください。」
「上出来です。サモルや。これを今夜中にクォン淑儀に届けて。わかっていない子ね。そなたは顔を知られておる。人を雇い監察尚宮(カムチャルサングン)の使いだと言わせなさい。」
王妃ユン氏は文書を侍女のサモルに持たせました。
王妃ユン氏は王子と自分が祈祷師にの問われているのだと母に言いました。王妃の母は大妃に相談してはというと、大妃ユン氏は王子を愛してないのでいずれ宮殿から王妃を追い出すつもりだろうと思っていました。府夫人は以前渡した(両班の自害用の)毒薬を返してほしいと言いましたが王妃は何かに使うつもりでした。
監察尚宮(カムチャルサングン)クォン淑儀の家。
「門を開けぬか。」
王妃の命を受けたサモルは男に文書を持っていかせました。男はクォン淑儀の門から出てきた奴婢に文書を届けるよう渡しました。
王妃ユン氏は部屋にチョン貴人を呼び席藁待罪をさせて詫びの気持ちを表しました。
「そなたにどう詫びればよいかわからないわ。」
クォン淑儀の部屋。
クォン淑儀(白髪のまじった女性)は文を読むと月山大君夫人に会いに行きました。
王妃の部屋。
「飲みなさい。体の中がすっきりするわよ。」
王妃ユン氏は煎じ薬をチョン貴人にすすめました。
「しかし媽媽。はちみつの上にふりかけた粉薬は何でしょうか。」
チョン貴人は怖くて薬を飲めませんでした。
「まさか毒を入れたとでも?中国(チュング)の薬を入れたのよ。産後の体調回復にいいの。飲んで。飲みなさい。私のと交換する?」
「媽媽。なんだか胸焼けがするので・・・。」
「チェ尚宮。湯呑を交換しなさい。」
「はい媽媽。」
傍で控えていた高齢のチェ尚宮は命令に従いました。
「なんて甘いの。さすが知異山(チリサン)の特産物ね。毒入りのは私が飲んだわ。あっはっはっは。あっはっはっは。」
王妃ユン氏は薬を飲みほして笑いました。
月山大君夫人の家。
クォン淑儀は月山大君夫人に文書を見せました。チョン貴人とオム貴人は王子と王妃を殺す気だとの内容でした。
王妃の部屋。
「私はこの国の王妃よ。その気になれば何でもできる。毒など盛らずともそなたのことを簡単に殺せるの。女命婦(ネミョンブ)の命は私が握っているのよ。内心私も怒り心頭よ。王子に呪いをかける者が宮中には大勢いるから。でも私は我慢しているの。儒教の七去(しちきょ。夫が妻を追い出せる七つの法。)の教えで王妃の体面を保つためにぐっと我慢しているの。」
「・・・!」
チョン貴人はやっと王妃の部屋から出られました。
「肝を冷やしたでしょう。あっはっはっは。あははははは。あはははは。」
王妃は高笑いしました。
チョン貴人の部屋。
チョン貴人はオム淑儀に自分と王子が殺されると相談しました。
王妃の母の実家。
王妃の母は呪い師を呼び矢をチョン貴人の絵に当ててチョン貴人を呪っていました。
次の日。
仁粋大妃のもとに告発文が届きました。
「王妃の仕業だわ。なんて悪賢いの。」
「ですが中宮がこんな稚拙なことをするでしょうか。」
月山大君夫人は言いました。
「身勝手な。もう許してはおけないわ。殿下を大王大妃殿に呼びなさい。」
成宗の部屋。
ソン内官は成宗に大王大妃殿に来るように申し出ました。
大王大妃の部屋。
仁粋大妃は大王大妃に王妃がチョン貴人とオム貴人を訴える投書をしたので許せないと言いました。
王妃の部屋。
右承旨のイム・サホンは大妃の動向を伝えました。
王妃は大丈夫だろうと高を括っていました。
大王大妃の寝所の前。
官僚たちは集まり噂していました。
成宗は大王大妃の部屋に来て仁粋大妃から王妃がこのような文書を書かせたのだと言いました。
「安陽君(アンニャングン)を生んだチョン貴人に嫉妬しているのです主上。チョン貴人が王子を呪う理由がありません。王妃はなぜこんな真似をしたのか。」
「中殿(チュンジョン)がこれを書いたとは思えません。」
「中殿が書くものですか。人を使ったのです。中殿の周辺を調べ書いた者を見つけるのです。主上(チュサン)。国のことをお考えください。」
「しかし母上・・・。」
王妃の部屋。
「今回は警告だけでしたが次は痛い目に遭わせてやります。」
王妃ユン氏は母に言いました。母は早く毒薬を返してくれと言いました。
「心の平安のためです。安心できるのです。王子の命を狙う者はただではおきません。最悪の場合には私がこの毒薬で死にます。これは大妃との闘いなのです。王子を守れなかったら・・・お母さま。私はこれを飲み自害します。私が毒を飲み血を吐きながら死ねば大妃は王子に同情し王子を守ってくれるでしょう。私の目の黒いうちは思い通りにさせません。」
王妃は母に言いました。
成宗は怒りながら王妃の部屋の前に現れました。
王妃と母は慌てて毒薬を箱に入れて隠しました。
成宗が部屋に入ってきて府夫人を追い出しました。
「殿下の義母だというのに使用人のような扱いなのですね。突然入るなんて間男を呼んだとでも?」
王妃ユン氏は腹を立てました。
「皆外に出よ!私が呼ぶまで大殿に入るでない!」
成宗は大声で怒鳴りました。
「なんという言い草だ。間男(サバン)だと?中殿の言う言葉ではない。中殿!」
「どうせ私は品のない女です。学もありませんし貧しい家の娘ですから。そんな女が中殿になれば不満が出て当然です。王子に遭いたい。何の罪もない幼子をなぜ母からお離しになるのです。もう中殿など嫌です。身分や地位が低くてもかまいません。宮殿を出て王子と静かに暮らしたいのです。そうすればだれにも嫌われません。」
王妃は泣き崩れました。
「・・・・・・すまなかった。私が言いすぎた。」
「殿下は悪くありません。こんな女が王妃になったので騒ぎが絶えないのです。私が宮殿を出ていけばすむ話です。」
「誰も中殿を嫌っておらぬ。」
「お義母様は私が・・・。」
「それ以上言うな。そなたの母上への気遣いが足りぬから。」
「ですから追い出してください!」
成宗は怪文書を机に叩き付けました。
「・・・・・・。これは何ですか?」
「チョン貴人とオム貴人が内通し中殿と王妃を呪った文書だ。大王大妃たちはそなたの仕業と思っておる。」
「・・・いくら品のない私でもこんなものは書きません!あんまりです。王子が頻繁に熱を出すので誰かの呪いと思うことはありましたが口にしたことはありません。」
「いつ私が中殿を責めた?私は疑ってない。」
「ではなぜ私にこんな投書を見せるのですか。」
「気をつけなさいと言いに来た。そして母上に許しを請うように。悪いとは言ってない。母上はもう年だ。孫もできた。残りの人生は長くない。中殿が一歩譲れば母上の怒りもおさまるではないか。」
「気に入られようとどれほど努力したことか・・・でもお義母さまが心を開かないのです。お義母様の怒りがおさまるためならどんな命令でも従いましょう。王子よ。どうすればいいの。母のせいでそなたまで嫌われ者になるのね。」
王妃は泣き崩れました。
「すまない。もう泣くでない。」
「もうそっといてください。この胸の痛みが消えるまで泣かせてください。」
仁粋大妃の部屋。
イム尚宮は大殿から聞こえてきたことを報告しました。
「ふてぶてしい!」
王妃の部屋。
「はっはっはっは。もう涙をふきなさい。どれ私が涙をぬぐってやろう。なかなか機嫌が治らんな。」
成宗は王妃をあやしていました。
「何をお探しでしょうか。」
成宗は王妃の机の引き出しを探しました。
「中殿の涙を拭く手ぬぐいを探しておる。」
「おやめください殿下。」
箱が開き中身がこぼれました。成宗は薄い本を拾いました。
「殿下。その本は・・・。」
「その袋は?寄越しなさい。」
「個人的な品です。見せたくありません。」
成宗は袋をとると中から白い粉がでてきました。
「これは何だ。何だと聞いておる。」
「薬です。」
「何の薬だ。」
「大殿の御医に調べさせようか!」
「毒薬です。私が自害するために持っていたのです。大妃は私が嫌いなのでそのうち私を殺すでしょう。自害するほうがましだと思い持っていたのです。どうぞ私を殺してください。」
王妃は泣き崩れました。
成宗の部屋。
成宗は部屋に戻ると衝撃のあまり息ができなくなりよろめきました。
中殿ユン氏の傲慢と嫉妬が災いを招きました。朝鮮王朝で類を見ない中殿の廃位という悲劇的な事件は中殿を誹謗する一通の手紙からはじまりました。
夜の仁粋大妃の寝所の前。
ハン・ミョンフェら官僚たちは夜中に仁粋大妃に呼ばれました。
「大妃様がたいへんお怒りのようです。中殿を廃するかもしれません。」
「仁粋大妃の懿旨(ウィジ)が下ります。」
仁粋大妃の部屋の中から内官が出てきました。
部屋の中から官僚たちに向かって仁粋大妃が懿旨(ウィジ)を述べました。
「女の品格は七法を守ることで養われます。一国の中宮なら当然守るべきです。それなのに中宮は嫉妬にかられ無実の人間を侮辱しました。よって私が主上と相談して中宮を廃位しようと思います。」
感想
朝鮮王朝では王妃のことを、中殿(チュンジョン)、滅多に使われない言葉で中宮(チュングン)と言っているように聞こえました。王子のことは(ワンジャ)と尊敬して言い決して息子などとは呼ばないようです。とうとう王妃ユン氏(廃妃ユン氏)は廃位されるところまで来ましたね。しかしドラマではチョン貴人とオム淑儀が結託して王妃ユン氏を呪い、王妃の母もチョン貴人を呪っていました。そして仁粋大妃も王妃をはじめから憎んでいましたから仁粋大妃だって同様に下品な罪を犯しています。しかし仁粋大妃だけ王妃に嫉妬し憎んだ罪が不問となるのはそれは勝者、成宗には絶対に裁かれない立場にあったからでしょうね。ドラマを見る限りでは仁粋大妃も度を越した振る舞いをしているようですが・・・。強いは正義との世の法則でどんな悪いことをしても勝者の罪は不問となるようです。