王と妃 第155話 王妃降格の波紋
あらすじ
夜の王宮。
王妃ユン氏は「嬪」に降格するといわれ寿康宮(スガングン)に移されました。王妃ユン氏は吐き気をもよおしながら輿に乗りました。仁粋大妃(インステビ)の側近イム尚宮は王妃ユン氏の寿康宮入りを確かめに行きました。
廃妃だ。はっはっはっは。はっはっはっは。」
仁粋大妃(インステビ)は自室で高笑いしました。
クォン淑儀とチェ尚宮は王妃ユン氏の世話役に命じられました。
「すまない。そなたを守ってやれなかった。」
成宗は王妃ユン氏を思い涙を流しました。
「殿下。私キム・チョソンでございます。」
「中殿のノリゲ(髪飾り)が落ちておる。よほど慌てて出て行ったのだな。淑儀のころから大事にしてたのに。」
「私が中殿様にお渡ししましょうか?」
「よいのだ。」
「では・・・。」
「私が渡しながら中殿をからかってやる。落とし物にも気づかぬとはな。」
「中殿は寿康宮に着いたか?」
「大妃殿の宮殿を避けるため遠回りなさっています。」
「夜道は暗いだろうに。明かりは十分だったか。中殿の世話係は誰だ。」
「クォン淑儀とチェ尚宮でございます。」
「もう着いたことだろう。キム内官が様子を見てこい。急に離宮に移ったので何かと困っておろう。やめよう。大妃が知ったら激怒する。中殿の立場を悪くするだけだ。」
成宗は王妃ユン氏とノリゲについて話したことを思い出していました。
「殿下が初めて部屋にいらしたときに身に着けていたものです。王子をみごもったときも大妃媽媽が私を中殿になさったときも身に着けていました。私は死ぬまでこのノリゲを身に着けるつもりです。」
「何があっても私の手で返してやる。」
王妃ユン氏は寿康宮に到着しました。イム尚宮は先回りして待っていました。
「一人で建てるわ。私が闇夜におびえ立てぬとでも思ったの。」
王妃ユン氏はチェ尚宮の手を振り払いました。
「媽媽。まずは明かりを灯しましょうか。」
「よい。大妃媽媽の思い通り闇に埋もれてあげるわ。」
「伝えておいて。一日中胸がむかつくのでにくい人間のせいと思ったけど懐妊したようだと。次も王子を生みますのでお喜び下さいと大妃様に伝えて。あっはっはっは。あっはっはっは。」
王妃ユン氏はイム尚宮にささやくと真っ暗な寿康宮に入りました。イム尚宮は怯えて仁粋大妃のもとに逃げ帰りました。
「次も男の子を産んであげます。産んであげますとも。」
仁粋大妃(インステビ)の部屋。
チョン貴人とオム貴人は王妃ユン氏の悪口を言いながら仁粋大妃の肩をもんでいました。
「媽媽。王子様をどうなさるのですか?チョン貴人様の安陽君(アンニャングン)がいれば王子様も退屈しないでしょう。」
「王子はこの私が育てます。もう結構よ。疲れたでしょう。イム尚宮。何か話がありそうね。もうよい。今日は下がりなさい。」
仁粋大妃(インステビ)は貴人を下がらせました。
「王妃を殺して座を奪うのです。お分かりですね。」
オム貴人はチョン貴人に言いました。
「わかっているわ。」
貴人は部屋に帰りました。
「話してみなさい。廃妃がまだ寿康宮に着いてないの?」
仁粋大妃(インステビ)はイム尚宮に言いました。
「お着きになりました。申訳ございません媽媽。廃妃様がご懐妊なされました。」
「そう・・・。そのことを知っている者は?」
「私にだけ耳打ちなさいました。道中ずっと吐き気に苦しんでおられましたが懐妊に気づく者はおりませんでした。」
「下がりなさい。」
退室したイム尚宮は胸をなでおろしました。
「懐妊ですって?あっはっはっは。あっはっはっは。」
仁粋大妃(インステビ)の高笑いは宮殿の庭まで聞こえました。
日中の王宮。
重臣たちは庭でいがみ合っていました。
「中殿様の愚行は耳にした。」
「黙っていたのか?」
「人を睨みやがって・・・。」
「元老だからといって偉そうにするな。」
「国保が嬪に降格されたのです。」
「ここで議論してもどうにもならん。大殿へ殿下に伺いに行こう。」
大臣の部屋。
キム・グックァンはチョン・チャンソンに「先頭に立っては?」と耳打ちしました。
「まだ私と領議政大監しか知らぬのだ。上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)が知れば中殿を復位しろと言いかねない。」
廃妃ユン氏の懐妊の噂は側室たちの間にも広まりました。宮殿の人々は廃妃ユン氏のことをまだ「中殿媽媽」と呼んでいました。
ユン・ピルサンはユン淑儀に仁粋大妃(インステビ)に取り入るように言いました。
「媽媽。これは絶好の機会です。」
大妃殿。
仁粋大妃(インステビ)は食事に毒を盛られるおそれがあるので食事に気をつけねばと王大妃と大王大妃に言いました。
「王子はまだ幼いのに殿下の身に何かあればどうするのですか。いくら心配してもしすぎることはありません。」
「やつれたのはそのせいですか?私はてっきり中殿が気になり眠れなかったのかと思いました。」
王大妃は言いました。
仁粋大妃(インステビ)は成宗に中殿懐妊の話は廃妃ユン氏が王の関心を買うために広めたのだといいました。
「主上。寿康宮に行かぬように。あの毒は主上を殺すためのものだったかも。」
仁粋大妃(インステビ)は成宗に廃妃ユン氏との絶縁を望みました。
成宗は特に何も意見を述べず輿に乗り部屋に帰りました。
チョン貴人はオム貴人に寿康宮を探るように命じました。
「懐妊が事実なら・・・流産させるのよ。」
「それでこそチョン貴人お姉さまです。はははは。はははは。」
廃妃尹氏は吐き気をもよおし食事ができませんでした。
成宗の部屋。
「弘文館(ホンムンガン)の者たちが謁見を求めているだと?もう遅い。尋ねればもとに戻るとでもいうのか。返せ。」
成宗はヒョン・ソッキュに士大夫たちを追い返すように言いました。
仁粋大妃(インステビ)の部屋。
「嬪でなく追い出せといったのに!後患を残しました!」
仁粋大妃(インステビ)はハン・チヒョンを叱りました。
便殿。
成宗は便殿に現れました。
「そなたたちは承政院の承旨ではないか。私の手足となる者が一体何の真似だ。」
成宗は言いました。
「殿下。中殿様の補佐も承政院の承旨の役目でございます。」
イム・サホンは成宗に上奏しました。
「だからだ。そなたたちは責任を感じぬのか。」
「私は死を覚悟で申し上げます。王妃様の処遇は国の将来にも影響を及ぼします。つまりお母君が降格されれば王子様も世継ぎになれません。王子様が成人なされても王になりお母上を復位できません。」
イム・サホンは続けました。礼曹判書のホ・ジョンも同意見でした。イム・サホンは力を込めて成宗を説得しました。
「このままでは血の涙が流れます。悲劇を食い止められるのは殿下だけです。殿下ぁああああああ。」
イム・サホンは大声で泣きました。
月山大君の家。
月山大君は母の仁粋大妃は踊りだしたい気分だろうと妻に言いました。夫人はそれは誤解だといいました。
「そうだろうか。母上は氷のように冷たい人だ。」
月山大君がいうも夫人は自分だけに優しい仁粋大妃(インステビ)のことだ大好きでした。
月山大君夫人が宮殿に向かうといたるところで士大夫が号泣していました。
韓明澮の家。
「どこかで葬式でもしているのか?今度は誰の味方をしろというのか。」
「大妃の味方をしたなら今度は中殿様の味方もしなければ公平ではありません。」
ノ・サシンは韓明澮に言いました。
「もっともだ。」
仁粋大妃(インステビ)の部屋。
月山大君夫人は民が泣いていると仁粋大妃(インステビ)に教えました。仁粋大妃(インステビ)は王子が官僚の言いなりになるのを防ぐためだと声を大きくしました。
「雌鶏が泣くと国が亡びる。私の代だけで終わりにせねば。はっはっはっは。」
大王大妃の部屋。
「中殿が嬪に降格されたことで民心が乱れています。今度は仁粋大妃(インステビ)が退く番です。」
大王大妃ユン氏は孝寧大君とシム・スオンらに言いました。
便殿。
成宗は王妃の母府院君と使用人を開放するようユン・ピルサンに言いました。
「この通りにせよ。」
成宗は宣旨をユン・ピルサンに投げました。
王命が下りました。
「余は事の真相を知るに至った。すべては内人サモルの計略である。シン氏母子は罪を問わぬことにする。」
内人に罪が押し付けられました。サモルは絞首刑に処せられ吊り下げられ放置されました。
成宗の部屋。
孝寧大君は「中殿を嬪に降格する王命を撤回なさいませ。もう十分反省なさったことでしょう。しかもご懐妊なさったことですし。王子のためにも些細な罪は許しましょう」と言いました。
「大妃は許さぬはずだ。」
「大妃様のお顔はもう十分立てたでしょう。」
「ええ。王命を撤回します。」
成宗は嬉しそうに微笑みました。
「それはなりません!」
部屋の外から大きな声が聞こえて成宗の表情は凍り付きました。
感想
仁粋大妃(インステビ)の権力は成宗以上ですね。なぜこのようなことが許されたのでしょうか。朝鮮では母を敬う文化がどんな法よりも優先されたのでしょうか。チョン貴人とオム貴人も悪い女であり、本当かどうかまったく知る由もありませんが、ドラマの中では王の側室でいる資格はありませんね。サモルに罪をなすりつけた成宗もなかなか酷い男です。どこが聖なる君なのか・・・ちょっと理解できません。