王と妃-181話-あらすじネタバレ感想
Title:王と妃
Episode Title:甲子士禍(カプチャサファ) Episode no.181 Season:1 Year: 1998-2000 キャスト: チェ・シラ 監督:キム・ジョンソン レーティング4(5段階中) |
王と妃181話あらすじと感想 甲子士禍(カプチャサファ)
燕山君は父の側室であるチョン貴人とオム貴人を貴人の息子に殺させました。
重臣たちは処刑が終わってから燕山君の前に現れました。
「今夜中に母の恨みを生やせば母は極楽に行ける。」
燕山君は領議政のソン・ジュンに言いました。
「すでに断罪なさったのではありませんか。母上のお恨みは晴らされました。」
ソン・ジュンは自分たちに火の粉がかかってくるのを避けようとしました。
「何を言っておるのだ。母上の廃位に賛成した者も母上の賜死に喜んだ逆賊共も明日まで生かしてはおかぬ。チャウォン(キム・ジャウォン)や。今すぐ史料庫から時政記(シジョンギ、歴史の史料として史官が記録した文献)を持って来い。私が当時のことを詳しく調べ、誰から殺すか決める。」
「殿下。殿下は成宗の遺命(イミョン、いめい)にすでに背かれました。母君のことは百年間論じるなと成宗大王の遺命を・・・。」
吏曹判書(イジョパンソ)のホ・チムは燕山君に言いました。
「チャウォンお前(チャウォナイノン)、早く時政記を持って来い!」
「殿下。史料庫の扉は私には開けられません。」
後ろに控えていたキム・ジャウォンは燕山君に言いました。
「それなら私の手で開ける。皆はここにいろ。後で当時のことを聞きたい。」
燕山君は史料庫に向かいました。
協慶堂(とドラマには映っていました)。
「早く開けぬか。」
燕山君は史料庫の扉を蹴り破り中に入り本をむさぼりました。
イム・サホンの家。
廃妃尹氏の弟は母のシン氏夫人に会いに来ました。
「媽媽。見ておられますか。媽媽の子息が恨みをきれいに晴らしてくださいます。」
シン氏は息子の腕にしがみついて泣きました。
王の部屋。
「殿下。廃位に関わった者が多すぎます。罰するのはやめたほうが・・・。」
シン・スグンは燕山君に諫言しました。
「こやつもけしからん。イ・セジャ、イノミ。私の王衣に酒をこぼした奴だがやはり奴が母上に毒薬を持って行ったのか。毒薬に同行した内官(ネグァン)もいるはずだが。私に忠誠を誓った者たちの中にも母上が自決させられたときに小躍りした者もいる。そいつらの名前がここに書いてある。」
「殿下。殿下はお母上を陥れた貴人らを処罰なさいました。殿下は今夜不孝を犯したのでございます。なぜ大王大妃殿で乱暴なまねをなされたのでございますか。」
「私は不孝などしていない。おばさまのために酒を献じさせただけだ。」
「殿下、殿下は今日、罪人の息子という重荷を下ろそうとなさいましたがお祖母様に不孝をした者と非難される羽目になりました殿下。」
「お祖母様だ。母上を殺したのはオム貴人とチョン貴人ではなくお祖母様だ。オム貴人とチョン貴人が手先に過ぎぬことは周知の事実だ。不孝を犯しただと?私が不孝をするつもりならオム貴人とチョン貴人の代わりにお祖母様を殺していただろう。そうだとも。母上を殺した張本人はお祖母様です。ゆえにお祖母様は私の母上の墓の前で土下座すべきではないか。・・・・・・さもなくば終わらぬ。容赦などしない。よく見ておけ。お祖母様を私の母上の墓に行かせてやる。」
「殿下。もうおやめください。我が国は忠孝を重んじる国です殿下。」
「だから何だ?それがどうかしたのか?」
「このままでは国が崩壊してしまいます。」
「義兄上の本心はわかっている。義兄上が心配なのはお祖母様ではなく晋城大君(チンソンテグン)でしょう。偽善者の仮面はもう不要です。義兄上が案じているのは私ではなく晋城大君(チンソンテグン)です。」
「殿下。私は・・・。」
「チャウォンは外にいるか?議政府や六曹の重臣から下級の役人まで国の禄を食む者をいますぐ全員仁政殿(インジョンジョン)へ呼べ。私も今すぐ仁政殿(インジョンジョン)へ行く。」
「はい殿下。」
キム・ジャウォンは従いました。
「お祖母様の出方次第では晋城大君(チンソンテグン)の命も奪うつもりだ。」
月山大君府夫人は弟パク・ウォンジョンの警護のもと大王大妃殿に来ました。門番は輿を入れることを拒むと月山大君夫人は輿から降りて歩いて門をくぐりました。
「姉上。お気をつけください。」
パク・ウォンジョンは姉を見送りました。
月山大君夫人は久しぶりに景春殿(と映像に映っていました)に現れ涙ぐみました。
燕山君はシン・スグンに邪魔すると義父のシン・スンソンの墓を暴いてやると脅しました。
宮殿はものものしい雰囲気に包まれました。
仁政殿(インジョンジョン)。
燕山君は集まった臣下に母上をいつまで罪人にしておくのだと問いました。武霊君(ムリョングン)ユ・ジャグァンは王妃に追尊すべきだと発言しました。ユン・ピルサンは尊号と墓の名を決めて追尊することは理にかなっていると発言しました。領議政ソン・ジュンは王妃を追尊すると成宗の遺命に逆らうことになるといい、燕山君が母上を悲しんでいるので・・・と言葉を濁しました。右議政のユ・スンは「春秋(チュンチュゥ)」の注釈書に「母は息子の即位で尊い身分になる」と書かれていたので懐墓(フェミョ、廃妃尹氏の墓)は「陵(ヌン)」に格上げし追尊は礼曹に定めさせ報告させるべきだと言いました。
燕山君は七去の法を破った廃妃尹氏は離縁するだけでよく殺す必要はなく父王成宗にも過ちがあり成宗は過ちを悟っただろうと言いました。
ユン・ピルサンは懐墓(フェミョ、廃妃尹氏の墓)を懐陵(フェヌン、燕山君の母ユン氏の墓)と改めてはどうかと言いました。領議政のソン・ジュンは孝思廟(ヒョサミョ、燕山君が実母のために建てた祠堂)という名前はそのままにしてはどうかと言いました。
「殿下の深い孝心により斉献(チェホン)王后(ワンフ)は汚名を返上いたしました。」
「よかろう。それも名案だ。」
「すぐにまんがかうにだ(一同)」
「幸い大臣の皆が王妃の追尊を求めてくれたおかげで私はやっと孝行ができそうだ。廃妃を追尊する文書を今夜中に作成せよ。」
燕山君は自分の部屋に戻りました。
領議政のソン・ジュンは不満があるようでした。
王の部屋。
「チャウォンや見たか。重臣たちが私の顔色を伺っておる。私から離れないでくれ。万事そなたに相談する。」
燕山君はイム・サホンに言いました。
「すぐに、まんがかうないだ。」
「母の最期の瞬間の話を聞かせてくれ。」
「中殿媽媽のお恨みをついに晴らせたので私めは涙が込み上げるばかりでございます。」
「幕開けにすぎぬ。これからが本番だ。奴らの腹黒さなどお見通しだ。私の前でへつらい頭を下げても私を抑えようともくろんでいる。私が罪人の子だと?罪人の子を王にしておきながらよくも呑気にしておれたな。おのれ。一人ずつ私が処罰してやる。」
なぜ甲子士禍(カプチャサファ)は起きたのでしょうか。それは燕山君の実母の廃妃尹氏が成宗大王の側室に陥れられ廃位されて賜死したことが発端でした。燕山君は王妃の恨みを晴らそうとしたのです。
領議政のソン・ジュンら重臣たちは早く廃妃の復位の上疏文を出せばもう誰も罰せぬはずだと話し合いました。
「じぶんの首を締めるだけです。当時の大臣は皆罪人になるのでは?これで終わりません。」
大臣の一人が言うと皆はひやりとしました。
「無論犠牲者はでるでしょう。」
ユン・ピルサンは言いました。
「殿下はアニャングンとポワングンを大王大妃殿に連れて行き口にできぬような乱暴を働いたそうです。」
ある重臣は言いました。
「その噂が事実なら只事ではありません。」
「だからこそ至急復位の王命文を書くのだ。そうすれば殿下のお怒りがおさまる。」
ユン・ピルサンは言いました。
「そうなればユン大監だって無事では済みませんぞ。」
「当時領議政だったチョン・チャンソン大監にも責任はあります。」
「領相(ヨンサン、領議政)はあのとき承政院の承旨でしたね・・・。」
「私は・・・!」
「ここにいる者は皆、廃妃の懿旨(ウィジ)に異を唱えませんでした。」
「私は廃妃の天命に反対して罷免された人間だぞ。」
「大監はさぞ嬉しいでしょうな。廃妃のおかげで出世できて。」
「口を謹んでください。」
「アイゴー・・・。」
ユ・ジャグァンは黙って話を聞いていました。
ユ・ジャグァンは議場を出て門の外に出ました。
「奴らときたら浅ましくてとても見ておれん!皆己のことしか頭にない。」
「武霊君(ムリョングン)ユ・ジャグァン大監。玉石をよりわけよとの王命だ。殿下の真の標的は大王大妃だぞ。」
イム・サホンはユ・ジャグァンに王の命令を伝えました。
「あの方なら放っておいても長生きすまい。」
「狙いは命ではない。廃妃は無実だったと言わせねばならん。」
「そこまでするのか?」
「それだけ殿下の恨みは深いのだ。わかるか大監。」
大王大妃の部屋。
仁粋大王大妃は布団の中で仰向けになり目を閉じたまま晋城大君(チンソンテグン)を守らねばならぬと月山大君夫人につぶやきました。
王の部屋。
政丞らは母君のお恨みをお晴らしくださいと王命文を用意しました。
「書き直せ。成宗は聡明な王だったが廃妃を陥れようとする策略に気づかなかった。大臣や臺諫(テガン)たちも廃位は過ちだと諫言しなかった。陥れようとする勢力が大臣や強くとも朝廷の大臣や臺諫(テガン)たちが懸命に止めていたら成宗も過ちだと分かっただろう。丁酉年には廃位しかけてやめており、同じ年に子が生まれている。そして己亥年(きがいねん)に廃位したが壬寅年(じんいんねん)まで毒薬(ササ)を与えられなかった。成宗は王妃の罪が重いとは考えていなかったが王妃をそしる声が高まり判断を過ったのである。詩経では人を陥れようとした者は狼に投げ与えよとある。他人を陥れることはそれだけ重罪だということだ。ゆえに書きなおしてこい。」
王宮の庭。
政丞らはその王命文なら成宗の遺言に反することにはならないと正当化できると話会いました。ユン・ピルサンは死を免れる道がなくなったと言いました。
王の部屋。
イム・サホンはぬかりなくできた燕山君を褒めました。
燕山君も気を良くしました。
大妃の部屋。
ユン大妃の部屋に晋城大君(チンソンテグン)と大君の義父のシン・スグンが集まっていました。
シン・スグンは大王大妃が守ってくださる、自分も守ると励ましました。
ユン大妃は嘆き晋城大君(チンソンテグン)は恐れました。
王の部屋。
三人の老大臣が部屋にいました。右議政は王命文を読みました。
「春秋をひもとくと、母は息子の即位により尊い身分になる。漢の国でも息子は母親を追尊していた。考えてみるとユン氏夫人はその人徳により王妃として選ばれた。だがのちに陥れられて丁酉年に廃位されそうになった。だが、その渦中でも夫婦の仲睦まじく子息をもうけるという吉事が起きた。もし真に徳を失っていたら起こりえぬことだろう。計略は日ごとにあくどさを増した。ユン氏夫人は身の潔白を証明できずに宮殿を追放されそして命を落とされた。初めから宮中の者が王を止め大臣や臺諫(テガン)が進言していたら賢明な先王は廃位を回避したことだろう。私はまだまだ若輩であり未熟者であるが王位を受け継いで十年の月日が経った。そしてついに母の死のいきさつを調べその真実を知った。これほど悲しいことはこの世に二つとないだろう。今ここに人々から広く意見を聞き斉献王后(チェホンワンフ)として追尊する。そして墓を陵に昇格する。また悪計をめぐらした者を法によって罰する。こうして母の恨みを晴らし私の悲しみと母への慕情は慰められることとなった。殿下。朝臣は誠意を尽くして草案を練りました。」
右議政は同情して泣いたように言い。
「よかろう。今日は下がって休みなさい。」
「すぐに、まりうかどにだ。」
「だが。朝廷で働いている者はひとり残らず都城を出てはならぬ。私は、父王(プワン)の判断を誤らせた者を一人残らず罰するつもりだ。」
廃妃を復位するという王命が下りました。だがそれは免罪符ではなく新たな殺戮の始まりでした。
大臣らは輿に乗って家に帰りました。
燕山君は寝間着姿のまま外に出ました。
「母上。どこにいますか。母上。私には、母上の息づかいが聞こえます。宮殿の庭からも壁や屋根からも恨めしげな母上の気配を感じます。私は今日ようやく罪人の息子という重荷をおろしました。よろこんでください。罪人は母上ではなくお祖母様です。私ではない。あそこにいるお祖母様こそ罪人なのです。はっはっはっは。はっはっはっは。」
燕山君は大王大妃殿を指さし笑いました。
チョン貴人とオム貴人の親は謀反人の親として連座させられました。チョン貴人の二人の息子、安陽君と鳳安君(ポンアングン)は堤川(チェチョン)と伊川(イチョン)に配流されました。そして、廃妃に毒薬を持って行ったイ・セジャは流刑地で自決せよとの王命が下りました。燕山君の龍袍(ヨンポ、王の衣)に酒絵をこぼした罪で南海(ナメ)へ送られる途中だったイ・セジャは昆陽郡(コニャングン、ナメの北側)良浦駅(ヤンポヨク)で休んでいるところでした。
「真昼なのに冥土の使者が来たから笑ったのだ。」
「罪人イ・セジャは王命を受けよ。」
「殿下は私の首を斬れとおっしゃったのか?」
「自決せよとの王命です。」
「それはありがたい。頭と体が離れ離れにならずに住む。すぐにまんかかうにだ。はっはっはっは。はっはっはっは。」
イ・セジャは王命に従い毒薬を廃妃に渡しその咎によって罪もないのに首吊り自決させられました。
燕山君は顔色ひとつ変えなかったイ・セジャの死を聞いてけしからんと言いました。
「イ・セジャが死に値する罪を犯したのに弾劾しなかった臺諫(テガン)と弘文館(ホンムンガン)のせいだ。ゆえに彼らを処罰する。臺諫(テガン)と弘文館(ホンムンガン)を捕らえよ。」
燕山君の理不尽な処罰が始まりました。イ・セジャを弾劾せず廃妃の追尊に賛成しなかったとして臺諫(テガン)と弘文館(ホンムンガン)の若い学者たちが投獄されました。
「忠臣であれば死を覚悟して王に諫言すべきだ。だが領議政チョン・チャンソンはろくに諫言せず成宗が斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)を自決させるに任せた。ハン・ミョンフェやシム・フェらもチョン・インジ、キム・スンジョンなどもその罪は免れぬ。財産を没収し本人と子孫の官位を剥奪、彼らの位牌を宮殿の位牌堂から出せ。チョン・チャンソン、ハン・ミョンフェ、シム・フェ、チョン・インジらを剖棺斬死(プグァンチャムシ)に処せ。」
燕山君は言いました。
チョン・チャンソン、ハン・ミョンフェ、シム・フェ、チョン・インジらが剖棺斬死(プグァンチャムシ)に処せられました。剖棺斬死(プグァンチャムシ)とは墓を暴いて死体の首を斬りさらす刑でした。生きている人間に科す以上に残酷な刑でした。
大王大妃殿。
イム尚宮は大王大妃に剖棺斬死(プグァンチャムシ)が行われたことを泣きながら報告しました。
都城。大逆不道罪人チョン・チャンソンという字が書かれ遺体が晒されました。町の人は石を投げつけました。
臺諫(テガン)と弘文館(ホンムンガン)の多くの者たちが燕山君の前で拷問にかけられました。
「進言すべきときに閉ざしていたお前らの口は無駄だ。二度と開けぬよう口を裂け!」
燕山君は命じました。あたりはうめき声に包まれました。刑が残虐だと言ったユン・ピルサンも捕らえられました。
「お前の罪を教えてやろう。王妃の廃位と追尊に両方賛成した。それがお前の罪だ。」
「デビ様の親戚ではありませんか。」
領議政ソン・ジュンは言いました。
「領議政は仁粋大妃(インステビ)が斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)をかばいもせずそのまま懿旨(ウィジ)を成宗に届けたな?よくも厚かましく領議政になれたな!ぐずぐずするな。こやつも捕らえよ!」
ソン・ジュンは罷免されユン・ピルサンは現在の長城(チャンソン)に配流されました。
仁粋大王大妃は起き上がりました。
「今すぐ死んでも恥ずかしくないようにきれいに拭きなさい。娘や。私の顔を拭いてちょうだい。おっほっほっほ。おっほっほっほ。そうよ。それでいいわ。気持ちがいいわ。」
月山大君夫人は仁粋大王大妃の顔を手ぬぐいでふいてやりました。
「今夜中に母の恨みを生やせば母は極楽に行ける。」
燕山君は領議政のソン・ジュンに言いました。
「すでに断罪なさったのではありませんか。母上のお恨みは晴らされました。」
ソン・ジュンは自分たちに火の粉がかかってくるのを避けようとしました。
「何を言っておるのだ。母上の廃位に賛成した者も母上の賜死に喜んだ逆賊共も明日まで生かしてはおかぬ。チャウォン(キム・ジャウォン)や。今すぐ史料庫から時政記(シジョンギ、歴史の史料として史官が記録した文献)を持って来い。私が当時のことを詳しく調べ、誰から殺すか決める。」
「殿下。殿下は成宗の遺命(イミョン、いめい)にすでに背かれました。母君のことは百年間論じるなと成宗大王の遺命を・・・。」
吏曹判書(イジョパンソ)のホ・チムは燕山君に言いました。
「チャウォンお前(チャウォナイノン)、早く時政記を持って来い!」
「殿下。史料庫の扉は私には開けられません。」
後ろに控えていたキム・ジャウォンは燕山君に言いました。
「それなら私の手で開ける。皆はここにいろ。後で当時のことを聞きたい。」
燕山君は史料庫に向かいました。
協慶堂(とドラマには映っていました)。
「早く開けぬか。」
燕山君は史料庫の扉を蹴り破り中に入り本をむさぼりました。
イム・サホンの家。
廃妃尹氏の弟は母のシン氏夫人に会いに来ました。
「媽媽。見ておられますか。媽媽の子息が恨みをきれいに晴らしてくださいます。」
シン氏は息子の腕にしがみついて泣きました。
王の部屋。
「殿下。廃位に関わった者が多すぎます。罰するのはやめたほうが・・・。」
シン・スグンは燕山君に諫言しました。
「こやつもけしからん。イ・セジャ、イノミ。私の王衣に酒をこぼした奴だがやはり奴が母上に毒薬を持って行ったのか。毒薬に同行した内官(ネグァン)もいるはずだが。私に忠誠を誓った者たちの中にも母上が自決させられたときに小躍りした者もいる。そいつらの名前がここに書いてある。」
「殿下。殿下はお母上を陥れた貴人らを処罰なさいました。殿下は今夜不孝を犯したのでございます。なぜ大王大妃殿で乱暴なまねをなされたのでございますか。」
「私は不孝などしていない。おばさまのために酒を献じさせただけだ。」
「殿下、殿下は今日、罪人の息子という重荷を下ろそうとなさいましたがお祖母様に不孝をした者と非難される羽目になりました殿下。」
「お祖母様だ。母上を殺したのはオム貴人とチョン貴人ではなくお祖母様だ。オム貴人とチョン貴人が手先に過ぎぬことは周知の事実だ。不孝を犯しただと?私が不孝をするつもりならオム貴人とチョン貴人の代わりにお祖母様を殺していただろう。そうだとも。母上を殺した張本人はお祖母様です。ゆえにお祖母様は私の母上の墓の前で土下座すべきではないか。・・・・・・さもなくば終わらぬ。容赦などしない。よく見ておけ。お祖母様を私の母上の墓に行かせてやる。」
「殿下。もうおやめください。我が国は忠孝を重んじる国です殿下。」
「だから何だ?それがどうかしたのか?」
「このままでは国が崩壊してしまいます。」
「義兄上の本心はわかっている。義兄上が心配なのはお祖母様ではなく晋城大君(チンソンテグン)でしょう。偽善者の仮面はもう不要です。義兄上が案じているのは私ではなく晋城大君(チンソンテグン)です。」
「殿下。私は・・・。」
「チャウォンは外にいるか?議政府や六曹の重臣から下級の役人まで国の禄を食む者をいますぐ全員仁政殿(インジョンジョン)へ呼べ。私も今すぐ仁政殿(インジョンジョン)へ行く。」
「はい殿下。」
キム・ジャウォンは従いました。
「お祖母様の出方次第では晋城大君(チンソンテグン)の命も奪うつもりだ。」
月山大君府夫人は弟パク・ウォンジョンの警護のもと大王大妃殿に来ました。門番は輿を入れることを拒むと月山大君夫人は輿から降りて歩いて門をくぐりました。
「姉上。お気をつけください。」
パク・ウォンジョンは姉を見送りました。
月山大君夫人は久しぶりに景春殿(と映像に映っていました)に現れ涙ぐみました。
燕山君はシン・スグンに邪魔すると義父のシン・スンソンの墓を暴いてやると脅しました。
宮殿はものものしい雰囲気に包まれました。
仁政殿(インジョンジョン)。
燕山君は集まった臣下に母上をいつまで罪人にしておくのだと問いました。武霊君(ムリョングン)ユ・ジャグァンは王妃に追尊すべきだと発言しました。ユン・ピルサンは尊号と墓の名を決めて追尊することは理にかなっていると発言しました。領議政ソン・ジュンは王妃を追尊すると成宗の遺命に逆らうことになるといい、燕山君が母上を悲しんでいるので・・・と言葉を濁しました。右議政のユ・スンは「春秋(チュンチュゥ)」の注釈書に「母は息子の即位で尊い身分になる」と書かれていたので懐墓(フェミョ、廃妃尹氏の墓)は「陵(ヌン)」に格上げし追尊は礼曹に定めさせ報告させるべきだと言いました。
燕山君は七去の法を破った廃妃尹氏は離縁するだけでよく殺す必要はなく父王成宗にも過ちがあり成宗は過ちを悟っただろうと言いました。
ユン・ピルサンは懐墓(フェミョ、廃妃尹氏の墓)を懐陵(フェヌン、燕山君の母ユン氏の墓)と改めてはどうかと言いました。領議政のソン・ジュンは孝思廟(ヒョサミョ、燕山君が実母のために建てた祠堂)という名前はそのままにしてはどうかと言いました。
「殿下の深い孝心により斉献(チェホン)王后(ワンフ)は汚名を返上いたしました。」
「よかろう。それも名案だ。」
「すぐにまんがかうにだ(一同)」
「幸い大臣の皆が王妃の追尊を求めてくれたおかげで私はやっと孝行ができそうだ。廃妃を追尊する文書を今夜中に作成せよ。」
燕山君は自分の部屋に戻りました。
領議政のソン・ジュンは不満があるようでした。
王の部屋。
「チャウォンや見たか。重臣たちが私の顔色を伺っておる。私から離れないでくれ。万事そなたに相談する。」
燕山君はイム・サホンに言いました。
「すぐに、まんがかうないだ。」
「母の最期の瞬間の話を聞かせてくれ。」
「中殿媽媽のお恨みをついに晴らせたので私めは涙が込み上げるばかりでございます。」
「幕開けにすぎぬ。これからが本番だ。奴らの腹黒さなどお見通しだ。私の前でへつらい頭を下げても私を抑えようともくろんでいる。私が罪人の子だと?罪人の子を王にしておきながらよくも呑気にしておれたな。おのれ。一人ずつ私が処罰してやる。」
なぜ甲子士禍(カプチャサファ)は起きたのでしょうか。それは燕山君の実母の廃妃尹氏が成宗大王の側室に陥れられ廃位されて賜死したことが発端でした。燕山君は王妃の恨みを晴らそうとしたのです。
領議政のソン・ジュンら重臣たちは早く廃妃の復位の上疏文を出せばもう誰も罰せぬはずだと話し合いました。
「じぶんの首を締めるだけです。当時の大臣は皆罪人になるのでは?これで終わりません。」
大臣の一人が言うと皆はひやりとしました。
「無論犠牲者はでるでしょう。」
ユン・ピルサンは言いました。
「殿下はアニャングンとポワングンを大王大妃殿に連れて行き口にできぬような乱暴を働いたそうです。」
ある重臣は言いました。
「その噂が事実なら只事ではありません。」
「だからこそ至急復位の王命文を書くのだ。そうすれば殿下のお怒りがおさまる。」
ユン・ピルサンは言いました。
「そうなればユン大監だって無事では済みませんぞ。」
「当時領議政だったチョン・チャンソン大監にも責任はあります。」
「領相(ヨンサン、領議政)はあのとき承政院の承旨でしたね・・・。」
「私は・・・!」
「ここにいる者は皆、廃妃の懿旨(ウィジ)に異を唱えませんでした。」
「私は廃妃の天命に反対して罷免された人間だぞ。」
「大監はさぞ嬉しいでしょうな。廃妃のおかげで出世できて。」
「口を謹んでください。」
「アイゴー・・・。」
ユ・ジャグァンは黙って話を聞いていました。
ユ・ジャグァンは議場を出て門の外に出ました。
「奴らときたら浅ましくてとても見ておれん!皆己のことしか頭にない。」
「武霊君(ムリョングン)ユ・ジャグァン大監。玉石をよりわけよとの王命だ。殿下の真の標的は大王大妃だぞ。」
イム・サホンはユ・ジャグァンに王の命令を伝えました。
「あの方なら放っておいても長生きすまい。」
「狙いは命ではない。廃妃は無実だったと言わせねばならん。」
「そこまでするのか?」
「それだけ殿下の恨みは深いのだ。わかるか大監。」
大王大妃の部屋。
仁粋大王大妃は布団の中で仰向けになり目を閉じたまま晋城大君(チンソンテグン)を守らねばならぬと月山大君夫人につぶやきました。
王の部屋。
政丞らは母君のお恨みをお晴らしくださいと王命文を用意しました。
「書き直せ。成宗は聡明な王だったが廃妃を陥れようとする策略に気づかなかった。大臣や臺諫(テガン)たちも廃位は過ちだと諫言しなかった。陥れようとする勢力が大臣や強くとも朝廷の大臣や臺諫(テガン)たちが懸命に止めていたら成宗も過ちだと分かっただろう。丁酉年には廃位しかけてやめており、同じ年に子が生まれている。そして己亥年(きがいねん)に廃位したが壬寅年(じんいんねん)まで毒薬(ササ)を与えられなかった。成宗は王妃の罪が重いとは考えていなかったが王妃をそしる声が高まり判断を過ったのである。詩経では人を陥れようとした者は狼に投げ与えよとある。他人を陥れることはそれだけ重罪だということだ。ゆえに書きなおしてこい。」
王宮の庭。
政丞らはその王命文なら成宗の遺言に反することにはならないと正当化できると話会いました。ユン・ピルサンは死を免れる道がなくなったと言いました。
王の部屋。
イム・サホンはぬかりなくできた燕山君を褒めました。
燕山君も気を良くしました。
大妃の部屋。
ユン大妃の部屋に晋城大君(チンソンテグン)と大君の義父のシン・スグンが集まっていました。
シン・スグンは大王大妃が守ってくださる、自分も守ると励ましました。
ユン大妃は嘆き晋城大君(チンソンテグン)は恐れました。
王の部屋。
三人の老大臣が部屋にいました。右議政は王命文を読みました。
「春秋をひもとくと、母は息子の即位により尊い身分になる。漢の国でも息子は母親を追尊していた。考えてみるとユン氏夫人はその人徳により王妃として選ばれた。だがのちに陥れられて丁酉年に廃位されそうになった。だが、その渦中でも夫婦の仲睦まじく子息をもうけるという吉事が起きた。もし真に徳を失っていたら起こりえぬことだろう。計略は日ごとにあくどさを増した。ユン氏夫人は身の潔白を証明できずに宮殿を追放されそして命を落とされた。初めから宮中の者が王を止め大臣や臺諫(テガン)が進言していたら賢明な先王は廃位を回避したことだろう。私はまだまだ若輩であり未熟者であるが王位を受け継いで十年の月日が経った。そしてついに母の死のいきさつを調べその真実を知った。これほど悲しいことはこの世に二つとないだろう。今ここに人々から広く意見を聞き斉献王后(チェホンワンフ)として追尊する。そして墓を陵に昇格する。また悪計をめぐらした者を法によって罰する。こうして母の恨みを晴らし私の悲しみと母への慕情は慰められることとなった。殿下。朝臣は誠意を尽くして草案を練りました。」
右議政は同情して泣いたように言い。
「よかろう。今日は下がって休みなさい。」
「すぐに、まりうかどにだ。」
「だが。朝廷で働いている者はひとり残らず都城を出てはならぬ。私は、父王(プワン)の判断を誤らせた者を一人残らず罰するつもりだ。」
廃妃を復位するという王命が下りました。だがそれは免罪符ではなく新たな殺戮の始まりでした。
大臣らは輿に乗って家に帰りました。
燕山君は寝間着姿のまま外に出ました。
「母上。どこにいますか。母上。私には、母上の息づかいが聞こえます。宮殿の庭からも壁や屋根からも恨めしげな母上の気配を感じます。私は今日ようやく罪人の息子という重荷をおろしました。よろこんでください。罪人は母上ではなくお祖母様です。私ではない。あそこにいるお祖母様こそ罪人なのです。はっはっはっは。はっはっはっは。」
燕山君は大王大妃殿を指さし笑いました。
チョン貴人とオム貴人の親は謀反人の親として連座させられました。チョン貴人の二人の息子、安陽君と鳳安君(ポンアングン)は堤川(チェチョン)と伊川(イチョン)に配流されました。そして、廃妃に毒薬を持って行ったイ・セジャは流刑地で自決せよとの王命が下りました。燕山君の龍袍(ヨンポ、王の衣)に酒絵をこぼした罪で南海(ナメ)へ送られる途中だったイ・セジャは昆陽郡(コニャングン、ナメの北側)良浦駅(ヤンポヨク)で休んでいるところでした。
「真昼なのに冥土の使者が来たから笑ったのだ。」
「罪人イ・セジャは王命を受けよ。」
「殿下は私の首を斬れとおっしゃったのか?」
「自決せよとの王命です。」
「それはありがたい。頭と体が離れ離れにならずに住む。すぐにまんかかうにだ。はっはっはっは。はっはっはっは。」
イ・セジャは王命に従い毒薬を廃妃に渡しその咎によって罪もないのに首吊り自決させられました。
燕山君は顔色ひとつ変えなかったイ・セジャの死を聞いてけしからんと言いました。
「イ・セジャが死に値する罪を犯したのに弾劾しなかった臺諫(テガン)と弘文館(ホンムンガン)のせいだ。ゆえに彼らを処罰する。臺諫(テガン)と弘文館(ホンムンガン)を捕らえよ。」
燕山君の理不尽な処罰が始まりました。イ・セジャを弾劾せず廃妃の追尊に賛成しなかったとして臺諫(テガン)と弘文館(ホンムンガン)の若い学者たちが投獄されました。
「忠臣であれば死を覚悟して王に諫言すべきだ。だが領議政チョン・チャンソンはろくに諫言せず成宗が斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)を自決させるに任せた。ハン・ミョンフェやシム・フェらもチョン・インジ、キム・スンジョンなどもその罪は免れぬ。財産を没収し本人と子孫の官位を剥奪、彼らの位牌を宮殿の位牌堂から出せ。チョン・チャンソン、ハン・ミョンフェ、シム・フェ、チョン・インジらを剖棺斬死(プグァンチャムシ)に処せ。」
燕山君は言いました。
チョン・チャンソン、ハン・ミョンフェ、シム・フェ、チョン・インジらが剖棺斬死(プグァンチャムシ)に処せられました。剖棺斬死(プグァンチャムシ)とは墓を暴いて死体の首を斬りさらす刑でした。生きている人間に科す以上に残酷な刑でした。
大王大妃殿。
イム尚宮は大王大妃に剖棺斬死(プグァンチャムシ)が行われたことを泣きながら報告しました。
都城。大逆不道罪人チョン・チャンソンという字が書かれ遺体が晒されました。町の人は石を投げつけました。
臺諫(テガン)と弘文館(ホンムンガン)の多くの者たちが燕山君の前で拷問にかけられました。
「進言すべきときに閉ざしていたお前らの口は無駄だ。二度と開けぬよう口を裂け!」
燕山君は命じました。あたりはうめき声に包まれました。刑が残虐だと言ったユン・ピルサンも捕らえられました。
「お前の罪を教えてやろう。王妃の廃位と追尊に両方賛成した。それがお前の罪だ。」
「デビ様の親戚ではありませんか。」
領議政ソン・ジュンは言いました。
「領議政は仁粋大妃(インステビ)が斉献王后(チェホンワンフ、燕山君の母)をかばいもせずそのまま懿旨(ウィジ)を成宗に届けたな?よくも厚かましく領議政になれたな!ぐずぐずするな。こやつも捕らえよ!」
ソン・ジュンは罷免されユン・ピルサンは現在の長城(チャンソン)に配流されました。
仁粋大王大妃は起き上がりました。
「今すぐ死んでも恥ずかしくないようにきれいに拭きなさい。娘や。私の顔を拭いてちょうだい。おっほっほっほ。おっほっほっほ。そうよ。それでいいわ。気持ちがいいわ。」
月山大君夫人は仁粋大王大妃の顔を手ぬぐいでふいてやりました。
感想
現代の価値観で仁粋大妃(インステビ)やチョン貴人やオム貴人やユ・ジャグァンやイム・サホン、ユン・ピルサンやユン大妃が悪党、廃妃尹氏が小悪魔だとすれば、燕山君は残虐な悪党だといえましょう。罪の大きさを比べることなどできませんが、悪党の目にも大悪党に見える燕山君。意地の悪さではただの悪党のほうが悪いのですが、燕山君は純粋さや肉親を殺された恨みがあるのでより残酷になった感じですね。しかも学者に火の粉が降りかかって、次の王である中宗が王権を強めるには皮肉にも最適な環境となりました。大粛清のあとには奸臣が排除され泰平の世が築かれその間に奸臣がのさばるの繰り返しですね。世祖(首陽大君)の代に功臣に与えすぎて失われていた王室の土地も燕山君が奪い返したので、燕山君はまったく何も考えずに復讐したかというと、そうでもないんじゃないかと思えてくるのです。女遊びなら成宗も於干同(オウドン)と遊んだとか、かなりのもので子を多くなしましたし、燕山君だけが女色に耽っていたわけでもないでしょう。