王と妃 第156話
あらすじ
孝寧大君が王妃ユン氏の嬪への降格を撤回するように成宗に諭すと仁粋大妃(インステビ)が大きな声で「それはなりません!」と勝手に王の部屋に入ってきました。
「復位ですって?中殿を嬪に降格させたばかりなのにとんでもない。主上。まずは国のことをお考えください。情に流されてはなりません。」
「母上。中殿は懐妊しました。母上の孫ではありませんか。」
「あの中殿の子など孫として認めません。主上はどうやって王になれたと思いますか。世祖大王が苦痛にあえぎながらも王位を得たおかげです。主上は世祖大王に恩があるのです。世祖大王に恩返しなさい。殿下が何もし成し遂げなければ誰がけなされますか?世祖大王です。復位させられず私も忍びないのです。私の顔色を見ている大臣が陰で私をそしっていることは知っています。女が政治にかかわれば国が亡びると。ええ。何もかも知ってます。主上。人情を捨ててください。冷徹にならなければ大仕事はできません。わかりますか主上!聖君におなりなさい!!!」
成宗は沈黙し孝寧大君は「く・・・。」と言葉を飲みました。
「大君はそれでも年長者ですか。私が断りもなく主上の部屋に入ったのは大君が主上をあおられるのが聞いていられなかったからです。主上を強い君主にしてください。徳のある王妃を迎えるようむしろ主上にすすめるべきではないですか。母は下がります主上。チッチッチッチッチ。」
仁粋大妃(インステビ)は舌打ちすると部屋を出て行きました。
成宗も孝寧大君も怖くて何も言えませんでした。
「大妃の言う通りです。私の考えが足りませんでした。ふっふっふっふっふ。だが主上。愛妻を捨ててはなりません。いくら国が大事だとしても人倫にはそむけません。妻を捨てた君主が民の前で堂々とふるまえますか。」
孝寧大君は自分の意見と仁粋大妃(インステビ)の意見を合わせて述べました。
「そうですね大君。妻を捨てることはできません。妻を捨てた国王は聖君(ソングン)になれません。そうですよね。孝寧大君。」
仁粋大妃(インステビ)は部屋に帰ると孝寧大君を憎みました。
「でしゃばりなじじいめ。どうして主上を惑わすのだ。」
「なぜお怒りなのですか?」
月山大君夫人は言いました。
「考えてみて。私が喜んで王妃を退けたと?やむにやまれぬよ。」
「民心は王妃に同情しています媽媽。」
「イム尚宮はいるか!入れ!」
「今すぐ大殿を見張りなさい。主上が寿康宮に行くなら知らせよ。行きかねぬ方よ。行かせぬようにしなければ。何してるの。早く行け。復位しろ?はっ!」
仁粋大妃(インステビ)は大きな声で威勢を張りました。
夜の成宗の部屋。
「お休みになる準備をしましょうか殿下。もう夜も更けました。」
内官のキム・チョソンは成宗に言いました。
成宗はただ涙を流していました。
寿康宮。
部屋の中から王妃のすすり泣く声がしました。
成宗はそんな王妃ユン氏を思い涙を流しました。
キム・チョソンは成宗の気持ちを察して寿康宮に行ってこようかと成宗に言いました。
「王妃は眠れぬだろう。チョソンや。これを渡してくれ。中殿がいつも身に着けていたノリゲだ。」
「殿下はお休みになりましたか。」
大殿を見張っているイム尚宮はキム・チョソンに話しかけました。
「もう真夜中ですからお休みです。」
「そうお伝えします。」
仁粋大妃(インステビ)の部屋。
「夜通し見張れと言っただろう!!!殿下を大殿から一歩も出してはならぬ!」
仁粋大妃は戻ってきたイム尚宮に怒鳴りました。
寿康宮。
キム・チョソンは寿康宮に来ました。
「中殿媽媽はお休みか。」
キム・チョソンは寝殿の前にいた内官に尋ねました。
「夜食をお召し上がりです。」
内官は言いました。
王妃ユン氏が食事を食べているとチェ尚宮はじーっと見ていました。王妃ユン氏はチェ尚宮を叱った後クォン淑儀に食欲が沸くのは王子に違いないと笑いました。キム・チョソンは咳ばらいをしました。
「外におるのは誰じゃ。外からも盗み聞きをしているとはけしからん。」
「おそれながら媽媽。大殿内官のキム・チョソンでございます。」
「入りなさい。殿下に言われて来たの?」
「はい。媽媽。」
「ぼんやりしてないで膳を下げて。」
「それでどのような要件で来たの?」
「媽媽がお休みになられたのかお伺いに来ました。」
「ほかには何なの?私だったら咳を外します。内官が来たのに同席する必要がありますか。」
王妃ユン氏はクォン淑儀とチェ尚宮を追い払いました。クォン淑儀はチェ尚宮に仁粋大妃(インステビ)に報告に行かせて障子の外で聞き耳を立てました。
王妃ユン氏は成宗からのノリゲを受け取ると泣きました。
「殿下・・・。」
大殿。
成宗は部屋の外に出て柱に手をもたげて王妃ユン氏のことを想いました。
日中の宮殿。
「来てくれ。大王大妃様がお呼びだ。」
ユン・サフンはキム・ジルを呼びました。
仁粋大妃の部屋。
「大声で泣いていたとは。キム内官はほかに何を言っていたのだ。」
仁粋大妃はクォン淑儀に問いました。
「聞こえませんでした。」
クォン淑儀は答えました。
「きっと慰めていたのでしょう。」
オム貴人は言いました。チョン貴人も同意して仁粋大妃(インステビ)を煽りました。
「廃妃はまた失態を演じたようね。キム内官が帰った後また悪口雑言を並べる廃妃の声が聞こえたそうです。」
チョン貴人は言いました。
「そうなの。チッチッチッチ。廃妃はまだこの件のことを恨んでいるようね。」
オム貴人は言いました。
仁粋大妃の表情が恐ろしいものになりました。
大王大妃の部屋。
「懐妊したので許してもよいのでは?王の息子を二人も生んだのに嬪のままでは王室はもちろん殿下の威信も落ちます。私からの頼みです。中殿を復位させるよう伝えてください。お願いします。」
慈聖大王大妃(チャソンテワンテビ)ユン氏は仁粋大妃の側近ハン・チヒョンに言いました。ハン・チヒョンの表情が青ざめました。
貴人たちの会話。
「大妃媽媽の嫉妬心を煽れば廃妃をとどめを刺せます。そうですねお姉さま。」
オム淑儀はチョン貴人に言いました。
仁粋大妃の部屋。
クォン淑儀は貴人の言ったことを聞き流すように言いました。
「反省どころか毒づくとは!」
仁粋大妃は激高していました。
「平民にして宮殿から追い出してやればよかった!」
重臣たちの会議。
領議政のチョン・チャンソンは大王大妃から復位を頼まれていました。ユン・ピルサンはユン淑儀を王妃にしたくて反対しました。キム・グックァンやホン・ウン、キム・ジルは大王大妃の顔を立てたほうがよいと言いました。
「廃妃は降格に賛成した人間を粛正するだろう。」
王妃ユン氏の侍女サモルを死に追いやったユン・ピルサンは言いました。
韓明澮の家。
ハン・チヒョンは助言を求めました。
「仁粋大妃の死活問題です。」
「そなたが心配しなくても大丈夫だ。大妃は誰よりも分別があるゆえ道理に従うだろう。私よりも三手先を読んでおられる方だからな。」
ハン・チヒョンが帰ろうとすると白髪交じりになったヒャンイは民心は王妃ユン氏にあると言いました。
成宗の部屋。
右承旨のイム・サホン名もなき学者からの上疏があったと成宗に言いました。
成宗は都承旨にも尋ねましたが弘文館(ホンムンガン)の学者も同じ意見だと言いました。
「なぜだれも上書を出さぬ?」
成宗は言いました。するとイム・サホンはハン・チヒョンが大王大妃に呼び出され仲裁を頼まれたと言いました。
成宗は祖母の介入により廃妃の流れが変わることに期待しました。
仁粋大妃の部屋。
ハン・チヒョンは仁粋大妃(インステビ)を説得しました。
しかし仁粋大妃は決して許しませんでした。
「王は妻を捨てることができなければなりません。妻を捨てることもできずして君主といえますか。大事を成すには犠牲はつきものです。愛妻だのなんだの庶民じゃあるまいし。はっはっはっは。皆を敵にまわしても私は退きませんから。」
イム尚宮も仁粋大妃(インステビ)の恐ろしさに肝を冷やしました。
「あの女は毒を持っていたのよ。八つ裂きにしても足りないわ。」
大王大妃の部屋。
ハン・チヒョンは「前より怒りが和らぎましたが」とうそを言いました。
「もう結構です。大妃は私のことなの眼中にないのです。」
貞熹王后も王妃ユン氏の復位は譲れないと言いました。
大王大妃は仁粋大妃(インステビ)に行こうとしました。仁粋大妃は部屋の中で怒り狂っていました。すると大臣の一人ホン・ウンが成宗の立場が悪くなると引き止めました。貞熹王后ユン氏は「南無観世音菩薩」と仏にすがりました。ホン・ウンは一人仁粋大妃(インステビ)に最後の機会を王妃ユン氏に与えてほしいと頼みました。
「王子の継母に側室を迎えるのは人倫に反します。」
成宗の寝所の前。
「殿下。妻を捨てた王様は今までにおりません。民に人の道を守れとお命じになれましょうか。どうか中殿媽媽の復位をお命じください。」
赤や青の朝服を着た弘文館(ホンムンガン)の官僚たちは声を揃えて地面に手をつき声を上げました。
「大声で叫ばせろ。母上に聞こえるように声を張り上げろ!」
成宗は控えているイム・サホンに言うと笑顔になり元気が出ました。
「弘文館(ホンムンガン)に功績を奪われます。」
「ワシらも行こう。」
領議政のチョン・チャンソンら政丞らは話し合い重臣らを集めて大殿に向かいました。
「殿下。私領議政チョン・チャンソン殿下に進言いたします。中殿様は人の道をお外れになりましたがお世継ぎのご将来のため復位をお命じになるのが最善と存じます。お聞き入れください殿下。」
「お聞きください殿下ー(一同)。」
「はっはっはっは。領相(ヨンサン、領議政)まで加わったか。」
成宗は喜びました。
都城の町。
「国母の廃妃の降格は不当だと訴えに行くのだ!」
遠方からも集まった両班の男たちはぞろぞろと宮殿に向かいました。
王妃ユン氏の母シン氏は手を合わせて感謝しました。
国母が降格されたのである。
「中殿の降格はあってはなりません。」
宮殿の内情を知らぬ民は民なりに、内幕をよく知っている朝廷の大臣は大臣なりに各々の名分と利益のために廃妃に反対を唱えた。仁粋大妃(インステビ)は孤立無援だった。
夜になり寿康宮の見張りの兵士は引き上げました。
「外が騒々しいわね。」
王妃ユン氏は尚宮に尋ねました。
「見張っていた別監が引き上げたのです。」
チェ尚宮は言いました。
「どれ。この目で確かめねば。戻れる日が近そうですね。大妃媽媽。あっはっはっは。あっはっはっは。あははははははは。あははははは。」
重臣と官僚たちは夜になっても王妃ユン氏の復位を唱え続けました。
「支度しなさい。私が大殿に行くわ。」
仁粋大妃は恐ろしい形相でイム尚宮に命じました。
感想
完全に仁粋大妃は政局ではなく個人的な恨みで王妃をいじめてますね、このドラマでは。王妃ユン氏も自分をやたら攻撃してくる仁粋大妃を敵と認識していますからこの関係が修復されることはありません。オム貴人の考えでチョン貴人も王妃ユン氏を殺そうとインス大妃を煽っています。側室に煽られる仁粋大妃のどこが賢い人なのか、このドラマでは理解できません。慈聖大王大妃(チャソンテワンテビ)ユン氏のほうが賢い女性のように見えます。孝寧大君は完全に日和見で情けない男です。今日の時点でまた成宗と廃妃ユン氏は相思相愛であるように描かれていました。