王と妃-176話-あらすじネタバレ感想
王と妃176話あらすじと感想 チャン・ノクスの誘惑
王の部屋を仁粋大王大妃が訪問しました。
「主上(チュサン)。人の命は尊いものです主上。多くの血が流されると主上は一生重荷を背負って生きねばなりません。」
「誰が君主で誰か臣下か分からせなければなりません。そうでしょお祖母様。」
「主上。私の負けです。自分の負けを認めます。」
「なんのことですか?」
「顔も知らぬ曾祖父が侮辱されたことがそんなにつらかったのですか?ふっふっふ。血は水より濃いと云いますがやはり主上は私の孫ですね。主上。もうおやめください。無分別な学者がしたことです。こらしめられて朝臣も目が覚めたでしょう。」
「許せというのですか?」
「主上。」
「世祖大王を辱めたやつらです。王室を貶めたのですよ。」
「主上。お手が冷たいですね。健康に気をつけてください。主上の祖父にあたる徳宗は真夏でも水のように手足が冷えていました。だから短命だったのです。主上。心が冷たいと手足も冷たくなるのです。私のせいですね。私が主上に温かく接してあげなかったから。廃妃の話をしましょう。主上の実母ですから知らねばならぬでしょう。」
「お祖母様。」
「罪があったにせよ主上の生みの母ではありませんか。無実の罪で殺されたとすれば彼女の汚名をそそぐ必要があります。でもそれにはまず成宗大王の過ちを追及し私も処罰しなければならないのでは?罪を犯して殺されたとすれば主上は何も知らぬほうがマシです。だから今は主上は蒸し返すべきではありません。しかしこの祖母が死ぬまで待ってください。私の死後に調べればよいでしょう。主上は実の祖母をも苦しめるのですか。二度と実母の話をしないでください。学者を釈放してください。草稿を直したのでそれで十分です。」
「最期のお願いですお祖母様。廃妃を復位させ父の隣に葬ってください。もう母の話はしませんから。」
「・・・・・・。」
「お祖母様。罪人の子を王と呼べるのですか。」
「百済の将師(チャンス)階伯(ケベク)は戦場へ赴く前に妻子の首を斬ったそうです。王なら将師以上に冷酷でなければなりません。君主が情にもろいと民に迷惑をかけます。君主は君主の尺度で物事を見るべきです。世祖大王が民と同じ尺度で世の中を見ていたら王位を守れませんでした。どうか聖君になってください主上ー(チュサーン)。」
仁粋大妃は部屋の外に控えていたシム・スグンにこうも言いました。
「キム・イルソンらが世祖大王を侮辱した罪は死罪に値します。ですが殺せません。草稿を理由に死刑にはできぬのです。主上をしっかり補佐なさい。」
「お祖母様は自分の尺度で私の母上を殺したのですね。はっはっはっは。はっはっはっは。」
燕山君はひとりつぶやき笑いました。仁粋大王大妃は燕山君の笑い声を聞いて王大妃の寝所に向かいました。
「王大妃に会いに行くわ。」
燕山君は都承旨シン・スグンに人事を命じました。
「都承旨に王命を下す。オ・セギョムとイ・グクトンとユン・スンらを罷免する。ハン・チヒョンを左議政にせよ。左議政のオ・セギョムはキム・イルソンの草稿を見逃そうとした。イ・グクトンらも処罰したいところだが今まの功績を認め罷免に留める。イ・グッキュンを左賛成、ユ・ジャグァンを崇禄武霊君(スンノンムリョングン)、シン・スグンにします。シン・スグンをイジョパンソんにします。ソン・セミョンを都承旨に、イ・セジャを判中枢府事(パンチュンチュブサ、有名無実の官庁の次官)、パク・ウォンジョンを吏曹参議(イジョチャミ、文官を管理する官庁の高官)に任命する。」
「殿下。パク・ウオンジョンは月山大君の義弟です。」
シン・スグンは燕山君に言いました。
「カン・ギソンを兵曹判書に、チョン・ミスを左承旨、ホン・シクを右承旨にする。」
王大妃を仁粋大王大妃は見舞いました。
「私は死にたくとも死ぬことができません。死ねぬがゆえにすまなかったという一言がなかなか言えません。」
仁粋大王大妃は言うと涙を拭いました。
準備でもしていたかのように相次いで人事が発表されました。仁粋大王大妃のいとこが左議政になりました。シン・スンソンが辞職上疏を出して以来領議政の座は空席でした。シン・スグンは吏曹判書となり人事を掌握しました。月山大君の義弟朴氏夫人の弟が吏曹参議(イジョチャミ)に命じられました。彼が中宗反正(チュンジョンパンジョン)を起こしたパク・ウォンジョンです。
王大妃の部屋。
「怒りを説いてください。でないと目を閉じて安らかにあの世に旅立てないでしょう。」
仁粋大王大妃は王大妃に言いました。
王大妃ハン氏は起き上がり仁粋大王大妃の手を握りました。
仁粋大王大妃は泣きました。
戌午士禍(ムオサファ)。このとき燕山君はまだ二十三歳でした。
燕山君はキム・イルソンらを処罰する命を下しました。
八つ裂きの刑から拷問、流刑まで残酷な刑罰が言い渡されユ・ジャグァンの立会のもと刑が執行されました。
燕山君は仮に行き見事に記事を射落としました。ジャウォンは燕山君を褒めました。すると両班の男たちが現れこういいました。
「見たところ平民ではなく士大夫のご子息のようだが人様の土地で狩りをするとは。ここはカン判書の土地だ。」
男は王に言いました。
「山の向こうもそうらしいがここもカン判書の土地か?」
「そうだ。」
「ならば他に狩りのできそうな場所は?」
「この近くにはありません。」
「どこもカン判書のものか。」
「功臣田だけでもこの倍はもらっている。痛い目に遭う前に帰りなさい。」
「土地はカン判書でも空を飛ぶ鳥はカン判書のものではないだろう。」
「何だと!」
男たちは農具を武器に構えました。
「貴様ら~!どなたか知っているのか。殿下だぞ。何をしている。奴らの首を斬れ。」
ジャウォンは部下に命じました。
「やめよ。地所が広いのはカン判書大監のせいではない。」
燕山君は引き返しました。
斉安大君(チェアンテグン)の家。
「はっはっはっは。はっはっはっは。全国の肥沃な土地は士大夫に独占されているのです。考えてください。世祖大王は科田制度を廃しましたが旧臣たちに反対されて功臣田と科田を与えました。土地を与えねば逆らうので仕方ありません。」
斉安大君(チェアンテグン)は笑いました。
「想像してましたがあれほどとは。」
「勲旧派ばかりか外戚に与えられた土地もです。」
「斉安叔父上。科田(カジョン)と功臣田を廃し返納させようと思うのですが。」
「はっはっはっは。はっはっはっは。いかに不可能のない殿下でもそれだけは無理です。はっはっは。殿下。王は大臣を治め大臣は民を治めますが土地がないと大臣らは楯突いてきます。」
「大臣のほうが王より金持ちなのに黙っていろというのですか。」
「世祖大王もできなかったことに殿下は挑まれるのですか?」
「王なら当然です。それとも女遊びをしろと?」
「私なら利口な王になっていたはずです。殿下。無礼な口を聞きました。どうぞお手打ちになさってください。」
「もっともな忠告です。私は王の努めを果たそうとするからお祖母様に嫌われるのでしょう。はっはっは。」
燕山君は酒を飲みました。
夜になり斉安大君(チェアンテグン)の家に妓生が呼ばれました。幾人もの妓生は舞を披露しました。
「斉安叔父上。あの娘はチャン・ノクスですか?」
「はい殿下。お気に召しましたか?」
「斉安叔父上の側女だそうですね。」
「私は芸事は教えましたが色ごとは教えていません。しかも喪中ですよ。」
「それならばチャン・ノクスを私にください。」
燕山君はチャン・ノクスと一緒に踊りました。
仁粋大王大妃は喪中の斉安大君(チェアンテグン)が燕山君と酒を飲み女遊びをしていると報告を受けました。仁粋大王大妃は月山大君夫人が燕山君を泊めたことで変な噂が立っていると夫人を叱りました。
月山大君夫人は涙を流しました。
「殿下は愛情に飢えておられるのです。私を実母のように思っています。」
ユン大妃は夫人をなぐさめました。
チョン貴人とオム貴人は仁粋大王大妃に燕山君と月山大君夫人の醜聞について話しました。
仁粋大王大妃は根も葉もない噂だと大声を出すと具合が悪くなりました。
月山大君の家。
月山大君夫人の弟パク・ウォンジョンは姉に「王子(燕山君の息子)を宮殿に帰してください。皆が誤解しています」と怒りました。
燕山君と王妃の長男は生後まも亡くなりました。燕山3年に生まれた王子は月山大君夫人朴氏が世話をすることになりましたが妙な噂が流れました。
燕山君はパク氏夫人に会いに来ました。
「叔母上。王子を抱いている叔母上を見ると母上を連想します。母上は私を抱いたことがないそうですね。私を引き離され非業の死を遂げたというのに私は恨みを晴らしてあげられませんでした。」
「孝思廟(ヒョサミョ、燕山君が実母のために建てた祠堂)をお建てになりお母様は成仏なさったでしょう。」
「私の母になってください。お仕えします。実母のかわりに孝行したいのです。母上も喜ばれるでしょう。受け入れてください。私は母の情を知らないのです。叔母上。」
燕山君は朴氏夫人の手を取りました。
「母上息子のユンです。母上の息子が王になったのです。見ておられますか。母上私を抱いてください。」
「ええ。オモニになります。殿下の母になって差し上げます。」
斉安大君(チェアンテグン)の家。
燕山君は目を覚ますとチャン・ノクスが笑いました。
「朝まで遊んでいってください媽媽。」
「けしからん女だ。斉安大君(チェアンテグン)はまだ喪中だぞ。」
「この世には3つの快楽があります。他人の女を娶る快楽、喪中に妓房で遊ぶ快楽、そして殿下は今夜快楽を3つとも味わえるのです。」
「下品な女だな。」
「本当に下品な女とは上品ぶりながら男を誘っている女です。」
「そなたは斉安大君(チェアンテグン)の女なのか?」
「大君様のお体は宦官とかわりありません。私は結婚していたので他人の女でもあり、夫が死んだので寡婦です。そしてこの家は喪中なので媽媽は3つの快楽を得られると言ったのです。」
「ネイニョン。誰に対してモノをいっておるのだ。」
「王様に言っているのです。」
「それなのに怖くはないのか?」
「女を抱いているときはどんな男も皆同じです。私を殺すなら先に着替えては?一夜で男の愛を得る女もいるのに私は無残に殺される運命です。」
「はっはっはっは。そうだな。お前と私は似たもの同士、下品な女んに下品な男ではないか。」
燕山君はチャン・ノクスを布団の中に入れました。
庭で立ち聞きしていた斉安大君(チェアンテグン)は安心したように笑うとその場を離れました。
宮殿。
チャン・ノクスは下賤な芸妓にすぎないが実録に何度も名前が登場する。燕山君は宮殿を追放されたので背徳行為が誇張されて書かれているにせよ燕山君がチャン・ノクスとともに非道な行いを重ねたのは事実でありました。
王妃の部屋。
シン・スンソンは「なんということだ」とチャン・ノクスが宮殿で囲われていることに嘆きました。
大王大妃の部屋。
「あの母にしてこの子ありですね。宮中には側室や尚宮、内人がたくさんいるのに外から芸妓を連れて来て淑媛(スゴン)にするとはね。私に嫌がらせをしているのでしょう。あの子の腹はお見通しです。」
王の部屋。
「チャン・ノクスを淑容(スギョン)にする。」
燕山君はシン・スグンに命じました。
シン・スグンは内官から王がカン判書の下僕に袋叩きにされそうになったと言われました。
「カン判書は一例です。ホン政丞は数万町歩の土地をもらい従四品の堂下官(タンハグァン)まで数万町歩(ちょうぶ)の科田(カジョン)を下賜(かし)されています。義父上も土地を賜っているし義兄上も同じですね。だから私を放っておいてください。私が妓生と戯れていたほうが皆も好きにできるでしょう。チャン・ノクスを淑媛(スゴン)にしようが嬪(ピン)にしようが大目に見てください。」
イム・サホンの家。
ユ・ジャグァンは王がどのようにチャン・ノクスと知り合ったか尋ねました。
「これは最期の機会だ。ハン・チヒョンは戌午士禍(ムオサファ)で勢力を増した。殿下は学者の恨みを買い大王大妃が得をしたのだ。廃妃媽媽の墓が移されたと信じているのか?もとの墓に盛り土がされただけだぞ。殿下の母君がまだあの墓におられるのにシン・スグンらは不届きなやつらだ。」
イム・サホンは言いました。
廃妃尹氏の墓。
廃妃尹氏の母は、墓らしくなった娘の墓の前に座っていました。下女は廃妃尹氏の母の気持ちを代弁して泣き崩れました。
感想
ドラマでの燕山君は賢いですね。燕山君が月山大君朴氏夫人のお手手に頬をすりすりする演技はアン・ジェモも苦手そうな顔をしていましたね。実は嫌だった、泣きの演技自体が苦手だったのかもしれません。でもその賢さをなぜ自滅する方向に使ってしまったのでしょう。王位に対する執着がなかったのかなぁ。斉安大君(チェアンテグン)も実は燕山君のことなどどうでもよくて、懿敬世子の王統自体を憎んでいたのかもしれません。