王と妃-175話-あらすじネタバレ感想
王と妃175話あらすじと感想 戌午士禍
便殿(正式名称宣政殿(ソンジョンジョン))。
「都承旨は聞け。キム・イルソンを捕らえ議政府と六曹の官僚らを登庁させよ。その後宮殿の門を閉めよ。キム・イルソンの謀反が究明されるまで誰も外に出すな。」
燕山君は重臣に命じました。
「ち・・・殿下(チョーナー)。謀反とは何事でしょうか。」
左議政のオ・セギョムは恐る恐る燕山君(よんさんぐん)に尋ねました。
「謀反でなくて何なのだ。」
「殿下ー。キム・イルソンが草稿の中に世祖大王を批判する文を載せたのは事実ですがそれを謀反というのは・・・。」
実録庁堂上官(タンサングァン)のホン・ギダルは言いました。
「謀反です。謀反です!世祖大王(セジョテワン)を中傷し王室を中傷したのは謀反だぞ。キム・イルソンは臣下だ。臣下が君主を批判するのは謀反にほかならぬ。ソン・サンムンら集賢殿の学者らは世祖大王を殺そうとしたそうだな。キム・イルソンは筆で君主を殺そうとしたのだ。やつの罪はソン・サンムンより重い。世祖大王や王室を侮辱する文を実録に載せてあざ笑おうとしたに違いない。キム・イルソンを捕らえろ。私が直接修文堂(スムンダン、緊急時に王が政務を行う昌徳宮の寝殿のひとつ)でやつを尋問する。議政府と六曹の官僚は王室への忠誠を示せ。」
燕山君は部屋を出て輿に向かいました。
「殿下。今のご演説は世祖大王を思わせる誠にご立派なものでした。」
ユ・ジャグァンは燕山君をおだてました。
「武霊君(ムリョングン)ユ・ジャグァンが教えてくれねば私は何も知らぬ愚かな君主になるところだった。」
燕山君はユ・ジャグァンに礼を言いました。
「恐れいります殿下。」
「今後はどこにも行かずにそばにいろ。万事そなたに相談し政務を執り行う。」
燕山君は輿に乗ると大王大妃殿(テワンテビジョン)に行くよう命じました。
便殿に残った政丞らは困り果てました。
「一体どうなっているのだ。」
「都承旨。謀反というのは飛躍しすぎだ。」
「それが大王大妃様のお考えなのです。」
シン・スグンは答えました。
「ほんとうに大王大妃様のお考えなのか?」
工曹判書のユ・スンは言いました。
「ならば誰の考えというのです。」
大王大妃殿。
燕山君は仁粋大王大妃に合い問題の草稿をハン・チヒョンに見せました。
「お祖母様。なぜキム・イルソンは噂を口実に世祖大王を批判するのだと思いますか?これは世祖大王の不当性を主張し王室を崩壊させようとする陰謀です。」
「そうかいてありますか?」
仁粋大王大妃はハン・チヒョンに言いました。ハン・チヒョンは沈黙しました。
「こうも書いてあります。キム・イルソンは世祖大王が魯山君を殺したと。」
「魯山君を殺しただと?私にも見せなさい。」
イム尚宮はキム・ジョンジクの書を仁粋大王大妃に渡しました。燕山君はキム・イルソンの師匠キム・ジョンジクが書いた弔義帝文(チョウィジェムン)で祖龍(始皇帝)が牙龍を弄んだとは世祖大王を項羽に例えたもので"楚の王となったのは民の要望だ"とは義帝を崇めた表現で"項羽が秦を倒し義帝を立てた"はキム・ジョンジクが魯山君の即位を表し"項羽が宋義を殺した"は世祖がキム・ジョンソを斬ったを表し"項羽を捕らえ斧で殺すべきだった"は魯山君が世祖を殺さなかったことを、"恩を仇で返す"とは魯山君が世祖を殺さずかえって殺されたことを示していると言いました。
「これが謀反でなく何なのでしょう。このまま何も知らずに成宗実録を完成させていれば私はこのうえなく親不孝となったところです。」
「草稿を改めキム・イルソンを罷免しなさい。」
「これがキム・イルソンひとりの考えでしょうか?」
「キム・イルソンは師匠の言葉を書き写しただけでしょう?キム・ジョンジクはもう死にました。」
「世祖大王は私の祖父です。世祖大王がおられなかったら睿宗も成宗も私も王になれませんでした。弔義帝文が正しければ魯山君の子孫が王位継承者になります。睿宗と成宗、私は正統ではなく逆臣の子孫が君主になったことになります。それなのにキム・イルソンの罷免だけで事を収集なさるおつもりですかお祖母様?キム・イルソンを捕らえ弔義帝文を載せた真意を追及します。ご安心くださいお祖母様。キム・ジョンジクの弟子を皆殺しにしてでも真相を究明します。」
「主上ー!罪のない学者を殺してはなりませーん!」
仁粋大王大妃は声を大きく張り上げました。ハン・チヒョンは事を大きくしすぎたと仁粋大王大妃に謝りました。
「この件をどう解決するのか見てみましょう。」
夜。
魯山君はキム・イルソンを尋問しました。キム・イルソンは斯くしてなどいないと世祖がユン昭訓とクォン淑儀に強姦したことは事実だと言いました。
「史官(サグァン)は知っていることは伝え聞いたことを記録します。誰に聞いたかご下問なさるのは不当でございます。」
キム・イルソンは言いました。
燕山君はキム・イルソンを拷問するよう命じました。右議政ハン・チヒョンは目を反らしました。
「ネイノン・・・側室を持たなかった祖父が息子の側室など辱めたはずがない!」
燕山君は言うと重臣たちは目をそらしました。キム・イルソンは気を失いました。
「はっはっはっはっは。これしきのことで気を失うとは。学者というのは肉体の苦楽よりも精神力を重んじると思っていた。はっはっはっは。私は罪人の子としてあらゆる苦痛を受けて育ったがお前のように弱くはない。生きていることがあまりにつらくて死を望んだこともある。だがそのたびに考えた。確かに生きるのは難しいが木を強く持てば苦しみに打ち勝てるとな。それなのにたかが拷問ごときで気を失うとは。」
燕山君はキム・イルソンに水をかけました。
「誰に聞いた。この場で死ぬ勇気がなければ正直に話せ。クォン淑儀のことは誰に聞いた。」
「クォン淑儀様の甥であるホ・バンから聞きました・・・。」
「ホ・バンを捕らえよ!私が直接尋問してやる!」
ホ・バンが捕らえられました。
「ホ・バンですって!」
仁粋大王大妃は声を荒げました。
「一体世祖に何の恨みがあって・・・うふっ・・・。世祖大王はとても厳格な方だったわ。生涯女色は遠ざけておられたのに。」
仁粋大王大妃は咳き込みました。
燕山君はホ・バンを問い詰めましたがホ・バンは言っていないと言いました。キム・イルソンは確かにホ・バンから聞いたと言いました。ホ・バンはキム・イルソンと深い話をする間柄ではないと言いました。燕山君は話せば命を助けてやると優しくホ・バンに言いましたがホ・バンは聞いたこともないと言いました。燕山君は剣を抜きホ・バンを斬ろうとしました。政丞らは尋問は我々に任せて殿下は部屋にお戻りになられてはどうかと言うと、燕山君はユ・ジャグァンに尋問を任せました。ユ・ジャグァンは得意げに犯人らを捕まえてみせる、重臣らの中にキム・イルソンをそそのかした者がいると言いました。
部屋に帰った燕山君は「お祖母様の顔が見ものですね」とシン・スグンに言いました。
「これはお祖母様が始めたことです。批判を浴びるのは大王大妃なのです。」
ハン・チヒョンはキム・ジョンジクはユ・ジャグァンの不倶戴天の敵なので草稿を修正するだけでは済まないだろうと仁粋大王大妃に言いました。
仁粋大王大妃はもう少し様子を見ようと言いました。
ユ・ジャグァンは次々と学者たちを捕らえ毎晩酷い拷問が加えられました。成宗の崩御以来急伸した学者らの勢力、主にキム・ジョンジクの弟子らが捕らえられ拷問にかけられたのでした。特に彼らの私信が問題になりました。
「弔義帝文を広げたのはイ・モクです。」
ユ・ジュンサンは王に重臣らの中にも通じている者がいると報告しました。
「徹底的に調べよ。」
「殿下が私を信じてお任せくださりまことにありがたき幸せ。」
ユ・ジャグァンが取り行っていたイム・サホンの息子もユ・ジャグァンに捕らえられました。イム・サホン自身も投獄されました。ユ・ジャグァンの暴走に都承旨シン・スグンはやりすぎると殿下に害が及ぶと苦言を呈しました。ユ・ジャグァンはシン・スンソンを捕まえることはないから安心してほしいと言いました。
イム・サホンには息子が三人いました。上の二人は睿宗と成宗の娘婿となり三男のヒジェは儒者と親しかったのでした。イ・モクらと交わした私信が問題となりました。このことは廃妃の母親シン氏夫人と燕山君の対面を十年遅らせる一因になり仁粋大妃への燕山君の復讐は遅れる結果となりました。
イム・サホンは自分も捕まりそうなので廃妃尹氏の母シン氏にしばらく遠くに身を隠すように言いました。
燕山君4年に起きた戌午士禍(ムオサファ)はキム・イルソンの草稿が発端でした。その頃台頭しはじめた儒者勢力が粛清されました。仁粋大妃にとっても義父である世祖の醜聞が実録に載ることは我慢ならない事でした。燕山君が戌午士禍(ムオサファ)を通じて王権を強めたことは仁粋大妃にとって想定外のことでした。
仁粋大妃は草稿は正されたのでもうやめさせろとハン・チヒョンに言いました。ハン・チヒョンは燕山君とユ・ジャグァンを止める大義名分がないと言いました。
「私が言いに行きます。」
仁粋大妃は立ち上がりました。
「お祖母様は野獣を育ててしまったと後悔されているでしょう。」
斉安大君(チェアンテグン)はハン・チヒョンに言うと笑いました。
仁粋大王大妃は横になって休んでいる燕山君を見つめて廃妃尹氏と成宗を思い出し涙ぐみました。
王大妃ハン氏は斉安大君(チェアンテグン)に仁粋大王大妃を恨まないように言いました。
「あの方のおかげで今の王室があるのよ・・・。」
「あれだけ冷遇されながらそれでも許せるというのですか。」
睿宗妃は涙を流しました。
「借りがあるのです。叔母上は殿下に返しても返しきれぬ借りがあるのです。」
斉安大君(チェアンテグン)は真剣な眼差しで母に言いました。
「お祖母様。いらしたことも知らずに眠っていました。」
燕山君は目を覚ましました。
「おつかれだったのですね。ぐっすり眠っておられたので起こしませんでした。」
「ありがとうございます。会ったこともない世祖大王の夢を見ました。筋骨隆々のたくましい世祖大王が兵を率いて馬を馳せておられました。」
「世祖大王は・・・そんなに勇猛なお方ではありませんでした。目つきは鋭かったけれどこの上なく温和な方でした。あの方ほど涙もろい方は見たこともありませんでした。」
「世祖が魯山君を殺したというのは本当ですか?」
「根も葉もない噂です!世祖大王が王位を欲していたなら癸酉靖難で得られたはずです。甥の王位を守るために尽力なさったのです。」
「想像していたとおりです。まさか幼い甥を殺すはずないですよね。はっはっはっは。はっはっはっは。」
燕山君が笑う声をハン・チヒョンは目を閉じて部屋の外で聴いていました。
「キム・イルソンは許せません。弔義帝文をご覧になりましたよね。世祖大王を義帝を殺した項羽に例えたのです。ご安心くださいお祖母様。あやつらを一人残らず処刑死さらし首にします。あんな流言が出ぬよう皆殺しにします。」
「主上。人の命は尊いものです主上。多くの血が流れると主上は一生重荷を背負って生きなければなりません。」
「心配なさらないでくださいお祖母様。もしも処分を甘くすれば世祖大王の醜聞を内密に処理したと思われます。ゆえに王室の威厳を見せつけるのです。誰が君主で誰が臣下か明確に示さねばなりません。そうですよねお祖母様。」
感想
このドラマの燕山君はアホではなく賢いようですね。しかしそれがなぜ廃位になったのかを考えるとユ・ジャグァンの口車に乗せられほいほいと粛清したことに味をしめたことに原因があるように思います。ナレーションでは粛清によって王権が強まったとありますから、朝鮮の国においては粛清はやっておかないと王室の外戚の一族が権勢を得て国が滅びる原因となることは李氏朝鮮は高麗王朝の滅亡した原因として理解しているはずです。別に燕山君だけがとりわけ残虐だったわけではなくドラマの中では世祖もまた多くの者を粛清していますよね。それにしても朝鮮の学者はドラマ中は「パクサ」と呼んでいるように聞こえます。博士なのか学士なのかまではわかりませんけど。このとき燕山君は仁粋大王大妃と利害が一致しているということですね。