刑事フォイル(最終回)第28話 生物兵器(後編)
刑事フォイル最終回プロローグ
1942年8月。イギリスでは生物兵器の実験が行われていた。ミルナーの幼馴染イーディスが殺人容疑で逮捕された弟のことで警察に相談に来る。被害者はソ連に向かう船団を護衛する任務で叙勲された英雄だった。だが被害者を悼む声よりも容疑者マーティンをかばう声が多くフォイルたちは疑問に思う。そんな中被害者の妻が原因不明の病を患う。刑事フォイル最終回あらすじ
車の中。
サム・スチュワートは元気がなかったのでロンドンから転属された新任警官ブルックはフォイルの運転手を務めました。
「スチュワートさんは元気のない声で具合悪そうでした。だから任せろって言ったんです。たまには外に出るのも楽しいですし。」
「署には慣れた?」
「いいえ。正直ロンドンに比べると退屈で。」
獣医師テッドの家。
フォイルがテッドを訪ねると、ジェンキンズが殺されテッドはかわいそうだが役に立てないといいました。フォイルは凶器を見せると「トロカールだ。これは私が数週間前に失くしたものだ」と言い最後に使ったのはフォックスフォール農場だったということでした。テッドの息子レナードが部屋に現れました。レナードはナバリーノの乗組員で右の額から頬にかけて切り傷の跡がありました。
「僕らはアイルランドから北へ向かった。ソ連向けの輸送物資を積んだ輸送船団。30隻ほど守る任務でした。PQ17船団。目的地はソ連のノルマンスク。だけどすぐにドイツ軍が現れました。しばらくはなんとかかわしていたけど三日目に攻撃を受けました。アメリカ船のクリストファー・ニューポート号がまずやられて沈みました。目の前で。次は自分たちの番だった。その日の遅くになってドイツ空軍機から爆撃を受けました。無数の魚雷にも襲われてそのうち一発がナバリーノに命中。やっとの思いで甲板に出るとトムがブリッジにいました。そして気づいたら僕は海に放り出していました。真っ暗で冷たくてまるで氷水のようで人生で一番の冷たさでした。あの水温だと30が限界だとか。引き上げられなければ凍死する。そういわれました。でもトムが僕を見つけてくれて救命艇に乗せてくれたおかげで助かりました。フィールディング警視正にも言いました。でもトムをマーティンが殺したはずがない。そんなこと絶対にあるわけない。」
病院。
エルシー・ジェンキンズを生物兵器研究所のマーク・ウィルコックスが訪ねて来ました。しかし医者は面会謝絶で会えないといいました。
スタイルズのアパート。
フォイルとミルナーはスタイルズの部屋のドアをノックしました。スタイルズがフォイルを見ると裏口から逃げました。ブルックは殴られてしまいました。
「すみません。殴られてしまって。」
「退屈じゃないだろ。」
フォイルとミルナーはスタイルズの部屋を調べました。
「作家か?それともジャーナリスト?」
「地元紙を当たってみます。科学者かもしれない。戦時の科学。科学と世界秩序。なんで逃げ出したのでしょう。」
フォイルは「クエーカー平和」という紙切れを見つけました。
「これは同じ集会所だ。」
「マーティンが通っていた。同じクエーカー教徒。スタイルズはマーティンが働いていたフォックスフォール農場を見張っていたので見たかもしれません。」
「フルト ガス アングリフ(ドイツ語)。スタイルズを探そう。」
病院。
エルシーはうなされていました。
「死んでる。羊が・・・死んでる・・・あ・・・あ・・・あ・・・。」
看護婦のイーディスはブリンドリン医師を呼びに行きました。
ヘイスティングズ警察署。
ブルックは謎の当初がドアの下から入れられていたとフォイルに渡しました。
「ジェンキンズを殺したやつを見た。背の高い金髪の男でナイフを持っていた。エーテルの匂いでしょうか。病院の人間かも。」
ミルナーは手紙を読むとフォイルに言いました。
「イーディスは看護婦だったな。」
病院。
ミルナーはイーディスに尋ねました。イーディスは手紙を投書したのは自分ではないと言いました。
「わかるんだよ。嘘つきを相手にするのが仕事だから。マーティンはエルシーと不倫関係にあったんだろ?トムとマーティンはいきなり罵り合いだした。なんのきっかけもないのに。すぐにお互いを恫喝する口ぶりになった。二人の間に強い憎しみを喚起する何かがなければ説明がつかない。」
「・・・そうよ。一年前のトムの出征中に。だって言ったらマーティンが殺したと思われるでしょ。」
「これは君が?」
「いいえ。誓ってもいい。」
イーディスは手紙を書いてないとミルナーに言いました。
ミルナーはエルシーに話を聴こうと言いましたがイーディスは今朝亡くなったと言いました。医師は「道に羊が」と言ったので羊毛選別者病かと思ったとミルナーに言いました。
警察署。
フォイルはマーティンにエルシーが病気で亡くなったと言いました。
「不倫関係になったのはいつから?お姉さんに聞いた。」
「一年前の夏からです。」
「夫が戦いに赴いて留守の間にその妻と関係を持つなんて平和主義者にあるまじき行動じゃないか?」
「トム・ジェンキンズは最低な男です。エルシーにもつらく当たっていました。乱暴で大酒飲みでエルシーにも暴力をふるってた。おなかに自分(トム)の子がいるときもです。死んだなんて嘘でしょう。僕にしゃべらせるための罠だ。話します。あの夜、彼女は浜に行ってはいけないと僕を止めました。」
「ああ神様。どうしてあたしはあの人と出会ったんだろう。」
エルシーは泣いてマーティンに浜に行かないよう懇願しました。
マーティンが浜に行くと誰かが逃げていく足音がしました。トムはエルシーの名を呼び息絶えました。
「エルシー。やつはそう言った。エルシーがやったと思ったのでエルシーを守りたかった。凶器を農場に埋めました。」
マーティンはフォイルに白状しました。マーティンはレナード・カートライドも同じ集会所に通っていて彼はやめたけど今は友達で、ヘンリー・スタイルズは見かけたことはあるけど話をしたことがないと言いました。
「彼女が逮捕されないようにと・・・。」
「気の毒に。」
森の中。
ヘンリー・スタイルズが車を走らせていると市民軍兵士が検問をしていました。スタイルズは逃げようとしたので銃口を向けられ捕まりました。
病院。
「お医者さんを・・・お願い。」
サムはそう言うと気を失いました。サムの手にもエルシーと同じ病斑ができていました。
すぐにフォイルは病院に駆けつけました。
「きわめて危険な状態です。」
ブレンドリー医師は24時間前にエルシーが入院して亡くなったとフォイルに言いました。
「警視正・・・二三日休ませてください。流感だと思います。この傷はフォックスフォール農場で有刺鉄線にひっかかって・・・何かの感染症かも。」
「ゆっくり養生して治してくれ。休みは二三日だけだぞ。」
フォイルが廊下に出るとサムの恋人ファルネッティが現れました。ファルネッティはたいへんサムの心配をしていました。
ヘイスティングズ警察署。
フォイルは捕まったスタイルズにサムの病状を尋ねました。
「助けてほしい。その病院で同じ症状の女性が亡くなったばかりだ。」
「口を割らせるための作り話だろう。あんたの正体はわかってる。うちに来たのだって私を消すためだろう。」
「家に行ったのは殺人事件の捜査でだ。事件と君とはなんの関係もない。だが容疑者と君とは共通点があった。マーティン・アッシュフォードと同じ集会所に通ってたね。署に来てもらったのは君の協力が必要だからだ。フォックスフォール農場で車を見かけてナンバーから君を調べた。農場で何かに感染し同じ症状で亡くなった。」
「・・・その人は顔や腕に腫れ物が出てます?炭疽菌だ。生きている細菌だ。熱でも光でも死滅させることはできない。何年も生き延びて生き物を殺す。だからやつらがほしがった。協力を要請されたが私は断った。そんな物の製造を許したら世界はどうなる?目に見えない最近を利用するなんて人間のすることか?ナチスより救いがない。やつらは監視していて尾行したらあの農場に着いた。やつらは細菌の管理すらできない無能な連中だ。」
「研究所はどこだ?」
軍の研究所へ行く道。
フォイルは警備兵に言いました。
「ここの責任者ハリデーと話しがしたい。ヘイスティングズで炭疽症が発生したのは彼の落ち度だ。すぐに通さないと軍に警察、国防市民軍を連れてくる。」
フォイルは検問を通されました。
生物兵器の研究所。
フォイルはハリデーに兵器の存在を世間に公表すると脅しました。すると若い男マーク・ウィルコックスは羊が落ちて農場に持ち去られたため感染した牛を持ち去ったと言いました。
「吸い込めば99.9%の確立で死亡。皮膚から感染した場合その進行は緩やかです。助かることもある。」
マーク・ウィルコックスは言いました。
「開発したのは何のためだ?戦争のため?」
フォイルは尋ねました。
「先に開発したのはフランスだ。でもドイツに占領され研究の成果はナチスの手に。」
ハリデーは言いました。
「ドイツはパリとロンドンの地下鉄でそれぞれ生物兵器を試したことがあると我々は考えています。10年前に。」
マーク・ウィルコックスは言いました。
「そうか。それで治療法はあるか?」
フォイルは言いました。
「ヒギンズならわかるかも。サイモン・ヒギンズ。伝染病の専門家です。こういうことには詳しい。」
マーク・ウィルコックスは言いました。
「ヒギンズには会わせん。こういうことには我々を理解しようとして欲しい。ドイツはロンドンに何か月も空襲をした・・・。命を取り留めてもやけどを負い手足を失い水道設備も下水道も破壊され多くの者が敗血症になった。最初から敗血症のほうがいいだろ。そのほうが簡単だし費用もかからない。長期的な被害もない。我々の仕事を知ったらみんな感謝してくれるかもしれないぞ。」
ハリデーは言いました。
「ヒギンズはどこだ?」
研究所の病室。
「全身を洗い流してストレプトマイシンを投与してください。ここにはあります。マーク。フォイルさん。責任は僕にあります。僕がチームリーダーなのに自分の不注意で僕は有機リン酸塩って化合物をテストしてました。10分間ガス室に入った。少し長かったんですね。目が見えなくなってしまった。一時的とは思うんですけど二週間になります。そのせいで僕は炭疽菌の実験を監視できなかったんです。ハリデーはバカだ。死骸を外に持ち出すなんて。スタイルズを勧誘したのはロンドン大学で衛生熱帯医学院で一緒だったから。でも彼はいずれ消されると思います。でもフォイルさん、あなたにはそうなってほしくない。」
サイモン・ヒギンズはフォイルに言いました。マーク・ウィルコックスは抗生薬をフォイルに渡しました。
「ご友人の回復を祈ります。ひどい世の中ですけど僕たちも国のためにやってます。」
サイモンはフォイルに言いました。
病院。
医師のブレンドリーはストレプトマイシンをサムに投与しました。医師は回復の見込みは五分五分だと言いました。
車の中。
「サムが死ぬなんて。元気になりますよね。」
ミルナーはフォイルに言いました。
獣医師テッドの家。
フォイルとミルナーは「なぜこの手紙を匿名で送ってきたのかな」とレナードに尋ねました。
「なぜハイズ署に言わなかった?」
「マーティンは人など殺せない。それだけは確かです。」
「どうしてわかる?君が犯人だから?ジェンキンズはなぜ君を殺そうとした。ナバリーノに乗っていたときジェンキンズは君を殺そうとしたんだね。」
「なぜあいつだって・・・。」
「銃を使えたのはジェンキンズだけだからな。護衛任務で商船に乗り込むときは海軍将校といっても火器は携帯できずブリッジに拳銃が一丁備えられているだけだ。彼はその銃で勲章を貰った。だが彼は同時に君を殺そうとした。だから君はジェンキンズを殺した。」
フォイルはレナードに言いました。
「ジェンキンズはクズでした。乱暴者で臆病者。船が沈んだ時に僕を撃ったのも自分が助かりたかっただけなんです。自分のためじゃなきゃそんなことしなかっただろ。みんな知らないんだ。ナバリーノが沈没した後は地獄でした。気づいたら海の中でした。体が凍っていくのがわかりました。そのときジェンキンズがドアに乗って浮かんでいました。」
「ジェンキンズ!手を貸せ!」
「だめだ。下手に動いたら沈んでしまう。」
「僕も乗せてくれよ。」
「バカ。ひっくり返る。離せ。来るなって!」
ジェンキンズはレナードを撃ちました。
「そのあとのことは覚えていません。なぜ生き延びたのか自分でもわかりません。救命艇に拾われたおかげで助かったんです。」
レナードは言いました。
「なんで黙っていたんだ。当局に訴えれば…。」
テッドは息子に言いました。
「だって戦争の英雄だろ?誰も見てないし。僕だって言いたかったけど言えなかった。父さんもあいつを宮殿で叙勲されたってほめてたでしょ?みんなあいつは昔からクズだって知ってたのに。僕は父さんのトロカールを持ち出した。父さんなら僕だって知ってもいいと思ってた。パブからあいつをつけていた。自分のしたことでマーティンを死刑にできない。だから手紙を出したんです。覚悟はできています。」
レナードはトム・ジェンキンズに復讐を果たしたのでした。レナードは捕まりました。
「フォイルさん。ジェンキンズの叙勲は誤りです。国のために戦っていた息子を殺そうとしただなんて。許せません。殺されても当然の報いだと思いませんか?息子はどうなります。二日後には新しい船に乗り組むことになっている。国に・・・必要とされているのに牢屋に入れてなんの役に立つ?」
「確かに。なんの役にも立たないですね。」
ヘイスティングズ警察署。
ブルックはミルナーにサムの容態を尋ねました。ミルナーは変わりないと言いました。イーティスがミルナーを訪ねて来ました。
「マーティンが釈放された。真犯人はこれからどうなるの?」
「何とも言えない。でも死刑はないだろう。」
「ジェンキンズはひどい男よ。」
「なんで黙ってた?」
「わかんない。あなたが刑事だからかも。怖かった。でもあなたに謝りたくて。でももう一つ言いたいことがあるの。この前病院で言いたかったんだけど私たち道を間違えた。遠い昔に。あなたはジェーンとは合わない。なんで選んだのか不思議だった。でも何も言えなかった。若かったし勇気もなくて。そのせいであなたを失った。でももう失いたくないの。」
イーディスはミルナーに口づけをしました。
ハイズの町の酒場。
フォイルとフィールディング警視正はスコッチを飲みました。フィールディング警視正は誤認逮捕をしてフォイルをなじったことについて謝りました。
「どうしてジェンキンズは最後に妻の名前を呼んだんだろ?互いに愛情はなかったのにおかしいだろ?」
「エルシー。あるいはLC。」
「レナード・カートライトか。」
「確信はないけどな。」
フィールディング警視正は20か21のときお互い初々しい兵士の時にフォイルと出会ったことを話しました。
「1915年7月。イープル。俺はカナダ軍と一緒だった。地獄のような戦いが続いていた。雲だ。緑色の。光って輝いて見えた。それは何の音もたてず生き物のようにせまってきた。我々は逃げようとしなかった。何かわからなかった。痛みが襲った。周囲からは悲鳴が。みんな血を吐いたり自分の顔をかきむしったり目が見えずわけがわからなかった。当たり前だ。それが初めてだったんだから。その日ドイツ軍が戦場にまいたのは170トンの塩素ガスだった。作戦名を知ってるか?消毒作戦だ。そりゃ消毒をされたよ。確かにな。俺は運がよかった。でもまだ体の中にそいつがいてくすぶっている。」
「でも我々は勝利した。」
「そうかな。周りを見ろクリストファー。そこらじゅう悪意と憎しみばかりだ。人間性なんて当てにならん。どこか夕日がきれいな場所で静かに暮らしたい。君は戦ってくれこれからも。俺はもういい。」
フィールディング警視正は人間の悪意に疲れていました。
病院。
フォイルは廊下で待ってるファルネッティに声をかけました。ファルネッティは仕事に戻りました。
サムは目を覚ましました。
「警視正。」
「やあ。起こしてすまない。」
「いや。寝てません。」
「たった今ジョーが帰ったところだ。追いかけて連れてくるか?」
「いいえ。彼は本当にいい人だけど・・・今はちょっと会えません。」
「そうか。気分はどうだ。」
「正直最悪です。」
「医者はよくなってるって言っていた。」
「あたし・・・ずっと考えてたんです。」
「またか。考え事をしているとまた道を間違えるぞ。」
「ですね。でもどうしよっかなって真剣に考えていたんです。」
「分かれ道?」
「そうです。分かれ道。警視正は私をどう思ってます?少しはお役に立てています?」
「もちろんだ。君はかけがえのない存在だ。」
「よかった。そう言っていただけるならこのまままっすぐ進むことにします。分かれ道は曲がらずに。」
「そうか。それはうれしいな。」
「今日は早く仕事に戻れって催促に?」
「当然だろう。でないとどこへも行けない。」
「光栄です。」
感想
なんと恐ろしい兵器があるんですね!人間のすることじゃないですね。ほんとに。人間の定義は単にヒトの形をしているというだけなんじゃないんですね~。サムは助かってよかったです!アメリカにも行かずにイギリス国民のもとに帰ってきました。めでたしめでたし。ああ、でもあのスタイルズっておじさんは007に消されるんでしょうね・・・ああ怖い。人間にとって人間って何なのでしょうね?金ずる?強奪のカモ?餌?害虫と同じ?道具?悪意のある人間にとってはそんな風にしか見えないのでしょうね。嫌な世の中ですね。