王と妃-182話-あらすじネタバレ感想
Title:王と妃
Episode Title:根比べ Episode no.182 Season:1 Year: 1998-2000 キャスト: チェ・シラ 監督:キム・ジョンソン レーティング4(5段階中) |
王と妃182話あらすじと感想 根比べ
仁粋大王大妃(インスウテワンテビ)は息子の嫁の月山大君夫人パク氏に自分の顔を拭わせました。
王の部屋。
燕山君は粛清により祖母の仁粋大王大妃も肝を冷やしただろうと思いました。燕山君は母の廃妃尹氏がめかしこんでいたと嘘を先王に報告した内官と報告させた者(仁粋大王大妃)も罰するとシン・スグンに言うと部屋の外で立っていた老いたパク内官は震えました。
大王大妃の部屋。
「私は死ぬまで水一滴も飲まないと決めたのよ。主上は私を烏の餌にするに違いない。烏が食べきれるように痩せておかねば。
仁粋大王大妃は自分を心配する月山大君夫人とシン・スグンに言いました。月山大君夫人は泣き出しました。
「そなたは泣き虫ね。若くして夫に死なれ十分泣いたでしょうに。まだ涙が枯れていなかったの?出て行きなさい。」
月山大君夫人は退室し、シン・スグンが部屋に残りました。
「廃妃に・・・何の罪があったの。あったとすれば王子を産んだ罪だけだわ。」
「媽媽・・・。」
「廃妃にもう一つ罪があったとすれば嫉妬でしょう。でも嫉妬しない女などこの世にいるものですか。」
「媽媽。ではなぜユン氏を廃したのですか。お答えください媽媽。」
「理由なら言ったでないの。王子を産んだのが廃妃の罪だと。どういう意味かまだわからないの?あっはっはっはっは。」
王の部屋。
「なぜ答えない。斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)が実家にいた時、化粧していたと虚偽の報告をした内官は誰だ。私がその内官に嘘を強要した尚宮も捜し出しはらわたをえぐりだしてやる。そうすれば斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)の魂も慰められるだろう。」
燕山君は老いたパク内官に言いました。部屋の外にいたパク内官は震え上がり、キム・ジャウォンは意地悪く笑いました。イム・サホンは老いた内官と尚宮を処刑しても斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)媽媽の慰めにならないだろうと言いました。
燕山君はイム・サホンに同意し大王大妃にそなえるべきだと言いました。
大王大妃の部屋。
「もし成宗が早世していたら廃妃が大妃になっていたのよ。王の母というのはどれほど卑しくて無学でも大妃の座が約束されている。」
大王大妃はシン・スグンに言いました。
「だから死を与えられたのですか。媽媽。私にはそのお気持ちがわかりません。」
シン・スグンは小声で言いました。
「宮殿ごと廃妃に奪われるところだったのよ!ハン・ミョンフェの娘が早世したとき気の毒だったけど悲しくはなかったわ。次の中殿は容姿端麗で性格が穏やかだったら誰でも良かったわ。士大夫(サデブ、高官)の娘よりも没落した両班の娘のほうが好都合だったのです。だから廃妃を王妃に選んだのです。でもその判断がむしろ仇となってしまいました。廃妃はとんだ誤算です。」
「ですが殺すまでは・・・。」
「中殿を廃そうとしたらどうなると思う?王子の母中殿(チュンジョン)を廃するとなると朝廷の重臣どもが立ち上がり反対の声をあげるに違いない。だけど力で反対を押し切り中殿を廃したら・・・。そうすれば大臣たちは重荷を背負うことになる。皆王子の母中殿の廃位に賛成したという罪悪感をずっと抱かせることができる。そして王子が成長していくにつれ負わされた重荷はどんどん悪くなる・・・。はっはっっはっっはっは。はっはっはっはっはっはっは。」
「廃妃を殺さなくても誰も謀反を企てません。」
シン・スグンは正直に言いました。部屋の外では月山大君夫人朴氏と女官たちが話を聴いていました。
「文宗大王(ムンジョンテワン)をご覧なさい!」
仁粋大妃(インステビ)は怒号を上げました。
「文宗が病弱だったからキム・ジョンソやファンボ・インらが威勢を振るいだしたのよ。王を宮殿に閉じ込め自由勝手に振舞っていた。王が弱いと知ると臣下は図に乗り始めるのよ。でもそれを正したのが世祖大王です。睿宗をご覧なさい。睿宗は病弱だからナム・イの謀反が起きた。成宗が王座にいた二十五年間は国は泰平だった。楽なことではなかったわ。成宗が即位したての頃はハン・ミョンフェやチョン・チャンソンらが幅を効かせていたから。世祖大王の功臣どもが王室を取り囲んでいた。その気になれば議政府署事制も施行させたはず。まだ若い魯山君を王に据え天下を操っていたキム・ジョンソと同類よ。そんな連中を皆抑えることができた。息一つさえ自由にできないようにね。廃妃が死んだお陰だわ。」
仁粋大王大妃はいじわるそうに笑いました。
王の寝殿の前。
燕山君は老いたパク内官を蹴り飛ばしました。
「お助けください媽媽。私めはただ大王大妃様に従っただけです。」
「だから大王大妃殿へ一緒に行ってもらう。斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)の様子についてお祖母様に嘘を言わされたとお祖母様と私の前で証言せよ。」
燕山君は輿に乗り大王大妃殿へ向かいました。大王大妃のところへ行きたくないパク内官は縄で縛られ引きずられて連れて行かれました。
大王大妃の部屋。
「私はすべて胸の内を明かしました。私とて好きでしたことではないわ。何かと難癖つけて息子の妻を廃止毒薬を飲めを命じるなんて好きでしたと思いますか?」
仁粋大王大妃はシン・スグンに言いました。
「しかし・・・。」
「晋城大君(チンソンテグン)を守ってあげてください。晋城大君(チンソンテグン)の身を守れるのは大監(テガム、だいかん)だけです。」
大妃の部屋。
「行くぞ。大王大妃媽媽を守らねば。」
大妃ユン氏は晋城大君(チンソンテグン)を連れて大王大妃殿へ向かいました。
大王大妃の部屋。
「何?主上と和解しろと?私が主上に謝罪しろと?」
「媽媽。晋城大君(チンソンテグン)のためには・・・。」
シン・スグンは仁粋大妃(インステビ)に言いました。
「私がすがっても主上は晋城大君(チンソンテグン)を生かしません。」
「媽媽。殿下は既に大王大妃媽媽に狼藉を働きました。つまり殿下は罪人の子という足かせのかわりに不孝者という汚名を着たのです。」
「だから許しを請いたくないのです。私の真意がわかりますか?私が主上に殺されようとも主上を不孝者にしておかねば晋城大君(チンソンテグン)を守れません。私の真意が分かりましたか?」
大王大妃殿の門が開き、燕山君は仁粋大王大妃の寝殿に入りました。
「殿下はパク内官とイム尚宮を殺したうえで大王大妃様の罪を問うとおっしゃっています。早くお逃げください。」
内官は慌てて仁粋大王大妃に言いました。
「お祖母様。悪賢い奴がいたものです。この老いた内官が斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)の様子について成宗大王に嘘の報告をしたのはお祖母様のご指示だったと嘘を言ったのです。どうかこの者を罰してください。」
燕山君は庭から祖母に言いました。
「イム尚宮はいるか。部屋に入りなさい。」
仁粋大妃(インステビ)は言いました。
「媽媽。媽媽にご迷惑をおかけしたくありません。」
イム尚宮は部屋の外で泣きました。
「入りなさい。そなたの命は問題では無いわ。」
月山大君夫人は言いました。イム尚宮は泣き崩れました。
大王大妃殿の庭。
「主上。お帰りください。」
大妃ユン氏と晋城大君(チンソンテグン)が現れ燕山君に言いました。
「私はイム尚宮をここに呼び自決させようと思ったが晋城そなたがやれ。こやつとイム尚宮が手を組みお祖母様を惑わせたのだ。だから斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)が毒薬を下賜されたのだ。そなたがやらぬのなら私がやろう。夫人は口をはさむな。王の機嫌を損ねたら私の母上のように毒薬を飲まされるぞ。私も父王と同じことをやりかねん。私は成宗大王の息子だからな。」
燕山君は大妃ユン氏を牽制しました。
「ここまでです。お帰りください主上。」
月山大君夫人朴氏は厳しい口調で燕山君に言いました。
「お通ししなさい。まさか私を殺さぬでしょう。すでに私を突き飛ばしたのですからそれ以上の不孝はしないはずです。はっ。」
仁粋大王大妃は言いました。
「イム尚宮をお渡しください。」
燕山君は祖母に言いました。
「ご自分連れて行ってください主上。」
仁粋大王大妃は燕山君を挑発しました。
「媽媽。国のことをお考えください。こんなことで国が守れるとお思いですか。」
月山大君夫人は燕山君の前に平伏しました。
「あの女(イム尚宮)を殺してやる。お祖母様は私を憎んでいます。晋城大君(チンソンテグン)を王にしたいのでしょう。ええ私はお見通しです。だから詫びようとしないのですね。たった一言で住むではないか。母上を殺したのは私だ、そう言えば済むではありませんか!」
燕山君は剣を抜きました。
「そんなことが言えるものですか・・・主上・・・・。」
仁粋大王大妃は部屋の中でつぶやきました。
燕山君は剣を捨てました。
「そんなことが言えるものですかチュサーン!ヒャッハッハッハ。ヒャッハッハッハ。」
仁粋大妃(インステビ)は意地悪く笑うとこう言いました。
「さらなる重荷を背負わせてやりましょう主上。廃妃が負ったものよりもっと重い荷を背負わせてやります。
夜。
廃妃尹氏の母シン氏は巫女に祈っていると巫女に廃妃尹氏の霊が乗り移りました。
「お母様。お母様。これを見て。お母様にはこの血が見えませんか?私が死ぬときに吐いた血です。幼い息子を置いて死なねばならぬと思うとあまりにも無念で泣きながら吐いた血ではありませんか母上。」
巫女は血を吐きました。
廃妃尹氏の弟も驚いて目を丸くしました。
「媽媽の恨みは殿下がすべて晴らしました。ですからこの世への未練はお捨てください。」
シン氏の下女の老婆は廃妃尹氏の霊に言いました。
「まだ無念は晴れていない。あの老婆が生きているではないの。恨みは残っているわ。お偉い官僚が何人死のうとも・・・。」
シン氏は恨みを募らせ巫女と下女と一緒に仁粋大王大妃を呪いました。
大妃ユン氏の部屋。
シン・スグンは安心するようにユン氏に言いました。
「殿下は聡明なお方です。正気は失っていません。殿下は十年も耐えたのです。母上の無念をお知りになったのはきっと十年以上前でしょう。時が来るのを待ち殿下はようやく怒りを表に出しました。これで終わりでしょう。殿下は大王大妃様をおそれています。もう三十近い今まで頭の上がらなかった存在です。恐ろしいでしょう。」
「私は主上が怖いわ。」
「本当に恐ろしいのは大王大妃媽媽です。実に恐ろしいお方です。」
大妃ユン氏の庭。
「なぜお祖母様が恐ろしいのか教えてください。」
晋城大君(チンソンテグン)はシン・スグンに尋ねました。
「夫を亡くされた大王大妃様が屋敷へ戻った後、自分の肉を子に与えるクモのように生きるとおっしゃったのです。大王大妃媽媽は今、そのような気持ちで大君を守ろうとしているのです。さあ。夜道は暗いです。ご一緒しましょう。」
日中の宮殿。
新たな人事が発表されました。
兵曹参判ユン・グ。
「こんな人事があるか!」
ユ・ジャグァンは人を陥れて暗躍してきた自分が出世できなくて腹を立てました。
ユン・グの家。
「誰のお陰で出世できたかわかる?媽媽が流した血のおかげで兵曹参判になれたのよ。宮殿の中は悪賢い大王大妃が今も大きな顔をして権力の座にいる。いつ上監媽媽(サンガンマーマー)のお命を狙うともわからないわ。命にかえても殿下を守るのよ。」
廃妃尹氏の母シン氏は息子のユン・グに言いました。
「はい。母上。」
「もう少しの辛抱です。上監媽媽(サンガンマーマー)があの悪賢い老婆の首を斬り媽媽の墓前に供えてくれるでしょう・・・。」
王の部屋。
燕山君はチャン・ノクスと膳を囲んでいました。二人の大臣が同席していました。
「ようこそ叔父上。」
「殿下。私兵曹参判ユン・グ、殿下のご恩恵によりご挨拶を・・・。」
「結構です叔父上。おすわりください。格式張った挨拶など不要です。そうではないですか左相(チャサン、左議政)。王と臣下に距離がありすぎてはならん。」
「すぐに、まんがかうないだ(おっしゃるとおりでございます)・・・。」
左議政は言いました。
「当然のことを言ったまでだ。」
「まんがかうないだチューナー。」
「まんがかぐぎごはんぐぎごという堅苦しい言い方はやめよ。なあノクスや。」
燕山君はチャン・ノクスの肩を抱きました。
「うっふっふ。」
「私は人の関わりにおいて情を大事にしたい。ところで右相(ウサン、右議政)はどうして黙ったままなのだ?」
「ふぁんごんはおな、チューナー(おそれながら)・・・。」
右議政は言いかけました。
「ふぁんぐぎごまんぐぎごと言わないでください。」
「私を右議政に任じるとの人事とお取り下げください。このような破格の人事は前代未聞です。私は・・・。」
右議政ホ・チムは王に言いました。
「私に仕えたくないというのですか?」
「非常に責任の思い役職ですので・・・。」
「では叔父上を右相(ウサン、右議政)にしても?政丞など大した役職ではない。母上がお祖母様に陥れられても政丞は皆黙っていた。」
「殿下。右相(ウサン、右議政)が辞退を申し出たのは・・・。」
左議政のウ・スンは言いかけました。
「今も昔と同じだ。正しい諫言をする臣下がおらぬ。常識ある大臣なら大王大妃の処罰を求めるはずだ。何も言わぬ政丞は判書など無用の長物ではないですか。犬や牛に任命したほうがマシです。大王大妃を罪に問うべきです。それが国のためではありませんか。」
退室した左議政はその声を聞いて腰を抜かしました。右議政は左議政を支えて帰りました。
「見ていてください叔父上。そのうちよい知らせが届くでしょう。」
イム・サホンの家。
ユ・ジャグァンはこのことをイム・サホンに伝えました。イム・サホンは笑いました。
「正西品の判書が右参賛(ウチャムチャン)も左参賛(チャチャムチャン)も越えて右議政とは。到底納得できん。廃妃の弟は兵曹参判だぞ。」
ユ・ジャグァンは言いました。
「ならば私を見てみよ武霊君(ムリョングン)ユ・ジャグァン大監。私イム・サホンは何の官職にも就かせてもらえずにいるではないか。もう少しまとう。殿下も武霊君(ムリョングン)ユ・ジャグァン大監のことは考えておろう。」
「別に出世したいとは思っておらん。殿下から何のお声もかからぬことが残念なのだ。」
チャン・ノクス淑媛(スギョン)の部屋。
イム・サホンからのの手紙を王に渡したとチャン・ノクスは言いました。イム・サホンはユ・ジャグァンは庶子なので冷酷だと言いました。イム・サホンは兵曹判書にしてくれとチャン・ノクスに頼みました。
「殿下をお守りするには何よりも兵権が大事です。殿下にお伝え下さい。警戒を緩めぬようにと。朝廷には仁粋大王大妃の配下が大勢います。彼らを一掃しなければ。」
「下っ端を捕らえてどうなります。まずは頭目を倒すべきでしょう。」
「淑媛(スギョン)媽媽。仁粋大王大妃は長くはありません。不要な騒動は起こさぬほうが。」
「それは殿下のお考えとは違います。殿下の狙いは大王大妃なのです。」
「淑媛(スギョン)媽媽。枝をすべて切り落せば木は徐々に死んでいきます。」
「根が残っていれば木は再び葉をつけます。大監。兵判で満足してはいけません。殿下に頼めば領相(ヨンサン、領議政)にだってしていただけます。」
イム・サホンは頼む相手を間違えたと思い首を傾げ先行きを懸念して帰りました。
宮殿の庭。
燕山君は踊り子に舞を踊らせ自分は弓を的に当てて遊んでいました。
「ご命中~。」
音楽が鳴り踊りが舞われました。
斉安大君(チェアンテグン)がやって来ました。
「殿下。見事な腕前ですな。百発百中の秘訣でもあるのですか?」
「斉安叔父上ようこそ。お祖母様のお顔と思えばよいのです。斉安叔父上もいかがですか?」
「そうしましょう。」
斉安大君(チェアンテグン)は弓を構えました。
「斉安大君(チェアンテグン)が王になれなかったのはお祖母様のせいです。そうでしょう?」
斉安大君(チェアンテグン)は矢を的に当てました。
「ご命中~。」
大妃殿。
大妃殿にも楽箏が聞こえてきました。
「こんな近くで楽器を鳴らすなんて・・・。」
月山大君夫人は不快感を表しました。
「殿下は斉安大君(チェアンテグン)様と的を大王大妃様に見立てて遊んでおられます。」
内官は泣き崩れて報告しました。
仁粋大王大妃はイム尚宮に食事を食べさせてもらっていました。
「明日は、肉の汁物をちょうだい。早く元気にならねば。晋城大君(チンソンテグン)を不安にしてしまう。」
夜の王の部屋。
「私が大王大妃を罪に問えと大臣らに言ったのに何の音沙汰もないとは。」
燕山君は斉安大君(チェアンテグン)と酒を飲みながら不満気に言いました。
「はっはっはっはっはっは。それは無理な話です。」
斉安大君(チェアンテグン)は清々しく笑いました。
「なぜそう思うのですか?」
「官僚は大王大妃様を恐れてきた連中です。ずっと仁粋大妃(インステビ)のご機嫌ばかり伺ってきました。大王大妃を罪に問う勇気などありません。忘れるのが賢明です。もう長くはありません。」
「チャウォンや。チャウォンよいるか?私が今大王大妃殿へ参る。」
燕山君は輿に乗って行きました。
「はっはっはっは。ええ。主上だけです。祖母を罰する無茶ができるのは主上だけですよ。」
残った斉安大君(チェアンテグン)は笑いました。
「私がお祖母様を罰してやるのだ!」
燕山君は斉安大君(チェアンテグン)に触発されて意気込みました。
大妃の部屋。
「行くぞ。大王大妃媽媽を守らねば。」
大妃ユン氏は晋城大君(チンソンテグン)を連れて大王大妃殿へ向かいました。
大王大妃の部屋。
「何?主上と和解しろと?私が主上に謝罪しろと?」
「媽媽。晋城大君(チンソンテグン)のためには・・・。」
シン・スグンは仁粋大妃(インステビ)に言いました。
「私がすがっても主上は晋城大君(チンソンテグン)を生かしません。」
「媽媽。殿下は既に大王大妃媽媽に狼藉を働きました。つまり殿下は罪人の子という足かせのかわりに不孝者という汚名を着たのです。」
「だから許しを請いたくないのです。私の真意がわかりますか?私が主上に殺されようとも主上を不孝者にしておかねば晋城大君(チンソンテグン)を守れません。私の真意が分かりましたか?」
大王大妃殿の門が開き、燕山君は仁粋大王大妃の寝殿に入りました。
「殿下はパク内官とイム尚宮を殺したうえで大王大妃様の罪を問うとおっしゃっています。早くお逃げください。」
内官は慌てて仁粋大王大妃に言いました。
「お祖母様。悪賢い奴がいたものです。この老いた内官が斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)の様子について成宗大王に嘘の報告をしたのはお祖母様のご指示だったと嘘を言ったのです。どうかこの者を罰してください。」
燕山君は庭から祖母に言いました。
「イム尚宮はいるか。部屋に入りなさい。」
仁粋大妃(インステビ)は言いました。
「媽媽。媽媽にご迷惑をおかけしたくありません。」
イム尚宮は部屋の外で泣きました。
「入りなさい。そなたの命は問題では無いわ。」
月山大君夫人は言いました。イム尚宮は泣き崩れました。
大王大妃殿の庭。
「主上。お帰りください。」
大妃ユン氏と晋城大君(チンソンテグン)が現れ燕山君に言いました。
「私はイム尚宮をここに呼び自決させようと思ったが晋城そなたがやれ。こやつとイム尚宮が手を組みお祖母様を惑わせたのだ。だから斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)が毒薬を下賜されたのだ。そなたがやらぬのなら私がやろう。夫人は口をはさむな。王の機嫌を損ねたら私の母上のように毒薬を飲まされるぞ。私も父王と同じことをやりかねん。私は成宗大王の息子だからな。」
燕山君は大妃ユン氏を牽制しました。
「ここまでです。お帰りください主上。」
月山大君夫人朴氏は厳しい口調で燕山君に言いました。
「お通ししなさい。まさか私を殺さぬでしょう。すでに私を突き飛ばしたのですからそれ以上の不孝はしないはずです。はっ。」
仁粋大王大妃は言いました。
「イム尚宮をお渡しください。」
燕山君は祖母に言いました。
「ご自分連れて行ってください主上。」
仁粋大王大妃は燕山君を挑発しました。
「媽媽。国のことをお考えください。こんなことで国が守れるとお思いですか。」
月山大君夫人は燕山君の前に平伏しました。
「あの女(イム尚宮)を殺してやる。お祖母様は私を憎んでいます。晋城大君(チンソンテグン)を王にしたいのでしょう。ええ私はお見通しです。だから詫びようとしないのですね。たった一言で住むではないか。母上を殺したのは私だ、そう言えば済むではありませんか!」
燕山君は剣を抜きました。
「そんなことが言えるものですか・・・主上・・・・。」
仁粋大王大妃は部屋の中でつぶやきました。
燕山君は剣を捨てました。
「そんなことが言えるものですかチュサーン!ヒャッハッハッハ。ヒャッハッハッハ。」
仁粋大妃(インステビ)は意地悪く笑うとこう言いました。
「さらなる重荷を背負わせてやりましょう主上。廃妃が負ったものよりもっと重い荷を背負わせてやります。
夜。
廃妃尹氏の母シン氏は巫女に祈っていると巫女に廃妃尹氏の霊が乗り移りました。
「お母様。お母様。これを見て。お母様にはこの血が見えませんか?私が死ぬときに吐いた血です。幼い息子を置いて死なねばならぬと思うとあまりにも無念で泣きながら吐いた血ではありませんか母上。」
巫女は血を吐きました。
廃妃尹氏の弟も驚いて目を丸くしました。
「媽媽の恨みは殿下がすべて晴らしました。ですからこの世への未練はお捨てください。」
シン氏の下女の老婆は廃妃尹氏の霊に言いました。
「まだ無念は晴れていない。あの老婆が生きているではないの。恨みは残っているわ。お偉い官僚が何人死のうとも・・・。」
シン氏は恨みを募らせ巫女と下女と一緒に仁粋大王大妃を呪いました。
大妃ユン氏の部屋。
シン・スグンは安心するようにユン氏に言いました。
「殿下は聡明なお方です。正気は失っていません。殿下は十年も耐えたのです。母上の無念をお知りになったのはきっと十年以上前でしょう。時が来るのを待ち殿下はようやく怒りを表に出しました。これで終わりでしょう。殿下は大王大妃様をおそれています。もう三十近い今まで頭の上がらなかった存在です。恐ろしいでしょう。」
「私は主上が怖いわ。」
「本当に恐ろしいのは大王大妃媽媽です。実に恐ろしいお方です。」
大妃ユン氏の庭。
「なぜお祖母様が恐ろしいのか教えてください。」
晋城大君(チンソンテグン)はシン・スグンに尋ねました。
「夫を亡くされた大王大妃様が屋敷へ戻った後、自分の肉を子に与えるクモのように生きるとおっしゃったのです。大王大妃媽媽は今、そのような気持ちで大君を守ろうとしているのです。さあ。夜道は暗いです。ご一緒しましょう。」
日中の宮殿。
新たな人事が発表されました。
兵曹参判ユン・グ。
「こんな人事があるか!」
ユ・ジャグァンは人を陥れて暗躍してきた自分が出世できなくて腹を立てました。
ユン・グの家。
「誰のお陰で出世できたかわかる?媽媽が流した血のおかげで兵曹参判になれたのよ。宮殿の中は悪賢い大王大妃が今も大きな顔をして権力の座にいる。いつ上監媽媽(サンガンマーマー)のお命を狙うともわからないわ。命にかえても殿下を守るのよ。」
廃妃尹氏の母シン氏は息子のユン・グに言いました。
「はい。母上。」
「もう少しの辛抱です。上監媽媽(サンガンマーマー)があの悪賢い老婆の首を斬り媽媽の墓前に供えてくれるでしょう・・・。」
王の部屋。
燕山君はチャン・ノクスと膳を囲んでいました。二人の大臣が同席していました。
「ようこそ叔父上。」
「殿下。私兵曹参判ユン・グ、殿下のご恩恵によりご挨拶を・・・。」
「結構です叔父上。おすわりください。格式張った挨拶など不要です。そうではないですか左相(チャサン、左議政)。王と臣下に距離がありすぎてはならん。」
「すぐに、まんがかうないだ(おっしゃるとおりでございます)・・・。」
左議政は言いました。
「当然のことを言ったまでだ。」
「まんがかうないだチューナー。」
「まんがかぐぎごはんぐぎごという堅苦しい言い方はやめよ。なあノクスや。」
燕山君はチャン・ノクスの肩を抱きました。
「うっふっふ。」
「私は人の関わりにおいて情を大事にしたい。ところで右相(ウサン、右議政)はどうして黙ったままなのだ?」
「ふぁんごんはおな、チューナー(おそれながら)・・・。」
右議政は言いかけました。
「ふぁんぐぎごまんぐぎごと言わないでください。」
「私を右議政に任じるとの人事とお取り下げください。このような破格の人事は前代未聞です。私は・・・。」
右議政ホ・チムは王に言いました。
「私に仕えたくないというのですか?」
「非常に責任の思い役職ですので・・・。」
「では叔父上を右相(ウサン、右議政)にしても?政丞など大した役職ではない。母上がお祖母様に陥れられても政丞は皆黙っていた。」
「殿下。右相(ウサン、右議政)が辞退を申し出たのは・・・。」
左議政のウ・スンは言いかけました。
「今も昔と同じだ。正しい諫言をする臣下がおらぬ。常識ある大臣なら大王大妃の処罰を求めるはずだ。何も言わぬ政丞は判書など無用の長物ではないですか。犬や牛に任命したほうがマシです。大王大妃を罪に問うべきです。それが国のためではありませんか。」
退室した左議政はその声を聞いて腰を抜かしました。右議政は左議政を支えて帰りました。
「見ていてください叔父上。そのうちよい知らせが届くでしょう。」
イム・サホンの家。
ユ・ジャグァンはこのことをイム・サホンに伝えました。イム・サホンは笑いました。
「正西品の判書が右参賛(ウチャムチャン)も左参賛(チャチャムチャン)も越えて右議政とは。到底納得できん。廃妃の弟は兵曹参判だぞ。」
ユ・ジャグァンは言いました。
「ならば私を見てみよ武霊君(ムリョングン)ユ・ジャグァン大監。私イム・サホンは何の官職にも就かせてもらえずにいるではないか。もう少しまとう。殿下も武霊君(ムリョングン)ユ・ジャグァン大監のことは考えておろう。」
「別に出世したいとは思っておらん。殿下から何のお声もかからぬことが残念なのだ。」
チャン・ノクス淑媛(スギョン)の部屋。
イム・サホンからのの手紙を王に渡したとチャン・ノクスは言いました。イム・サホンはユ・ジャグァンは庶子なので冷酷だと言いました。イム・サホンは兵曹判書にしてくれとチャン・ノクスに頼みました。
「殿下をお守りするには何よりも兵権が大事です。殿下にお伝え下さい。警戒を緩めぬようにと。朝廷には仁粋大王大妃の配下が大勢います。彼らを一掃しなければ。」
「下っ端を捕らえてどうなります。まずは頭目を倒すべきでしょう。」
「淑媛(スギョン)媽媽。仁粋大王大妃は長くはありません。不要な騒動は起こさぬほうが。」
「それは殿下のお考えとは違います。殿下の狙いは大王大妃なのです。」
「淑媛(スギョン)媽媽。枝をすべて切り落せば木は徐々に死んでいきます。」
「根が残っていれば木は再び葉をつけます。大監。兵判で満足してはいけません。殿下に頼めば領相(ヨンサン、領議政)にだってしていただけます。」
イム・サホンは頼む相手を間違えたと思い首を傾げ先行きを懸念して帰りました。
宮殿の庭。
燕山君は踊り子に舞を踊らせ自分は弓を的に当てて遊んでいました。
「ご命中~。」
音楽が鳴り踊りが舞われました。
斉安大君(チェアンテグン)がやって来ました。
「殿下。見事な腕前ですな。百発百中の秘訣でもあるのですか?」
「斉安叔父上ようこそ。お祖母様のお顔と思えばよいのです。斉安叔父上もいかがですか?」
「そうしましょう。」
斉安大君(チェアンテグン)は弓を構えました。
「斉安大君(チェアンテグン)が王になれなかったのはお祖母様のせいです。そうでしょう?」
斉安大君(チェアンテグン)は矢を的に当てました。
「ご命中~。」
大妃殿。
大妃殿にも楽箏が聞こえてきました。
「こんな近くで楽器を鳴らすなんて・・・。」
月山大君夫人は不快感を表しました。
「殿下は斉安大君(チェアンテグン)様と的を大王大妃様に見立てて遊んでおられます。」
内官は泣き崩れて報告しました。
仁粋大王大妃はイム尚宮に食事を食べさせてもらっていました。
「明日は、肉の汁物をちょうだい。早く元気にならねば。晋城大君(チンソンテグン)を不安にしてしまう。」
夜の王の部屋。
「私が大王大妃を罪に問えと大臣らに言ったのに何の音沙汰もないとは。」
燕山君は斉安大君(チェアンテグン)と酒を飲みながら不満気に言いました。
「はっはっはっはっはっは。それは無理な話です。」
斉安大君(チェアンテグン)は清々しく笑いました。
「なぜそう思うのですか?」
「官僚は大王大妃様を恐れてきた連中です。ずっと仁粋大妃(インステビ)のご機嫌ばかり伺ってきました。大王大妃を罪に問う勇気などありません。忘れるのが賢明です。もう長くはありません。」
「チャウォンや。チャウォンよいるか?私が今大王大妃殿へ参る。」
燕山君は輿に乗って行きました。
「はっはっはっは。ええ。主上だけです。祖母を罰する無茶ができるのは主上だけですよ。」
残った斉安大君(チェアンテグン)は笑いました。
「私がお祖母様を罰してやるのだ!」
燕山君は斉安大君(チェアンテグン)に触発されて意気込みました。
感想
さて、あと4話しかありませんけど、どこまで行くのでしょうね。中宗が王になるときまで続くのでしょうか。それにしても仁粋大妃(インステビ)は悪女ですね、彼女に付き従っている月山大君朴氏夫人でさえも寺に追いやられたのに、あのパク氏はどこまでも仁粋大王大妃の味方をしていますね。あんなに優しそうなのに、仁粋大妃(インステビ)の悪行を受け入れているということは、パク氏夫人はかなりの偽善者ですね(笑)もちろん仁粋大妃(インステビ)の従兄のハン・チヒョンも穏やかそうに見えて偽善者で。悪党同士がやりあっているので誰の味方をする正統な理由なんて現代の価値観ではないものですが、現代に通じるものがあるからこそドラマとして成り立っているんですね。何もよその話だからというわけでなく、身近な日本にもこんなインステビやイム・サホン、ユ・ジャグァン、ハン・ミョンフェみたいな悪党っていますよね。そういえば、韓国ドラマって中国や台湾などでも人気があるようですね。中国のドラマは面白くないから人気が出るのもわかる気がします。燕山君は大王大妃が死ぬまで待っててその後に晋城大君(チンソンテグン)を世祖が魯山君を殺したように、太宗が兄弟を殺したようにしておけば失脚しなかったのではと思います。燕山君にそこまでの権力欲はなかったのかもしれませんね。