王と妃 第154話 王妃ユン氏「嬪」に降格
あらすじ
仁粋大妃は成宗に王妃ユン氏を廃妃にするなら王子も廃さなければならないと言いました。
「王妃の愚行は皆も知っています。宮殿の外にまで知れ渡っています。なのに重臣らは中宮の廃位に異を唱えています。中殿の報復が怖いのです。今王妃の廃位に賛成したら王子が王になったときに報復されることを恐れているのです。主上。母とて心が痛まぬと思いますか?王妃を廃位するのは憎しみからではありません。宗廟社稷(そうびょうしゃしょく、王室と国のこと)を守るためです。主上がいくら立派でも中殿の品行が悪ければ累は宗廟社稷にも及びます。中殿と王子を廃するといえば朝臣は賛成するでしょう。」
「母上!王子を廃嫡するなとと・・・。王子の廃嫡だけは・・・。母上!」
「主上は好きになさってください。主上はこの国の王ですから母に気兼ねはいりません。違いますか主上?はっはっは。最も大事なのは国です。前代未聞の中殿のために国を犠牲にするのですか!はっはっはっは。」
インス大妃は高笑いしました。
成宗は動揺して母の部屋を出ていきました。
王妃の部屋。
「いっそ王子と私を殺したらどうですか。ええ。私たちを殺してください。そうすれば大妃媽媽は永遠に権力を振るえるのです。王子よ。私は殺されるらしい。私がいなかったら王子はどうなるの。母に会えず虐げて育つくらいならいっそ母と一緒に死んだほうがマシよ。」
王妃ユン氏は声を荒げて泣きました。
成宗は庭にたちその声を聴いていました。
仁粋大妃の部屋。
「王子の廃嫡は望ましくありません。しかし朝廷の重臣が廃妃に難色を示すのは王子がいるからではありませんか。だから王妃が図に乗っているのです。」
インステビはハン・チヒョンと話し合っていました。
「媽媽。こうしてはどうでしょうか。中殿を嬪に降格し離宮に移すのです。」
ハン・チヒョンはインステビに言いました。
「降格するだけではだめです。この際あの女を宮殿から追い出します。」
「媽媽。中宮を廃せば王子も配されます。平民の王子は世継ぎにしてはいけません。策は一つです。中宮を嬪に降格し宮中に置くのです。中宮をこらしめ廃嫡はさけられます。一石二鳥です。媽媽。私に任せていただけないでしょうか。」
成宗の部屋。
「王子を廃嫡しろと・・・。」
成宗は斜めになり困憊していました。
都承旨のヒョン・ソッキュと右承旨のイム・サフンがそばに侍っていました。
イム・サフンは王妃の味方をしてチョン貴人とオム貴人を調べるべきだと言いました。ヒョン・ソッキュも「国母を廃位してはなりません」と言いました。イム・サフンは中宮が病気にかかったときのために砒霜(ひそう)を母に貰ったのだと釈明しました。
「王子を救わねば。」
成宗は言いました。
大王大妃の部屋。
ハン・チヒョンは王子の廃嫡を慈聖大王大妃(チャソンテワンテビ)ユン氏に申し出ました。大王大妃はいつになく厳しく反対しました。
インステビの部屋。
仁粋大妃は領議政で老親チョン・チャンソンを部屋に呼び王妃ユン氏が大妃になったらとんでもないことになると言いました。
大王大妃の部屋。
大王大妃ユン氏の側近キム・スオンは仁粋大妃が王子の廃嫡を主張したのは成宗に王妃を捨てよとの駆け引きであると解釈しました。
宮殿の庭。
キム・ジルは義父のチョン・チャンソンにインステビの味方をしたほうが得策であると言いました。
「不用意に動く出ないぞ。中殿はともかく王子は廃嫡されんだろう。うかつに廃妃の先頭に立ったら一族が滅ぼされかねん。」
韓明澮の家。
ハン・チヒョンはハン・ミョンフェに汚れ仕事を頼みに来ました。
「くくくく。こうなると思ってた。」
ハン・ミョンフェは卑しく笑いました。
「上党君(サンダングン、ハン・ミョンフェ)大監にお願いしたいのです。」
「なんだとお前さん。冗談じゃない。巻き込まんでくれ。」
「中宮を嬪にするのは難しくないだろう。」
「その程度で仁粋大妃様が満足されるのか?中殿も姑の機嫌をとればよいのに自ら破滅を招くとは。」
韓明澮の妻は王妃を救えるのは大監だけだと言いました。ヒャンイは王妃は仁粋大妃に嫌われているのでいつかは宮殿を追い出されると言いました。
孝寧大君の家。
ハン・チヒョンは孝寧大君に根回しをしに来ました。
夜の義禁府。
義禁府の牢獄にはサモルをはじめ女官や関わった男たちが拷問されていました。ユン・ピルサンはサモルに毒は何のために使うつもりだったか白状しろと言いました。
「疫病にかかったら私が飲むために買いました。」
サモルは王妃をかばいました。
「貴様。白を切るつもりか。もっと痛めつけろ!」
ユン・ピルサンが命じるとサモルは悲鳴をあげました。
「あ~っ。あ~っいやぁ~っ。」
王妃の実家。
イム・サフンは王妃ユン氏の母シン氏に毒はサモルのものだとサモルに罪をなすりつけるように言いました。
ヒョン・ソッキュの家。
「インステビは横暴すぎる。さらに王子まで廃嫡しろと・・・。」
チョン・ナンジョンはヒョン・ソッキュに決断を求めました。
「王子は守らねば。」
ソン・イムは言いました。
「この際仁粋大妃と対決してはどうだ。」
吏曹正郎(イジョチョンナン)のチェ・スは言いました。
「大妃があくまで意地を張るなら今回は命がけで挑むべきだ。だが殿下の意向がまだわからん。もう少し待とう。」
都承旨のヒョン・ソッキュは言いました。
「この国が女人に牛耳られているのか。」
チョン・ナンジョンは嘆きました。
チョン・チャンソンの家。
ハン・ミョンフェはチョン・チャンソンを訪ねてきました。
「王子を救うかわりに中殿を嬪にするのはどうだ?」
「それはインステビの意向か?」
「もちろん。」
「それならわれらも生き残れる。」
成宗の部屋。
「ものすごくお悩みですね殿下。まさか大妃媽媽が王子を廃嫡されるとでも?大妃媽媽は誰よりも王子をかわいがっています。」
ハン・チヒョンは成宗に言いました。
「別のことを言いに来たのでは?どうぞ大妃の好きにしてくれと言っといてくれ。」
「大妃様は中殿媽媽が嬪に降格するならそれ以上は問題にせぬと。中殿媽媽が嬪の身分でおられると王子は後を継げます。」
「嫉妬が大罪か?女に嫉妬はつきものだ。母上が王妃を嫌うので中殿は不安でチョン貴人に嫉妬したのだ。・・・ほかに道はないのか?」
「申訳ありません殿下。」
「中宮を廃し嬪にするのか・・・。」
成宗は涙を流しました。
大王大妃の部屋。
「涙をお見せになっただと?何がかわいそうなものですか!稀代の悪妻なのにかばうから中殿が図に乗るのです。」
「もうこの辺にされてはどうでしょうか。殿下もご心痛です。廃妃までするのは大臣が同意せぬでしょう。もしも中殿が盛り返したらどうしますか。」
「主上に伝言してください。中殿をかばうなら私が宮殿を出ていきます。」
「媽媽。嫉妬だけでは廃妃できません。不成功に終われば媽媽が窮地に立たされます。彼らはそれを狙っています。殿下は渋られ大王大妃様がためらい大臣が迷っているのに媽媽おひとりで進められるのですか。媽媽。媽媽を敵視する者が宮殿内外にいることを忘れないでください。」
「いいでしょう。嬪に降格して宮殿を追放します。王子は私が育てると主上に伝言してください。」
翌日の便殿。
成宗は頭を押さえていました。重臣たちは重苦しい雰囲気に包まれました。
「ち・・・殿下は王妃様を廃妃するつもりですか?私めは殿下がどうお考えかわかりません。」
チョン・チャンソンは言いました。
「殿下。中宮様の罪が何なのか明白にすべきです。」
吏曹判書のホ・ジョンは発言しました。
「吏判は大妃様の懿旨(ウィジ)を読んでいないのですか?中殿は側室を妬み毒薬を持っていました。これはすでに中宮の内人サモルが白状しました。」
ユン・ピルサンは冷たく言いました。
「嫉妬は世の常です。廃妃はできません。殿下。中殿は王子様の母君です。王子様のことを思えば中宮様を廃妃できません。」
ホ・ジョンは反論しました。
「中宮を嬪に落とすのはどうか?王子のために嬪にとどめようと思う。」
成宗は言いました。
「それは最善の方法でございます。中宮様が廃妃なされないのであれば王子様は守れます。」
チョン・チャンソンは言いました。
「嫉妬したとはいえ毒まで持っていたのだ。ゆえに中宮を嬪とし実家に帰らせる。」
成宗は言いました。
「・・・・・・。」
孝寧大君は黙っていました。
「孝寧大君はどうお考えでしょうか?」
成宗は尋ねました。
「離宮に住まわせるのがよいでしょう。」
「なら寿康宮に移そうと思う。皆で早急に話し合いなさい。」
「仰せの通りにいたします。」
成宗の王命が下りました。中殿ユン氏を嬪に降格し寿康宮に住まわせました。
王妃の部屋。
「媽媽。寿康宮にお移りの命が下されました。」
内官が言うと王妃は暴れました。
「無礼者め!王子をここによこしなさい。王子が来るまで一歩も動かぬぞ。お前は大妃の手下だから痛快でしょう。そうはいかないわ。私は王子の母よ。屈服しないわ。私を侮ると痛い目に遭うわよ!王子が来るまで死んでも行かぬぞ!殿下。私を本当にお捨てになられたのでしょうか殿下ー!まことに情のない方ですね。私に何の罪がありましょうか。これからどうやって生きていけといえましょう。」
便殿。
成宗は涙を流していました。
ホ・ジョンは王妃を守れなかったと泣いて謝りました。
仁粋大妃の部屋。
「なんだと!まだ寿康宮に移らぬのか。平民にされないだけまだマシよ!」
王妃の部屋。
王妃は内官たちを脅して動きませんでした
大王大妃の部屋。
王大妃は王子に一目会せてやろうと大王大妃に言いました。
夜になりました。
イム・サフンは王妃に殿下の寵愛を受けるために寿康宮に移り世間の同情を引くよう助言しました。
王妃は得るものがあるとわかり寿康宮に移りました。
仁粋大妃の部屋。
「廃妃(ペビ)よ。はっはっはっは。はっはっはっは。」
感想
今回もおもしろかったです。こんなとんでもないことが朝鮮王朝で起きていたとは・・・ほんとうに信じられないことですね。仁粋大妃の王の母という立場は王をも凌ぐ強さです。ですので仁粋大妃が王妃に嫉妬して王妃を妬みその結果王妃が仁粋大妃に牙をむいたとしても、悪者にされるのは廃妃ユン氏です。廃妃ユン氏の増長がどれほどのものかは史実からはわかりませんが、仁粋大妃が犯した罪もかなりのもの、少なくとも廃妃ユン氏よりも大きいと思います。