王と妃-184話-あらすじネタバレ感想
Title:王と妃
Episode Title:続く圧政 Episode no.184 Season:1 Year: 1998-2000 キャスト: チェ・シラ 監督:キム・ジョンソン レーティング4(5段階中) |
王と妃184話あらすじと感想 続く圧政
夜の王宮。仁粋大王大妃(インステワンテビ)は燕山君の実母斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)を復位し追尊する前夜に崩御しました。燕山君は復讐の本懐を遂げられず心を乱しました。晋城大君(チンソンテグン)らは自分たちを守護してきた仁粋大王大妃がいなくなり悲嘆しました。
燕山君は宮殿の門を閉じたため左議政ら重臣たちは参内できませんでした。
イム・サホンは追尊の儀式の会場で落胆して泣いている燕山君を見つけました。
「もう無駄になってしまいました。」
燕山君は泣きながら儀式の道具を壊しました。
月山大君夫人朴氏や大妃ユン氏夫人は仁粋大王大妃の死を泣いて悔やみました。
「誰が泣いているのだ。涙の一滴もこぼしてはならんぞ。」
燕山君は大王大妃殿の庭にいる女官たちに命じると寝殿の中に入りました。大妃ユン氏は無礼な燕山君に帰るように言いましたが燕山君は泣きわめく月山大君夫人と大妃ユン氏を追い出しました。
「晋城は残ってろ。喪主ではないか。」
燕山君は仁粋大王大妃にかけられていた白い布を取ろうとしました。
「ほっほっほっほ。罪人の息子です主上。何度申し上げればわかるのですか主上。主上は罪人の息子なのです。母が毒薬を飲んで死んだのですから主上は罪人の子です。」
燕山君は仁粋大王大妃に虐げられていた苦しみを思い出しました。
「だからお祖母様が母を殺したと言って欲しかったのです。お祖母様が濡れ衣を着せて母上の毒薬を下したとそう言ってくださらねば私は不孝者のままです。死んでからも私を苦しめるのですか。お望みが叶いますね。ええ私を不孝者の王に仕立てたのですからこれで晋城を王にできますね。」
燕山君は布を取り仁粋大妃(インステビ)に向かって言うと部屋を出ました。
「涙一滴流すなよ。泣いた者は誰であろうと首をはねる。永遠に呪ってやるぞ。はっはっはっはっはっは。」
燕山君は乱心しました。
晋城大君(チンソンテグン)は涙を流しながら仁粋大王大妃の尊顔に布をかけ直しました。
「(兄が)怖いのですか?お祖母様にかわいがられたことを忘れたのですか。まだ泣くのを恐れているのですか。」
王妃ユン氏は叱咤すると晋城大君(チンソンテグン)は泣き出しました。
領議政ら重臣は話し合っていました。本来は殯宮を設けるべきでしたが王の命令がないので重臣らは困っていました。ユ・ジャグァンは殿下より先に動いてはならんと言いました。
燕山君は酒を飲み荒れていました。キム・チョソンは王に国葬に際して酒を飲むのは控えるべきだと諫言しましたら燕山君は仁粋大王大妃のことを世子妃であり大妃ではないと怒りました。
「大王大妃と呼べるのは亡き安順王大妃だ。王大妃は睿宗の正妃だが今日死んだのは単なる世子嬪だ。」
「しかし殿下。大王大妃様は殿下のお祖母様です・・・。」
「老いぼれの内官ごときが口出しするな。徳宗の妃ゆえ粋嬪とすべきだ!」
燕山君はキム・チョソンに怒鳴りました。
燕山君の正妃であるシン氏は兄のシン・スグンにどうしたらいいのと困り果てていました。
王の部屋。
「仁粋大妃(インステビ)でなく粋嬪だろ。」
燕山君はイム・サホンに言いました。
「左様でございます殿下。」
イム・サホンは燕山君に言いました。
「むろん粋嬪だ。」
「そこを正してから葬儀を行うのがよろしいでしょう。」
「そうなれば私は不孝者ではない。」
「粋嬪が殿下のお祖母様でなくなれば不孝をしたとは言われぬでしょう。はっはっはっは。」
「お祖母様。私の祖母は安順王大妃ですよ。はっはっはっは。」
睿宗が死んだ後、者山君(チャサングン)が養子となり睿宗の後を継ぎました。そのため燕山君は仁粋大王大妃のことを祖母ではなく単なる成宗の実母とし大王大妃ではなく粋嬪であると燕山君は主張しました。
重臣らは仁粋大王大妃の葬儀について燕山君に質問しました。
「安順王大妃様のときは六日目から喪服を着ました。どうなさいますか。」
「殿下。大行大王大妃(テヘンテワンテビ)の葬儀は安順王大妃と同じようにすべきです。」
重臣らは言いました。
「大王大妃は政治に関わられたが国に功績を残しておらぬ。王の正妃だった安順王后より格を下げるべきだろう。安順王后は睿宗の正妃ではないか。しかし大王大妃は徳宗の夫人にすぎず中殿になったことはない。よって安順王后と同格に葬儀を行うことはできない」
燕山君は言いました。
領議政ユ・スンは殿下のおっしゃる通りだと発言しました。イム・サホンは懿敬世子より格を上げ安順王后韓氏より格を下げればよいと言いました。ある重臣は三年喪に服するところを三ヶ月だけ喪服を着ればよいと言いました。
燕山君は仁粋大王大妃を格下げしなければ直径を軽んじることになると言いました。
王の部屋。
シン・スグンは安順王后韓氏より大行大王大妃(テヘンテワンテビ)を格下げできぬと王に諫言しました。
「不孝をしないでください。」
「お祖母様のせいでいい迷惑です。孫の蛮行が死因だと噂されています。私を不孝者にしたいのですか。国を案じるなら死ぬ前に母上を許すと言うべきでした。それが国のためなのです。私は王の資格を失ったのです。不孝を働いた王は王と言えません。祖母上の狙いもそこでしょう。世祖は魯山君の王位を奪ったと一生非難されてきました。私も父王の遺命(イミョン、いめい)に反して祖母に乱暴を働いた王として非難されるではありませんか。祖母上は私を憎みながら死にました。墓の中から私を憎む人です。そんな人のために喪服を着ろというのですか。いいでしょう。喪服を着ます。喜んで喪服を着て焼香し酒を供えます。それから踊ってやります。そうすれば墓にいる母上が喜ばれるでしょう。はっはっはっは。ええお祖母様。私の酒を受けてください。弔いの酒でなく呪いの酒です。はっはっはっは。」
次の日の明け方、国王は仁粋大王大妃の死去を告げようやく殯宮が設けられました。
燕山君は儀式通りに殯宮で盃をまわした後、唾を酒の中に吐きました。
「安順王后韓氏は四十九にの後で埋葬したが大行大王大妃(テヘンテワンテビ)は四十九日の前に埋葬してもよかろう。墓を作り終えたら葬儀を行うことにする。祖母上は懿敬世子の墓を褒めていたゆえ隣に埋葬せよ。」
燕山君は皆に命じました。
「祖母上は情に流されず規則にしたがっておられた。ゆえに弔問では情を廃し殯宮では泣いてはいけぬ。涙を流すことは逆徒も当然だ。」
燕山君は人々が悲しむことさえも禁じたのでした。
仁粋王后は王の祖母であり権力者でしたがそうとは思えないほど簡素な野辺送りでした。喪主もおらず哭泣もなくただ鈴の音だけが鳴り響いていました。仁粋大王大妃は世祖に暴嬪(ポクピン)と呼ばれていた人物です。仁粋大王大妃は世祖の長男、懿敬世子に嫁いだ日から国の実権を握ることを目標としていました。仁粋大王大妃の父ハン・ファクは姉が明国の皇帝の側室でした。そのため栄職の光禄寺少卿(クァンノクシソギョン)に任じられ多大な権力を誇っていました。当時の朝鮮は明の顔色を伺うしかできない朝貢国でした。首陽大君が癸酉靖難を起こし魯山君のかわりに王になれたのはハン・ファクの政治力によるところが大きかったのでした。そのため世祖は仁粋大王大妃を大切にしていたのではないでしょうか。世祖が王位に就き仁粋大王大妃は粋嬪になりました。ですが懿敬世子が急死し幼い二人の息子を連れて宮殿から出て行きました。それでも仁粋大王大妃は再起をかけて奮闘しました。睿宗が死ぬとハン・ミョンフェの娘と睿宗の嫡男斉安大君(チェアンテグン)のかわりに自分の次男の者山君を王にすることに成功しました。成宗の代理として貞熹王后ユン氏が摂政(垂簾聴政)を行うことになりました。しかし実のところは仁粋大妃(インステビ)が思うままに国の政治を行い王以上に権力を振るったのでした。成宗の世の泰平は仁粋大王大妃の政治力がもたらしたものと言えましょう。一方汚点は、燕山君の実母ユン氏を廃位し自決させたことでした。嫁姑の摩擦が理由というより仁粋大王大妃が権力の掌握をはかったせいでした。そのため仁粋大王大妃はこの一件により晩年の没落を招きました。世祖、睿宗、成宗、燕山君と四代にわたり影響力を持ち続けた仁粋大王大妃。燕山君を暴君にしたのは仁粋大王大妃でした。燕山君は実母が毒薬を賜り罪人の息子になりました。それに対する燕山君の抵抗が甲子士禍(カプチャサファ)という悲劇を経て中宗反正(チュンジョンパンジョン)という朝鮮王朝初のクーデターを招きました。強力な王権を築こうとした仁粋大王大妃の努力は自分が蒔いた種によって水の泡となりました。因果応報というのは時に残酷なものです。
「道を開けよ~。長興府夫人(チャンフンププイン、廃妃尹氏の母シン氏)のお通りだ~。」
輿の行列が道を通りました。
長興府夫人は立派な服を着て王宮に行き燕山君への目通りを願いました。
「帰るように伝えろ。いまいましいばばあめ。顔も見たくない帰れと伝えよ。老いぼれを追い返せ。二度と宮殿に足を踏み入れるな。今度見かけたら首をはねてやる。」
燕山君は母を煽った長興府夫人をも憎んでいました。
「憎いのはお祖母様だけではない。私の母上のほうがもっと憎い。粋嬪は死んだが母上の亡霊は彷徨っている。」
燕山君はチャン・ノクスに言うと酒をあおりました。
イム・サホンは燕山君の権力を傘にきて地位を高めていました。都承旨はいつになったら王に謁見できるのだ、まだ読むべき文書がたくさんあるのにとイム・サホンに言いました。イム・サホンは自分が読んでやると言うと王の部屋に入りました。
燕山君は泥酔していました。
「不平を言っておるから口に枷をはめるのだ。」
便殿。
燕山君は重臣たちを集めました。
「王を欺くことは一番の大罪だ。チャウォナー。慎言牌(シノンペ)を持って来い。」
燕山君は内官に慎言牌(シノンペ)を配らせました。
「慎言牌(シノンペ)だ。私が以前、内官どもの首に慎言牌(シノンペ)を掛けさせたら宮殿が静かになった。だからそなたたちも首にかけてなさい。」
「すぐに、まんがかうないだ。」
イム・サホンは王のおかげで身を守れる、殿下が守ってくださると畏まりました。
燕山君は次に大妃ユン氏の部屋に行きこのことを話しました。
「あなたは母上なので慎言牌(シノンペ)はかけさせません。晋城大君(チンソンテグン)にかけさせてください。」
シン・スグンは登庁すると慎言牌(シノンペ)を掛けている官僚らを見て燕山君に苦言を呈しました。
「慎言牌(シノンペ)だけでは足りぬのですね。名案があります。」
便殿。
「官帽の前には忠を、後ろには誠を篆書体で入れよ。これからは羽の先を肩に向けて下げよ。」
燕山君は重臣らを集めて命じ領議政に帽子をかぶせました。
「はっはっはっは。やはり領相大監(ヨンサンテガム)は忠臣だな。」
燕山君は大人しくしている領議政に笑いました。
感想
このドラマの作者はしっかり歴史を研究していますね。あと二話しかありません。仁粋大妃(インステビ)が燕山君を暴君にしたことは政治を操ってきた仁粋大妃(インステビ)の誤りであることは明らかですね。成宗の嫁選びを間違えてしまい、廃妃尹氏を殺さざるを得なくなったところが仁粋大妃(インステビ)の大きな誤算だったのでしょう。もしも廃妃尹氏を生かして流刑にしておけば後で仕返しされて自分の立場が危うくなりますから打つ手が賜死しかなかったということなんでしょう。男が学ぶような学問をも身に着けていた仁粋大妃(インステビ)にしてみれば、当時の王族の女性たちが無学でいることがかえって自分に有利に働き宮中で権力を手にすることができたのでしょうね。どうにもならないことになってしまいましたが、仁粋大妃(インステビ)が最期に企んでいた計画は達成できたので、燕山君は立場の正当性がなくなりかなりの精神的なダメージを受けたのではないかとこのドラマの内容からは思います。