秘密の扉3話
目次
あらすじ 再捜査
図画署(トファソ)画員シン・フンボクの死の真相を探っていた捕盗大将(ポドテジャン)のホン・ゲヒは世子のイ・ソン(思悼世子)にフンボクは自殺だったとの嘘の報告をしました。
「自殺だと?シン・フンボクは自殺したのか?」
世子はホン・ゲヒに問いました。
「その通りです。」
ホン・ゲヒは答えました。
ホン・ゲヒが嘘の報告をしたのは英祖(ヨンジョ)イ・グムが領議政で老論派の首領キム・テクに文書を内密に渡したからでした。英祖(ヨンジョ)はホン・ゲヒのことを使える奴だと評価しました。
「ホン・ゲヒか。使える男だな。」
世子と重臣の会議室。
「肺に水がないなら、彼は溺死ではない。」
世子イ・ソンはホン・ゲヒにシン・フンボクが頚椎を折られて殺された後に御井(オジョン)に投げ入れられた可能性を疑うべきだと言いました。
「我々も頚椎が折れているのを確認しました。
ホン・ゲヒは言いました。
「ではなぜ自殺だというのだ。殺害した後、御井(オジョン)に投げ込んだ可能性を探るべきだ。」
「まれな例ですが。身投げの際に首が折れて即死すれば肺に水は入りません。しかし検視しただけでは判断できなかったので証言を集めました。懿陵(ウィルン)へ向かうシン・フンボクの姿が目的されています。」
ホン・ゲヒは井戸に身を投げた際に骨折して死んでから水に沈めば稀にではあるが肺に水が入らないと言い目撃証言を集めたと世子にシン・フンボクが泥酔して王様の悪口を言っていたという町人の女性や、千鳥足で懿陵(ウィルン)に行くと言っていたという町人の男の証言を得たと言いました。シン・フンボクが最後に目撃した陵参奉(ヌンチャンボン、王陵を管理する正九品の下級官僚)の証言によると、世子邸下と主上殿下を呪う言葉を吐いていたということでした。
「本当にシン・フンボクが・・・このような侮辱をしたのか?」
世子は信じられないとホン・ゲヒに言いました。
「さようでございます。」
ホン・ゲヒは言うと大殿内官キム・ソンイクが王命を持って部屋に入ってきました。内侍府長は記憶した王命を伝えました。
英祖(ヨンジョ)は「逆賊の首を斬り落とし町でさらし首にせよ。財産を没収し家族は奴婢にして北方へ追放せよ」という命令を下していたのでした。
パク・ムンスは動揺しキム・テクを見つめました。
「邸下ー。ご処分をご決定ください。」
世子の義父のホン・ボンハンは世子に言いました。
「全員下がってください。」
「しかし殿下。」
右議政キム・サンノが声を上げました。
「捜査は終了しました。シン・フンボクの処分を決めましょう。」
世子の正面に座っているホン・ゲヒは決断を迫りました。
「私が頼んでいるように見えるか?下がれと命じているのだ!」
世子は怒鳴るとホン・ゲヒと大臣らに部屋から出るよう命じました。
左捕盗庁。
「自殺だって?こんな検案は無効です。」
左捕盗庁のミン・ウソプはこんな捜査結果はあり得ないと捕盗大将(ポドテジャン)のホン・ゲヒに苦言を呈しました。
「熟議して下した結論だ。」
「話になりません。」
「イボケ。」
「匿名で届いた情報を無視しておいてよく熟議したと言えますね!」
「ネイノン!偽の情報かもしれん。」
「違います。」
「確証は?いつ情報を受け取った。検視の直後だろう。話を仕立てることも可能だ。もしそうなら老論(ノロン)や少論(ソロン)の政権争いに明け暮れるやつらの悪巧みだ!政敵を倒すための計略なのだ。お前は奴らに踊らされたいのか。」
やましさを隠そうとホン・ゲヒはミン・ウソプを叱り反論しました。
「いいえ。教えを守りたいだけです。疑わしい点はすべて調べたうえで結論を出せ。令監(よんがむ、ホン・ゲヒ)から受けた教えです。」
ミン・ウソプはホン・ゲヒをまっすぐ見つめて言いました。
王の謁見の間。
「もう一度、捜査します。」
イ・ソンは王に言いました。
「無駄なことはするな。結果は出た。」
イ・グム(英祖)は言いました。
「納得できません。」
「特検都監を設置し首長にホン・ゲヒを指名したのはお前ではないか。なぜだ。ホン・ゲヒを信用できんのか。」
イ・グムは家族らしく息子に言いました。
「自殺の動機がありません。王室を侮辱する動機もです父上。」
世子イ・ソンは父に納得出来ない、自殺の動機もなく王室を侮辱する動機もないと言いました。
「なぜわかる。なぜわかるのだ。」
「大切な友だからです。」
「画員ごときが友だと!情けない奴め。」
英祖(ヨンジョ)は突然爆発したように怒り、すぐに静かになりました。
「もう一度捜査して友の死を悼んでやれ。」
王宮の一角。
この話を聞いたキム・テクは王のもとに走り息を切らせながら連判状は守れないと懸念しました。
「何をあわててる。服の裾をなびかせて走るとは。」
「やっとのことで防いだのに猛毅(メンイ)を守れませんぞ。」
「それはそなたの役目だろう。」
英祖(ヨンジョ)イ・グムはキム・テクの肩に手を置きました。
「おい。イ・グム。三十年前、環翠亭(ファンチジョン、景宗が死んだ場所)で同じ船に乗ったことを忘れたか。」
キム・テクは王の名を呼び捨てにしました。
英祖(ヨンジョ)は口を震わせました。
「キム・テク。お前の目には私がまだ部屋の隅で震えていた若者に見えるか。あ?今ここにいるのはこの国朝鮮の王だぞ。え?お前は三十年たっても見分けがつかんのか。あ?はっはっはっは。」
「我らが今、死ねば、お前も死ぬ。」
「昔のよしみだけで今回は許してやろう。だが二度目は決して許さん。王に向かって無礼な口をきいたら、お前の舌を引っこ抜いてやるぞ。」
英祖(ヨンジョ)はキム・テクの両肩を掴み笑いました。キム・テクはイ・グムに憎しみを抱きました。
大一統猛毅(テイルトンメンイ、日本語で大一統会盟と訳)の集会所。
「盟主(メンジュ)がお見えです。」
覆面をした両班の男たちと黒ずくめの剣契西方(コムゲソバン)の剣士たちは立ち上がりキム・テクに頭を下げました。
「今からが本当の戦いだ。」
キム・テクは皆に言うと皆は頭を下げました。
水標橋の下。
ソ・ジダムは手がかりをしていました。チダムは貸本札を見つけて拾いました。
「御井(オジョン)で死んだって?ならこの貸本札は何?やったわ。や~った~。や~。」
左捕盗庁。
捕盗大将(ポドテジャン)ホン・ゲヒは再捜査の王命が下ったと知り驚きました。
「再捜査だと!!!部下に偵察させろ。それから、これをすぐに領相大監(ヨンサンテガム)に届けろ。」
ホン・ゲヒは捕盗庁の従事官ピョン・ジョンインに手紙を届けるよう命じました。
水標(スピョ)橋の上。
世子イ・ソンは赤い服の兵士たちに再捜査を命じました。
「水標(スピョ)橋を出発点とする。近隣を巡って事件当日の戌の刻にシン・フンボクを見た者を捜せ。書家(ソガ)貸本の貸出札も見つけるのだ。」
ソ・チダムはシン・フンボクが持っていた貸本はどこにいったのだろうと思いました。
「貸本札はあったのに、本は、どこへいっちゃったのだろう。」
王宮の一室。
世子師で少論(ソロン)のパク・ムンスは「文会所(ムネソ)殺人事件 第一巻」を手に取り読んでいました。パク・ムンスは掛け軸を巻き上げると隠し書庫の扉の錠前を外しこの本を中に隠しました。
「書家貸本の配達員が目撃した可能性が高い。その者を見つければ捜査が進展する。」
チャン・ホンギ東宮殿の内官は世子の命令で都城で世子とシン・フンボクが塀の瓦の中に隠した貸本の筒を取り出し世子の手紙を入れました。チャン・ホンギが塀を離れると妓房の行首ウンシムが世子の手紙を取り出し読むと驚いて手紙を床に落としました。
「世子様がチダムを捜してるの?」
手紙には世子の名が記されていました。
水標橋。
武官たちは橋をくまなく調べていました。
「再捜査とは関心できませんな。睿真画師(イェジンファサ)シン・フンボクと親しかったのは存じております。」
世子師のパク・ムンスは水標橋の世子のところまで行って説教をはじめました。
「先生はここへ何の御用ですか?」
「再捜査は、関心できませんな。」
「なぜですか?」
「睿真画師(イェジンファサ)シン・フンボクとと邸下が親しかったことは知ってます。」
「私的な感情からではありません。謎だらけなのです。シン・フンボクには王室を侮辱する理由がありません。シン・フンボクは水標橋で殺されて御井(オジョン)に投げ入れられたと思ってます。」
「その事実が確かなら特検が捜査した結果は嘘ということになります。ホン・ゲヒが敵に屈したとお思いで?」
「ホン・ゲヒは脅されて仕方なかったのでしょう。ホン・ゲヒは首謀者じゃないにしても、捏造に関わったと見ています。」
世子イ・ソンはパク・ムンスに言いました。
「邸下の覚悟のほどはありますか?シン・フンボクを逆徒に仕立てた者こそ真の逆賊です。ホン・ゲヒを従わせたとなればよほどの実力者。世子様がお考えになっているより手強い敵かもしれません。」
「無実の民を殺した上謀反の罪を着せたのです。どんなに手強い相手だろうと必ず捕らえてその罪を問うてみせます!!」
王の謁見の間。
「パク・ムンスが世子を煽っただと?ホン・ゲヒを推薦した時から怪しかった。ふっ。パク・ムンスも猛毅(メンイ、連判状)が現れたことを知っていたのだ。」
英祖(ヨンジョ)は大殿内官から報告を受けました。
誰もいない大一統猛毅の部屋。
「パク・ムンスが動いた?猛毅(メンイ)のことを知っているとしか思えん。誰がムンスに教えた。そなたには別の仕事をやる。」
キム・テクは部屋に残っていたミン・ベクサンから世子の動向についての報告を受けました。
左捕盗庁の庭。
世子イ・ソンは南人派のチェ・ジェゴンを伴い現れました。ホン・ゲヒは世子を出迎えました。
「世子邸下が左捕庁(チャポチョン)に何の用ですか。」
「シン・フンボクの事件を再捜査することになりました。今から特検の捜索に入ります。始めろ。」
左捕盗庁(チャポドチョン)の中の特別検験都監。
官僚たちにより捜査の準備が始められました。
「従事官ミン・ウソプをはじめとする特検の関係者を私邸の庁舎に集合させよ。」
世子は役人たちに命じました。
左捕盗庁の従事官の部屋。
この命令を知った従事官ミン・ウソプは事件の真相を明らかにできると希望を持ちました。
「ナウリ~。令監(よんがむ、ミン・ベクサン)が危険な状態です。」
ミン家の奴婢が息も切れ切れに主人に危篤を伝えに来ました。
ミン氏の家。
ミン・ウソプが家に帰るとミン・ベクサンは危篤でも何でもなくただ息子を呼び寄せたいだけでした。
「シン・フンボク事件の匿名の書状です。なぜこれを父上が?東宮殿下に渡すべき書状ですよ!?まさか父上が?」
ミン・ウソプは(ソ・チダムが書いた)書状を読みました。
「今すぐシン・フンボク殺人事件から手を引け。」
「できません。」
「では私を告発するか?いいだろう。好きにせよ。ただし、その前にお前の手で私を殺せ。私を殺し父の屍を乗り越えて行け。」
ミン・ベクサンは経机の上に鞘を抜いた短刀を置きました。
世子はホン・ゲヒを呼びました。
「私をお呼びでしょうか。」
「不安ではないか?」
「私(ソーシン)が不安になる理由などありません。」
「今日も自信満々だが正したい真実があれば今のうちに話すがいいぞ。十分な捜査だったか?」
「無論です。結果に間違いはないと確信しています。」
「画員ホ・ジョンウンはシン・フンボクの親友だ。この者はフンボクが王室を侮辱するのを、聞いたことがないと証言した。捕盗大将(ポドテジャン)が採択した証言と正反対だ。ホ・ジョンウンの話を詳しく聞くべきではないか?不十分な捜査でなぜ確信しているなどと言えるのやら。思い込みは誤った裁きを生み誤った裁きは無実の民を犠牲にする。恐ろしいことではないか。だが、それよりも恐ろしいことがある。答えは捕盗大将(ポドテジャン)が考えてくれ。そうすれば正すべき真実を思い出すかもしれぬ。」
図画署(トファソ)。
ソ・ジダムは画員にシン・フンボクの友人について訪ねていました。画員はジョンウンが妓房の妓生チュノルと恋仲だと言いました。
妓房。
ソ・ジダムが妓房を訪れると若い妓生が荷物を抱いて泣いていました。
「恋人の名前はホ・ジョンウンね。どこにいるの?」
「あの人はどうなっちゃうの?え~ん。」
チュノルは涙で頬を濡らしていました。
左捕盗庁の門前。
ホ・ジョンウンは陰からシン・フンボクの遺体が入った棺と多数の兵士がいる様子を見ていました。
「今すぐ世子邸下に報告するから。」
ホ・ジョンウンはシン・フンボクが何かを見つけたかのように話していたことを思いだしました。ホ・ジョンウンは世子を見つけると後ずさりしてその場を離れました。
夜のキム・テクの家。
捕盗大将(ポドテジャン)のホン・ゲヒが部屋に現れました。
「左捕庁(チャポチョン)に何人か密偵がいますね?」
ホン・ゲヒはキム・テクに言いました。
「それが私の力だ。」
「ならば世子との会話もご存知で?」
「自分で対策を立てろ。」
「どうして私が?」
「同じ船に乗ったからだ。」
キム・テクとホン・ゲヒは座りました。
「取引は一度だけです。後始末をしてください。」
ホン・ゲヒが言うとキム・テクは棚から取り出したいくつかの文書を経机の上に置きました。
「また日付を聞きたいか?」
キム・テクが言うとホン・ゲヒは文書を払いのけました。
「一度だけだ!たった一度裁きを誤っただけだ。だからやむを得ず・・・。」
「隠蔽のため、さらに二度文書を偽造したではないか。完全無欠の地方長官という評判に傷をつけたくなかったのだろう。」
「過失でした。ですが以前に増して任務に励みました!」
「すべてご存知だ。」
「ご存知とは、誰が?」
「わかりきった質問をするな。」
「殿下・・・。殿下ですか?」
「この文書が我が家の書庫にあったとでも?是が非でも世子を止めろ。捜査結果を覆すな。それが今上のお考えだ。」
パク・ムンスはどこかの屋敷を尋ねました。
「もう半時辰もお待ちです。」
内官(内侍府長・ネシブサのキム・ソンイク)はパク・ムンスに言いました。
イ・グム(英祖)は碁盤の上に石をばらまきました。
「先手を決めろ。」
イ・グム(英祖)はパク・ムンスに白い碁石を渡しました。
「そなたも随分と腕を上げたようだ。私を打ち負かしたくて必死だからか?」
イ・グム(英祖)は笑いました。
「遊びで殿下に勝利するなど考えていません。」
「ほっほっほ。私とやりあう気か?もうやめておけ。遺体を御井(オジョン)に投げ込み警告しただけで十分だ。」
「殿下の手で歴史を正してください。反省を知らぬ政治には未来も希望もありません。」
パク・ムンスはイ・グム(英祖)に頭を下げました。
「そなは、融通の利かぬ男だ。十年前。余はそなたに連判状を消せと命じた。あの時の私の真意を知らぬと言うのか。そなたが、余(クヮイ)に勝つことはない。」
「いざとなれば世子様(クッポ)に真実を明かします。うまくすればキム・テクくらいはあの世への道連れにできましょう。」
パク・ムンスが言うとイ・グム(英祖)はわなわなと(怒りで)震えて碁石の入った入れ物をひっくり返して碁盤の上にすべてこぼしました。
「ほかの者が犠牲になるぞ。」
「今、何を考えておいでなのですか。」
「権力は刀だ。挑む者は容赦なく斬り捨てる。危険な刃なのだ。これ以上世子を刺激するな。骨肉の争いが起きるぞ。王座をかけた争いに世子を送り出したいか。勝敗は見えておるぞ。うろたえる程度の覚悟ならここまでにしろ。」
「・・・・・・・。」
今度はパク・ムンスが(恐怖で)震える番でした。
「今日は、退散することにしよう。囲碁は、またの機会に打てばよい。」
イ・グム(英祖)は涼しく笑うと帰りました。
世子は書家の娘の似顔絵を画員たちに描かせました。すぐちソ・ジダムのいる禁書の出版書に兵士がやって来ました。
「門を破れ!」
兵士は門を壊しました。
チダムの父ソ・ギュンは職人たちに逃げるように命じました。職人たちは製本作業の痕跡を消して地下通路に逃げました。
捕盗庁の武官は地下室があるのを見つけ、地下に降りるとソ・ギュンが残っていました。
「何事ですか?」
「貸本業を営んでいるとの情報があった。この怪しい地下室は何だ。貸し本を作るのにうってつけだ。」
従事官のピョン・ジョンインはソ・ギュンに言いました。チダムたちは本棚の裏の部屋に隠れていました。
「娘がいると聞いたが。留守か?」
「見当違いです。お引き取りください。あっ・・・。」
「答えるんだ。」
ピョン・ジョンインはソ・ギュンの頭を机に押し付けました。
「なぜナウリに娘の居場所を教える必要があるのでしょうか。」
「答えろ!」
「領相大監(ヨンサンテガム)の家に使いを出してください。大監に聞けばわかります。」
「お前の正体は何だ?」
「正体?わかりましたよ。書籍仲介業のソ・ギュンです。ここは本のち家倉庫です。高官からの注文で清から取り寄せました。本が一冊数約陵もする領相大監(ヨンサンテガム)に届ける本もあります。地下に隠しているのです。こんな高価な本を居間に置いて盗まれたらたいへんです。」
「つまり、貸本ではなく書籍の仲介業だと?」
「ええ。その通りです。」
「調べれば分かることだ。」
従事官ピョン・ジョンインは部下に部屋を調べさせました。従事官ピョン・ジョンインは本の向こうに空間があることに気が付き足で蹴りました。チダムたちは必死で扉を押さえました。
「アボジ~(お父ちゃん)。何があったの?」
若い娘が地下室に降りてきてソ・ギュンの腕に不安そうに掴まりました。
「怖がらなくていい。」
ソ・ギュンは言いました。
「アボジ?本当にお前が娘か?」
「そのとおりです。」
少女は答えました。
「今日は帰るがこれで終わったと思わないほうがよい。貸本業の証拠を一つでも掴んだ時は、お前と従業員とその家族まで、この手で皆殺しにしてやる。」
従事官ピョン・ジョンインは負け惜しみの対価は皆殺しであると言いました。
世子は妓房の行首にソ・ジダムの似顔絵を見せて知らないかと尋ねました。
「取り締まりのたびにこの娘は役人を振り払って逃げたとか。ここの妓生が匿っているのでは?」
「邸下がなんとおっしゃっても答えられません。」
行首は答えませんでした。
「何か知っているはずだ。」
世子は言いました。
「私が残ってあの妓楼を監視しましょうか?」
東宮殿の別監カン・ピルチェは世子に言いました。
「それも悪くない。」
行首は扉を開けるとホン・ゲヒがいました。
「お帰りください。」
「本当にあの娘のことは知らぬのか?」
「邸下様に言ったことを繰り返しましょうか?」
「他言無用だ。私が来たと東宮殿の主に言ってみろ。その時はお前の舌を引き抜くからな。」
世子は宮殿に戻り事件を調べていました。
貸本業者の地下室。
剣契東方(コムゲトンバン)の頭目ナ・チョルジュはソ・ギュンに会いました。
「もしそなたが来ていたら・・・。大事になった。」
「とにかくご無事で何よりです。」
ナ・チョルジュはソ・ギュンに言いました。
「しばらくそなたが娘の面倒を見てくれ。」
「お父さん!」
ソ・ジダムは抗議の声を上げました。
「出しゃばったことはするな。いいな!」
ソ・ギュンは娘に釘を刺しました。
「わかったわよ。分かったってば。」
チダムは階段を駆け上がりました。
「おい・・・。」
左捕盗庁。
世子はホン・ゲヒの部屋の扉を勢い良く開けました。
「貸本の取り締まりだと?突然実施した理由は?」
「いつも抜き打ちでやります。」
「再捜査の妨害か?」
「いいえ。」
「なぜ娘の捜索をしているのだ。」
世子は机の上にあったチダムの似顔絵に気が付きました。
「捕らえてはならない理由でも?」
「この娘は事件の重要参考人だぞ!なぜだ!」
「貸本業の手配者名簿にあったので。捜しているだけです。それに私は娘が重要参考人だということを今知りました。なぜそれほどまでに私を疑うのですか。私の捜査結果は邸下のお望みではなかったからですか?」
世子は気を落として庭を歩いていると目撃者が帰されたことに気が付きました。
「なぜ目撃者を帰すのですか。理由を教えろ!」
世子イ・ソンは右副承旨のチェ・ジェゴンに尋ねました。
「偽証の疑いはありません。」
右副承旨チェ・ジェゴンは世子に答えました。
「そんな馬鹿な。」
「どうしてですか?」
「フンボクは無実だ!」
「被害者!睿真画師(イェジンファサ)シン・フンボク。客観的な呼び方を心がけてください。」
「何が言いたい。」
「捜査の命は客観性です。」
「私に客観性が欠けているとでも?」
「被害者が、懿陵(ウィルン)へ行った可能性も考慮すべきです。」
「その必要はない!」
「手がかりをもとに結論を導き出すべきです!邸下は先に結論を出しておられます。」
「シン・フンボクには動機がない。」
「王室を侮辱したとの証言があります。」
「ホ・ジョンウンの証言は違う。正反対だ。図画署(トファソ)の画員たちを集めて確認しよう。」
世子は図画署(トファソ)の画員を呼び集めました。
「ホ・ジョンウンはどこにいる?」
世子イ・ソンは画員に尋ねました。
「姿が、見えません。」
画員のひとりが答えました。
「それはどういうことだ。」
「事件の後から様子が変で東宮殿別監(トングンジョンピョルガム)が来て再捜査した後から行方が知れぬのです。」
「まさか・・・。」
世子イ・ソンはチェ・ジェゴンを振り返りました。
「シン・フンボク事件と関係があるかもしれません。有力な容疑者かも。」
チェ・ジェゴンは世子に言いました。
「今すぐホ・ジョンウンを捜し出せ!」
イ・ソンは命じました。
夜のキム・テクの家。
「ほかにも連判状を知るものがいた。ホ・ジョンウンだ。利用価値のある男だ。すぐに捕らえろ。世子(クッポ)より先に我々が確保せねばならん。」
キム・テクは庭に侍っている刺客に命じました。
ホ・ジョンウンの恋人の家。
隠れていたホ・ジョンウンはパク・ムンスに見つかりました。
「話してくれ。あんただろ。フンボクを殺して御井(オジョン)に投げた。」
「そうだ。今すぐ東宮殿に行って全部話すがよい。この私を告発するのだ。お前の知る真実を世子邸下に伝えろ。後始末は私に任せればよい。急がねばならん。お前に危険が及ぶかもしれん。」
未明の図画署(トファソ)。
ホ・ジョンウンは無人の図画署(トファソ)に入りシン・フンボクが描いた絵巻物を開きました。
「フンボクが班次図(パンチャド)に印を残した人物が誰か、突き止めてやる。」
ホ・ジョンウンは決意しました。
図画署(トファソ)に数人の剣契西方(コムゲソバン)の手下たちがやって来ました。
ホ・ジョンウンは突然赤い服を着た武官(東宮殿の別監のカン・ピルジェ)に口を押さえられ、ジョンウンを捕らえに来た刺客がいることを示されました。
「そなたがホ・ジョンウンか。」
「そうです。」
「東宮殿まで護衛しよう。」
「邸下の使者ですか?」
世子は尋問場を設けました。
シン・フンボクは縄で縛られました。
「おのれパク・ムンス!」
イ・グム(英祖)は内侍府長キム・ソンイクから報告を受け怒りに震えました。
感想
いやぁ。秘密の扉、3話のあらすじもたいへん難しゅうございました。もぉふつうの韓国ドラマの時代劇の二倍の内容が詰まってまして、韓国語のセリフからわかる昔の朝鮮の言葉を理解するのに苦労しましたよ。連判状のことは猛毅(メンイ)と言うらしいですね。しかも難しい感じ。世子のことは邸下(チョハ)と言ってるのに日本語字幕では世子と書いてあるし。王様も殿下(チョナ)で朝鮮の人は「おうさま」なんて絶対に言ってません。王様に似た言葉に今上(こんじょう、クムサン)がありますけど、これは日本と共通の漢字です。ようやく私も登場人物の顔と名前が一致してきました。大殿内官(テジョンネグァン)の名前は内侍府長(ネシブサ)キム・ソンイクなんですね。なかなか説明の字幕が出てこないので名前まで覚えられません。「朝鮮ガンマン」でサンチュを演じていた細い目の俳優さんがシン・フンボクの友人のホ・ジョンウンという役で出演していましたね。あの俳優さんは今回も役どころが似ているような印象を受けます。ブサメンなのに、いい人っぽいといいますか。内面からにじみ出る親しみやすさを感じます。それと正反対なのが英祖(ヨンジョ)ですね!あの人はとっつきにくそうです。実物のおじさん俳優ハン・ソッキュはどんな方なのでしょうね。やっぱり話しかけづらい人なのでしょうか(笑)そして領議政のキム・テク!今までの時代劇にないキャラですね。いつもの時代劇の悪党は見るからに精力的で男気もあるのですが、キム・チャンワン演じるキム・テクは領議政らしくないというか、のほほんとしていますよね。その割に老論派の棟梁なんですからその辺にはないキャラクターですね。ハン・ソッキュの嫌味な話し方がたまりませんな。
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