王と妃-最終回-186話
Title:王と妃Episode Title:加速する濫行
Episode no.186
Season:1
Year: 1998-2000
キャスト: チェ・シラ
監督:キム・ジョンソン
レーティング4(5段階中)
王と妃 最終回 186話 あらすじと感想 燕山君の最期
燕山君(ヨンサングン)は尚膳(サンソン)のキム・チョソンを殺しました。斉安大君(チェアンテグン)は燕山君を訪ねました。内官のキム・ジャウォンは王が泣いて部屋にこもっていると大君に言いました。
「主上(チュサン)は今もおこもりか?狩りもなさらぬのか。」
「はい。大君様。殿下は一日中泣きながら座っておいでです。」
「主上はようやく分別がつかれたのか。はっはっはっは。」
王の部屋。
斉安大君(チェアンテグン)が燕山君を訪ねると王は泣いていました。
「主上。泣いているのですか?」
「殺してしまいました。私は忠臣を手に掛けたのだ。」
「キム・チョソンのことですか。」
「一人しか残っていない忠臣でした。」
「はっはっは。仁粋大王大妃に挑んでいた時の気概を失い内官ごときに泣いておられるのですか。はっはっはっはっは。」
「父王(プワン)のようにかわいがってくださったのです。」
燕山君は自分を背負ってくれたキム・チョソンを思い出しました。
「血が取れぬのです。私の手にはキム・チョソンの血がこびりついています。」
「主上・・・。」
「私は国王として失格です。臣下たちは老いも若きも官職を返上し去っていきました。大殿の老いた内官は首を吊って死に大王大妃殿の老いた尚宮は毒薬を飲んで自決したそうです。私の下で禄を食むのはとうてい耐え難いから皆離れていくのでしょう斉安叔父上。私は国王の資格などありません。違いますか斉安叔父上。」
「主上。正直に申し上げます。主上は聖君ではありませんがそれほど悪い王ではありません。無論、戊午年と甲子年に事件があり、多くの者が死にました。しかし王権を掌握するためやむなく彼らを殺したのです。戌午士禍(ムオサファ)から見ましょう。大行大王(テヘンテワン)の成宗大王は晩年、旧臣を遠ざけ学者を重用なさいました。理想主義の学者たちが朝廷を動かしたのです。彼らは原則にはこだわりましたが現実を知りませんでした。そのため王権は弱体化しました。主上は戌午士禍(ムオサファ)で儒者の増長を抑え世祖大王が立て直した王権を強化することができました。主上の過ちは学者を殺したことではなく得た王権を正しく行使していないことです。甲子士禍(カプチャサファ)を振り返りましょう。甲子士禍(カプチャサファ)は亡くなられた母上斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)のために主上が起こされました。仁粋王后は斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)を妬んで追い落とそうとして旧臣は我が身可愛さに仁粋王后を攻めませんでした。斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)は理不尽な理由で廃妃にされました。夫婦喧嘩が原因で廃妃となったのです。毒薬を賜ったのは化粧をして王命を受けたからです。斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)の過ちは夫を愛しすぎたことです。夫を愛する気持ちは庶民も中殿媽媽も変わらぬでしょう。ですから斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)は謀殺されたとしか考えられません。主上。主上は国王としてすべきことをなさいました。なのになぜご自分をお責めになられるのですか。」
「私は皆に憎まれているのです。」
「主上・・・。」
「私は軽蔑されています。」
「世の中は皆主上を恐れています。主上は開国以来最も強い王です。今ならまだ間に合います。民に配慮してください。主上が母上を思っておられるように民を思いやるのです。そうすれば聖君になれます。」
「まだ手遅れではないというのですか斉安叔父上。」
「まずは王権を強化するのです。斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)の件が解決したので大后媽媽を大事になさってください。王子を世子にするのです。士禍(サファ)で連座した者は赦免なさるべきです。禁標(クムピョ)と採紅使(チェホンサ)の制度は廃すべきです。」
「私が母上のためにしたことは全部間違いだったと?」
「主上。」
「叔父上の言うとおりに王命を改めたら沽券(こけん)に関わります。」
「主上は失政を放っておくのですか?」
「失政だと?お帰りください叔父上。」
「主上(チュサーン)!」
「私は叔父上を殺したくありません。」
「私は死を覚悟して直言しに来たのです。」
「私は叔父上まで殺してまた汚名を残したくありません。」
「主上ー!まだ間に合います。」
斉安大君(チェアンテグン)はいつになく真面目な面持ちで燕山君に頭を下げました。
「もう下がってください!本当は斉安叔父上はお祖母様を憎んでいたのでは?叔父上の未来を奪ったお祖母様を叔父上も憎んでいたはずです。なのに私に聖君になれというのですか?ええ。わかりました。聖君になってみせます。はっはっはっは。はっはっはっは。」
燕山君は笑いました。
夜の王の部屋。
王妃(燕山君の妻)が部屋の前まで来ると中から淑媛(スグォン)チャン・ノクスの高らかな笑い声がしました。
「媽媽。禁標内は泥棒の隠れ場所になっているそうです。」
「私は人助けをしているのだぁ。」
燕山君は酔ってろれつの回らない口調で言いました。
「泥棒の情けをかけるのですか。」
「そうすれば聖君と言われるのだ。どのみち奴らはこそ泥で私は大泥棒だ。私は国王の資格もないのに王になった。国王の座を盗んだ大泥棒ではないか。」
「うふ。ならば私こそ大泥棒ですわ。」
「どうしてそう思うのだ。」
「王座を盗んだ国王を盗んだのですから私こそ大泥棒ではないですか。」
「たしかにそなたが一番の大泥棒だ。はっはっは。私はもう盗むものがなくてつまらん。」
「媽媽。盗むものならあるでしょう。人の妻を寝取ればよいのです。」
「おおそうだな。はっはっはっは。」
王妃シン氏は二人の会話を聞いて気分が悪くなり部屋に戻りました。
王妃シン氏の部屋。
「大殿にまで側室を入れて・・・・・・。」
困った王妃は兄のシン・スグンに言いました。
「媽媽。進言できるのは媽媽だけです。殿下に妻を寝取られたイ・ジャンゴンが謀反を企んでいるそうです。朝廷内にも不穏な動きがあります。」
「まさか・・・。」
「媽媽。この国は忠孝の国なのに殿下は肉親に不孝を働きました。そればかりかとても口にできぬような不義を働いたとの噂です。」
「月山大君府夫人様のことですか。」
「殿下が叔母上と姦通したから・・・。」
「おやめくださいお兄さま・・・。」
「謀反の名分はあります。」
王の部屋。
「媽媽。何を見つめておいでですか。」
「そうですとも。私は大泥棒です。王座は晋城大君(チンソンテグン)のものですから。」
燕山君は「主上は罪人の子です。主上の母親を毒薬で廃位して王子を廃さなかったのが私の失敗でした。私にとってはそれが一番の後悔です。はっ。はっはっはっは。」と言った仁粋大王大妃を思い出しました。
「こんな夜更けにどちらへ?」
チャン・ノクスが言うと燕山君は祖母の声を聴いた気がして剣を抜き庭に出ました。
寝殿の前の庭。
「私を殺さなかったのが一番の悔いですか。ならば私を殺せばいいでしょう。あ~!う~!敬陵(キョンヌン)へ行こう。私が墓を暴いてお祖母様の首を斬ってやる。」
燕山君は内官でたった一人の友人のキム・ジャウォンに言いました。
「媽媽ー!」
「そうすればご満足でしょう。孫に殺されていたらもっと同情されるはず。私の命を奪っていたら晋城が王になっていた。斬って差し上げます。お祖母様の墓を暴き首を斬って差し上げますとも!できぬとお思いですか!私はこの手で何人も殺してきた!うわ~!」
燕山君は暴れました。キム・ジャウォンは後ろから燕山君に抱きつきました。
「どかぬか!わ~!や~!」
燕山君は仁粋大王大妃を斬りました。するとキム・ジャウォンが口から血を吐いて倒れました。
「私はお祖母様を殺した罪人ですー!本望ですかお祖母様ー!歴史に汚名を残す不孝極まりない王になりましたーーー!わーはははははー。」
日中の大臣らの部屋。
政丞(チョンスン)たちは集まって話し合っていました。
「本当ですか左相大監(チャサンテガム)。殿下が乱心なされたとの噂は。」
大臣の一人が言いました。
「内官を殺すはずがないでしょう。」
領議政のユは言いました。
「すでに殿下はキム・チョソンを殺したではありませんか。」
「あ~どうしたものやら。」
「左相大監(チャサンテガム)。我々も殺されかねません。」
大臣の一人は左議政のシン・スグンに言いました。
王宮の一角。
「考えてみましたか?イ・ジャンゴンが兵を集めているそうです。イ・ジャングォンに先を越されたらどうするのですか。」
武霊君(ムリョングン)ユ・ジャグァンは通りがかってきたパク・ウォンジョン(月山大君の息子)を待ち構えて言いました。
「名分がない。」
「名分ならあるではないですか。殿下は乱心なさっています。それだけでも十分では?機に乗じるのです。私が先頭に立ちます。」
名誉職のユ・ジャグァンは何としてでも高い政治の職位を得たいのでした。
王の部屋。
兵曹判書のイム・サホンは燕山君を訪ねました。
「昨夜はお酒が過ぎたそうですね。」
「・・・・・・。」
「殿下は一晩中宮殿を歩き回れたとか。覚えておられませんか。」
「チャウォナー。チャウォンはいるか?聞こえぬのかネイノン。」
「殿下・・・お忘れになったのですか殿下。チャウォンは昨夜・・・。」
「チャウォンが昨晩どうしたのだ。言ってください。」
「殿下が手ずからチャウォンをお斬りになったことをお忘れですか?」
「・・・・・・。」
「殿下。」
「はっはっはっは。」
「殿下!」
「どうかしている。私がこの手でチャウォンを殺したと?私が?私が?はっはっはっはっは。はっはっっはっはっは。」
燕山君は悲しそうに笑いました。
イム・サホンは寝殿を出ました。
「チャウォナー。チャウォナーイノン(お前)。私の手で殺したのか?はっはっはっは。」
部屋の中から燕山君の悲しい泣き笑い声がしました。
燕山君は完全に常軌を逸していたのでありました。昇平府夫人朴氏(スンピョンププインパクシ)が自決しました。夫人は燕山君の叔父にあたる月山大君の夫人なので燕山君にとっては伯母に当たります。燕山君に月山大君朴氏夫人が貞操を奪われて自決したと野史に記録されています。ですが夫人は燕山君を献身的に世話していました。燕山君も彼女を実母のように慕っていたため史書を鵜呑みにはできません。パク死夫人の死は中宗反正(チュンジョンパンジョン)の中心人物パク・ウォンジョンに名分を与えることになりました。
王の部屋。
「叔母上が世を去られたですと?一体なぜ叔母上が自決されたのですか。」
燕山君はシン・スグンに尋ねました。
「殿下。イム・サホンを退け正しい政治をしてください。」
左議政のシン・スグンは心から燕山君に忠言しました。
「皆去っていきます。」
「殿下。」
「この座は呪われているのです。はっは。はっはっは。」
燕山君は悲しそうに笑いました。
王宮の一角。
燕山君はチャン・ノクスを傍に置いて二人きりで宴を開いていました。音楽に合わせて踊り子が舞ました。
「ノクスや。私が詩を作るから聞いてくれぬか。」
「下賤な女には媽媽の詩はわかりません。」
「卑しいからわかるはずだ。卑しい国王の詩だからな。」
「では聞かせてください。」
「書くものを持って来い。」
内官は膳を下げて美しく着飾った夫人たちが硯と筆を持ってきました。夫人は硯に水を入れ墨をすると燕山君に筆を渡しました。
燕山君は大きな紙に詩を書きました。
人生如草露曾合不多時
人生 露のごとくして交わりの時 短し
「何と書いたかわかるかノクスや。」
「字が読めたら領議政になってますわ。」
「はっ。はっはっは。お前が読んでみろ。何て書いてある?」
燕山君は笑うと着飾った若い夫人(外命婦(ウェミョンブ)の夫人)に紙を渡しました。
「人生露のごとくして交わりの時短し。」
若い夫人(既婚者)は詩を読み上げました。
「何て書いてある?」
「人生ははかないので会える時間は僅かです。」
夫人は上品に答えました。
「言葉の解釈は合っているがなにを言いたいかわかるか?ノクスにはわかるか?どうして泣いているのだ。」
「・・・・・・。人の出会いは縁です。」
「それで?」
「悪縁もあれば良縁もあります。」
「そのとおりだ。」
「縁が尽きれば人生も終わります。」
「それだけか?」
「殿下は別れの詩を書かれたのですね。ですが殿下はすでに別れの時が来ると予感し心の準備をしておられるのでしょう。」
チャン・ノクスは涙を流しました。
「ふっはっはっは。はっはっはっは。字が読めずとも私の心を読むとはノクスは李白に劣らぬ詩人だな。はっはっはっは。」
燕山君はチャン・ノクスの手を取り立ち上がりました。燕山君とチャン・ノクスは一緒に踊りました。
夜のシン・スグンの家。
武人の服に着替えたパク・ウォンジョンはシン・スグンに味方になるよう求めに来ました。
「大監。ご決断ください。このままではこの国が滅びると左相大監(チャサンテガム)もご存知でしょう。大勢に従ってください。大監がご賛成いただけるなら、晋城大君(チンソンテグン)を擁立します。晋城大君(チンソンテグン)は大監の娘婿なので、大監は王の義父になれますぞ。」
知中枢府事(チチュンチュブサ、名誉職)のパク・ウォンジョンは静かに言いました。
シン・スグンは目を閉じパク・ウォンジョンの話を聞いていました。
「私は(ナヌン)、何も聞かなかったことにする。」
「大監。」
「だから帰ってくれ。」
「機会を逃したら損ですぞ。大監。」
パク・ウォンジョンは剣を携えていったんシン・スグンの家を出ました。パク・ウォンジョンは部下に命じると、武装した男たちがシン・スグンの家に入りました。
「ぐあーーーーーーっ!」
家の中からシン・スグンの断末魔が聞こえてきました。
「行くぞ!」
パク・ウォンジョンは命じると馬に乗り反乱軍を率いて王宮を目指しました。
反乱軍は宮殿の塀に縄をかけて王宮に侵入し兵士を殺して門を開けました。
中宗反正(チュンジョンパンジョン)。燕山12年、1506年。
反乱軍は王宮の兵士と戦いました。武官と兵士たちは応戦するも反乱軍の勢いは止められませんでした。
うたた寝をしていた燕山君は目を覚ましました。
「廃王は玉璽を渡せ!」
ユ・ジャグァンの声が王の部屋の外から聞こえてきました。
「私を廃王と言ったのか?」
「そうだ。玉璽を渡さねば外に引きずり出すぞ。王室の体面を考えて命だけは助けてやる。王印を渡して今夜中に宮殿を出て行け。」
ユ・ジャグァンとパク・ウォンジョンらは王の部屋の扉を開けると燕山君が舞っていました。
「はっはっはっは。お望み通り廃王になりました。臣下に担ぎだされた新王が思うままに政治ができるわけがありません。はっはっはっは。はっはっはっは。」
燕山君は部屋の中で踊りました。
チャン・ノクスは宮殿の外につまみ出されて民になぶり殺されました。
翌日、世の中は一変していました。
赤い朝服を着た領議政のユ・スンとまだ武人の姿をしているユ・ジャグァンとパク・ウォンジョンは玉璽を晋城大君(チンソンテグン)の部屋に持って行きました。
「殿下。どうぞ玉璽をお受け取りください。」
ユ・ジャグァンは晋城大君(チンソンテグン)に言いました。母の大妃ユン氏は傍で嬉しそうに見守っていました。
「受け取れません。まだ兄上がおられるのに王になれません。」
「殿下。大妃媽媽のご命令により王を廃位し燕山君としました。殿下が早く王印を受け取り国王におなりください。」
ユ・スンは言いました。
「私は王位の簒奪者になりたくない。」
「殿下。王座は空けておけません。」
パク・ウォンジョンは言いました。
「兄弟の間を引き裂くのですか。」
「殿下。廃王は幾度と無く失政を重ねてきました。殿下の即位を万民は待ち望んでいます。すぐに大君は玉印をお収めください。」
ユ・スンは言いました。
「主上。遠慮しすぎはよくありません。受け得とってください。」
大妃ユン氏は慶びの笑みを隠せずに言いました。
「母上。義父上を殺した者たちです。義父上は公平無私な方でした。義父上のおかげで命を救われた者たちが大勢います。きっとこの者たちは兄上も殺すはずです。親兄弟を殺した者が立てた王にはなりたくありません。」
「お話はもっともですが昨夜のことは避けられませんでした。皆が酷いことをしたのは先の殿下が失政をしたせいです。考えなおして大君は王印を受け取ってください。」
大妃ユン氏は息子に言いました。
「殿下。」
領議政は言いました。
「約束してください。これ以上は人を殺さないと。」
「すぐにまんがかうにだ。殿下のご意向に従がわぬはずがありません。」
燕山12年9月2日。晋城大君(チンソンテグン)が王になりました。燕山君は喬桐県(キョドンヒョン)に送られました。これが中宗反正(チュンジョンパンジョン)です。
「千千歳。千千歳(チョンチョンセー)。」
文武百官は千歳を唱えました。
喬桐県(キョドンヒョン)。燕山君は海の音を聴きながら大人しく暮らしていました。
権力は仮面なようなものです。仮面を外すと平凡な顔が現れるように燕山君は平凡な人間に戻りました。
夜の島。
若い女性が燕山君の夕食の世話をしていました。
「お食事です。ずっとお肉がなくて・・・。」
「食べたくないのだ。」
「召し上がってください。見るに忍びないほどおやつれになられました。」
「はっはっは。餓死者の遺体は清らかだそうだな。」
「殿下。汁物だけでも召し上がってください。いかがですか殿下。」
「さっぱりしている。」
「もう少しどうぞ殿下。」
燕山君は粗末な食事を食べるとむせました。
「私がおすすめしたばかりに・・・。」
女性は飲み物を差し出しました。
「いいや。ノクスを思い出したのだ。ノクスと私は同じ膳につき庶民の夫婦のように笑いながら料理を食べさせ合ったものだ。ノクスにかかると私は子供のようだった。」
「私がお口に運びましょうか殿下。」
女性が言うと燕山君はうなずきました。女性は燕山君の口に匙で食事を運びました。燕山君はむせび泣きました。
夜の王宮。
「廃王が書いた本を持ってまいれ。灰にするのだ。それから史官を呼び燕山が書かせた偽りの記録を正させる。燕山の悪行を何もかも書かせてやる!」
パク・ウォンジョンは焚き火に書物を投げ込ませました。
パク・ウォンジョンは燕山君を憎んでいました。燕山君がなしたことはすべて痕跡を消されました。残されたのは燕山君の悪行の記録だけでした。
喬桐県(キョドンヒョン)の島。
女性は燕山君の世話を焼いていました。
「筆をお渡ししましょうか殿下。」
女性が言うと燕山君は頷きました。
燕山君は筆を取ると最期の力を振り絞り大きな紙に文字を書きました。
容恕
(ようじょ、許すこと)
「う・・・・。」
燕山君は口から血を吐いて亡くなりました。
王の部屋。
「先王の葬儀は国葬に準じるべきです。歴代の王の葬礼に劣らぬよう準備なさい。」
大妃ユン氏はパク・ウォンジョンに言いました。
「それはないません。大妃媽媽。」
パク・ウォンジョンは憎しみを込めて言いました。
「朝廷の朝臣が王室の葬儀に口出しするのですか。」
「・・・・・・。」
「殿下のご意向です。従ってください。」
「大妃媽媽。民たちは先王の非道な所業を恨んでいます。国葬にしたら何と言われると思いますか。」
新しく登用された若い大臣が言いました。
「国葬はなりません。君に降格されたので王子と同格に葬るべきです。」
また若くて新しく登用された別の大臣が言いました。
「いけません。廃王は罪人です。本来は毒殺されるべき者でした。遺体は喬桐県(キョドンヒョン)から動かしてはいけません。」
パク・ウォンジョンは釘を差しました。
「本当に冷酷ですね。先王は王位を失ったのにまだ貶める気ですか。」
大妃ユン氏は不快感を表しました。
喬桐県(キョドンヒョン)の島。
女性は燕山君に白い布を被せていると兵士が現れ女性が連れて行かれました。
「殿下ー!殿下ー!」
女性は悲鳴を上げました。
歴史書は燕山君を暴君として伝えています。勝者の記録です。
完。
感想
王と妃の最終回が終わりました。186話と随分と長いドラマでした。燕山君の実績がパク・ウォンジョンによって燃やされたというのは初めて知りました。史書を燃やしたという行為は歴史への冒涜でもありますが、これは中宗の王命だったのでしょうか。あるいは歴代の王の蛮行は意図的に消されて燕山君だけが悪く記されたということなのでしょうか。もしかすると王の中には世祖のように王族の夫人を我が物としたり成宗が於干同(オウドン)という妓生と付き合っていたかもしれないことを無問題とされていた王もいるのかもしれませんね。さてはて、最終回の燕山君はとても悲しそうでしたね。身内から愛されなくて可哀想な王様なことは間違いないのですが、それゆえに自分で自分の激情を治めることができませんでした。母が祖母に殺された苦しみは常人にはまったく理解できないことであり、仁粋大妃(インステビ)の犯した罪は自ら手をくださなずに命令しただけとしても、たとえようのない巨悪であるといえましょう。現代の価値観から見ると極悪人だらけの時代だったようですね。イム・サホンもユ・ジャグァンも時流に乗ろうとしたパク・ウォンジョンもかなりの悪党です。仁粋大妃(インステビ)に苦言を呈さない月山大君夫人朴氏もドラマ中では単なる偽善者でしたし大妃ユン氏も自分の息子が王になると決まって初めて残酷な本心を見せました。この「王と妃」の中で罪が浅いであろうという人物は、魯山君端宗と端宗を守ろうとしたソン・サンムンという学者あたりでしょうか。その彼らもまた罪がないとはいえ、描かれていない部分を推察すると善人ではないかもしれませんね。ちなみに、燕山君の息子の何人かの逝去年が1506年と燕山君が亡くなった年になっています。王子たちは処刑され王女は奴婢となりいたぶられたであろうことが想像できます。チャン・ノクスはドラマ中では民に殺されましたが歴史では反乱軍に殺されたようです。キム・ジャウォンもドラマ中で燕山君に斬られましたが、歴史では反乱軍に殺されたそうです。成宗に登用されたパク・ウォンジョンは燕山君に二度も政治の場から排除されており、かなりの恨みが溜まっていたことが伺われますが中宗反正(チュンジョンパンジョン)の四年後に急死したおかげで中宗への中宗反正(チュンジョンパンジョン)の功臣らの影響力は抑えられたと考えられますが中宗は政治の主導権を発揮できなかったようです。